Part31
59 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:34:01.25 ID:2Rv1NszTo
ー 現在 ー
女大富豪「っていう事があってね」テクテク
真魔王「それで、それ以来、その人はこの村のすぐ近くに住む様になったんだ。そこで牧場をやってるから、僕らは牧場のおじさんって呼んでるんだけど」
勇者「へえ、そうなんだ……。とにかく、凄い人なんだね」
聖女「うん。あと、良い人だよ。十年も前から、わたしたちは皆、色々お話とか聞かせてもらったり、色々な事を教えてもらったり、訓練に付き合ってもらったりしてたんだから」
剣聖「俺達全員、かなりお世話になってるんだ。本当なら、勇者に先に紹介したかったんだけどな」
女闘神「だよね。だけど、おじさん、勇者に対して引け目を持ってたからさ」
勇者「引け目?」
女大富豪「さっき言った通り、次元の扉の解析をして、どこの世界に繋がっているかわかる様にしたのがそのおじさんなの。だから……」
真魔王「立場が違ったとはいえ、僕達からしたら侵略の手伝いをしたって事になっちゃうでしょ? その事をおじさんは気にしているんだよ」
聖女「仕方ない事だと思うし、わたしたちは別にもう気にしてないんだけど……」
剣聖「だけど、おじさん自身が気にしてるからな。だから、勇者が魔王を倒すまでは秘密にしておいて欲しいって言われてたんだ。魔王を倒したら、自分から言うからって」
勇者「そっか……。そういう事か……」
60 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:35:05.57 ID:2Rv1NszTo
女大富豪「ただ、私達は勇者の事を信頼してるし、勇者の人柄も知ってるから、もう先に話しておこうと思って。もう魔王も倒した訳だし」
女大富豪「魔軍師の降伏を受けた勇者だから。きっとおじさんの事も許してくれると私達は思ってるんだけど……」
聖女「勇者、さっきも言ったけど、おじさん自身はとても良い人だよ。村の人達もおじさんの事を知ってるけど、みんな良い風にしか言わないし」
真魔王「うん。悪い人じゃないのは確かだから。それは保証するよ」
女闘神「だから、勇者。おじさんの事は責めないでやってくれないか」
剣聖「俺からも頼む。罪を憎んで人を憎まずの精神で、おじさんのした事は水に流して欲しいんだ。魔王に命令されてやった事だしな」
勇者「うん。大丈夫。わかってる」
勇者「皆が言わなくても、俺はきっと何も言わなかったと思うし、怒ってもいなかったと思う」
勇者「もう過去の事はいいよ。今、そのおじさんが何も悪い事や迷惑な事をしてないなら、それで良いと思うから」
聖女「良かった……。ありがとね、勇者」
剣聖「ああ、俺達もこれで安心しておじさんを紹介出来るな」
女大富豪「あ、着いたね。ほら、あれ」
女闘神「あの柵で囲ってる場所な。メチャクチャ広いだろ」
真魔王「あれがおじさんのやってる牧場。通称、『魔物牧場』だよ」
勇者「!?」
61 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:36:35.90 ID:2Rv1NszTo
ー 魔物牧場、敷地内 ー
チビ暗黒ヒョウ「」トテトテ、タタタッ
【奇妙な魔物・タイプ豹】(全長3メートル)
『体力 :194万
攻撃力: 67万
防御力: 21万
魔力 : 16万
素早さ: 89万』
チビ皇帝ウマ「」パカラッ、パカラッ
【奇妙な魔物・タイプ馬】(全長4メートル)
『体力 :679万
攻撃力:215万
防御力:274万
魔力 :116万
素早さ:382万』
チビ三角クマ「」ノソノソ (全長8メートル)
【奇妙な魔物・タイプ熊】
『体力 :728万
攻撃力:240万
防御力:415万
魔力 :133万
素早さ: 92万』
チビ幻想ネコ「」タタタッ
【奇妙な魔物・タイプ猫】(全長2メートル)
『体力 :251万
攻撃力:437万
防御力: 85万
魔力 : 26万
素早さ:304万』
チビ幻想ネコ「」ガジガジ
女闘神「あ、こら、柵を噛んじゃダメだろ」ガシッ
チビ幻想ネコ「ニャー?」
女闘神「もうすんなよ、悪い子め」ペシッ
チビ幻想ネコ「フニャ」イタイ……
女大富豪「みんな、遊びたい盛りだからね。仕方ないか」
真魔王「まあ、柵には僕と聖女で、聖力と魔力のコーティングをかけてあるから、そうそう壊れる事はないけどね」
剣聖「ただ、数が多いからな。雨垂れ、石を穿つってやつだ。ちょっとずつ老朽化してくんだよな」
聖女「でも、この前替えたばかりだから、しばらくは大丈夫だろうけどね」
勇者「み、見た事ない魔物ばかり……」(呆然)
62 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:38:39.03 ID:2Rv1NszTo
真魔王「あ、勇者、やっぱりびっくりした? そうなんだよね、ここにいる魔獣って全部合成魔獣だからさ。多分、図鑑とかにも載ってないはずだよ」
勇者「ご、合成魔獣って、あのキメラとかの!?」
真魔王「うん。合成魔獣を考えたのおじさんだからね。魔王がその研究に目をつけて、おじさんを引き抜いた様なものだし」
勇者「……な、何て言ったらいいか」←キメラに殺されかけてる
真魔王「あ、でも、キメラと違ってここにいる魔獣は全部大人しいよ。おじさん曰く、愛情を持って子供の時から育てれば魔獣は攻撃衝動に駆られない様になるんだって」
勇者「そ、そうなの? でも、魔王軍の軍師の人は元から争いを好む種族だって言ってたけど……」
真魔王「それは魔物に子供の時がないからだよ。魔物って魔界にある『煉獄の泉』から生まれてくるそうなんだけど、その時既に成人していて、子供期間がないらしいから」
女大富豪「魔界だと、力の弱い子供や妊婦はすぐ殺されるだろうからね。種族の繁栄が成り立たないから、そうなったんじゃないかっておじさんは言ってたね」
勇者「え? ……それ、何か話がおかしくない? 子供期間がないのは元からなんでしょ? 元々そういう生まれ方をする種族だったんじゃないの?」
真魔王「とは限らないんだよ。魔獣にこうして子供期間がある以上、逆説的に大元は魔物にも人間のような生殖機能があって、妊娠・出産をしていたと考える方が自然なんだ」
女大富豪「ところが妊娠期間や子供期間があると種族繁栄が上手くいかない。だから進化の過程を経てそうなったのか、もしくは、そういう風に誰かが調整したのかはわからないけど、『煉獄の泉』から成人して生まれる様になったと考えるべき……」
女大富豪「らしいんだけどね。正直ここら辺は私にも難しすぎてよくわからない」
真魔王「そもそも『煉獄の泉』自体がよくわからない代物らしいからね。決まった場所になくて突然現れたり消えたりするし、魔物がそこから出てくる事はあっても、こっちから入ると二度と戻ってこれないらしいし」
女大富豪「おじさんはそこを『生命の可能性が詰まってる空間』って定義してて、そこでは時間が一秒毎に何千億年単位で進んだり戻ったりの変動を繰り返してるらしいの。ただ、もうその話自体が私達じゃ説明を聞いてもよくわからないし」
真魔王「その『煉獄の泉』に似た小さな擬似的空間をおじさんは作って、更にそこで魔獣の毛とか爪だとかを元におじさんは魔獣を合成して、全く別の種類の新しい子供の魔獣を生み出してる……って言ってもきっと理解出来ないよね?」
女大富豪「実際、詳しい説明を何回か聞いたんだけど、私達の誰も理解出来なかったから。ある意味、聖女の奇跡みたいなものよ。おじさんの話は、本当、時たま難しすぎて何言ってるのか謎な事が多すぎるから」
勇者「…………あ、うん」
63 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:41:23.00 ID:2Rv1NszTo
真魔王「まあ、あまり細かい事は考えなくていいと思うよ。ここにいる魔獣は全部大人しいって事だけわかってもらえたらいいから」
勇者「あ、ひょっとして……」
真魔王「?」
勇者「ここに来る前に、何匹も奇妙な魔物を見たんだけど、それって……」
剣聖「ああ、それはここの牧場の魔獣達の食料として、山で放し飼いにしてる弱い合成魔獣達だな。だから、全部デカかっただろ?」
勇者「」
聖女「ちゃんと山全体に魔物専用の特殊な結界を張ってあるから、勝手に他の場所には行かない様になってるよ。そこは安心して」
勇者「で、でも、そのせいで近くの町の人達から魔境みたいな感じで言われてたんだけど!」
女闘神「そうなのか? でも、あいつら、こっちから攻撃しない限りは大人しいもんだぞ? 植物や、特定の種類の魔物しか食べないから、人間が襲われる事なんてないし」
女大富豪「そもそも昔から交流とかほとんどなかったしね、この村。別に困る事はないんじゃないかな? 村の人達も何人か移動魔法覚えてるし……」
真魔王「この村だけでほとんどの事が賄えるから、町に行く必要もあまりないしね。僕らもちょこちょこ里帰りしてるから、その時に必要な物とかは全部調達してるしさ」
剣聖「まあ、何か問題があれば村長とかが言うと思うんだ。でも、この十年間、特に何もなかったからな」
女闘神「魔境は言い過ぎだけど、みんなもう慣れちゃってるからさ。別にいいんじゃないか?」
勇者「」
64 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:42:50.81 ID:2Rv1NszTo
魔学者「」トコトコ
魔学者「おや……」
聖女「あ、おじさん! ただいま!」
剣聖「魔王を倒して戻ってきたぜ!」
魔学者「ああ、うん、聞いてるよ。おめでとう。魔老師さんもきっと冥界で喜んでくれてると思う。良かったね」ニコッ
真魔王「ありがとうございます!」
女闘神「おじさんにそう言ってもらえると嬉しいよ!」
女大富豪「あ、それで約束通り勇者を連れてきたわよ! 勇者、この人が魔学者さんね」
勇者「え、あ、うん!」
魔学者「そうか……君が例の勇者か」
65 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:44:10.42 ID:2Rv1NszTo
魔学者「初めまして、勇者。ひょっとしてもう聞いてるかもしれないが、私は魔物でね。……申し訳ない。今更だが、勇者を含めてこの世界の人達には悪い事をしたと思ってるよ」
魔学者「虫のいい話かもしれないが、私の話を最後まで聞いてくれないかな。それで、私の事を判断して欲しい。その上で、出来れば私の罪を許してくれると嬉しいんだが……」
魔学者「どうか、お願い出来ないかな」
勇者「あ、いえ! もう皆から話は聞いているので……。少なくとも俺はあなたの事を恨みもしなければ、過去の事をどうこう言うつもりもないです」
魔学者「そうか……。もう聞いていたか……。すまないね、勇者。君の器量に感謝するよ。本来なら殺されても文句は言えない立場だからね」
勇者「いえ、気にしないで下さい。あなたは亡命してこちらに来たようなものなので。亡命者を冷遇するつもりはありませんから……」
66 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:45:15.09 ID:2Rv1NszTo
魔学者「そう言ってもらえると、私も気が楽になるね。ありがとう」ニコッ
勇者「いえ。俺は大した事は何も」
魔学者「ところで……」チラッ
魔学者「君ら全員がここへ来たという事は、勇者を紹介するだけじゃないんだろう? 例の『あれ』かい?」
聖女「うん。そうだよ」
剣聖「魔王も倒したし、これで気持ちよく最後を飾りたいからな!」
魔学者「はははっ。そうだろうね。それに今回は勇者もいるし、尚更か」ニコッ
魔学者「だけど、今回、私が生み出した合成魔獣は強いよ。君達で相手になるかな?」
女大富豪「それ、必ず言うよね、おじさん」
真魔王「そして、毎回その『例のセリフ』を聞くたびに苦労させられてきたからね。だけど、今回は勇者もいるし、結構あっさりいくと思うよ」
女闘神「だな! あたしらも相当強くなってるし、今回こそはすぐ終わりにしてやるから!」
勇者「??」
67 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:48:23.95 ID:2Rv1NszTo
勇者「あの……女大富豪、これは……」
女大富豪「ああ、いつもの事なの。おじさんが魔獣を掛け合わせて作った合成魔獣が毎回とっても強くてね」
女大富豪「だから、私達は子供の頃から、その合成魔獣で腕試しをしてきたのよ。牧場の奥の方に、おじさんが作ったそれ専用の洞窟があるから」
女大富豪「その中に強力な合成魔獣が何匹もいるって訳ね」
勇者「……それってもしかして、人工的に造ったダンジョンって事?」
女大富豪「そうね。仕組みは私達にもよくわからないんだけど、その洞窟は何か難しい装置で異空間と繋がる様にしてあるのよ。おじさんが言うには『次元の狭間』と繋げてあるらしいわ」
女大富豪「だから、そこでどれだけ派手な事をやっても平気なの。修行にはもってこいの環境になってるから」
勇者(……もう、何が何だか)
女大富豪「勇者、私達がこうやって強くなれたのも、そこでひたすら強敵と戦ってきたからなの。皆と協力して、おじさんが生み出した魔獣を倒していったから」
女大富豪「私はその中でほとんどおいてけぼりだったんだけど、今回は魔導機神があるから一緒に参加出来るし、ちょっとそれが楽しみなんだ」
女大富豪「それに、どれだけ強くなったか実感出来るから、今じゃ皆も楽しみにしてるみたいだしね。女闘神なんか特に」
女大富豪「って事で、勇者も一緒に参加して戦いましょ。これが皆でやる最後の締めだと思って。勝って気持ちよく終わりたいって皆が思ってるし、ね?」
女大富豪「どんなに強いって言っても、魔王よりは弱いだろうしさ。勇者なら楽勝だよ」ニコッ
勇者「……う、うん」
勇者(皆と一緒なら、多分、大丈夫かな……? それに、いざとなれば、ミナデイン使えばどうにかなるだろうし……)
勇者「わかった……。じゃあ、俺も参加するよ。皆がそこで一緒に戦いたいっていうなら、折角なんだし」
女大富豪「やった! じゃあ、決まりだね!」
68 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 16:49:33.62 ID:C54Nm1BCo
嫌な予感しかしないwwww
69 :
◆bXfZj5FIu6 :2016/04/05(火) 16:49:53.51 ID:2Rv1NszTo
ここまで
ちょいと予想より長くなったんで、ここで分ける
70 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 16:51:33.17 ID:i51mMMcpo
乙
村の周りの魔物に襲われなかったのは
村人が強すぎるからだと思ってたが
そんな理由があったんだな
71 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 16:52:48.00 ID:44ebFMFoo
ここまで後付け設定の如く新キャラがバンバン出てくるのにそれなりに話になってるのだから凄い
72 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:01:19.18 ID:lexvKLsTo
乙です
仲間が苦戦するレベルって勇者かすっただけで死ぬんじゃないか?
73 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:03:30.47 ID:Ig9yaTFO0
乙
74 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:18:05.63 ID:skETmhL6O
ラスボス倒した後の隠しダンジョン的なあれかな?
ゲームによったらレベルカンストでもきつい奴とか出てくるよな……
75 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:22:17.12 ID:Gf9aNo1hO
乙
もう完全にクリア後に訪れるべき村だな…
魔学者の体力4万を低いと感じられるようになった恐怖
76 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:38:04.53 ID:uvSMDNIho
仲間が苦戦するとなると兆の世界かな?ww
乙
77 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:47:03.58 ID:BmzDjEfnO
すべてを超えし者の出番か
78 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/04/05(火) 17:59:31.02 ID:nMdWpEYgO
もうみんな勇者をいじめないでくれ