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僧侶「ひのきのぼう……?」
Part4


102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:47:16.76 ID:JOtdaiZe0
――――――――――――――――――――
【渓谷】
 ビュオオオォォ……
僧侶(やっぱりこの辺は風が強いな……)
僧侶(ちょっと気を抜いたら、かわのぼうしが吹き飛ばされてしまいそう)
僧侶(しかもずっと向かい風なのはツイてないなぁ。一歩一歩が重いや)
僧侶(せめて地面につく杖でもあれば少しは楽なんだろうけど)
僧侶(このひのきのぼうじゃ長さが中途半端なんだよなぁ。前屈みでやっと地面につけるくらい)
僧侶(かといって持ち運びやすいとは言えない短さだし……。杖に短し持ち運びに長し、か)
僧侶(でもやっぱりそんなところも、中途半端な僕にはぴったりの武器だ。愛着わくよ)
僧侶(ああ、そういえばコレ、武器だったんだ。どんな風に扱えばいいんだろう)
僧侶(やっぱり、振り下ろして殴るのが普通なのかな。誰かが使ってるの見たことないからなぁ)
僧侶(次に魔物と戦わなくちゃいけなくなったとき、いろいろ試してみよう)
 ビュオオオォォ……
僧侶(わっと。風が強いなぁ……)

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:48:01.08 ID:JOtdaiZe0
僧侶(ん……!)
 
魔物Aが あらわれた!
魔物Bが あらわれた!
魔物Cが あらわれた! ▼
僧侶(後ろからだ! 前に逃げなくちゃ!)
僧侶は にげだした! ▼
しかし おいつかれてしまった! ▼
僧侶(向かい風が強くて足取りが重い……しかもこの魔物たちは素早いぞ!)
僧侶(戦うしか……)
僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼
魔物のこうげき!
僧侶は ダメージを うけた! ▼ 
僧侶「いたた……」
僧侶(でも、今回はもうバギと補助呪文はなしだ)
僧侶(魔力の節約のためにも、ひのきのぼうを使いこなせるようにしとかなくちゃ……)

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:48:37.73 ID:DAb4eRwL0
僧侶って実際は戦闘能力結構高いよね

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:48:42.65 ID:JOtdaiZe0
僧侶の こうげき! ▼
ミス! 魔物にダメージを あたえられない! ▼
魔物Bの こうげき! ▼
僧侶は ダメージを うけた! ▼
――――――
僧侶は ダメージを うけた! ▼
僧侶の こうげき! 
魔物に ダメージを 与えた! ▼
魔物Aの こうげき! ▼
魔物Cの こうげき! ▼
――――――
僧侶の こうげき!
魔物Aを たおした! ▼
魔物Bの こうげき!
僧侶は ダメージを うけた! ▼
僧侶の こうげき! 
魔物Bを たおした! ▼
魔物Cは にげだした! ▼

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:49:27.78 ID:JOtdaiZe0
僧侶は 魔物のむれをたおした!
経験値と 90Gを てにいれた! ▼
 
僧侶「ふう……」
僧侶(……この魔物たちの遺骸を、道の脇にどけてあげよう。ついでに弔いも……)
僧侶「――」
 
僧侶「よし」
僧侶は ベホイミを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼
僧侶(……思ったより長期戦になっちゃった。武器で戦うのって難しいな)
僧侶(でも今ので、結構ひのきのぼうの使い方が分かってきたぞ)
僧侶(剣と違って刃がついてないから、振り抜こうとすると失敗するんだ)
僧侶(始めから殴りつける感じで、こう、当てるように打つといい感じ。こう、こんな感じ)
僧侶(一発の威力を求めず、軽い手数でダメージを稼いでいくんだ。よし、これでいこう)

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:50:31.29 ID:JOtdaiZe0
 ビュオオオオオオォォ……
僧侶(……風がまた一段と強くなってきたなぁ。とても前を向いていられない)
僧侶(でも負けないぞ。風なんかで吹き飛ばされちゃ、勇者に面目が立たないよ)
僧侶(……!)
魔物が あらわれた! ▼
僧侶(岩石のモンスターだ! 大きい! 風でびくともしてないぞ!)
僧侶(この手の魔物だったら動きが遅いから、たいてい逃げられるんだけど……)
僧侶(いまは風が強いし、足場も悪いし……うまく逃げられそうにないな……)
魔物の こうげき! ▼
僧侶(! うわっ!!)
僧侶は ダメージを うけた! ▼
僧侶(いたた……やむを得ない、戦おう)
僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼

113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:51:20.08 ID:bciqfKW30
がんがれ僧侶

114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:51:25.02 ID:JOtdaiZe0
――
僧侶の こうげき! 
魔物に ダメージを あたえた!
魔物を たおした! ▼
経験値と 500Gを 手に入れた! ▼
僧侶「ふう。やっと倒した」
僧侶(……岩石に潜んでいた悪霊は消滅したみたい。残った岩は、そのまま自然に還るよね)
僧侶(……岩石のモンスターかぁ……)
僧侶(ひのきのぼうで戦うには、骨が折れる相手だったな)
僧侶(棒の方が折れなくてよかったよ。途中で戦い方を変えて正解だった)
僧侶(硬い相手は叩くより、局部を突いた方が有効なんだね。これは大きな収穫だ)
僧侶(特にこう、一点もズレることなく繰り出した突きは、思ったより高威力)
僧侶(ひのきのぼう全体の芯? で攻撃しているからかな。力任せで叩くよりずっと強い)
僧侶「……ん?」
僧侶(ああ、もうあんなに日が傾いてる!)
僧侶(戦いに時間をかけ過ぎちゃったんだ。風も止んでるし、今のうちに急ごう――)

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:52:20.75 ID:JOtdaiZe0
【北の城>城下町】
<夜>
 ウォンウォンウォン…  ウォン…
 
僧侶「着いた……」
僧侶(すっかり暗くなっちゃった……早く小屋に行こう)
兵士「おい。そこの者、止まれ」
僧侶「はい?」
兵士「子供? こんな夜更けに何を出歩いている」
僧侶「あっ、あなたはお城の二階にいた警備の人!」
兵士「!? な、なぜ自分のことを……ん? お前どこかで見たような」
僧侶「勇者のパーティーにいた僧侶です。もう足のケガは治りましたか?」
兵士「ああ、誰かと思えば勇者様に付いていた! では、勇者様や戦士殿もここに?」
僧侶「いいえ。僕はパーティーを外されたんです。つい今、帰ってきたところなんです」
兵士「……ふっ。なるほどな。よくわかった」

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:52:53.96 ID:JOtdaiZe0
僧侶「あの、お城にいるはずのあなたが、どうしてこんな時間に?」
兵士「お前には関係のない話だ、とっとと家に帰れ。他の兵士も見回ってる……」
僧侶「はぁ」
僧侶(なにかあったのかな……)
 
【北の城>城下町>外れの小屋】
ガチャ
僧侶「ただいま……。……」
僧侶(勇者が出て行っているんだ。そりゃ誰もいないよね)
ドサ
僧侶「ふう……」
僧侶(帰ってきた。帰ってきたんだ。これで、僕の旅は終わりだ)
僧侶(あとは……勇者に任せよう)
僧侶(勇者……みんなも……どうか無事に、旅を終えられますように……。……)
僧侶「Zzz……」

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:55:32.40 ID:JOtdaiZe0
――――――――――――――――――――
 
【南の港町>露店通り】
勇者「うわあ、賑やかだね!」
戦士「遊びに来ているのではないぞ。今日は装備品やアイテムを整えるのだ」
賢者「まぁ、気を張り過ぎて失敗することもあります。多少の息抜きも必要でしょう」
勇者「もうっ、子ども扱いして。分かってるよ、今日は丸一日ここに留まって」
勇者「商人さんからもらったお金で、それぞれ旅に必要なものを買い揃える! でしょ」
戦士「当の商人は、朝一番に市場に出てるからな。この辺はさすがに一流といったところか」
賢者「商人殿の商いの知識は並ではありません。彼ならば資金を最大効率で運用してくれましょう」
勇者「ボクたちは商人さんの許可なしに、本当に好きに買い物してていいのかな」
戦士「我々への信用も含めてのことだろう。それに装備品など、当人が選んだものが一番だしな」
賢者「では、どうしますか。それぞれ装備の種類も違うことですし、ここは一旦別れますか?」
勇者「そうだね。それじゃ一通り買い物が終わり次第、あの宿屋に集合ということで」
戦士「分かった。あまり羽目を外すなよ」   勇者「外さないよ!」

128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:56:40.83 ID:JOtdaiZe0
ワイワイ ガヤガヤ ワイワイ
勇者「ほんとに人が多いなぁ。人ごみに流されないようにしないと……」
勇者(さて、買い物買い物。……と言っても、装備自体はもう間に合ってるもんなぁ)
勇者(はっきり言って今のでちょうどいいし……下手に新しいのを買うと、失敗する気がする……)
道具屋「いらっしゃい! お嬢ちゃんどうだい、今日は掘り出しもんが入ってるよ!」
勇者「えっ? ボクのこと?」
道具屋「お嬢ちゃんのことだよ! その年で勇ましいカッコしてて可愛いねえ!」
勇者「あ、あのねえ。ボクは北の王様じきじきの……ん?」
勇者「……ねえ、その指輪、ちょっと見せて?」
道具屋「これかい? ははあ、やっぱり女の子は光り物にゃ興味あるか!」
勇者「そ、そんなんじゃないよ。……なんだかこれ、不思議な力を感じる」
道具屋「おひとつ1800Gだ! 今ならふたつで3000Gでいいや!」
勇者「3000ゴールド……」
勇者(商人さんから預かったお金、全部だけど……)
勇者(ボクにはただの指輪には思えないんだよなぁ……どうしようかなぁ……)

129 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:57:34.81 ID:JOtdaiZe0
道具屋「お嬢ちゃん……気になる男の子でもいるんじゃあ、ないのかい?」
勇者「えっ?」
道具屋「この指輪ならデザインもまったく同じだ、おそろいだよ?」
勇者「そ、そんな人いないよ!」
勇者(……でも)
勇者(おみやげだったら……買ってあげてもいいかな……?)
勇者(でもでも、おそろいって……しかも指輪だなんて……いやでもボクそんなつもりは……)
道具屋「ほらお嬢ちゃん、他にお金を使っちゃうと、もう買えなくなるよ! ほら!」
勇者「えっ?」
道具屋「ほら、今日の今しかないよ! 買いだよ、買い! さあ一声だけ!」
道具屋「さあ!!」
勇者「えっ? えっ? か、買います?」
道具屋「売ったあああああ! 毎度ありいいいいいい!!」
勇者「あ、あれれ……?」
勇者(買っちゃった……)ドキドキ

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 22:59:29.77 ID:842H4fNeO
勇者たんカワイイ

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:00:13.52 ID:JOtdaiZe0
賢者「――勇者様、いま何を買われたのですか?」
勇者「あ……賢者さん……」
道具屋「おおっとここで二枚目のお兄さんの登場かい? 若いねえ憎いねえ」
賢者「その指輪を? ふたつで3000Gで?」
道具屋「おおっともう返品不可だよ! もう取り引きは成立したんだからねえ!」
賢者「流石です、勇者様。良い買い物をされました」
勇者「えっ?」
賢者「これは『いのちのゆびわ』です。装備すると、歩くだけでキズが癒えるという逸品ですよ」
道具屋「えっ?」
賢者「普通、店で買えるような代物ではないのですが、素晴らしい掘り出し物に巡り合えましたね」
勇者「そ、そうなんだ」
道具屋「あ、あの……返し……」
賢者「ところで、これでもう支給された額は使い切りましたよね。ともに宿に戻りましょう」
勇者「う、うん」
道具屋「あ、待っ……うおおぉボロ儲けしたと思ったら大損だったああ!!」

136 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:02:45.80 ID:JOtdaiZe0
――
【南の港町>宿屋】
勇者「……まだほとんど時間経ってないのに戻ってきちゃったね」
賢者「そうですね。私の方もすぐ、ローブの売り出しを見つけましたから」
勇者「そのローブ、似合ってると思うよ」
賢者「ありがとうございます。呪文に強い耐性のあるローブなので、これで咄嗟に勇者様を守れますよ」
勇者「やだなぁ。ボクは一人でも平気だよ」
賢者「……前の装備は僧侶殿のものだったので、これでもう、勘違いされずに済みますね」
勇者「えっ? そ、そうだね。あはは」
賢者「……勇者様。この後、お暇ですか?」
勇者「ん、どうして?」
賢者「私にはまだ予算が残っています。良ければ、一緒にバザーを見て回りませんか?」
勇者「……ううん、ボクは別にいいや。賢者さん一人で楽しんできてよ」
賢者「……。……僧侶殿とならば、承諾しましたか?」
勇者「えっ?」

137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:03:32.34 ID:JOtdaiZe0
勇者「な、何で僧侶が出てくるの? ボクは別に」
賢者「その指輪。二つセットで買ったのはなぜですか?」
賢者「一つだけならば、残ったゴールドで他のアイテムも買えたのではないですか」
勇者「そ、それは別に、貴重なアイテムがセットで安売りだったから――」
賢者「勇者様は、私が来るまでその指輪が貴重な装飾品であることを、明確にはご存じなかった」
賢者「つまり始めから何らかの意図が別にあり、二つ買うつもりだった」
勇者「二つ買ったから、何なの? 考えすぎだよ」
賢者「では単刀直入に申し上げます。あなたは僧侶殿に、そのおそろいの指輪を渡すつもりですね」
勇者「そっ……! た、ただのお土産だよ!」
賢者「なぜ……いつまでも、パーティーを辞した者のことを引きずっているのですか」
賢者「今はこの旅で、同じ役柄であなたをお守りできるのは、私しかいないというのに」
勇者「な、なんでそういう話になるの? 友達にお土産を買うのが、そんなに変なの?」
賢者「それが指輪でなければ、私も口を閉ざしていました」
勇者「そんなの偶然……きゃっ!」
賢者「勇者様。私は――」

142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:04:45.32 ID:JOtdaiZe0
勇者「ちょ、ちょっと賢者さん、手を放して」
賢者「初めてあなたを見たとき、私はその凛々しさに心を奪われました」
賢者「私はあなたを守るためにパーティーに加入したといっても、決して過言ではありません」
勇者「は、放して……」
賢者「私はあなたのためなら、人生をかけてでも――」
勇者「放して……痛いよ、賢者さん……」
賢者「!」
賢者「も、申し訳ありませんでした」
勇者「……」
賢者「ほ、本当に申し訳ありません、度が過ぎてしまいました。……し、失礼します」
ガチャ  バタン
勇者「……」
勇者(……)
勇者(こ、怖かった……)ギュッ
勇者(魔物と戦うときなんかよりも、ずっと……)

143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:05:03.51 ID:WWyMEcqFO
賢者は真面目だけど嫌な奴になりそう

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:05:58.68 ID:842H4fNeO
賢者ぁぁぁぁ貴様ぁぁぁぁぁぁ!

146 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:06:03.42 ID:JOtdaiZe0
――
<夜>
商人「ただいま戻りましたぞ!」
戦士「おう、遅かったな」
勇者「あ……商人さん、お帰りなさい。わっ、すごい荷物!」
商人「いやあ、これからすぐにでも魔王城に突入できるくらい買い漁りましたぞ!」
戦士「おお……信じられぬ、こんな高価なものまで」
商人「今回の掘り出し物は『はんにゃのめん』! 難点はありますが、事実上最強の防具ですぞ!」
勇者「最強の? すごい! さすが商人さん」
商人「それから有益な情報も得ましたぞ。この先、西の町についてですが」
商人「ウワサによると、なんと伝説の剣があるとかないとか!」
戦士「!」
勇者「伝説の剣!? あの、魔王を倒すといわれている……?」
戦士「明日すぐに向かおう。伝説の剣は、この旅では無くてはならないものだ」
勇者「そうだね。明日ここを発とう!」

147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/26(月) 23:06:30.68 ID:6Yz2BFlPO
クソ賢者