Part3
51 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 19:03:59.47 ID:cz/8kbpt0
大賢者『貴方には私の血が流れています。ですから、覚醒すれば魔王を助けることができます』
少女「覚醒…?」
大賢者『心を鎮めるのです。そうしたら、私が貴方の力を引き出しましょう』
少女「心を鎮めるって、どうやって……」
大賢者『何も余計なことを考えず、周囲の情報を遮断し……』
少女「そんな簡単に言われても……」
大賢者『貴方が最も心を静かにする時はいつですか?』
少女「心を静かに…あ、筋トレの3セット目です!」
大賢者『じゃあそれで』
少女「待って下さい、今急いでダンベルを上げ下げするので!」
大賢者『私の子孫に脳筋がいるとは予想外です』
52 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 19:05:44.28 ID:cz/8kbpt0
今日はここまで。
ただ筋肉をつけるだけじゃ強くならないとは言いますが、筋肉は美しいのでそれだけで価値があると思うのです。
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 19:28:48.31 ID:/WMcAnmao
乙
筋肉欲しくなってきた
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 19:41:45.14 ID:Gc30pLlp0
乙です。
使う所が全く違うし付けすぎると重いからな、戦闘用の筋肉は闘争の中でのみ作られるってどこかの地上最強の生物が実践してたな。
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 19:43:50.00 ID:HXCuiH8Ao
そういえば某完全生命体もパンツ野郎に言ってたな
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 21:01:13.01 ID:DM1mnD6+O
トランクスが変身したガチムチ超サイヤ人みたいなもんか。
57 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:29:20.31 ID:oVY1bby+0
大賢者『……私はかつて魔王を封印する際、保険として魔王に呪いをかけました。貴方の力で、呪いから魔王を解放して下さい……』
少女「……あの、ご先祖様」
大賢者『何でしょう』
少女「どうして師匠と戦った貴方が、師匠を助けてくれるんですか?」
大賢者『そうですね……500年経ち、あの時とは状況が違ってきましたからね』
少女「?」
大賢者『今は心を鎮めなさい。そして魔王に纏っている呪いの気を、取り払うのです』
少女「は、はい!」
カアァーーッ
魔王「!!」
勇者「なっ!?」
少女「これはーー」
58 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:29:49.28 ID:oVY1bby+0
勇者「毒霧が……消えた!?」
少女(そうか…ご先祖様の呪いって、師匠の体臭のことだったんだ!)
魔王「……」
勇者「……」
勇者「ハーッハッハッハ! これで息を思い切り吸って戦えるぞおぉ!!」
<毒霧が晴れたぞー!
<我々も続けー!
少女「ってええぇぇ、呪い解除したら逆効果じゃないのよおおぉぉ!!」
「魔王様……大変お待たせ致しました」
少女「……え?」
59 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:30:19.26 ID:oVY1bby+0
ブオッ
北のドラゴン「人間風情が、舐めた真似を」
バサッ
西の悪魔「ウケケ。頭数揃えてきたんだから、ちったぁ手応えあるんだろうなァ」
ヴァンッ
東の妖姫「数よりも質…。勇者を討った方の優勝、ということでよろしいかしら?」
ドンッ
南の地蔵「これこれ、張り合うでない。それよりも……」
スタッ
側近「魔王様を痛めつけたあの男に、いかに苦痛を与えるか……それが1番重要ですね」
魔王「側近、四天王!」
60 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:31:04.76 ID:oVY1bby+0
側近「この1年あまり、お側にいられず…申し訳ありません、魔王様」
魔王「それより、どうしてここに……」
側近「はい。我々、魔王様の体臭が届かぬ位置にて、ずっと魔王様を見守り続けておりました」
魔王「そ、そうだったのか……!!」
勇者「魔王の部下か……。蹴散らせえぇ!!」
魔法使い's「うおおおおぉぉぉ!!」
北のドラゴン「蹴散らされるのは貴様らだ、矮小なる人間どもが!!」ブォンッ
魔法使い's「ぎゃああぁぁ」
西の悪魔「所詮テメェら、モブだよなァ!!」ザシュッ
東の妖姫「この程度の魔力で私達を相手しようと? 笑えますわ」ゴオォ
南の地蔵「現代人は肉体が劣化したのぅ」ドスーン
<うわあああぁぁぁ
<ぐおおぉぉぉ
勇者「つ、強い……!!」
側近「おっと、他人事ではありませんよ」パキポキ
勇者「!!」
61 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:32:07.32 ID:oVY1bby+0
側近「よくも魔王様をおおぉぉ!! その身をもって償うが良い!!」
勇者「くっ、せめて魔王だけでも……」ダッ
魔王「!」
側近「しまった! おのれ、足払いっ!」バッ
勇者「おっと!」ピョン
側近「くっ、かわされた!」
勇者「喰らえ魔王ーー」
ガシッ
勇者「……え?」
側近「おぉ! 勇者をキャッチした!」
魔王「攻撃の軌道が読みやすい、上空から仕掛けてきたのが失敗だったな……おらあああぁぁ!!」ブォン
勇者「うわああぁ!?」
側近「勇者を持ち上げた!?」
少女「あれはショルダープレスの構え!」
魔王「そして必殺のォ……」ゴオオォォ
勇者「!!!」
魔王「牛殺しーーッ!!」ガンッ
勇者「カハッ……」
62 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:32:36.83 ID:oVY1bby+0
補足
ショルダープレスとは:ダンベルなど重いものを持ち上げて、肩を鍛えるトレーニング
牛殺しとは:相手を持ち上げて、片膝に当てるように落とす技
https://www.youtube.com/watch?v=9PUJW_qulU8
63 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:33:16.25 ID:oVY1bby+0
勇者「」ピクピク
北のドラゴン「やりましたな、魔王様」
西の悪魔「ちぇー。ピンチだったくせに、結局いいとこ持っていくんだから」
東の妖姫「良いではありませんの。それでこそ、私どもの王ですわ」
南の地蔵「無計画な筋肉の付け方をしたのは、少々頂けませんがな」
魔王「もう戦いに戻ることはないと思っていたからな、大目に見ろ。というか、お前……」
少女「は、はい」
魔王「俺の体臭を消したのはお前か。一体、どうやったんだ?」
少女「あのぅ……わ、私もさっき知ったんですけど……」
魔王「?」
少女「私、その…師匠を封印した、大賢者の子孫みたいで」
魔王「大賢者の……お前が?」
64 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:34:17.48 ID:oVY1bby+0
少女「さっき、ご先祖様の声が聞こえたんです! それで私の力を解放し、師匠にかけた体臭の呪いを解いて……」
西の悪魔「あの体臭は呪いだったのかよ。だよなァ、じゃねぇとあんな、ひっでぇ匂い……」
東の妖姫「シッ!!」
北のドラゴン「何でそんな呪いをかけたんだよ……」
南の地蔵「魔王様を孤立させる為じゃろ。事実、呪いは効果的じゃったしのう」
魔王「なるほど、子孫なら俺にかかっていた呪いを解いたのも合点がいく。……しかし、疑問が沸くな」
少女「はい……私もです」
魔王(魔王を封じた大賢者となれば、英雄として崇められていたはず。その大賢者の子孫が、あんな貧相な身なりで、しかも追われていたなど……)
側近「魔王様。大賢者の子孫の扱いは、魔王様が想像しているものと違うのですよ」
魔王「どういうことだ」
側近「権力者達は恐れたのですよ…大賢者の持つ力、そしてカリスマ性を」
魔王「恐れた、だと……?」
側近「そう。400年前ですかなーー時の皇帝が、大賢者の子孫である一族を、まとめて牢獄に投じたのは」
魔王「!?」
少女「……」
65 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:34:57.56 ID:oVY1bby+0
少女「私は牢獄で生まれ、牢獄で育ちました……」
魔王「何だと……」
少女「私の両親も、またその両親も…同じく、牢獄で生まれ育ちました。その理由は、ご先祖様が罪を犯したからだと聞かされてきましたが……」
側近「その罪というのも、勿論濡れ衣ですが……」
魔王「馬鹿な! それに牢獄の中で子孫を繁栄させるなど……」
側近「何が大賢者の子孫の力を解放するきっかけになるかわかりませんからね。恐らく投獄するだけで精一杯で、なるべく刺激を与えぬようにしていたのかと……」
魔王「ふん。大それたことをする割に小心者だな」
66 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:35:43.47 ID:oVY1bby+0
魔王「お前、牢獄からどうやって脱したのだ?」
少女「同じく投獄されていた方々が、抜け穴を掘っていたんです。そして囚人の中で1番歳の若い私が逃げろ、と……」
魔王「ふむ…それで追われて、俺の城にやってきたというわけだな?」
北のドラゴン「呪いをかけられた魔王様の体臭が平気だったのは、血筋のお陰か」
南の地蔵「先祖のかけた呪いじゃからのぅ」
少女「うぅーん……」
魔王「何だ?」
少女「わからないですねー。牢獄の環境も悪かったので、鼻がすっかり悪臭に慣れていたのかも!」
魔王「お前まで悪臭とか言うな」
少女「わわっ、すみません!」
魔王「まぁ、結果としては良かったのだろう」
少女「え?」
67 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:36:12.85 ID:oVY1bby+0
魔王「もしかしたら俺とお前が会ったのは、大賢者の導きかもしれんな。奴は俺に、子孫を救って欲しかったのかもしれん」
少女「そうなのでしょうか……。だとしたら魔王様には多大な迷惑を……!!」
魔王「俺がお前を迷惑だと言ったか?」
少女「え……っ」
魔王「そりゃ確かにお前は教養はないし、品もないし、とにかく手のかかる奴だった」
少女「うぅ」
魔王「だからこそ、退屈せずに済んだ。俺はお前に感謝している」
少女「感謝……?」
魔王「そう。嫌な顔をせず俺の側にいてくれたこと。俺に充実した時間をくれたこと。そしてーー野蛮人だった俺に、穏やかな気持ちを教えてくれたこと」
少女「師匠……」
側近「ちょっ」
68 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:36:55.72 ID:oVY1bby+0
側近「ま、ま、魔王様、穏やかって……」
魔王「側近、四天王。約1年もの間、気苦労をかけたな」
側近「それは、また魔王様と暴れる日を望んで……」
魔王「だが俺はもう、昔のような野蛮人ではない。お前たちと離れている時間は、俺を変えた」
側近「なっ!?」
北のドラゴン(そりゃまぁ、悪臭から逃げた部下なんか愛想つかすよなー……)
西の悪魔(戦闘狂だったのが戦えなくなってたんだから、変わりもするよな)
東の妖姫(牙の抜けた魔王様……500年前じゃ考えられませんわ)
南の地蔵(魔王様は本格的に引退かのう)
側近(そんな、魔王様……)ブルブル
魔王「俺の脳みそは考える力を身につけた。そして、これからの指針はーー」
側近(聞きたくない……!!)ギュッ
魔王「ーー世界征服だ」
側近「……っ!!?」
69 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:38:10.16 ID:oVY1bby+0
魔王「大賢者は、この俺を封じた有能なる者。その者に敬意も払えぬ人間の権力者などに、世界を牛耳る権利などない」
魔王「それに不肖の弟子が迫害される世の中というのも、俺は気に食わん」
少女「師匠……」
魔王「俺は人間の権力者どもを倒し、この世界を手に入れる」
側近(魔王様……!!)
魔王「久々の大暴れだ。俺に賛同する者は、ついてこい」
南の地蔵「……ふっ。魔王様はやはり魔王様じゃ」
北のドラゴン「そんなの、答えは決まっています」
東の妖姫「そういう貴方だからこそ、私達はお慕いしておりますのよ」
西の悪魔「ついていくに決まってんだろォ、魔王サマぁ!!」
魔王「期待しているぞ、四天王」
側近「私もです! 側にいさせて下さい、魔王様!」
魔王「頼もしいな、側近」
少女「し、師匠……わ、私も……」
魔王「ん?」
70 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:38:53.70 ID:oVY1bby+0
少女「さっき、大賢者の力に目覚めてから……体に力がみなぎってくるんです」
魔王(…確かに、今まで感じなかった魔力の波動を感じる)
少女「師匠、魔法の使い方を教えて下さい! そして私、師匠と共に戦いたいです!」
魔王「お前が……俺と?」
少女「はい。きっと理不尽な目に合っているのは私だけじゃない…私は、そういう人たちを助けたいんです」
魔王「……やれやれ。教えることが、また増えたな」
少女「え……じゃあ、師匠!!」
魔王「いいだろう、魔法の使い方を教えてやる。俺はお前の、師匠だからな」
少女「やったぁ! 私、頑張ります!!」
東の妖姫「大賢者の子孫ですもの。あの子きっと、強くなるでしょうねぇ」
西の悪魔「ケケッ、俺らなんて抜かしちまうかもしれないなァ!」
側近「ま、負けるものか……!」ゴゴゴ
北のドラゴン「何の対抗心だ、何の」
南の地蔵「ほっほっほ。若いのは羨ましいのう」
71 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:40:13.69 ID:oVY1bby+0
魔王「ではまず手始めに、勇者のいた国から制圧するか。さぁ、行くぞ!」
東の妖姫「いっ、今からですか!?」
魔王「当たり前だ。俺自ら、奴らに勇者の敗北を報せてやろう!!」
西の悪魔「作戦とか無いんスか」
魔王「ない!! 力押しで何とかしろ!!」
南の地蔵「おやおや、これまた強引な。魔王様、ご自分が弱体化していることをお忘れですか?」
魔王「勇者以下の者と戦うなら、レベルダウンした位の方が楽しめる。勘は戦いながら取り戻せば良い。背中に乗せろドラゴン!!」
北のドラゴン「はいはい。全く、どこが穏やかになったんだか」
側近(いや…ただ大暴れするだけだった魔王様が、暴れる理由と目的を手に入れた。理由と目的があれば、暴れる意思は更に強くなる!)
魔王「おい、お前も行くぞ」
少女「い、今の私が行って、足を引っ張りませんか!?」
魔王「心配か? なら思う存分に足を引っ張れ。逆境を覆すのも面白い」グイッ
少女「きゃっ…し、師匠……」ドキドキ
72 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:40:45.61 ID:oVY1bby+0
側近「聞こえますか、魔王様。各地に散り散りになっていた魔物達が、魔王様の臭気が消えたことを感知し、集まってきています」
魔王「懐かしい感覚だ。今日が俺の、魔王としての復活記念日だな」
少女「魔王としての……」
魔王「どうした、不安そうな顔をして」
少女「いえ。師匠が魔王として活躍するのは喜ばしいことですが…何だか、穏やかな日々がなくなってしまうのかと思って……」
魔王「心配するな。しばらくはドタバタするかもしれないが、すぐに手に入れてやる」
少女「手に入れる……何をですか?」
魔王「世界を征服した先に手に入れるーー本当の意味で、お前が穏やかに過ごせる時間だ」
少女「師匠……はいっ!!」
魔王「行くぞ、者共! 欲しいものは全て、己の手で勝ち取るのだ!!」
ワアアァァ……
Fin
73 :
◆WnJdwN8j0. :2016/08/07(日) 17:41:25.59 ID:oVY1bby+0
ご読了ありがとうございました。
決して打ち切りではなく、魔王の体臭が消えたので、ここでキリがいいかなと思いました。
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/07(日) 18:13:16.25 ID:jZSrQuaMO
乙
笑いながら読んでたわ
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/07(日) 18:24:47.99 ID:9CX2Ha6Wo
乙乙、面白かった
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/07(日) 20:23:47.03 ID:QsVfzy5g0
いい切り方
乙!
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/08(月) 01:22:48.90 ID:1PKNK8Gyo
良かった。またなんか思いついたら書いてくれ
79 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/08(月) 08:06:46.33 ID:k90/joADo
臭いも消えてスッキリ爽快だった!
乙乙