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魔王「俺の体臭がやばい」
Part2


27 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:40:05.40 ID:oPOaqAAe0
>そんなこんなで3ヶ月後
少女「これが…私……?」
魔王「うむ。まだまだムキムキとは言えんが、まぁ貧弱さは抜けたな」
少女「凄い、本当に効果が現れるなんて! 私じゃないみたい!!」
魔王「どうだ、筋肉という鎧を纏った気分は?」
少女「最高です! 何か、自分は最強なんじゃないかって思えてくるくらいに!!」
魔王「はっはっは、馬鹿を言うな。お前以上の筋肉を纏った者は、この世に腐る程いるのだぞ」
少女「はい師匠! けど…自分がトレーニングをしてみると……」チラ
魔王「?」
少女「師匠の筋肉がいかに素晴らしいか、とてもよくわかります」ポッ
魔王「そうだろう、そうだろう! これぞ俺の筋トレの成果だっ!!」ムキッ
少女(無駄のない筋肉。真剣に取り組んだ証だわ……素敵)ドキドキ

28 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:40:35.35 ID:oPOaqAAe0
魔王「夕飯の親子丼だ! 鶏肉と卵で、タンパク質を摂取だ!」
少女「卵がとろとろで美味しいです〜。師匠は何でもできますね」
魔王「本を読みながら勉強したからな。一人暮らしの賜物というものだ!」
少女「ご立派ですねぇ。私なんか煮物くらいしか作れなくて…」
魔王「そうだなぁ…。筋トレのコツも覚えたようだし、今度は飯作りでも教えてやろう」
少女「本当ですか!」
魔王「お前の作る物体Xは筋肉に良くない! この機会に、筋トレに活かせる栄養学も教えてやる!」
少女「お願いします、師匠!」

29 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:41:07.89 ID:oPOaqAAe0
>夜
少女「では師匠、お休みなさい」
魔王「あぁ、明日も頑張るぞ」
魔王(ここのところ、毎日が楽しい)
魔王(封印されていた間の500年は野望に燃えていたが…この1年間は、空虚を筋トレで埋めるだけの1年間だった)
魔王(しかし、あいつが来て変わった。あいつは俺を臭がらず、俺の教えを素直に吸収してくれる)
魔王(俺は戦いの中でしか生きられぬ者だと思っていたがーー)
魔王(こういう日々も、悪くないものだな)

30 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:41:56.58 ID:oPOaqAAe0
>一方、某国の城
魔術師「陛下、あの娘の所在が掴めました」
皇帝「ほう。あの娘は今、どこに?」
魔術師「はい。魔王城…今は"毒霧の城"と呼ばれている、あの場所です」
皇帝「それはまた厄介な。あそこは侵入すら許さぬ、異臭がする猛毒が流れているという場所…大人数で攻めても無意味」
魔術師「しかも、その毒霧の正体は掴めておりません。鉄仮面等の装備も突破し、体を蝕むとか…」
皇帝「流石は魔王。自身は毒霧の中に身を置き、襲撃に対して完璧な備え。一筋縄ではいかない男よ」
魔術師「その城にあの娘が入れたということは…やはり、血筋でしょうか」
皇帝「あぁ、あの娘はやはり危険だ。もしあの娘が覚醒し、魔王と手を組んだら……」
魔術師「絶望的な話ですね」
皇帝「暗い顔をするな。既に対策は練ってある」
魔術師「対策…ですか?」
皇帝「先日、城より逃げ帰った勇者に、特別な改造を施している所だーー」
魔術師「特別な改造……?」

31 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:42:28.85 ID:oPOaqAAe0
>研究所
勇者「ぐああああぁぁぁ……」
魔術師「こ、これは……!!」
皇帝「クク…ガラス越しではわからないだろう。この勇者を閉じ込めている密閉した部屋、実は壁中に人糞を塗りたくっている」
魔術師「……」
皇帝「室内の気温と湿度を調整し、空気は梅雨時期に合わせた。悪臭の上、生ぬるく湿った空気というのはさぞ不快であろう……」
皇帝「部屋に出入りし給仕しているのは、先日捕えたオークだ。体を洗っていないから、汗と精液の匂いが染み付いているぞ」
皇帝「勇者に出す食事には微量の毒を混ぜている…。まぁ死に至る程ではない、せいぜい腹を下す程度だ」
皇帝「と言っても、同じ室内に設置してある汲み取り式のトイレは、さぞかし匂うだろうなぁ……!!」
勇者「ぐおおおぉぉぉぉぉぉ」
皇帝「どうだ、完璧なる勇者改造計画だ! ハハハハ、ハーッハッハッハッハ!!」
魔術師(皇帝陛下…恐ろしいお方だ)ブルブル

32 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:43:25.23 ID:oPOaqAAe0
>魔王城
少女「へぇ、包丁での皮むきってそうやるんですねぇ!! 器用ですね師匠!」
魔王「いや、お前この程度もできなかったのか……。ってことは物体Xには、皮付きの野菜を入れてたわけか?」
少女「ここに来る前は、皮ばかり食べてましたから」
魔王「だから貧相な体をしていたのか。まぁいい、練習してみろ」
少女「はい!」
魔王(詮索するのは好きでないから、こいつの素性は知らんが…それにしても、謎が多すぎる)
魔王(物の知らなさや、生活習慣、そして悪臭への耐性を見る感じ、下の階級の者だと想像はつくが)
魔王(しかし貧困層なら、馬車馬のように働いていたはず。にも関わらず、こいつは料理も掃除も不慣れな様子が見て取れる)
魔王(何一つできることがない、というのは生きていくのも一苦労だろうが……)
少女「師匠! 皮むきしました!」
魔王「不器用だな、皮が分厚いじゃないか」
少女「ごめんなさい…責任持って、その皮を食べますから」
魔王「いや、いい。豚の餌にするから無駄にはならん」
魔王(何だかんだで素直な奴だ。社会的には駄目な奴かもしれんが、側に置くにはこういう奴がいい)
魔王「少しずつ上達していけばいい」ポンッ
少女「!!」
魔王「俺も最初は下手くそだったからな。気持ちさえあれば、何とかなるものだ」
少女「…へへっ、師匠〜」ニマー
魔王「声がたるんでいるぞ。そんな奴は、腹筋100回だ」
少女「申し訳ありません! 勘弁して下さい!」ピシッ
魔王「……フッ」
少女「ど、どうしました?」
魔王「いや……別に」ククク
少女「…? 変な師匠」

33 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:44:02.37 ID:oPOaqAAe0
>夜
魔王「こうして俺は竜の一族の長を倒し、そいつを四天王に迎え、魔王軍を大きくしていった」
少女「へーぇ」キラキラ
魔王「続きはまた明日だ。これでもまだ序盤だぞ」
少女「師匠って本当に凄い方だったんですね!」
魔王「過去の栄光だがな。知っての通り、今では現役を退いて筋トレするだけの日々を送っている」
少女「もったいないですよね〜」
魔王「おかしなことを言うな。お前も人間側、魔王の敵だろう?」
少女「うーん…前にもお話した通り、世間に疎いもので……」
魔王「そうか。今はどのような時代なのか、話を聞く前に配下に去られたので、俺も全くわからんな」
少女「その配下の方々、元気にやっていらっしゃるんですかねぇ」
魔王「四天王も側近も野望を持った者たちだ。新たな魔王として君臨していても何ら不思議ではない」
少女「何か、寂しいですね」
魔王「いや、そんな奴らだからこそ俺と気が合ったのだ。俺の下を去って栄光を掴むのなら、喜ばしいことだ」
少女「師匠…」

34 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:45:47.62 ID:oPOaqAAe0
魔王「それより今はお前だ。『師匠の武勇伝聞かせて下さい』と言って、書物を渡すと『字があまり読めないんです』ときたものだ。こんなに手のかかる奴は初めてだ」
少女「ご、ごめんなさい。…でも」
魔王「何だ?」
少女「師匠の口から聞かせて頂く方が…師匠と過ごす時間が増えて、いいかなって」
魔王「……馬鹿かお前は」
少女「あ、あはは、馬鹿ですね〜」
魔王「変な依存をしなくとも、互いに、他の者と会えぬ身だ。余裕を持て」
少女「そうですね〜。…あ、そうだ!」
魔王「何だ?」
少女「師匠、字を教えて下さい! 自分で書物を読めるようにします!」
魔王「…話を聞かせてやるより、字を教える方が遥かに時間も労力もかかるな?」
少女「あ」
魔王「まぁ、良いだろう。お前ほどに不出来だと教え甲斐がある」
少女「むうぅ、反論できない〜…」
魔王「お前が俺に反論しようなどと100年早い」
少女「100年経ったら死んじゃいますよ〜」
魔王「そうか、お前にはわからん比喩だったか。『一生無理』ということだ」
少女「うわぁ〜ん!」
魔王「クク、からかい甲斐のある奴だな、ククク」
少女「師匠の意地悪〜っ!」

35 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/05(金) 18:46:17.64 ID:oPOaqAAe0
今日はここまで。
前回書き忘れていましたが、魔王はプロテインを原材料から作っています。

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/05(金) 19:01:46.01 ID:azWqIbczo
乙、流石魔王様

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/05(金) 19:29:56.21 ID:jcqugDvi0
乙です。
人間相手の比喩まで知ってるとはさすが魔王だな。

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/05(金) 20:10:24.76 ID:CUUAV39PO
魔王△

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/05(金) 22:15:56.71 ID:d/cZN+7OO
>>35
臭い以外は本当に優秀だな、臭い以外は

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 00:19:02.39 ID:aX7anhgEo
少女は何で臭い平気何だろうな

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 01:13:29.49 ID:swRJWi3A0
体臭はその人のありとあらゆる長所を消してしまうほどの深刻なバッドステータスなんだよなぁ

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/08/06(土) 03:32:05.12 ID:DM1mnD6+O
逆に匂いの相性というものは、あらゆるバッドステータスを乗り越えて二人を結びつける絆でもあるらしい。

43 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:54:03.28 ID:cz/8kbpt0



魔王「さて、今日も筋トレの日だな」
魔王(不肖の弟子は、俺の教えを吸収し成長している。それが楽しくて仕方ない)
魔王(こういう毎日を過ごしていると、嘘のように思えてくるな。以前は戦闘狂だった自分が……)
魔王(戦闘狂が戦闘を奪われ、一時期は自暴自棄になった。だが心というのは案外強いもので、それならそれなりの生き方に順応する)
魔王「全く……人生というものはわからないもので……」
キュピーン
魔王「……っ!! これは、魔力反応!?」
少女「師匠、おはようござ……」
魔王「伏せろ!!」
少女「え?」
ドカアアァァン

44 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:54:44.67 ID:cz/8kbpt0
少女「ゲホ、ゲホッ」
魔王「大丈夫か?」
少女「は、はい…師匠、この爆発は……」
魔王「襲撃者、だな。城を破壊するなど……」
<ウォゲエエエェェェ
魔王「ん?」
魔法使いA「だから言ったじゃねぇか! 城に穴を空けたら、毒ガスが漏れ……オゲエェェッ」
魔法使いB「射程範囲ギリギリまで距離取って、追い風なのに……ウオエエェェッ」
魔法使いC「撤退だ撤退ィ!!」
魔王「」
少女(あわわ…師匠の心にダメージが……)
魔王「フッ、ゴミ虫共が」
少女「師匠!?」
魔王「今更、ゴミ虫ごときの暴言に傷つく俺ではない! 自ら肥溜めに突っ込んで文句を垂れるな、ゴミ虫共が!!」
少女(師匠、強くなったのね! でも自分を肥溜めなんて、ひどい自虐です!)
勇者「貴様が魔王か……」
魔王「ん?」

45 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:55:14.71 ID:cz/8kbpt0
魔王「何だ、貴様は」
勇者「俺は勇者……お前を討つ者だ」
魔王「お前……まさか俺の体臭が平気なのか?」
勇者「いや、臭いは臭い。だが、毒物や臭いものには、ある程度の耐性がついた」
魔王「ほう、流石勇者を名乗るだけのことはある。お前のような者が現れるとは、人生とはわからんものだな」
少女「師匠……」
魔王「お前は下がっていろ」
少女「は、はい」
勇者「お前の実力は聞いているぞ、魔王。しかし俺も勇者として選ばれた身、お前に勝つ!」
<頑張れ勇者様 ウオオオォォォ
魔王「ほう、大層な人気ぶりだな」
勇者「勇者だからな」
<(ここで魔王を倒してくれないと…増員の為、俺らまであの悪臭実験室に放り込まれる!!)
魔王「そうか。ならば来い、勇ーー」
ーードゴッ
魔王「ーーっ!?」
少女「師匠っ!?」

46 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:55:59.66 ID:cz/8kbpt0
勇者「どうしたァ、動きが鈍いぞ魔王ォ!!」シュッシュッ
魔王「がハァッ……」ドサッ
魔王(目で追えているのに、体が追いつかない……どういうことだ)
魔王「はっ!」
魔王(俺がこの1年で身につけた筋肉は戦闘ではなく、観賞用に特化している…つまり)
魔王(筋肉のせいで、俺の動きが鈍ったというのか!?)
勇者「どうしたァ、その筋肉は見掛け倒しかァ!」
魔王(全くもってその通りだ!!)
ズバッ
魔王「ぐっ……」

47 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:56:35.85 ID:cz/8kbpt0
魔王「こうなれば……魔界への扉よ、今開け!」
勇者「!! まさか、魔法か!」
魔王「その通り! 魔界への扉を開き、邪神の力を借り、魔法を発動させる! 塵となるがいい、勇者よ!!」
勇者「くっ……」ガバッ
魔王「防御姿勢など無駄だァ! 喰らえ、"灼熱の業火"!!」
シーン……
魔王「……」
勇者「……」
魔王「おい、邪神……」
邪神「扉開けないで! 匂いがこっちに来る!」
魔王「待て、邪神なら匂いも何とかしてみせろ! おい!!」
勇者「オラァ!」ズバッ
魔王「カハァ!!」

48 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:57:03.07 ID:cz/8kbpt0
ゴンッ
勇者「いでっ!!」
魔王「……っ!?」
少女「し、師匠を、傷つけないでっ!」
魔王「馬鹿お前…下がっていろと言ったろう!」
少女「見ていられません…! 師匠が、師匠が傷つけられるなんて!」
魔王「お前に何ができる! お前のような、か弱い小娘に!!」
<(その女が投げて勇者の頭にクリーンヒットしたの、ダンベルなんですが)
勇者「く…。小娘、やはり魔王と手を組んでいたのか」フラフラ
少女「きゃっ、起きた!」
魔王「…? 『やはり』とは……」
勇者「しかしまだ、"覚醒"はしていない様子だなァ!!」
少女「えっ……?」

49 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:57:32.23 ID:cz/8kbpt0
魔王「覚醒…? 何のことだ?」
勇者「そうか、お前たちは知らないか……。だが教えてやる義理もない、俺は任務を全うするのみ!!」バッ
少女「ひっ」
魔王「こいつに手を出すな!」バッ
勇者「ならばお前から死ねえぇーーっ!!」バキィ
魔王「カハッ!!」
少女「し、師匠!!」
少女(このままじゃ、師匠が……!!)
?『困っているようですね、私の愛しき血族よ』
少女「……え?」

50 : ◆WnJdwN8j0. :2016/08/06(土) 18:58:13.51 ID:cz/8kbpt0
少女「だ、誰……? 声はするけど姿が……」キョロキョロ
?『私は、既に朽ちた身。しかし魂だけは、子孫である貴方の側におります』
少女「私のご先祖様……?」
?『はいーー名は、大賢者と申します』
少女「大賢者……!? それって確か、師匠を封印したという……!!」
大賢者『はい、かつてあの魔王を封じた、大賢者です』
少女「私のご先祖様は大賢者……? でも、そしたらどうして私は……」
大賢者『説明している時間はありません』
少女「そ、そうだ、師匠!」
魔王「ぐっ……」
勇者「はん、頑丈だな。防御力だけは優秀な筋肉だな」
少女「きゃっ、師匠が殺されちゃう! またダンベルを……」ヒョイッ
大賢者『それはよしなさい』