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女神「眠りなさい、勇者……魔王が再び蘇る時まで」
Part5


59 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:19:15 ID:7SLZ3QkY
騎士「ふー流石に疲れ……なんで扉に張り紙」
騎士「『帰ってき次第、あたし達の部屋に来る事!』? なんで走り書き? 怒ってる?」
騎士「あ……晩飯すっぽかして稽古してたからか?」
騎士「すまん、入るぞー」コンコン
魔法「やっと帰って来たのだね」
勇者「もー遅いよ。お腹ペコペコ」
騎士「え、もしかして待っていた?」
僧侶「部屋は違うわけですからせめてご飯はご一緒にと思いまして……」
戦士「おー来てたのか。ちゃんと服着てくるわー」ホカホカ
勇者「戦士ちゃんノーガード過ぎるよ!」
騎士(俺、男として思われてないのかなぁ)

60 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:21:11 ID:7SLZ3QkY
騎士「それじゃあ、俺は部屋に戻って寝るよ」
戦士「おうおやすみー」
勇者「おやすみ〜」
魔法「では、また明日」
僧侶「おやすみなさい」
騎士「……さて」
騎士「素振りをもう千回しておくか」

61 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:23:31 ID:7SLZ3QkY
――……
「止めろ……! 逃げろ、皆、逃げ……」
「た、助け……勇者様!」
「誰か! うわああぁぁ!」
弱かった自分。非力だった自分。
力ばかりがあってもそれを使いこなす技量がなくて。
多くの人を守れなかった。
掬っても掬っても零れ落ちる命……。
あの時、ただただ愚直に強さを求めていた。

62 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:25:33 ID:7SLZ3QkY
勇者「あ、そうだ言い忘れていたんだけど、今日は戦士ちゃんと騎士君お休み」
戦士「はぁ?!」
魔法「まだ伝えてなかったのかい?」
勇者「いやーごめんごめん」テヘペロ
騎士「何かあったのか?」
勇者「うん、ちょっと魔力を高める訓練をしておこうと思ってね」
僧侶「急激に上がるわけではないのですが、一通りやって覚えておけば、道中でも少しずつできますので」
魔法「現状、剣は騎士と戦士で間に合いそうだからね。なら勇者は……正直不得手なのだけども、魔法を伸ばすしかないのだよ」
勇者「普通、不得手云々って自分で言うものだと思うなー……そりゃ苦手だけどさ」
魔法「大丈夫だ」
戦士「何が? いや何処が?」
魔法「スパルタさ」
勇者「ひいぃぃ!」

63 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:27:14 ID:7SLZ3QkY
戦士「んじゃあ、あたしらはあたしらで特訓とするかねぇ」
戦士「前みたいにあたしに打ち込んでこい。叩きのめしてやる」
騎士「わ、分かった」
騎士「っふ」キィンキィィン
戦士「お、素振りとかしてたのか?」キィンギィン
騎士「っは」ギンキィンガキィィン
戦士「随分上達……」キィィンギィン
騎士「っや」キィンキンギィィン
戦士(え、何これ強くね?)

64 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:29:18 ID:7SLZ3QkY
戦士「打ち込み止め! よし、模擬戦やってみるか」
騎士「えっもう?」
戦士「なんか型とかしっかりしているし、模擬戦やった方がよさそうだからな」
騎士「上達している実感はないが、戦士がそう言うのなら……」
勇者「え、今日何してたの?」
僧侶「まさか二人だけで魔物と戦っていらしたのですか?!」
戦士(こいつやべぇ)ボロボロ
騎士(やっぱつえぇ)ボッロボロ

65 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:32:03 ID:7SLZ3QkY
戦士「なあ、魔法使い。お前騎士については調べてたりするのか?」
魔法「彼自身というより、彼に繋がりそうな情報は調べているけども。どうかしたのかい?」
戦士「あいつ、すげー勢いで対人剣術が上達しているんだよ。天賦の才ってやつかな」
戦士「もしかしたらどっかの場所じゃ有名かもしれないから、調べついてるかなぁと思ったんだが」
僧侶「そんなに凄いんですか?」
戦士「勇者と同じくらいだよ」
勇者「へーあたしは子供の頃からずっと習っていたからなぁ」
勇者「泣いていい?」
戦士「一月以内にあたしも泣くわ」

66 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:34:00 ID:7SLZ3QkY
騎士(そういえば、二泊は初めてだな)
騎士(流石にこれ以上の鍛練は明日きつそうだ)
騎士(礼拝しにいくか)
女神(暇つぶしの感覚で来られても困るのですが)
騎士(サーセン)

67 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:36:11 ID:7SLZ3QkY
女神(おや?)
騎士(どうされました?)
女神(随分と強くなっていっているようですね)
騎士(そうですか? 全く実感は無いですし、戦士にもボッコボコにされてるんですけどね)
女神(現状、貴方の潜在能力はかなり高いですからね)
女神(加護による身体能力強化で慣れてしまっているのでしょうが、異常な速さで強くなっていってますよ)
騎士(潜……なんですか?)
女神(一言で言えば、貴方の中に眠る伸び代みたいなものです)
騎士(それ伸びたりするもんなんですか?)

68 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:37:10 ID:fT5APg.k
加護なくなっても強いまんまってことか

69 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:38:13 ID:7SLZ3QkY
女神(普通はおいそれと起こりえませんが、何分貴方は人の理にはいませんので)
騎士(そもそも人外になってからしばらくして、強くなる実感がなくなったんですが)
女神(そうですね、少し説明をしておきましょうか)
女神(例えばある人の能力値の限界が100だとします。当然100に達すれば、それを越えて成長する事はありません)
女神(が、契約による加護などの場合はその限りではありません)
女神(ある人が加護を受けた際の限界を200だとします)
女神(その者の本来の能力が50。加護で150付与された場合、200に達してしまい、成長は止まってしまいます)
騎士(じゃあなんです。すぐに実感できなくなったのは、身体能力強化がとんでもない効果であるという事ですか?)
女神(そういう事です)

70 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:40:12 ID:7SLZ3QkY
騎士(て、考えなくても女神様本人との契約だから、加護の効果も最高値であってもおかしくないのか)
女神(当然でしょう)エッヘン
女神(それでは話を戻します。潜在能力を伸び代と言いましたが、言葉のあやですね。失礼しました)
女神(潜在能力は成長速度のようなものです)
女神(伸び代は個々に決まっている能力の成長しうる限界値です。限界に近ければ近いほど成長し辛くなりますが)
騎士(つまり潜在能力が高ければ最後までぬくぬくと筋力なんなり上がると)
女神(大抵はそこに達する前に潜在能力が塵になるのですけどもね)

72 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:42:18 ID:7SLZ3QkY
女神(そこで、人の理を越えた貴方の話になる訳です)
騎士(『今』の俺の潜在能力は高いと仰りましたよね)
女神(本来、伸び代があるものの、能力強化の弊害で成長は止まっている)
女神(それでも尚戦い続けた貴方の体には、経験値が蓄積されていくのです)
女神(そしてその経験値は潜在能力として昇華されるのです!)
女神(伸び代が無ければ無駄になるところですが、まだまだ発達途上ですからね)
女神(そして貴方は加護の肉体強化を切っているので、貴方自身の力はがんがん上がっているのですよ)
騎士(最終的に100になったとして、加護を利用して250になりますか?)
女神(勿論なりますとも。飽くまで成長限界であって、力を振るう分には問題ありません)
騎士(おおっ! ってこれ以上強くなったら魔王瞬殺かもしれない)

73 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:44:02 ID:7SLZ3QkY
騎士(待てよ! まさか実はもう魔法が使えるようになってたりして!)
女神(魔法を使っていないのに、魔力周りが鍛えられる訳がないでしょうに)
騎士()
女神(因みに、今の貴方は魔法使いの卵Lv3程度の魔力です)
騎士()
女神(先天性と言えるほどに魔力が低いですね。ですが、その分身体的な能力の伸び代はかなり高いのですよ?)
女神(10を平均とした時、筋力や耐久等は18ほど。感覚や器用さは13。魔力は1でしょうか)
騎士()
女神(ですがこれは誇っていいのですよ。これほど戦士として優秀な……勇者*****聞いていますか?)

74 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:46:04 ID:7SLZ3QkY
勇者「さーて、今日はがんがん進むよ!」
戦士「次は……ここの道中って」
魔法「要塞があるね」
騎士「わーぉ」
僧侶「昔戦争をした際に造られた要塞ですが、今では関所みたいになっています」
勇者「と言ってもほぼ観光地状態だけどもねー。取り締まっているわけでもないし」
騎士「ああ、なんだ。ただの要塞跡か」
戦士「で、今は魔物に占拠されてると」
騎士「わーぉ」

76 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:52:43 ID:7SLZ3QkY
騎士「すげぇやばそうな要塞だった件」
勇者「多分、要塞のトラップも起動しているんだろうね」
戦士「流石にそこは固いだろう」
騎士「トラップまであるのかぁ……」
魔法「と言っても、別の場所にワープさせる程度のものさ」
騎士「それはそれで十分困るだろう」
僧侶「こんな所で孤立したら……」ブルブル

77 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:54:14 ID:7SLZ3QkY
勇者「騎士君はしんがりをお願い」
戦士「中は結構入り組んでいる。背後を突かれるとやばいからな」
騎士「それでも俺が最前線の方が良くないか? どの道正面が戦力集中するんじゃないか?」
魔法「中には大量の骸骨剣士がいるらしい。知能もあるだろうから、背後を叩いてくるだろうね」
騎士「ああ、そういう事か」
僧侶「が、頑張っていきましょう!」

78 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:56:34 ID:7SLZ3QkY
騎士(意外と狭いな……それにしても戦争か)
騎士(眠っている間に色んな事があったんだなぁ)
魔法「トラップは壁や床にあるそうだ。気をつけて」
戦士「勇者、もうちっと先に行ってくれない?」
勇者「それあたしが押すって意味?!」
僧侶「初めてきましたが、凄いしっかりとした作りですね……」カチ
勇者「……」
戦士「……」
魔法「……」
騎士「なんかすぐ目の前から凄い不吉な音がし」ヒュン

79 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 21:58:33 ID:7SLZ3QkY
騎士「たんだけど、やっぱりこうなりますよねー」
僧侶「ごめんなさい! ごめんなさい!」
騎士(何処かの部屋? 出口は一つ、通路の先はT字路で敵が行き交っているな……)
騎士「参ったな……こりゃ救援待ちかも知れない」
僧侶「き、騎士さんでもこの状況は危険なのですか?」
騎士「対人剣術における実戦経験が乏しいからなぁ」
騎士「あれの大群を一人で相手する事となると……不味いだろうな」

80 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:00:15 ID:7SLZ3QkY
騎士(困ったな……強化の加護を発動させておくか?)
騎士(すぐに切り替えられるものじゃないし、今のうちにやって……)ヒュン
骸骨「ガカッ!」ドシャ
骸骨「アアアァァ」ゾロ
骸骨「アアァ オオォォ」ゾロゾロ
騎士(おくべきだったかっ)

81 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:02:14 ID:7SLZ3QkY
騎士「回復に専念してくれ」
騎士「出入り口は一つ……俺が食い止める」
僧侶「わ、分かりました!」
騎士(なんとしても、耐えなければ)ヒュンヒュン
騎士(焦るな……もう俺は力を使う技量はあるんだぞ)シュバズザン
騎士(だが……数が多すぎる)ザシュ ブシュゥ
僧侶「回復魔法・中!」パァ
騎士(猛攻が止む気配が無い……この喧騒で勇者達が駆けつけてくれればいいが)ザン ザン

82 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:04:17 ID:7SLZ3QkY
騎士「はぁ……はぁ……ぐっ」ザシュ
騎士「っち……」ギィィンギィン
僧侶「か、回復魔法・中!」パァ
騎士(不味い……血を流しすぎたか)キィィンザン ズザン
騎士(このままじゃ……また……)
騎士「……堪るか……何度も……奪われて」キィィンギィン
騎士「守りきる……今度こそ……」ザン ザシュ
僧侶「はぁ……はぁ……回復魔法・中! ……騎士さん」
騎士「二度と……あんな……!」ザンズザンザン

83 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:06:18 ID:7SLZ3QkY
……
騎士「……ん」
騎士「……あれ?」パチ
僧侶「き、騎士さん!? 良かったぁ! 勇者さん! 騎士さんが目覚めましたよ!」
騎士(ここは……ベッド? 部屋の造りは要塞みたいだが)
勇者「あぁ良かったぁ……。大丈夫? かなり出血が酷かったみたいだけど」
騎士「あ、ああ……少し頭がぼーっとするが、大丈夫そうだ」
騎士「それより俺はどうなったんだ?」
勇者「いやーもう凄いというか凄まじかったよ。騎士君一人であの大群を殆ど切り伏せてるんだもの!」

84 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:08:31 ID:7SLZ3QkY
僧侶「戦闘中、騎士さんが出血過多で気を失ってしまったんです」
勇者「そのすぐ後にあたし達が到着して援護に入ったんだけど」
勇者「いやーまさか僧侶ちゃんが騎士君を庇いつつ震えながら、骸骨剣士を相手に牽制しているだなんて思わなかったよ」
騎士「そう、か……」
勇者「どうしたの? 気絶したとは言え、騎士君の大勝利だよ?」
騎士「いや……すまない、僧侶。結果的に助かったとは言え、守り抜く事ができなかった」
僧侶「そんな事ありません! 騎士さんがいなかったら……いえ、私がもっと魔法が使えていれば」
騎士「違う、俺は……俺が……!」
勇者「止ーめ。絶望的な状況から二人助かった。それでいいでしょ」

85 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:10:16 ID:7SLZ3QkY
勇者「騎士君も! 僧侶ちゃんも! 全力を賭して勝った! 悪いも何もない!」
勇者「どれだけ力があろうと、全てを望んだ方向に進められる訳じゃない。だからあまり気にもしない!」
勇者「騎士君に至っては病み上がりなんだから深く考えない! いい?」
騎士「……っぷ、はっはは!」
僧侶「騎士さん?」
騎士「まさか……勇者に説教される時が来るとはなぁ」
勇者「むぅ……。まあ、これはうちの教えだから何ともなぁ」
騎士「全てを望んだ方向にってやつが?」
勇者「うん……勇者*****は不死身で人外の力を持っていたとされるけど、様々な挫折や苦労をしたと言われているんだ」
勇者「だからそういう教訓があるんだ」
騎士「そっか……そりゃそうだな」
騎士(俺は一体何に成ったつもりでいたのだろうか……)
騎士(絶大な力を誇るとされた魔王でさえ、人間の支配に至らない。俺が阻止している)
騎士(だからといって俺が全能な訳がないだろう……まさか自分の生き様の教訓を、自分で学ぶ時が来るとはな)

86 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:12:08 ID:7SLZ3QkY
勇者「おっと言い忘れてた。それから町に駐屯する兵士に連絡し、ここにも兵士が派遣されたところだよ」
魔法「あれからもう四日だ。無事で何よりだよ」
騎士「四日?!」
戦士「お、元気そーじゃねーか。全く心配かけさせやがって」
騎士「四日も眠っていたのか……」
魔法「むしろ死んでもおかしくない状態だったのだよ……」

87 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:14:19 ID:7SLZ3QkY
勇者「魔法使いちゃんと僧侶ちゃんは一日目で泣いていたもんね」
魔法「当たり前だろうに」
僧侶「うぅ〜」カァ
騎士「……やばい、凄いキュンときた」
魔法「因みに昨晩、結局二人とも泣いたわ」
勇者「てへっ☆」
戦士「流石に三日も目を覚まさないと、な」
騎士「そうか……」

88 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:16:16 ID:7SLZ3QkY
騎士「心配をかけてすまない。それとありがとう」
勇者「何が?」
騎士「まさか……皆が泣いてくれるとは思いもしなかった」
魔法「何を当たり前な事を言っているんだい」フゥ
戦士「お前なぁ。まさか部外者気取りだったのか? 悪いけどもう一蓮托生だと思っているんだからな」
勇者「そうそう。大切な仲間だよ……行くならとことん、地獄まで!」
僧侶「流石にそれはどうかと……」
騎士「……ありがとう、本当に」

89 :以下、名無しが深夜にお送りします:2012/04/07(土) 22:17:09 ID:jbkZrRpo
クールな魔法使いちゃんが一日目で泣いたとは意外