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僧侶「ひのきのぼう……?」
Part21


411 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:18:48.78 ID:UW5dTRYB0
【北の城・バルコニー】
勇者「わぁ……すごい群集!」
商人「うひょー大迫力ですな!」
戦士「おお……全ての視線が、こちらに向けられている……」
賢者「歓びの声で溢れ返っている……凄まじいカリスマですね、勇者様」
勇者「ええっ、ちょっと緊張するなぁ。戦士さんに代わって欲しいよ」
戦士「馬鹿を言うな。主役はあくまで勇者、お前一人だ」
賢者「何も緊張することはありませんよ。言葉を発したとて、聞こえはしません」
商人「前に出て、構えを取るだけで良いのですぞ!」
勇者「……分かったよ。それじゃあ」
 
勇者は 群集の前に すすみでた!
勇者は 伝説の剣を ぬきはなち――
                     そらたかく かかげた!    
                                         ▼

416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:19:27.23 ID:S+DvK/E60
僧侶どうなるん…

417 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:19:29.21 ID:A/U81iRNO
僧侶マジで僧侶

420 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:19:40.91 ID:UW5dTRYB0
――――――――――――――――――――
【魔王城・B1F】
僧侶「いてて……」
僧侶(やっと揺れが収まった……)
僧侶(それにしてもよく助かったなぁ、僕。持ち物も全部無事だったし)
僧侶(途中で放り出されて、あちこち振り回されて、転がって……)
僧侶(あ、でも、まだ助かったわけじゃないか)
僧侶(あっちこっち瓦礫の山で道が塞がってる。もうこの城からは出られないかも……)
僧侶(勇者たちは、ちゃんと脱出できたかな)
僧侶(そうだ、勇者は魔王を倒したんだった!)
僧侶(良かったなぁ、ホントに良かった。勇者は、見事平和な世の中を取り戻したんだよ)
僧侶(それに比べて僕はダメだなあ)
僧侶(ここまで駆けつけときながら、結局何の役にも立てずに右往左往だよ)
僧侶「よっと」 パッ パッ
僧侶「とにかく、出口を探さなきゃ」 ――

421 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:19:44.10 ID:IDYDfpNT0
どうなんだよこれ・・・

424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:20:25.48 ID:UW5dTRYB0
――
僧侶「ふう。ダメだ。出れない」
僧侶(どこも通路が崩れちゃって先に進めないや)
僧侶(残ったのは……)
   ヒュオオオオオ…
僧侶(この……地下へ続く、長い階段だけかぁ)
僧侶(偶然見つけたけど、これ、きっと隠し階段だよね。狭いし、暗いし)
僧侶(城壁が崩れた影響で、階段口が表に晒されちゃったんだ)
僧侶(気は進まないけど……僕がこの城から出るには、降りるしかないか)
僧侶(この先に、外に繋がる『旅のとびら』があることを期待して……)
僧侶(外に……出て……)
僧侶(……)
僧侶(まあ後のことはいいや。今はとにかくここを降りてみよう)
カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン  ……

430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:21:00.63 ID:UW5dTRYB0
【魔王城・B10F】
――カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン
僧侶(結構長いなぁ……先も暗くてよく見えないし……)
・ カツーン
・    カツーン
・       カツーン
【魔王城・B20F】
僧侶(大きならせん状になってる……いったいどこまで続くんだろう)
・        カツーン
・     カツーン
・  カツーン
【魔王城・B50F】
僧侶「――ちょ、ちょっと休憩」
僧侶(まさかこんなに長いなんて……もう、何階分ぐらい降りたんだろ……)
僧侶(行き止まりが待ってたら、心が折れそうだな)
僧侶(ううん、僕は簡単に折れないぞ。何たって僕はこの、『ひのきのぼう』なんだから)
僧侶「……よし、休憩終わり! 行こう!」

431 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:21:05.65 ID:A/U81iRNO
頼むから僧侶に人並みの幸せだけでも与えてやってくれ
頼む

433 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:21:49.61 ID:UW5dTRYB0
――
【魔王城・B75F】
――カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン
僧侶(……階段を降り始めて、何時間くらい経ったかな)
僧侶(今ごろ勇者は、王様に会って、町の人たちから祝福されてるのかな)
僧侶(僕もその中に混じって、勇者たちみんなを労いたかったな)
僧侶(『おめでとう』『おつかれさま』『ありがとう』。かけたい言葉は盛りだくさんだ)
僧侶(でも僕は追放されちゃったから、もう城下町には入れないんだ)
僧侶(……だから勇者に会うチャンスは、もうここ、魔王城しかなかったけど……)
僧侶(間に合わなかったなぁ。急いだんだけど、仕方ないよね)
僧侶(ううん、僕が出しゃばったら、かえって皆を危険な目に合わせたのかもしれない)
僧侶(魔王は倒されたんだ。ってことはつまり、僕が間に合わなくて良かったんだ)
僧侶(僕って肝心なところでドジ踏んじゃったり、運が悪かったりするけど)
僧侶(今回だけは運が良かった。最後に間違えなくて、よかったよかった)
  カツーン   カツーン   カツーン   カツーン   カツーン ――

435 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:22:05.81 ID:0udmmsLt0
地下75階wwwww

438 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:22:37.17 ID:UW5dTRYB0
【魔王城・B99F】
――
僧侶(うーん……行けども行けども、同じ風景ばかり)
僧侶(そろそろ疲れてきたかも……ん?)
僧侶「あっ!」
僧侶(明かりだ! しかもこの青白い明かりは……!)
 ズズズズズズズズズ……
僧侶「やっぱり!」
僧侶「『旅のとびら』だ!」
僧侶(やっぱり抜け道はあったんだ。ここまで降りてきた甲斐があったよ)
僧侶(……でも)
僧侶(こんな地下深くにあるなんて……一体どこに繋がってるんだろ)
僧侶(ううん、ここまで来たら、どのみち僕に選択肢はないんだ)
僧侶「……行こう!」
僧侶は 旅のとびらに 飛び込んだ! ―― ▼

441 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:00.62 ID:FDXbchyl0
99だと…

443 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:10.54 ID:UW5dTRYB0
――
――――
――――――
僧侶「うわああっ!」
 ドシャッ
僧侶「いてて……」
 
【??の間】
 
僧侶(腰を打っちゃったよ……とびらの先が底抜けになってたなんて……)
僧侶「……あれ? ここは?」
僧侶(外じゃないな。まだ室内みたいだけど)
僧侶(……やけに広い……?)
**『何者だ』
僧侶「!?」

445 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:19.06 ID:DRtWSBIk0
(アカン)

449 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:32.35 ID:SCb3nG7N0
え?

450 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:32.45 ID:WYbqZntO0
裏ボス(´・ω・`)

451 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:36.45 ID:S+DvK/E60
これあかんやつやでえ

452 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:37.23 ID:28Ordrof0
(ヤバイ)

455 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:47.44 ID:UW5dTRYB0
僧侶(広間の奥に、大きな扉――)
僧侶(その前に、何かが座っている!)
僧侶(あれは……魔導師系の魔物?)
僧侶(ローブに覆われてて、顔がみえないけど……)
僧侶(いま思念波で話しかけてきたのは、あの魔物?)
**『何者だと問うておる』
僧侶「! 僕は」
僧侶「僕は僧侶。ここには、迷った果てに行き着いたよ」
**『僧侶? 人間か!?』
**『なぜ人間がこのような場所に』
**の そばに 二つの 赤い水晶が 浮かび上がった! ▼
僧侶「!」
僧侶(何をする気だ……?)

456 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:23:49.84 ID:Q/V2tzme0
にげてー

465 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:24:31.49 ID:UW5dTRYB0
**『……』
**『……なるほど』
**『ここへは、確かに偶然迷い込んできたようだな』
僧侶「!」
僧侶「お前はいったい――」
**『!? 南の陸地から渡ってきたのか!?』
**『あそこには、魔王軍の精鋭を配置していたはずだが……』
**『出し抜かれたというのか……こんな小僧一人に……』
僧侶「!」
僧侶(僕の過去が見通されてる? しかも魔王軍ってことは、やっぱり敵?)
僧侶(とにかく、このままやらせたらまずい気がする)
僧侶「お前は!」
僧侶「お前は一体、何者なんだ。僕はちゃんと名乗ったよ」
**『……良かろう、他に聞く者もなし……人の子よ、傾聴するが良い。我こそは』
**『我こそは、真なる魔王である』

468 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:24:55.57 ID:jfsoTAJH0
真なる魔王様きたー!

480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:26:02.57 ID:UW5dTRYB0
僧侶「な……なんだって」
僧侶「だって魔王は、勇者が倒したはずだよ!」
**『それは誤りではない。確かに魔王は最上階での決戦にて、勇者に敗れた』
僧侶「……魔王は、二人いたってこと?」
**『是とも否ともいえる。ただ真なる魔王は、我にして唯一』
**『我の他に魔王と称されるものがあったとて、それは虚偽なる写し身に過ぎぬ』
僧侶「じゃあ、勇者が倒した魔王は、偽物だっていうの?」
**『いかにも。あの魔王は、長きに渡る時を経て、我が育んだ究極の生物』
**『幾多の同胞を糧とし、驚天動地の成長を遂げた我が軍の切り札――その名は「魔界樹」である』
僧侶「『まかいじゅ』……? でも魔界樹って、『じんめんじゅ』の上位亜種じゃ……」
**『左様な下等の魔物とは別種のものだ。そも、規模の桁が数段異なる』
**『あの魔界樹は数十年前、我みずからの手で種子より育て上げたものだ』
僧侶「魔王が偽物の魔王を育てる? いったいどういう……」
**『……ククク……退屈しのぎには丁度よい。一幕の下りに人の子と語らうも、また一興』
**『良かろう。貴様には、全てを話してやろう――』

486 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:26:49.26 ID:UW5dTRYB0
**『我は魔界にて生を与えられし時、伝説の宝具「ラーの鏡」と同質の力を備えられた』
**『すなわち数多の過去、そして真実を見通す、赤き眼睛である』
僧侶「真実を見通す……眼?」
僧侶(僕がここに来るまでの経緯がバレたからには、本当にそんなものがあるんだ……)
**『さて――これまでの魔族が世の征服に失敗している以上、我も同じ轍を踏む訳にはいかぬ』
**『我は世を支配するに当たりまず、先代、先々代の過去を覗き込んだ』
**『すると滑稽なまでに、ほぼ同じ経過を辿っていることが分かった』
**『天の導きによって人の中から「勇者」が定められ、その者に魔王が討ち果たされる、とな』
僧侶「……」
**『魔族は……いかなる強大な力を持とうとも、どれだけ魔王軍を拡大しようとも』
**『終極には必ず、伝説の武具をまとった勇者に討たれる』
**『魔族の歴史は物語っていた。天の定めし勇者に、魔王は決して勝てぬと』
**『矜持を重んじる我にしてみれば到底受け入れ難い、非情な史実であった』
**『宿願を成すためには、勇者と真正面から衝突しては敵わぬ。……叶わぬ――』
**『我は歳月をかけて考えあぐねた挙げ句……一つの方策にたどり着いた』

490 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:27:35.91 ID:UW5dTRYB0
**『天界の目を欺けば、魔族が敗れる宿命に抗えるのではないか』
**『我自身の代わりを立てれば、因習を断ち切るきっかけになるのではないか』
**『偽の魔王を勇者に討たせれば、定めを歪ませるができるのではないか――』
僧侶「……そのニセの魔王っていうのが」
**『そう。件の「魔界樹」である』
**『天を欺くほどの力を持つ、新たな魔王を創造する。我はこの壮大なる計画を実現するために』
**『従来の魔王のように自身を高めることも、魔王軍を増強することも捨て』
**『「魔界樹」の種を育て上げることに、多くの資と時を費やした』
**『この、天界の目の届かぬ、地の果てでな』
僧侶「……」
**『――時は流れ、我はついに「魔界樹の花」を咲かせることに成功した』
**『もはや言語を発し、呪文も行使できる。魔界樹は成熟相当の力を得ていた』
**『我はこれを以て契機とし、この「魔界樹の花」を魔王に見立て、地上に芽吹かせた』
僧侶「……でも、その魔界樹は勇者に倒された」
**『ククク……あわよくばといった、多少の自信はあったのだがな』

493 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:28:34.10 ID:UW5dTRYB0
**『だがそれも想定内であった。むしろその流れこそが本命』
**『かくして、魔王が勇者に討伐せしめられる慣習は、成立したのだからな』
**『そして、我はここに在る。すなわち天界の目は誤魔化せたということだ』
僧侶「! で、でも」
僧侶「苦労して育てた魔界樹は、もう勇者に倒されたんだから……」
**『魔界樹はまだ滅んではおらぬ』
僧侶「!!」
**『……この魔王城の主柱は、魔界樹の一部であった』
**『その主柱は勇者らによって崩され、魔王城陥落を招いたが――』
**『柱の内側に伸びていた物は、魔界樹の「幹」である』
**『本体である「根」は、今もなお脈打っている。根ある限り、魔界樹は幾度となく再生する』
僧侶「……そんな……」
**『なお魔界樹には、優れた学習能力がある』
**『一度勇者と戦った記憶は、先刻、魔界樹の「根」に深く刻みこまれた』
**『我の知る限り「魔界樹」は、同じ相手に二度遅れを取ったことはない――』

496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:29:17.11 ID:UW5dTRYB0
**『また、魔界樹は急速な成長を遂げている』
**『我による手も施せば、次にその花が咲くまで……五年とかからぬ』
僧侶「!」
**『五年の後。魔界樹は最強の魔物となりて、再び地上に顕現する』
**『その際には、温存していた我が魔王軍も、魔界より一斉蜂起する』
**『その時こそ人間共は終焉を迎え、我が魔族の完全支配が実現するのだ』
僧侶「五年……たったの五年……」
**『ククク。丁度よい頃合であろう』
**『一時の平和に耽り、幸福の絶頂を迎え、魔族の脅威を忘れかけた人間共を』
**『唐突に闇に包み、ふたたび絶望の淵に落とし込むには、ほどよい年限だ』
**『特に勇者は、小娘であったことが大きい』
**『五年も経てば、何者かと結ばれれておるやもしれぬ』
**『子宝でも儲けていようものなら、確実に全盛より劣っていよう……』
**『ククク……その折は絶望の味もひとしおというもの……』
僧侶「そんなことはさせない」

499 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 03:29:50.34 ID:UW5dTRYB0
僧侶は ひのきのぼうを かまえた ▼
 
僧侶「話は分かったよ」
僧侶「僕は、僕にできることをする」
**『ほう? ここに至り、何を目指すというのだ』
僧侶「みんなに伝えるんだ」
僧侶「ここから地上に出て、勇者に、まだ戦いが終わってないことを伝えるんだ」
**『ククク……添えておくが』
**『貴様が最後に通った「旅のとびら」は、片道限り。ここから逃れることはできんぞ』
僧侶「まだ道は残されてる。お前の、後ろにある扉だ」
**『ほう。仮にこの先が行き止まりであれば、どうする』
僧侶「それでも、ここから外へ出る方法を手当たり次第に調べて」
僧侶「それでも無理なら、上に穴を掘ってでも抜け出すんだ」
**『……ククク……ハッハッハッ』
**『面白いことをのたまう小僧だ。実に興味深い』