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女騎士「魔王、貴様を倒す!」
Part3


57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:39:33.51 ID:mc5FzudR0
騎士父「……くっ!」
女騎士「父上……」
騎士父「これで4日目だぞ! なぜ見つからん!!」
女騎士「……」
騎士父「まさか……あの男が……!?」
女騎士「父上!」
騎士父「いや、違いない! 腹いせに息子を攫ったのだ! まことに卑劣な……!」
女騎士「……父上、私が確かめてきます」
騎士父「何? お前が場所さえ教えれば私がいくぞ! 私の剣で斬ってくれる!」
女騎士「いいえ、私だけが行きます。……行かせてください。どうかお願いします」
騎士父「くっ……好きにしろ!」
女騎士(最低だな……『弟がいるかどうかなんて関係ない』などと考えている自分がいる)
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59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:45:01.36 ID:mc5FzudR0
女騎士「ふっ……この城も久しぶりだな。あの時はここまでくるのに1週間もかかったというのに、今回はたった2日か……」
側近「お待ちしておりました」
女騎士「っ!?」
側近「剣を下ろしてください。魔王様から聞いております。こちらへ」
女騎士「どういうことだ……?」
側近「どうぞ」
女騎士「あ、ああ……」
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60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:46:06.03 ID:mc5FzudR0
魔王「来たか……」
女騎士「魔王……一体ここは? 客室のようだが」
魔王「ああ。見ろ」
女騎士「……弟っ!? 魔王、これはどういうことだ! 弟は無事なのか!? どうしてここに弟がいるのだ!?」
魔王「お前の弟は眠っているだけだ。命に別状はない。こうなった経緯に関しては今から話す。一昨日のことだ……」
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61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:47:45.13 ID:mc5FzudR0
側近「魔王様! 魔王様!!」
魔王「なんだ、戻ってきたのか。思っていたよりも早く帰ってきたんだな」
側近「そんなことよりも見てください、これ!」
魔王「む……こいつは、あの家の息子じゃないか! 生きて……いるよな?」
側近「やっぱりそうでしたかー。なんか魔王様っぽい匂いが染みついていたんで、気になって連れてきたんですよ。普通なら無視していたんですけどね」
魔王「しかし……衰弱が酷いな」
側近「ええ、可哀そうに……荒野のド真ん中で倒れていました。この間、魔王様が『人間に危害及ぼさず』の号令を出していなければ魔族に喰われていましたよ」
魔王「とにかく、後は俺が運んでおく。お前は治療できる者を呼べ!」
側近「はっ!」
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62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:50:35.85 ID:mc5FzudR0
女騎士「そんなことが……」
魔王「今思えば、発見した時点ですぐに知らせるべきだった……すまない」
女騎士「いや、いいんだ。それよりも弟が無事で良かった……」
魔王「一度は目を覚ましたのだが、話すのには適さない状態だったので何も聞いていない。一体何があった?」
女騎士「私が聞きたいところだ……弟、どうして……」
魔王「そうか……しかしよくもまあ、こんなに小さな身体で……ん?」
騎士弟「……にー……ちゃ……あれ、ねーちゃも……?」
女騎士「弟!」
魔王「目を覚ましたのか!」

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:51:53.17 ID:mc5FzudR0
女騎士「弟! ああ、本当に良かった! 弟! ……ぐすっ」
騎士弟「ねーちゃ……かなしんじゃ、だめだよ……」
女騎士「馬鹿! これは嬉しいから……」
騎士弟「かなしんじゃだめ……だって……けっこん……って、うれしい……ものでしょ?」
女騎士「弟……?」
魔王「……」

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:54:00.34 ID:mc5FzudR0
騎士弟「ねーちゃが……いな、くなると……とーちゃが……さびしいから」
騎士弟「とー、ちゃが……さびしくない……ように、ぼくが……ねーちゃの、かわりにな……るんだ」
騎士弟「だから……ぼく、も……まおうを……たおす……んだ」
騎士弟「だか、ら……ねーちゃも……にーちゃ、も……あんしん……して」
騎士弟「かな、しま……ないで……わら……って……ん……ぅ」

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:56:31.06 ID:mc5FzudR0
魔王「……再び眠ったようだな」
女騎士「おとう……と……」
魔王「どうやら、家出の原因は俺達のようだ」
女騎士「知らなかった……弟が私を気にかけていることは気付いていた……しかし、そんなことまで考えているなんて……」
魔王「全く……姉に劣らず立派な騎士様だ。子供でありながら何日も……。人間にしてはパワフルだな」
女騎士「……魔王」
魔王「なんだ」
女騎士「どうして、あれから姿を見せなかったんだ」
魔王「……弟を起こしてもまずい。場所を移そう」
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67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 00:59:25.49 ID:mc5FzudR0
女騎士「あのときと……同じ場所だな、魔王。だが……私の心はあのときとはまるで違う」
魔王「……」
女騎士「あんなことがあって、姿を見せづらいのはわかっている! だが、魔王……」
魔王「何が不満だ」
女騎士「なにを……!?」
魔王「何が不満だ。お前はあの家で普通に生活ができているし、魔族も人間に対して悪さをしなくなった」
女騎士「魔王!」
魔王「あんな一方的な言葉を……約束を、守る必要などないだろう。それとも何だ、プライドか? そんな安っぽいものは捨てた方が良い」
女騎士「ーーーー!」

68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:01:15.91 ID:mc5FzudR0
女騎士「……っ……う……」
魔王「女騎士……?」
女騎士「あんまり……いじめるなよ……魔王ぉ……」
魔王「……」
女騎士「わたしは……私は不安なんだ……! あの約束が……あの言葉が、嘘なのではと……同情なのではと……」
魔王「女騎士……」
女騎士「たのむ……私をこれ以上……いじめないでくれ……」
魔王「俺は……」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:02:59.81 ID:mc5FzudR0
魔王「……俺は、父上殿に剣を贈ったあの日、1つの恐怖に気が付いた。」
女騎士「……恐怖?」
魔王「……お前の気持ちだ。あの時交わした約束は、こちらの一方的なものに過ぎない。……それが、不安で仕方なかった」
女騎士「それは……」
魔王「ああ、お前と全く同じ悩みだよ。あの時のお前は、約束は受けてくれた。しかし、俺の好意について受けたわけではない。その曖昧さに気が付いてしまった。それが……怖い」
女騎士「……か」
魔王「……なに?」
女騎士「馬鹿! 馬鹿野郎! 少し考えればわかることを、うじうじと抱えこんで! 大馬鹿!!」
魔王「……」

71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:04:24.55 ID:mc5FzudR0
女騎士「こうやって話をしていれば、すぐに解決していたのだ! それなのに他の者へ心配をさせて、互いの心を潰しあって!!」
魔王「ああ……確かに馬鹿だな……俺は……」
女騎士「本当に馬鹿だ……二人とも……魔王も……私も……」
魔王「女騎士……」
女騎士「……魔王。あの日、この場所で交わした結婚の約束は破棄だ。一方的で申し訳ないが、な」
魔王「……そうか」

73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:10:07.54 ID:mc5FzudR0
女騎士「私は、何か理由あって結婚するつもりなどない。私は互いに想い合っているからこそ結婚をするのだ」
魔王「ああ」
女騎士「だからな……その、好きだとか、愛しているだとか、そういう言葉を全部ひっくるめたつもりで答えて欲しい。魔王よ、私と」
魔王「俺と結婚しないか?」
女騎士「ーーーー! ば、馬鹿! 今のは私が言う雰囲気だっただろう! しかもどうして『結婚してくれ』じゃなくて疑問形なのだ!!? 馬鹿!」
魔王「あの時と同じ言葉で聞いて、あの時とは違う答え方が聞きたいんだ。好きだとか、愛しているだとか、そういう言葉を全部ひっくるめたつもりでの答え方を、な」
女騎士「先程の約束の破棄を根に持っているのか!? 子供か貴様!!」
魔王「さあ、答えろ。もたもたしていると……」
女騎士「は、わああああ! 答える側の覚悟じゃなかったのだ! ちょっと待っ……」
魔王「もう一度聞くぞ。俺と結婚しないか?」
女騎士「………………う、うん。する……」
魔王「はは……あの日と全く同じ答え方じゃないか。      ……本当に、馬鹿だな」
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74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:11:45.97 ID:mc5FzudR0
女騎士「ただいま戻りました」
騎士弟「とーちゃ、ただいま!」
騎士父「……! ああ、息子よ! よくぞ帰ってきた!!」
騎士弟「にーちゃのお陰だよ!」
魔王「……」
騎士父「やはり貴様が裏で糸を引いていたのか……!」
女騎士「い、いや、父上、実はだな……」
騎士弟「ねーちゃ。ぼくが話すよ」
女騎士「弟……」
騎士父「う、うむ……?」
騎士弟「とーちゃ、聞いて。ぼくがーーーーー」
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76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:14:01.41 ID:mc5FzudR0
騎士父「そうだったのか……」
騎士弟「とーちゃ、ほんとうにごめんなさい!」
騎士父「……今日はもう良い。お前は部屋に戻って休みなさい」
騎士弟「で、でも……」
騎士父「騎士にとっては、休むことも鍛練のうちだぞ?」
騎士弟「とーちゃ……。うん!」

77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:16:18.55 ID:mc5FzudR0
騎士父「息子の家出の件、大体の経緯は理解した。息子が世話になったことは感謝しよう。しかしな」
魔王「……」
騎士父「私はお前のことを何も知らん。一体お前は何と言う名で、何者なのだ?」
女騎士「父上、それは……」
魔王「女騎士、待て。最早隠す意味も、隠す道理もあるまい」
女騎士「……」
騎士父「話してくれるか」
魔王「はい。俺は……魔王だ」

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:18:38.58 ID:mc5FzudR0
騎士父「そうか」
女騎士「……? あまり、驚かないのですね」
騎士父「剣を受け取ったときにな、何となく察しはついていた。あれは魔族が扱う武器だったのだろう」
魔王「ええ、その通りです」
女騎士「で、ですが、父上は毒だと……!」
騎士父「手が焼けた瞬間、一瞬はそう思った。しかし、あの瞬間のこの男の表情を見て、そうでないことは心の底では理解したよ」
魔王「……」
女騎士「でしたら、なぜあんなことを言って……」
騎士父「息子の、言うとおりだった」
女騎士「え……?」

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:23:28.08 ID:mc5FzudR0
騎士父「妻はふらりと家を出ては、何日も帰ってこないだろう? もうそれには慣れた……だが、お前が魔王討伐へと旅立ったあの日から、私はどこかに虚無感を抱えていた」
女騎士「……」
騎士父「そして帰ってきたお前の顔を見た瞬間、その虚無感は消えた。今思えばそれは寂しさだったんだろう……。息子ですら気づいていたというのに、滑稽なものだ」
魔王「父上殿……」
騎士父「だが、息子の言葉で目が覚めた。子が親の元を離れるのは世の常だ。むしろそれは喜ばしいことではないか」
女騎士「父上……。し、しかし、相手は魔王ですよ? 私が言うのも変ですが……」
騎士父「なに、初めから言っているだろう。お前の選んだ男が悪い男のはずはないと」
女騎士「……!」
騎士父「魔王よ。お転婆な娘だが、よろしく頼むぞ。私が誇る宝だ」
魔王「……はい、お任せください!」
騎士父「うむ、良い返事だ。流石は娘が選んだ男。さあ、明日は宴だ!」
一旦おわり。以下蛇足

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:24:56.92 ID:ADOoehxE0


81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:26:42.04 ID:mc5FzudR0
騎士母「ふー、ただいまー! いやー、ごめんなさいね。世界の果てを見にいこうと思ったら何故かここに戻って来ちゃった。あなた、元気だった? あら魔王、ちゃんと仕事してる? まあ、女騎士ちゃんも、ちょっと見ない間に綺麗になったわねぇ。恋でもしたの?」
騎士父「おお、お前。帰ってきたのか。実は先程祝い事が決まってな……」
魔王「母さん、一体どこで何をしていたんです。城の皆が心配して……」
女騎士「母上! 長い間家を空けるなら、手紙くらい……」
騎士父・魔王・女騎士「!?」
騎士母「あら?」
ーーーーーー

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:27:33.37 ID:mc5FzudR0
騎士父「知らなかった……妻が先代魔王だなんて……」
魔王「知らなかった……母さんが人間と再婚しているなんて……」
女騎士「知らなかった……魔王と兄妹だったなんて……」
魔王「い、いや、今はそれが一番重要だ! 本当なのか!?」
騎士母「うーん? 本当よ〜。あなたは前のお父さんが生きていた頃の子で、女騎士ちゃんはこの人との子ね。いわゆる種違いの兄妹ってやつ?」
魔王「なんということだ……」
女騎士「そういうことは、早く言って欲しかった……」
騎士父「私の家庭、複雑過ぎてわけがわからん……」
魔王「えっと、結婚すると父上殿が義父上殿になって……でも、結婚してない今でも義父上には違いなくて……」
騎士父「お、お前はそういう話をするんじゃない!」

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:28:25.44 ID:mc5FzudR0
騎士父「はっ、妻が魔族ということは、娘や息子も魔族の血を……?」
騎士母「ばりばり受け継いでるわねー」
騎士父「やはり……!」
騎士母「それで、結婚するんですって? 良いんじゃない? 私は応援するわよ〜」
騎士父「待てい! 先程の話を勘定に入れた上で、どうしてそうなる!」
騎士母「何か問題があるのかしら?」
騎士父「あるだろう! 兄妹で結婚など……その……遺伝子的に!」
騎士母「そうは言っても……魔族は有る程度近しい者同士で交配しないと、天然のキメラみたいなのが生まれちゃうし……」
女騎士「こ、交配……」

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:29:15.54 ID:mc5FzudR0
騎士父「な、ならん! やはり反対だ! 魔王、貴様に娘はやらん!」
魔王「しかし、義父上……」
騎士父「義父と呼ぶな!」
魔王「問題がないことに関しては母の言うとおりです。どうしても駄目ですか?」
騎士父「駄目だ!」
騎士母「強情ねぇ……」
魔王「うむ。しかし、これを説得してこそ男というものだ。義父上、今夜は丸々付き合っていただこう」
女騎士「魔王……」
騎士父「おい、お前もそこでポッとなるな! それに私はまだ義父ではない! 仮にそうであっても私は認めん! 私は許さんからなああぁぁ!!」
おわり

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:31:01.93 ID:yUOUymwt0
ああ息子が剣持てたのはそういうことだったのね


86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:32:35.06 ID:veWLxTJji
まあ予測できん事も無かったぞ
乙乙

87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2014/02/02(日) 01:34:08.36 ID:Yq5z0oEX0
乙 よかったぞ