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僧侶「ひのきのぼう……?」
Part16


894 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:11:54.93 ID:UW5dTRYB0
露天商(ククク、こいつやっぱただの馬鹿だったぜ!)
僧侶「これを下さい」
露天商(どれも同じだ、笑いが止まらねえ)
露天商「あいよ、290ゴールドな! まいどあり!」
僧侶「……でもこれ」
僧侶「『まほうのせいすい』じゃない気もする」
露天商「へっ、もう返品はきかねえからな!!」
僧侶「なんだか『まほうのせいすい』より、すごく魔力が詰まってるようにみえる」
露天商「あ?」
僧侶「きっと上物なんですね」
僧侶「お金が足りないのに売ってくれて、本当にありがとうございました。では――」
 
露天商「お。おい」
露天商「おい、まさかそれ……」
露天商「いや、あんな馬鹿そうなガキに……そんなはずはねえ……」

895 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:11:56.51 ID:tA9QuMLr0
伏線回収きたか

896 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:11:56.96 ID:Vx3RO4t80
伏線wwww

898 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:12:03.26 ID:BJxllvhM0
複線回収だー

899 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:12:05.04 ID:K/vCCZn10
エルフのか

911 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:13:04.03 ID:UW5dTRYB0
僧侶(これでお金も使い切ったし、思い残しもないかな)
 ボー――……
僧侶「……」
僧侶(さっきの客船が出る音だ)
僧侶(あれに乗っていたら、僕の運命も変わったのかもしれない)
僧侶(……けど。もう決めたんだ)
僧侶(行こう)
僧侶(魔王の城に行くんだ)
僧侶(ここから北のルートを通って、山を越えて、城に入って)
僧侶(勇者と、戦士さんと、商人さんと、賢者さんの役に立つんだ)
僧侶(最後に勇者に会ったときのことを考えると、今日あたりもう出発してるかもしれない)
僧侶(今からじゃとても間に合わないかもしれないけど……)
僧侶(どの道行く当てなんてないんだ。無駄足になったって構わない)
僧侶(最後まで……僕にできることを、目指そう)

912 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:13:39.08 ID:KS6eM3jkO
露店商いい仕事するなw

916 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:14:02.08 ID:UW5dTRYB0
――
僧侶(港町を離れるにつれ、どんどん町の音が遠くなっていく)
僧侶(向かう先は北。魔王城だ)
僧侶(陸続きの道を通ったら、高い山にぶつかるけど――)
僧侶(よくよく考えたら、装備の軽い僕なら、きっと登れないことはないはずだ)
僧侶(それに、僕のこの大陸巡りは、逃げて逃げての、走りっぱなしだった)
僧侶(だから足腰だって丈夫なんだ)
僧侶(そして、この心強い『ひのきのぼう』がそばにある限り、僕はきっとやれる)
僧侶(やれるんだ)
魔物のむれが あらわれた! ▼
僧侶(こんなところで、体力と魔力を消耗しちゃいられない)
僧侶(できる限り、隙を作って逃げよう。目的地は、まだまだ先なんだから!)
僧侶は バギマを となえた! ▼ ――


僧侶「ひのきのぼう……?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1353950321/

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:19:32.53 ID:UW5dTRYB0
――――――――――――――――――――
【魔王城・テラス】
スタッ  ガシャッ  スタッ      ドシャッッ
商人「ぐええ」
勇者「商人さん、大丈夫?」
戦士「まさか本当に虹の橋が消えようとは。あの村長も詰めが甘いことだ」
賢者「いえ……恐らくこの城から滲み出ている、独特の魔力による影響でしょう」
賢者「しばし失礼」
賢者は フローミを となえた!
しかし 不思議なちからで かきけされた…… ▼
賢者「ふむ。やはりここの地形を知ることができませんね」
勇者「今のって、自分がいるダンジョンの階層を認識する呪文だよね」
賢者「はい。これが駄目だということは、ルーラやリレミトでの脱出もおそらく……」
商人「に、逃げ場はないということですかな……」

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:20:23.48 ID:UW5dTRYB0
戦士「恐れることはない。魔王を討ち取りさえすれば、妨害も解けよう」
勇者「戦士さん」
戦士「我々は何のためにここまで足を踏み入れたのだ」
戦士「今から退くことを考えてどうする。さぁいざ、いざ先へ進まん!」
勇者「うん、戦士さんの言う通りだよ! 前に進もう!」
賢者「ええ。確かにこの手の術は、術者の魔力を絶ってしまえば解消するもの」
賢者「仮に術者が魔王ではなかったとしても、魔王を討てば状況に変化があるはずです」
商人「ワ、ワシは別に……大丈夫ですぞ!」
戦士「態勢が整ったなら、さっそく城内に入るぞ。俺は血が滾っている」
賢者「中で何が待ち構えているか分かりません。慎重に参りましょう」
商人「よ、よっしゃ! 頑張りますぞ!!」
勇者(……とうとうここまで来たんだ)
勇者(この先にいる魔王を倒して、誰一人欠けずにみんなで帰るんだ)
勇者(この『伝説の剣』と、心強い仲間たちがいれば――できる!)
勇者「みんな、行こう!」

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:21:02.81 ID:UW5dTRYB0
【魔王城・城内】
勇者「……」
戦士「……」
商人「……」
賢者「……」
勇者「妙に静かだね」
戦士「ああ。てっきり強力な魔物でも待ち構えているかと思ったが」
商人「な、何かのワナかもしれませんぞ!」
賢者「先ほどから私も罠を警戒しているのですが……まるでそんな様子がない」
勇者「あっ、階段」
戦士「何も出ないなら先に進むだけだ。登るぞ」
商人「は、はは。拍子抜けですな! 持ち込んだアイテムが腐ってしまいますぞ!」
賢者「……本当に何もない。魔物も、罠も……」
勇者「普通の城なら、上の階に『魔王の間』があるはず」
勇者「とりあえず、まずはそこまで乗り込もう――!」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:21:46.36 ID:UW5dTRYB0
――
勇者「……階段だ。結局、この階も何もなかったね」
商人「響くのは我々の足音ばかり。うーむ気味が悪い」
戦士「構うことはない。さっさと次だ」
賢者「……」
勇者「ん? どうしたの、賢者さん」
賢者「いえ。あの太い柱が少し気になりまして」
勇者「はしら? ああ、あれ柱だったんだ。大き過ぎて気がつかなかった」
賢者「ええ。下の階にもあったものが、そのまま上階まで貫いています」
賢者「おそらくあれは、この城の巨大な主柱でしょう」
戦士「それがどうしたというのだ」
賢者「いえ……あの柱から、微かに魔力を感じるのですが……」
賢者「その魔力の流れが、なんだか上へ向かって脈打っているような……」
勇者「……そうなの? それが?」
賢者「いえ、他に気になる事がなかったものでしたから。先へ参りましょう」

23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:22:48.18 ID:UW5dTRYB0
――
【魔王城・最上階】
勇者「! この大きな扉は……」
賢者「……おそらくこの先が……【魔王の間】……でしょうね」
商人「ば、馬鹿な……ついにただの一度も、魔物と出くわしませんでしたぞ!」
戦士「ふん。何もうろたえることはない。これが心理作戦なら空振りもいいところだ」
戦士「我々は、無駄な消耗戦をせずに済んだ。その恩恵だけを受ければいい」
戦士「恐れることは何もない。そうだろう勇者」
勇者「うん」
勇者「そうだよ。もう、後には引き返せない」
勇者「剣を抜こう。防具を固めよう。この扉の越えた先の――」
勇者「さらに先に、ボクたちの目指す世界がある。長かった旅の目的がある」
勇者「みんな、絶対に生きて帰ろう!」
 勇者は 扉を あけはなった――!

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:23:57.33 ID:UW5dTRYB0
【魔王の間】
勇者「……」
戦士「……暗いな……」
賢者「! 扉が!」
 ズズズズズズ……    ズーンン……
商人「こ、この! 開けろ! 開かないか!」
戦士「ようやくまともな反応があったと思えば、ただの退路塞ぎか。つまらんな」
勇者「みんな」
勇者「あの玉座に、誰か座ってる」
賢者「……!」
戦士「……魔王か……?」
商人「お、思っていたより小柄ですな……」ヒソヒソ
 
**『……』

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:24:30.41 ID:UW5dTRYB0
**『……勇者よ。よくぞここまで来た』
勇者「!」
 ボッ   ボッ   ボッ
商人「あ、明かりが……」
戦士「……あれが魔王……?」
勇者(顔がフードに覆われてよく見えない……!)
勇者「お。お前が魔王かっ!?」
**『……』
**『そうだ』 スッ…
賢者「! 皆さん気をつけて! 何かする気です!」
勇者「……!」
魔王の片手から 赤い水晶の玉が うかびあがった! ▼
**『さて……戦いの前に』
**『貴様たちの真実を覗かせてもらおう……』

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:25:24.94 ID:9L1YyKGA0
いいぞ魔王

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:25:25.54 ID:UW5dTRYB0
勇者「真実……?」
戦士「下らん御託に付き合っているヒマはない。来ないならこちらから行くぞ」
**『お前が我を滅ぼす真の目的――』
**『それは名誉に飢えているためか』
戦士「!」
**『己こそが魔族を打ち破るに足る存在だと、信じて疑わなかったようだな』
**『功のために己を磨き上げ、名を広めるために剣を振るってきたお前にとって』
**『突如として現れた勇者なる存在は、さぞ歯がゆいものだったろう――』
勇者「!」
戦士「な、何を……!」
**『ほう。特に「伝説の剣」に対する固執は凄まじいものだったようだな』
**『これまでの誇りと、この先の戦功を思えば、簡単には手放せなかった』
戦士「貴様、勝手なことを……!」
**『分かるぞ。自らの矜持を押さえ込み――』
**『他に本分を委ねなければならない口惜しさというものはな――』

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:26:04.06 ID:UW5dTRYB0
商人「戦士殿! こんな奴のほざく事など、真に受けることはありませんぞ!」
**『貴様は金欲か』
商人「なっ!」
**『ククク。もはや滑稽なまでに至純な守銭奴よ』
**『頭の中は、常に金に関わることばかり。へつらい、たくらみ、ほくそ笑む』
**『この戦いでさえも、金儲けの一部としか考えておらぬようだ』
商人「そ、そんなことは……!」
**『恥じることは無い、それでこそ人間というもの』
**『多くの人間は、欲の権化たる金銭に価値を見出す。持たざる者は無論、持つ者でさえも』
**『されど、時にその貪欲さが思わぬ力を引き出すこともある。結構なことではないか』
商人「ぐぬぬ……」
勇者「みんな、こいつの言うことに耳を貸しちゃ駄目だ!」
勇者は 伝説の剣を 抜きはなった! ▼
**『……。……勇者よ』

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:26:08.85 ID:FDXbchyl0
賢者ピンチ

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:26:11.25 ID:jfsoTAJH0
良いぞ魔王様

60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:26:19.89 ID:mqrvoAVI0
魔王さんかっけぇ

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:26:38.44 ID:UW5dTRYB0
**『貴様はなぜ、我を滅ぼさんと剣を抜く』
勇者「それは、この世を平和にするためだ!」
**『真にそうなのか』
勇者「えっ?」
**『貴様は周囲に流されるがままに、持ち上げられ、謳われるがままに』
**『目に映りもしない使命感を、傀儡のごとくただ果たそうとしているに過ぎぬのではないか』
勇者「そんなことはない! ボクは自分の意志でここまで来たんだ!」
勇者「魔王……お前を倒して、世界を平和にするために、それだけのために旅を続けてきた!」
**『その主張が空疎だと言っている』
**『勇者の号のない、貴様自身は何のために戦う』
**『貴様の真の目的はいずこにある。答えてみよ』
勇者「そ、そんなもの……」
**『答えられぬのは、以前あったはずの「欲」が見えなくなっているためだ』
**『目を閉ざされた貴様は、ただ無心に使命とやらにすがっているに過ぎぬ……』
勇者「わ、訳の分からないことを……!」

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:27:22.76 ID:UW5dTRYB0
賢者「……勇者様、戦士殿」
賢者「あの魔物は、どうやら魔法使いタイプのようです」
賢者「【東の村】で練った作戦通り、集中攻撃の陣形を敷きましょう」
**『最後はお前か』
**『……ほう。これは興味深い』
**『一行の参謀でありながら、魔物に勝るとも劣らぬ、あさましい行為を犯している』
**『ただ己の愛欲のために、罪なき人間を消すとはな』
勇者「えっ?」
戦士「……」
賢者「曲解を招く言い方だ。私はこれまで、人を殺めたことなど一度もない」
**『さて。時によっては、ただ殺めるよりも下卑た手段やもしれぬぞ』
**『哀れなるは勇者よ。真の本懐を、斯様な形で閉ざされるとは――』
賢者は メラミを となえた!
**には きかなかった! ▼
賢者「黙れ」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:27:55.07 ID:0udmmsLt0
魔王TUEEEEEEEEEE

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:27:58.59 ID:UW5dTRYB0
賢者「皆さん、聞いてください」
賢者「どうやらあの赤い水晶は、狙った対象の一定の情報を得ることができるようです」
賢者「奴はそれをもって、戦いの前に我々の心意を揺さぶろうという胆です」
賢者「所詮は魔物の妄言。術中にはまってはいけません!」
勇者「そ。そうだよ! 惑わされちゃ駄目だ!」
商人「そ、そうだそうだ、イカンイカン!」
戦士「ふん。俺としたことが情けない」
勇者「よし! さぁ魔王! 決戦の時だ!」
**『……綺麗事を守るために、己の欲から目を背け』
**『自らの行為を、疑問を持たずに正当化する』
**『いつの世も、人間とは下らぬ生き物よ』
**は 玉座から 立ち上がった! ▼
**『愚か者どもめ』
**『思い知るがよい!』

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:28:13.75 ID:jfsoTAJH0
良いぞー!!やれー魔王様!!

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:28:27.55 ID:tRIQIZJx0
魔王△

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/11/27(火) 02:28:31.08 ID:8ok2dEXJ0
魔王様一生ついていきます