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魔人「・・・間違いでは?」
Part10


420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 18:32:57.76 ID:hoXyjvcT0
町娘「・・・そっか」
魔人「・・・う、ぐぅ・・・、ひっぅ、ぅぅぅ・・・」ボロボロ
町娘「お前は全然醜くなんかねーよ。大丈夫だ」ポンポン
魔人「うっく、ひぅ、うぅぅぅ・・・!」ボロボロ
姫様「・・・間違いは、誰にでもあんだよ」
姫様「その後をどーするかで、決まるんだよ」ダキッ
魔人「・・・うぐ、あぅ、ぅぅ・・・」ボロボロ
姫様「謝ろう。許してくれるかわかんねーし、それだけのことをしちまったわけだけど」
姫様「・・・それでも、謝ろう。その選択を選べたねーちゃんは、十分」ギュゥ
姫様「十分、綺麗だよ」
ーーーひとしきり泣いて、落ち着いた後。
     人が人を好きになることを『恋』だというのなら、
     私の彼女に対する『好き』や、あなた達に対する『好き』も、
     『恋』と呼べるのですか、と聞いてみた。
     二人は目を丸くした後、顔を見合わせて照れくさそうに少し笑うと、
     ソレはちょっと違うんだな、と、得意げに胸を張った。

422 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 18:38:59.30 ID:hoXyjvcT0
ーーーメイド館・自室。
魔人「・・・・・・・・・」
魔人「・・・彼女は、戻ってきていないようですが・・・」
魔人「・・・なんと言えばいいのでしょう・・・」
魔人「・・・何と言って、謝れば・・・」
ガチャ
魔人「・・・っ」
メイド「ーーーあ」
魔人「・・・・・・・・・」
メイド「・・・・・・・・・」
…バタン
魔人「・・・!」
メイド「・・・・・・・・・」トボトボ
魔人「・・・、・・・。〜〜っ」
メイド「・・・・・・・・・」…ギシ

425 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 18:45:17.31 ID:hoXyjvcT0
ーーー声が出ないという状況を、初めて経験した。
     今すぐ、謝らないといけない。
     私は、それだけのことをした。
     出したいのに、出せない。
     声が、出ない。
     喉が干上がる。反対に、瞳は潤む。
     泣くな、泣くところじゃない。私は泣くべきじゃない。
     握り締めた拳に爪が食い込んで、痛かった。
     それでも、声は、出ない。
魔人「・・・ぅ、・・・!・・・っ」
メイド「・・・・・・・・・」
魔人「・・・ぁ、ぅ・・・、・・・」
メイド「・・・・・・・・・」
魔人「・・・っ、〜〜っ」
メイド「・・・なにも」
魔人「・・・!」
メイド「・・・なにも、言わないで、ください・・・」

427 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 18:50:15.76 ID:hoXyjvcT0
魔人「・・・ぇ・・・?」
メイド「・・・謝ろうと、しているんでしょ?ねー、さん・・・」
魔人「・・・っ、・・・ぃ」
メイド「・・・違うん、スよ。謝らないで、ください、っス・・・」
魔人「・・・・・・・・・」
メイド「・・・謝るのは、私のほうっスよ」
魔人「・・・!?そ、ん・・・」
メイド「ーーー謝らせてごめんなさい、ねーさん・・・」
魔人「ーーーっ」
メイド「・・・あんなこと言わせて、私、私・・・」
魔人「・・・違、わたっ、私は・・・」
メイド「・・・・・・・・・」
魔人「・・・あな、たに、嘘、を・・・」

431 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 18:59:17.00 ID:hoXyjvcT0
メイド「・・・ねーさん」
魔人「・・・!」
メイド「ねーさんは、兵士さんのこと、好きでしょ・・・?」
魔人「ーーーっ」
メイド「・・・ねーさんに、嘘をつかせたのは、私っスよ・・・」
魔人「違・・・」
メイド「それを、私は、ねーさんを・・・」
メイド「・・・ねーさんを、傷つけて・・・」
魔人「違うっ、私が、あなたを傷つけた・・・!」
魔人「・・・ごめんなさいっ、私は・・・!」
メイド「謝らないでって、ねーさん、私・・・」ボロボロ
魔人「あなたこそっ、どうして・・・」ボロボロ

436 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 19:07:36.93 ID:hoXyjvcT0
メイド「・・・ねーさん、ごめん、なさい・・・」
魔人「私・・・、ごめんなさい・・・」
メイド「ごめんなさい、ごめんなさい、ねーさん・・・」
魔人「私の方が・・・、ごめ、ごめんなさっ・・・」
メイド「・・・ねーさぁぁぁん・・・」ガバッ
魔人「・・・っ」
メイド「ねーさん、ねーさんねーさん・・・!」ギュッ
魔人「・・・・・・・・・」ギュウゥ…
ーーー結局、同じだった。
     私は彼女を泣かせてしまって、
     彼女は私を泣かせてしまった。
     それを悩んで、泣きながら悩んで、
     そして泣きながら、謝ったのだ。
     許すとか、許さないとか、
     そういうものは、最初から無かった。
     ただ、謝りたくて、戻りたくて、
     私も彼女も、
     謝って、
     泣いた。

449 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 19:50:30.63 ID:hoXyjvcT0
ーーー数日後。某・温泉
カポーン…
魔人「・・・ふぅー・・・。やっぱり、いいものですね、温泉は・・・」チャポン
メイド「・・・・・・・・・」チャプ…
魔人「どうしました?気に入りませんか?」
メイド「・・・いや、気持ちいーっスけど・・・」
ーーーついに『魔人の村』に、『人間』が向かう日がやってきた。
勇者『どうせなら一緒に、里帰りでも。どうだ?』
姫様『行こーぜ、ねーちゃん!』
魔人『はぁ・・・。他に、何人か行くのですか?』
勇者『いや。俺達二人、ねーちゃん入れたら三人の予定』
魔人『・・・他に、誘ってもよろしいでしょうか』
姫様『あん?別にいいけど・・・。あんまり多くちゃ駄目だからな、一人ならいいよ』
姫様『誘いたい奴でもいるのか?』
魔人『・・・ええ、まぁ』

451 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 19:57:01.89 ID:hoXyjvcT0
メイド「・・・それが、なんで私なんスか・・・!」
魔人「・・・嫌でしたか?てっきり興味があるものかと・・・」
メイド「い、いや、来たかったっスけど・・・。ってそーじゃなくて!」バシャン
魔人「・・・はぁ、なんでしょう」
メイド「私じゃなくて、『彼』を誘えばよかったじゃないっスかぁ!チャンスだったのに!」
魔人「・・・ああ、それも少しは考えたのですが・・・」
メイド「・・・か、考えたんスね・・・」ブクブク
魔人「・・・でもやはり、この温泉に一緒に入りたかったのは、あなただったので・・・」
メイド「・・・っ!」
魔人「・・・ごめんなさい、迷惑なら・・・」
メイド「・・・め、滅相も無い・・・、滅相もないっス・・・」ブクブクブク
魔人「・・・?おかしな人ですね・・・」
メイド「おかしいのは、ねーさんのほうっス・・・。絶対後で、後悔するっスよ・・・」

453 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:07:42.90 ID:hoXyjvcT0
ーーー『彼』のことは、保留にしておいた。
     私も彼女も、彼のことは好きだったが、
     考えれば考えるほど、お互いに遠慮してしまいそうだったので、
     答えがハッキリするまでは、保留にしておくことに、二人で決めた。
メイド『私たちは敵ではなく、ライバルなんスよ!!どーっスかこれ?かっこよくないっスか!?』
ーーーいずれまた、衝突することは避けられないのだろうけれど、
     ソレまでにはきっと、私ももう少し上手く『恋』を扱えるようになっていると思うので、
     いまはまだ、考えなくてもいいかなぁ、と思っている。
メイド「・・・しっかし、よくこんな温泉作ったっスねー」チャプチャプ
魔人「近くに温泉が沸く洞窟があったので、運んで見たんです」
メイド「えっ・・・、コレ、ねーさんが作ったんスか!?」バシャ!
魔人「はぁ、まぁ・・・。入りたかったので・・・」
メイド「・・・す、すごいっスね、『魔人』の行動力って・・・」
魔人「そうですか?まぁ、大変でしたけどね。一年くらいかかりましたし」
メイド「一年も!?どんだけ風呂好きなんスかねーさん!!??」バシャン!
魔人「これだけが心残りだったんですよ・・・、はぁ。たまに入りにこよう・・・」チャポン

458 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:26:09.99 ID:hoXyjvcT0
メイド「・・・はぁ、そんなんで彼にアタックできるんスかぁ?」
魔人「・・・それは、あなたにだけは言われたくありません」
メイド「なっ・・・!」
魔人「私は酒盛りが始まれば、彼と必然的に二人きりですし・・・」
メイド「・・・わ、私なんて名前覚えてもらえたんスからねー!」
魔人「・・・そういえばこの間、飲みに誘われた返事をしていませんね・・・」
メイド「そっ・・・、ソレは聞いてないっスよねーさん!?」
魔人「なんでもかんでもあなたに話さなければいけないのですか?」
魔人「それに、それを言うなら私はあなたの『名前の件』も知らされてないのですが」
メイド「・・・あー、ねーさんが一人で『村』に来れば、チャンスあったのになー・・・!」
魔人「・・・っ」
メイド「・・・ね、ねーさん?」
魔人「・・・そっ、私は、そんな理由で、さ、誘った、わけでは・・・」グスッ
メイド「わーっ!冗談冗談!ねーさん、泣くのは反則っスよっー!!」バシャバシャ

459 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:29:37.35 ID:lzOrtYZvO
この勝負どうなるんだろうw

460 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:31:10.96 ID:LmuBJGgb0
これが萌えというものか・・・!!

461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:34:01.76 ID:hoXyjvcT0
ーーー『村』は、もう夕日が傾きかけていた。
     露天風呂からみるこの景色が、私は好きだった。
メイド「・・・わぁー、綺麗っスねぇ・・・」チャポン
魔人「・・・でしょう?誰にも教えて無い場所なんですよ、ここ」
メイド「へ?そーなんスか?勿体無い、こんなに綺麗なのに・・・」
魔人「私だけの、秘密の場所だったんですよ」
メイド「・・・私に教えて、良かったんっスか?」バシャッ
魔人「・・・ええ」
魔人「・・・誰かと話しながらこの景色をみるのもいいな、と思ったんです」
メイド「・・・・・・・・・」
ーーー正確には、『誰か』ではない。
魔人「どうやら、正解だったみたいですね」
メイド「・・・ねーさん・・・」
ーーーでもそれは、内緒だ。

462 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:36:45.18 ID:lugqDfWIO
こういうのもいいなぁ

463 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:44:51.62 ID:hoXyjvcT0
メイド「・・・ねーさーんっ!」バシャン!
魔人「ひぁ・・・!なななななんですか・・・!?」
メイド「ねーさんねーさんねーさん!」バシャバシャバシャバシャバシャ
魔人「やめ、なんですか急に、ちょ、やめて・・・!」
メイド「ありがとーっス!教えてくれて・・・」ギュッ
魔人「・・・気に入ってきれましたか?」
メイド「最高っス。ねーさんとこれて、良かった・・・」ギュウゥ
魔人「・・・・・・・・・」
ーーー私は『魔人』として、『人間』と暮らしていく。
     学ぶことがたくさんあって、
     私は少しずつ、自分が豊かになっていくことを感じる。
魔人「・・・私もそう思いますよ」
魔人「あなたとこれてよかった」ギュッ・・・
ーーーソレは決して楽なことではないけれど、
     悩んだ後はなぜか、嬉しいのだ。とても。

466 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 20:54:23.59 ID:hoXyjvcT0
メイド「・・・・・・・・・」ピタッ
魔人「・・・どうしました・・・?」
メイド「・・・ねーさんが、デレた・・・」
魔人「で、デレ・・・!?」
メイド「今のそーっスよね?ね!?そーでしょねぇー!?」ザパァ!
魔人「な、なにが、なんのことですか!?」
メイド「だーかーらー、ねーさんが私のこと好きってことっスよー!!」バシャバシャ
魔人「・・・そ、そんなこと言ってません」
メイド「でもそーいう意味っスよね?照れない照れない、私もねーさんのこと大好きっスからー!!」
魔人「か、勝手に想像しないでください・・・!」
ーーー『魔人』と『人間』は似ている。
     私が恋している、『人間』の言葉だ。
     その通りだ、と思う。
     だって私たちは、
     同じ人を好きになって、
     同じように、恋している。

468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 21:00:00.89 ID:hoXyjvcT0
ーーーそして、
     私たちは、お互いにーー・・・
メイド「認めないつもりっスか?無駄っスよ!今のは絶対!」
魔人「・・・そ、そんなもの・・・」
メイド「ほらほら、ねーさん!」
魔人「・・・なにかの・・・」
メイド「ねーさん!!」
魔人「・・・間違いでは?」
・・・ーー好き合っている。確かに。
fin.

469 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 21:02:54.82 ID:AIz/bq/K0
fin?

470 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 21:02:58.38 ID:zkoi83rN0
>>1お疲れ様、ほんと楽しかった
ほほぉ、そうやってきたのか
もちろん、また今度続編かくのだろう?
魔王の方とかさ

471 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 21:03:04.71 ID:239i8H+tO
乙!
超乙!!
感動した!ありがとー!

472 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 21:03:50.20 ID:1yFim39N0
おつー
面白かったです

496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/11(日) 22:27:37.76 ID:5f5IXtGyO
心がほんわかした。
SSの内容といいここにいる人達いい
あったかだよ