勇者「お前が魔王か」 魔王「ふはははは、よくきたな」
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Part2
25 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/25(木) 22:11:37.72 ID:+iTUhTWy0
シュルンッ!
魔王「はー、危ないな! 悪魔でも召喚するつもりかこやつら…」
僧侶「……ふぇ?」 グスン
魔王「ふーむ、勇者のところに転移する予定だったが間違えたな」
魔王「まあ、とんでもないことにならずに済んだし、人命救助だな、うむ」
魔王「その姿から察するに、勇者の仲間の僧侶か」 ヒョイッ
僧侶「は、あ、はい!!助けてくださってありがとうございます!?」
魔王「ああ、勇者も近くに来てるか、合流しよう」 スタスタ
僧侶「あ、あのー、おろしてくれませんかー」
魔王「おお、すまぬ ついうっかり」
僧侶「えーと、あとどなたでしょ うか、って、魔王さん!?」
白服の男「ま、魔王だああああああ!!!」
魔王「うむ、いかにも」
ドカーーンッ
勇者「助けに来たぞーーー僧侶ーーーー!」
魔王「勇者よ、僧侶ならここだ」
勇者「あ、魔王!協力サンキュー!」
魔王「なに、仕事のついでだ」
魔法使い「うわーん僧侶ーーーー無事だったーーー!!」
影使い「そうりょーーー!」
僧侶「うわぁぁーーーん皆きでぐれだぁぁぁぁ!!」 号泣
26 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/25(木) 22:23:11.69 ID:+iTUhTWy0
白服の男「ま、待て!我らが救世主殿をかえ ベバヴッ!?」 ズボッ
魔法使い「ギリギリ呼吸ができる土砂魔法」
勇者「よく頑張ったな、僧侶!よく耐えた!」
影使い「うんうんっ」
魔法使い「ああーもう、魔王さんに協力依頼するの思い付いたあたしをもっと誉めていいと思うよ!」
僧侶「ありがどぉぉぉぉおお」 まだ号泣
魔王「うむ、それで正解だったな」
白ローブの男「ま、まて!!魔王よくも我らが救世主殿をたぶらか ごぼばばば」 ドボボボ
魔法使い「ギリギリ助かる水没魔法」
勇者「いや、あの、チョイチョイ恐ろしい魔法発動すんのやめて、怖い」
魔法使い「アラ、ナンノコトカナー」
27 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/25(木) 23:10:22.21 ID:+iTUhTWy0
魔王「さてと、茶番はここまでにしよう 仕事に取りかからねばならん」
勇者「さっきも言ってたな、仕事って…そういや、魔王の仕事って結局どういうのなのさ」
魔王「簡単に言えば、悪魔の召喚を妨害することだな」
勇者「あ、悪魔!? それって、おとぎ話じゃ無かったのか!実在するのか…っ」
魔王「そうともさ そこで埋まってるやつと溺れかけてるやつ以外は、自覚してすらいなかったろう…」
魔王「神につかえる神職者の血液と肉片を召喚陣に捧げ、まじないを一定時間絶えず唱えることで、悪魔は召喚されるのだ」
魔王「僧侶が全力で抗ったことで未然に防がれた、よくぞ希望を捨てなかったな」
僧侶「うう…だって、まだ学ばなくちゃいけないことは山ほどあります、死ぬわけにいくかーって…うわーあんなに泣いて恥ずかしい…」
勇者「ほ、本当によく頑張ったな!!」
魔法使い「…あれー?でもさ、悪魔?ってやつはもう呼び出されないんでしょ?だったらもういいんじゃないの?」
魔王「いいや、この場所に溜まりにたまった負の魔力を全部回収して、召喚陣も壊さねばならん」
勇者「お、おいまてよ!負の魔力を吸収できんの!?そんなことして何ともないのか、魔王って職業は!」
魔王「…いいや、無事ではすまんさ」
28 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/25(木) 23:24:49.94 ID:+iTUhTWy0
魔王「《魔王》とは、悪魔の召喚を防ぎ、万が一すでに召喚されてしまった悪魔の進撃を阻害するもの」
魔王「そして、悪魔に関わるあらゆる負の魔力の一時貯蔵庫だ」
魔王「ゆえに…勇者が必要になる」
勇者「俺…?」
魔王「溜め込んだ負の魔力は、順繰りに魔王の身体を蝕み続けるからな… 勇者に浄化してもらうことでようやく役目を終えるわけだ」
勇者「…………はぁぁ!?」
魔王「魔族たちが掃除した負の魔力も受けとるし、勇者一人で破壊して回るのは負担が大きいからな」
魔王「《魔王》と《魔族》とで、一斉に掃除したほうが早いし、勇者がほふるのは魔王ただ一体のみですむ」
魔王「効率を考えればこのほうがいいからな」
魔王「まあ、そう言うわけだ… 人間と魔族の和平は、うちの息子の代に任せたいと思っている」
魔王「それじゃ、あとのことはよろし ぐゴフッ!?」
勇者「バカ野郎!!」 ドガッッ
29 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/25(木) 23:37:10.04 ID:+iTUhTWy0
勇者「そうやって…そうやってずっとずっと!世界を守ってたくせに、どうして最後の最後に!諦めちまうんだ!!」
勇者「やっとわかった… 歴代の勇者たちが皆、英雄扱いされるのを嫌がってきた理由…っ」
勇者「ホントの英雄を殺すために用意された、ただの木偶じゃねえか俺ら!!」
勇者「王族が異常なほどこぞって魔族と魔王を悪者扱いしてたのも、全部全部…演技だったからか!王様たちは、知ってたんだな!」
勇者「なんで…っ 『助けてくれ』って、いってくれないんだよぉぉぉおおおお!!」
勇者「俺は、《勇者》なんだぞ!!助けを求められたら、絶対助けるんだよ!」
勇者「俺は! 今、《勇者》をやってる俺は!!過去の勇者達みたいに、絶対絶望してやんねえ!!諦めてやんねえ!!」
勇者「おれに、あんたを、助けさせろ!!!!!!」
30 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/25(木) 23:49:37.10 ID:+iTUhTWy0
魔王「……っ!」
勇者「だいたい事情は察したよ… 《聖剣》だろ? 魔王を倒せる剣っていうやつ」
勇者「たぶん、魔王を浄化する方法が、これであんたをぶった切ることなんだろ」
魔王「あ、ああ…それ以外の方法は…無い、はず…」
勇者「やっぱりそうか…… でもさ、俺は《聖剣》に選ばれなかったんだよな」
魔王「…は? いや、しかし…お前は間違いなく勇者のはずじゃ…」
勇者「勇者なのは間違いないよ、ただし、滅茶苦茶レアケースなんだとさ」
モソモソ… 手袋ポイッ
勇者「勇者候補者の中で唯一《聖剣》が触れることを許してくれたのが俺だ …だが、《聖剣》は剣の形を失ったんだよ」
勇者「俺は《聖拳》の勇者だ」
勇者「拳じゃ流石に、殺せねえだろ?魔王サマ?」
魔王「……く、くはははははは!! な、なんて規格外な…!あ、あはははははは!!」
31 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/26(金) 00:06:13.79 ID:FYFNdzxk0
魔法使い「あー、なるほど… 勇者の手のひらに刻まれてた謎の模様は《聖剣》に刻まれてたはずの模様なわけか…ってそんな馬鹿な!」
僧侶「うーん…逆に納得してしまいましたよ…なんで食事中も就寝中も手袋はずさないのか不思議だったんですよね はー…」
影使い「(勇者殿…カッコいい…)」
魔王「く、くっくっく… そうか、ははっ 死ななくてすむのか、我は…」
勇者「おう! …まあ、多分だけどな」
魔法使い「ちょ、勇者!あれだけタンカ切っておいて多分なのかよっ!!?」
勇者「うーん、なんか冷静になって考えてみると、拳でぶん殴っても辺りどころ悪かったら死んじゃうよね…?」
魔法使い「そこはなんかこう!!気合いで頑張ってよ!」
魔王「勇者、助けてくれ… 出来れば、まだ死にたくない」
勇者「よっしゃぁ!!任せろ!」 バシッ!
勇者「《聖拳》!!なんかうまいこと、浄化だけやってくれよ、ヨロシクゥ!」
僧侶「もうちょっと考えろ単細胞勇者ーーー!」
オリャーーー ガハァァァッ ドカーーーーンッ
32 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/26(金) 00:36:57.91 ID:FYFNdzxk0
。。。一週間後、魔界病院。。。
勇者「誠に申し訳なかった」
魔王「おう、まったくだな! わはははは」 ミイラ男風グルグル巻包帯
僧侶「本当に申し訳ありません…私の回復呪文も魔族には効かないことが分かっただけでしたし、なんのお力にもなれず…」
魔王「なあに、無事ではないが生きてたんだ、感謝こそすれ恨みなどしないさ! ふはははは あいたたた…」
魔王「まさかの拳一振りで、我の浄化だけでなく、あの場にうずくまっていた負の魔力を全部浄化してしまうとはなー…」
魔法使い「まあ、さすがに召喚陣は壊せてなかったけど、力を失ってただの絵になってたから、物理的に叩き壊せたし結果オーライかな」
影使い「あの場にいたオカルト集団はきっちり騎士団につきだしたし、更正施設に強制送還されるらしい」
僧侶「邪気は勇者さんの拳で祓われましたし、無理矢理他人を引きずり込むような勧誘はもうしないでくれると信じたいです」
勇者「ふへへへへ」
魔王「なんだ、気持ち悪い笑い方を…」
勇者「いやぁ、今後は《聖剣》じゃなくて《聖拳》の勇者を優先的に選んでもらえるように、王様とか神官とかを説得するのが楽しみだな、とね」 ニヤニヤ
戦士「あ、あのぉ…」
勇者「ああっ戦士!」
魔法使い「戦士じゃん!!」
戦士「え、ええっと…すみません、お城から執事さん?がきて言われて、つれてきてもらったんですけど…あの、ぼく…」
戦士「ほ、本当にごめんなさい!記憶がごちゃごちゃしててよくわからないんですけど!お兄さんを剣で刺したような気がするんです!」
戦士「本当にごめんなさい!」
勇者「あ、ああー…うん、もう大丈夫だから、心配要らないよ」
戦士「う、うう…」 ベソベソ
魔法使い「(なんか、一回目が覚めたときもそうだったけど…子供っぽくなってる?)」
影使い「(…どうやら勇者の拳で、呪いを強引に解いたせいかもしれないんだとか…)」
僧侶「(治療院の先生によると、呪いをかけられ始めた10代半ばごろまで記憶がもどってしまってるらしい、って話です)」
僧侶「(銀の鳥籠の上層部と幹部には、キツーーーイお灸が必要ですよね…まったく…)」
全員「「はぁぁぁぁぁ………」」
33 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/26(金) 00:46:40.58 ID:FYFNdzxk0
魔王「くっふふっふふふ…くっくっく…」
勇者「おう、なんだよ魔王だって悪い笑い方してんなぁ…」
魔王「いやぁ、次にあの皇帝やら陛下やらに会いに行くのが楽しみだなぁ、とな」
勇者「へっへっへ、俺と考えてること同じ感じか?」
魔王「くっくっく、おそらくそうだろうさ」
勇者・魔王「「誰も信用できなくなるくらい疑心暗鬼になるほど、ドッキリを仕掛け回してやろうぜ?」」
勇者「キシシシシシ」
魔王「ふははははは」
魔法使い「あーぁ、敵にまわしたら恐ろしいコンビが完成しちゃったわね…」
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/26(金) 02:05:03.72 ID:i9BCfdXA0
あっはい
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/26(金) 04:32:04.33 ID:KOLKFPZLO
面白い
38 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/26(金) 21:29:17.14 ID:FYFNdzxk0
後日、どこぞの王国や帝国では……
防衛システムの動く鎧が踊り出したり(模造品)
城内の置物が浮かび上がったり(贋作)
絵画から髪の長い女がにじり出てきたり(錯覚)
第二皇子が厩舎から連れ出した馬でプチ家出を図ってみたり(翌日帰ってきた)
様々な怪奇現象(一部除く)が発生し、陛下や皇帝がトラウマで引きこもりになりかけたりしたが、まあだいたい平和が続いたらしい
そしてーーー
39 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/26(金) 21:55:44.19 ID:FYFNdzxk0
とある洞窟、《聖剣》の刺さった岩の前。。。
《聖剣》『…キュィィィーーーン…』
勇者「ふーぃ、最後の仕事完了!」
魔王「これでもう、貴様は勇者引退か?」
勇者「いや、次の勇者候補が出てくるまでは、もうちょっと勇者やっとく必要あるらしい」
勇者「この手のひらから模様が消えたら、引退だってさ ああ、その前に死んだら即終了だけどそれは当然だな」
魔王「そうか… ちょっと寂しいんじゃないか?」
勇者「どうだろうねぇ… 今後の勇者にも、俺みたいな《聖拳》とかそれ以外にもなんか変わった勇者が出てくるようにいじり倒したこの《聖剣・改》が存在する限りは、俺の痕跡残り続けるわけだしな」
勇者「オリジナルの《聖剣》に気がつかれない限りは…こっちを引っこ抜こうとするだろうから、面白くなりそうだぜ」 クスクス
《聖剣・改》『…ミュィィィーーーーン…』
魔王「オリジナルのは神秘っぽい音してたのに、こっちのはなんだか間抜けな音がするな…」
勇者「そこはまあ、ねえ…バレた時用に魔法録音メッセージ付けたら、岩から出てくる障壁の音変わっちまったからなー…まああれだ、オリジナルと区別する目印的な?」
魔王「ふわっとした理由だな…」
勇者「いいんだよ、これで! …付き添い、ありがとうな…」
魔王「気にするな… それよりこのあと、ゴーレム屋でヨウカンとあんみつ食べにいかないか?」
魔王「うちの息子も紹介したいし、貴様の仲間にもあのヨウカンは是非食べてほしいからな」
勇者「いいじゃーん! 甘党万歳!」
魔王「はっはっは」
勇者「イエーイ!」
40 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/26(金) 22:06:00.68 ID:FYFNdzxk0
終わりまっす!
読んでくださってありがとうございました!
山も落ちもぶん投げたような感じですいません
設定を盛りすぎずに短編に納める技術が欲しい…っ
それでは、またいつか
ありがとうございました!
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/27(土) 03:48:44.56 ID:EDZPz+IDO
もう終わりなの?
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/27(土) 08:32:53.41 ID:WxD+cKg9o
ふわっとした終わり方だww
面白かったよ乙
皇子のプチ家出が謎だが
43 :
◆G/mqESF7Ns :2016/08/29(月) 22:22:06.23 ID:ih6zCd/H0
皇子は怪奇現象の混乱に乗じてプチ家出を決行。
だが、魔王と勇者に見つかって強制帰宅、という裏話がついてます。
ふわーっと終わりたかったので、これで終いとさせていただきます。
ありがとうございました