Part3
61:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/18(水) 22:22:48 ID:
5c/8K7.M
しばらく経って私が意識を戻したとき、もうすでにそこは宿屋だった。
「お、起きたっすね。心配したんだからー」
「急激な魔力の消費で、体がびっくりしたみてえだな」
「……すまないな」
なぜか武闘家さんが謝った。
「慣れないものを使わせたせいで、体に負担をかけた……」
「申し訳ない」
あ、謝る必要なんて!
私はなぜか、とても恥ずかしい気持ちになった。
62:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/18(水) 22:31:22 ID:
5c/8K7.M
私が調子に乗って叡知の腕輪で魔法をぶっ放して、それで倒れたのに。
それを武闘家さんに謝らせてしまったことが、とても恥ずかしくなった。
私は無言で腕輪を武闘家さんに渡した。
私なんかが使うには、高尚すぎると思ったからだ。
武闘家さんは困った顔をしている。
戦士さんも、盗賊さんも、どうすれば正解か、わからないという顔をしている。
「……いいんじゃねえか」
すっと勇者さんがそばに来て、腕輪を私に返した。
63:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/18(水) 22:39:17 ID:
5c/8K7.M
「お前の魔法は必要だ、って言ったろ」
勇者さんが私に声をかけてくれる。
珍しく優しく。
「持っとけ。使う使わないは、お前に任せるからよ」
「うまく使いこなせ、な」
そして、ぽんと私の肩を叩き、部屋を出ていこうとした。
「じゃ、今日はもう休んでろ」
64:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/18(水) 22:53:40 ID:
5c/8K7.M
勇者さんが、私に声をかけてくれる。
優しく、力強く。
それがとても、嬉しい。
「ありがとうございます」
そう言おうとして、結局、もごもごとうまく言葉にできなかった。
「馬鹿、なに言ってっかわかんねえよ」
そう言って勇者さんは笑った。
「わかるけどよ」
ああ。
私の目から涙があふれた。
65:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/18(水) 22:55:44 ID:
5c/8K7.M
という感じです ノシ
あと3区切りくらいです
66:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/18(水) 22:59:48 ID:bWg6hZa.
おつー
67:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 00:08:10 ID:vQeQDLXY
和解できてよかった
68:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 06:37:06 ID:YTsX5xvc
乙
ブーストしたにしても強すぎだろ
71:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 21:22:18 ID:
mOFtmSeo
【魔王城】
魔王の城には、トラップが山のように隠されていた。
動く床。
槍の突き出る壁。
炎を吹き出す宝箱。
動き出す石像。
纏わりつく死者たち。
恐ろしい仕掛けがたくさんあった。
しかし、盗賊さんの危険察知力とトラップ解除能力により、そのほとんどは無力化された。
72:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 21:31:15 ID:
mOFtmSeo
死者たちは、恐れを知らぬ。
死者たちは、疲れを知らぬ。
私たちがどれだけ強くとも、恐れずに何度も向かってくる。
それに、死者たちは魔法で操られているため、首を飛ばしたくらいでは倒れない。
しかし、戦士さんと武闘家さんの技の前では、その生命力(?)も無駄だった。
ことごとく粉々にされ、私たちが通った後には破片しか残らなかった。
73:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 21:38:54 ID:
mOFtmSeo
「おーおー、さっすが魔王の城だ、腐臭がひでえ」
「さすがにこの臭いは、目に来ますね」
「とっとと魔王やっつけちゃって、風呂に入りてえもんっすねー」
魔王の城だというのに、みんな軽口を叩いている。
ここまでの旅で、勇者さんたちはあまりにも強くなりすぎた。
そもそもが魔法に頼らず魔王を倒すためのパーティだったのだ。
それが現実になりそうで、人間の底力のすごさを私は実感していた。
74:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 21:45:27 ID:
mOFtmSeo
「今日はなかなか張り切ってるじゃねえか、その調子で頼むぜ?」
戦士さんが私の肩をぽんと叩く。
「魔法で筋力を底上げするというのは便利なものですね。私も自分の限界というものが見えなくなってきましたよ」
武闘家さんが冷静に、でも少し嬉しそうな声で私に言う。
「こんなに早く走れて、こんなにモノがよく見えるってのは最高の気分っすよー」
盗賊さんがひひっと笑う。
身体能力を上げる魔法をうまく使えるようになったことで、みんなの邪魔をせず、戦闘を楽に進められるようになった。
みんな、それを存分に活かしてくれている。
そもそもの身体能力が桁外れなメンバーなものだから、その跳ね上がり方も半端ない。
75:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 21:52:55 ID:
mOFtmSeo
ーーーズシュッ!!
遠く離れた魔物の上半身が、下半身とお別れした。
勇者さんの回転斬りだ。
あんなに遠くまで衝撃を飛ばすことができるようになっている。
勇者さんも私の強化魔法を、文句を言わずに受け入れてくれている。
76:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 21:59:45 ID:
mOFtmSeo
勇者さんが魔法を嫌うわけを聞いてから、私は魔法を使うことをためらわなくなった。
魔物がとても強くなってきたこともあるが、目的が明確になったからだ。
私の魔法は、決して勇者さんの両親を殺すことはない。
決して勇者さんを傷つけることはない。
勇者さんのために、魔王討伐のためにだけ使う。
その強い意志をもって魔法を使った。
77:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 22:10:52 ID:
mOFtmSeo
ーーーズズゥン!!
最後の扉が破られた。
この先にはもう魔王の部屋しかない。
周りの門番の魔物たちは蹴散らした。
魔王に心酔した人間たちも戦意を失わせた。
後は、魔王だけだ。
勇者さんがこちらを振り向き、目で合図する。
タイミングを合わせ、一斉に突入した。
78:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 22:18:10 ID:
mOFtmSeo
『クハハハハハ、よくぞきた、勇者よ』
玉座でふんぞり返って私たちを待ち構えていたのは、不敵に笑う魔王だった。
誰も警護に就かせていない。
トラップもない。
それほどの自信があるということなのだろう。
赤く光る眼、逆立った髪の毛、ローブの上からでもわかる盛り上がった歪な体格。
恐ろしい魔力量のオーラ。
敵を殺すことになんのためらいもなさそうな邪悪な笑み。
私の魔法と……魔王の魔法は……絶対に別物だ!!
私の魔法は……世界を救うための魔法だ!!
79:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 22:27:46 ID:
mOFtmSeo
『お前の評判はよおーく聞こえてきたぞ、勇者よ……』
魔王の声は、腹に響いた。
いやな声だ。
耳をふさいでも聞こえてきそうな、いやな声だった。
『魔法嫌いで、自らの腕力だけでのし上がってくる勇者だ、とな……』
魔王はそこで言葉を斬り、ちらっとこちらに目をやった。
ひるみそうになったが、私も負けじと睨み返す。
80:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 22:42:23 ID:
mOFtmSeo
『それがどういう心変わりだ? 信じるのは己の身一つではなかったのか?』
揺さぶりをかけているのか?
『そのような者を連れてくるとは……』
『魔法に頼るようになったとは……』
『さすがの勇者も、魔法なしで魔王を倒すのは無理と諦めたわけか……』
『愉快愉快……クハハハハハハハハハハ!!』
魔王はいやな声で笑った。
昔の私なら、とうに下を向いていただろう。
でも。
81:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 22:53:56 ID:
mOFtmSeo
「そんな揺さぶりには乗らねえぞ、魔王」
勇者さんは冷静に言い返す。
「お前は今日、ここで死ぬ」
「『人間の底力』と、そしておまえ自身ともいうべき『魔法』で死ぬんだ」
「さあ、さっさと終わらそうぜ!!」
余裕がある。
そして、慢心はない。
勇者さんが飛び出した。
82:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 23:02:29 ID:
mOFtmSeo
「テラシオン!!」
私は魔法のバリアを張った。
この日のために鍛え上げた魔法だ。
魔王の魔法など、一つだって通さない。
勇者さんの牙が魔王に届くまで。
ためらわない。
83:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 23:07:16 ID:
mOFtmSeo
戦士さんも武闘家さんも魔王に襲いかかる。
戦士さんの恐ろしい斧は、まだ健在だった。
武闘家さんの構える時間は、恐ろしく短くなった。
魔王を取り囲んで鋭い剣撃と打撃を繰り出す。
「ぐぁっ!!」
血しぶきが飛ぶ。
「ヒトニエ!!」
私はすかさず回復魔法を飛ばす。
誰もが戦い続けられるように。
魔王を休ませないように。
84:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 23:12:12 ID:
mOFtmSeo
盗賊さんのサポートは万全だ。
トラップを解除したときに得た毒や槍を、魔王の動く先々に仕掛けて回る。
自分の城に配置したトラップにやられたとなると、恥ずかしいことこの上ないだろう。
言葉にはしないが、魔王がイライラしているのがよくわかる。
余裕がない。
行ける。
押している。
私に一瞬、隙ができた。
85:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 23:25:06 ID:
mOFtmSeo
『チマチマとした戦い方をしおって……』
『ならばその根源をまず潰すとしようか!!』
魔王の矛先がこちらを向いた。
大丈夫、魔法ならバリアで無効化できる。
そう油断したのがいけなかった。
ーーーザシュッ!!
魔王から繰り出されてきたのは、なんの変哲もない、爪での一撃だった。
86:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/19(木) 23:28:41 ID:
mOFtmSeo
ピピピピンチ!!
といったところで、また ノシ
87:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/20(金) 00:37:08 ID:.VEWBLRA
乙
88:
以下、名無しが深夜にお送りします :2017/01/20(金) 04:52:24 ID:ueuf/Nwg
ふおう
乙