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勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」
Part3


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 21:52:41.18 ID:oUuutzfIo
ー 同日。東の国、酒場 ー
マスター「さて、もう昼か……。そろそろ開店の準備をしとかないとな」
【酒場のマスター】
『体力 :24
 攻撃力: 7
 防御力:10
 魔力 : 2
 素早さ: 5』
ギィッ、チリンチリーン
マスター「っと。あー、駄目駄目。まだ、準備中だ。真っ昼間だぞ」
名剣士「そいつは悪かったな、マスター」
マスター「おお、なんだ、名剣士か。久しぶりじゃないか」
名剣士「忙しいなら出直すぜ」
マスター「ははっ。冗談はやめてくれ。あんたならいつでも営業中だよ。とにかく適当なとこにかけてくれ」
名剣士「そいつはどうもっと」スタッ
【名だたる剣士】
『体力 :9999
 攻撃力:7432
 防御力:8914
 魔力 :   0
 素早さ:3809』

59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 21:53:28.07 ID:oUuutzfIo
マスター「で、何を飲む? この前、いいのが手に入ったんだ。西の国の252年もののワインだ。そいつにするか?」
名剣士「いや、普通にウイスキーにしてくれ。ロックで」
マスター「はいよ。つまみはどうする?」
名剣士「適当に。お任せする」
マスター「オーケー。少しだけ待っててくれ」カチャカチャ
マスター「とりあえず、これな。生憎、今はこの燻製肉ぐらいしかいいのがなくてね、我慢してくれよ」コトッ
名剣士「十分だよ」

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 21:54:32.20 ID:oUuutzfIo
マスター「それで、いつこっちに帰ってきたんだい?」
名剣士「東の国に着いたのは一週間ぐらい前だな。それまで、北の国にいた。援軍に行ってこいって言われてね。勅命だからってタダ働きさ」ゴクッ
マスター「ああ、その活躍は聞いてるよ。タダ働きってのは聞いてないけどね。何でも劣勢に陥ってた北の国軍を勝利に導いたそうじゃないか」
名剣士「親玉のガーゴイルを斬り飛ばしてやっただけさ。後は大した活躍はしてないぜ」
マスター「謙遜するねえ。あんたが通った後は魔物の死体で道が出来てるってぐらいの活躍だって聞いてるのに。わずか二日で、北の国軍がこれまで倒した魔物の数よりも多く葬ったらしいじゃないか」
名剣士「んなもん、いちいち数えてないっての。その話、尾ひれどころか、背びれまでついてるんじゃないのか?」
マスター「相変わらずだね。それで、ようやくこっちに帰ってこれたのかい?」
名剣士「ああ、事後処理だとか祝勝会だとかで引っ張り回されてね。その間に、引き抜きやら暗殺やらに何度遇った事か。面倒でかなわなかったよ」ゴクッ
マスター「それを面倒で済ますあんたの方がどうかしてるよ……。まあ、あんたの強さ考えたらそれも仕方ないだろうけど」

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 21:55:56.10 ID:oUuutzfIo
名剣士「いや、俺なんかまだまだだな。修行が足りないといつも思ってるぜ」
マスター「謙遜も度が過ぎると嫌味に聞こえるから気を付けた方がいいよ。今回の件で、あんた一人で兵士五千人分の価値があるって言われる様になってるんだからね。最早、伝説の領域だよ」
名剣士「伝説? 何だそれ?」
マスター「知らないのかい? こっちじゃもうすっかり逸話になってるよ。あんたと陛下のやり取りさ。吟遊詩人や講談家が何回もここでそれをやるもんだから、俺もすっかり覚えちまった」
名剣士「やり取り? どんなだよ?」
マスター「ゴホン。あー……あれはつい半年ほど前の事。この頃、北の国は魔王軍からの本格的な攻撃を受け、苦境に立たされていた」
マスター「そこで、我が東の国に援軍要請が入ってくる。だが、我が国はようやく革命が終わって新政権に変わったばかり。援軍を出すだけの財政的余裕がない」
マスター「しかし、北の国とは軍事同盟を結んでいる。何よりこれまで革命を裏から支援してもらい色々と援助を受けてたから、断る訳にはいかない」
マスター「そこで、陛下は名剣士を王宮へ呼び寄せた。そして、やって来た名剣士に向けて、さも当然の様にこう仰った」
マスター「兵士を五千人ほど出せば向こうも納得するだろう。だから、お前が一人で行け。そうすれば全部片付く」
マスター「そして、実際に向かった先で、兵士五千人どころか一万人以上の働きをしたのが名剣士。これにちなんでつけられた異名が『一振り五千斬りの名剣士』!」
マスター「構えは隙なく、攻めれば鬼神、守りに入ればこれ鉄壁、進んだ後に魔物なく、進む先には敵もなし。これぞ正に世界最強の剣士!」
マスター「ってな具合にね」
名剣士「……よくもまあ、そんなある事ない事を」

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 21:57:23.02 ID:oUuutzfIo
マスター「でも、実際、それだけの活躍をしてるんだろう? そりゃ言われるよ。巷じゃ史上最強の剣士って言われてるの、あんた知ってるかい?」
名剣士「初耳だね。それに、俺は史上最強でも何でもないよ。剣士としては世界で三番目ぐらいだとは自分でも思ってるけどな」ゴクッ
マスター「へえ、じゃあ一番と二番は誰なんだい?」
名剣士「二番は俺の師匠だよ。一番は俺の師匠の師匠だな」
マスター「ああ、なるほどね。そう来たか」
名剣士「なに勝手に納得した様な面してんだよ」
マスター「いや、別にね。それより、もう一杯飲むかい?」
名剣士「ああ、もらう。何せ今回はしみったれた旅立ったからな。金貨二十枚分ぐらいの働きはしたのに、報酬はなしだってんだから。傭兵稼業が身に付いてる身としてはきつかったわ」
マスター「宮仕えを断るからだよ。新政権が誕生した時、騎士団長のポストについてれば、給料に加えて特別手当ても出ただろうに」
名剣士「根っからそういうのが向いてないんでね。用意してくれた陛下には申し訳なかったけど、務まる気がしなかったからな。……まあ、そのせいで、今回タダ働きになったんだがな。断った借りを返すって意味で」
マスター「それはまた、ずいぶん重い借りになったもんだね。一国を救ったってんだから」ハハッ

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 21:58:51.22 ID:oUuutzfIo
名剣士「って事で、しばらく振りに本業に戻るからよ。最近は何か美味しい話はあるかい? 金になりそうな依頼とかさ」
マスター「生憎、金にならないのしかないね。金貨以下のものばかりだよ。もっとも、銀貨でも普通は十分高いんだけどね……」
名剣士「懸賞金がかかってる魔物とかもいないのか?」
マスター「それも、金貨以下」
名剣士「残念だな」
マスター「いっその事、魔王でも倒しに行ったらどうだい? あんたが討伐出来ない魔物なんている気がしないよ、俺は。魔王倒して、史上最強の英雄として歴史に名を刻めばいいと思うんだがね」
名剣士「いや。流石に魔王は無理だな。あれは俺が倒せる代物じゃない」
マスター「それも謙遜かい? それとも本気で?」
名剣士「本気で、だよ。これはマスターだから言うけど、俺は前に魔王城があるって噂の妖魔の森に行った事があるんだよ」
マスター「……そもそも妖魔の森なんて本当に存在してたのかい。てっきり、伝説の中だけの空想話だと思ってたんだけど」
名剣士「実際にあるよ。北の国の更に北。地上の彼方。最果ての地だ。そこにいるのは全部神話クラスや伝説級の魔物だけっていうイカれた森さ」
マスター「……本当なのかい、それ。冗談とかじゃなく」
名剣士「ああ、もう何年も前に実際に行ってきて、体験したからな。しばらく進んだところでいきなり巨大な魔物に出くわして、何をされたかもわからず気が付いたら吹き飛ばされて瀕死状態だった」
名剣士「あの時は命からがら逃げてきたよ。敵に背中を向けたのはあれが初めての事だった」
マスター「……あんたが、そんな目に……?」ブルッ

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 22:00:28.24 ID:oUuutzfIo
マスター「あ、いや。だけどさ……」
名剣士「ん? どうした?」
マスター「一応、先に言っとくけど、あんたの話を疑う訳じゃないんだ。ただ、ふと疑問に思った事があってね」
名剣士「そんなん気にしないでくれ。で、何だい?」
マスター「いやね。そんな伝説級の魔物がウジャウジャいるってのに、どうして魔王はそいつらを使ってこっちに攻めてこないのかなって……」
名剣士「何だ、そんな事か。そりゃ、単純な理由だよ」
マスター「どんな?」
名剣士「あの森には、竜がいるんだよ」
マスター「竜……!」
名剣士「そ。最強無比の孤立種族と言われる竜たちがワンサカいて、そいつらが魔王軍とドンパチやってんだ。魔王からしたら、こっちに割く戦力なんてほとんどないんだろな」
マスター「…………」
名剣士「聞いた話だが、あの森は、元々竜たちの住み処だったそうだ。魔王の目的は多分世界征服だから、きっと最初に竜にケンカ吹っ掛けたんだろう」
名剣士「で、本格的な大戦に突入。ただ、竜ってのは当たり前だが強さがどれも半端ないから、雑魚をどれだけ投入しても蹴散らされて一瞬で終わりだ」
名剣士「だから、戦力にならない余った奴等をついでの様に人間の方に向けたんじゃないのか? つまり、魔王からしたら、人間なんて初めから眼中にないんだよ。猛獣と戦ってる時、足元にネズミがいたようなもんだ」
名剣士「魔王がその気になりゃ、多分、一日で人間は根絶やしに出来るだろうな。俺たちなんて、そんな程度なんだよ」
マスター「…………」ツルッ、ガシャン
名剣士「おいおい、マスター。落ち着きなよ。震えんなって」
マスター「あ、ああ、悪い……。あまりに強烈というか……すさまじい話を聞いてしまったもんだから……」
名剣士「ま、そういう事だよ。こっちにいる魔物なんて戦力外通告受けた雑魚ばっかなんだ。もっとも、その雑魚に俺たちは世界の三分の一を征服されて大苦戦してる訳なんだけどな」
マスター「…………」

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 22:01:38.11 ID:oUuutzfIo
マスター「……じゃあ、もしも竜たちが魔王軍に負ける事になったら、俺たちはもう一貫の終わりって事……なのかい?」
名剣士「普通に考えたらな」
マスター「……まだ何かあるのかい? いや、希望はあった方がいいんだが」
名剣士「ま、安心しなって、マスター。例え竜が全滅しても、俺たちは平気だよ」
マスター「どうしてそう断言出来る?」
名剣士「おいおい、マスターだって知ってるだろ? こっちには魔王を倒す伝説の勇者がいるじゃないか。俺ごときじゃ到底無理だが、勇者なら必ずこの世界を救ってくれるさ」
マスター「……」ハァ
名剣士「ん?」
マスター「よしてくれ……。ありゃ、単なる伝説だろ? お伽噺みたいなもんじゃないか。まさか、あんたがそれを本気で信じてるとは思わなかったよ」
名剣士「そっちこそ冗談きついぜ、マスター。伝説だって? そんな訳ないだろ。本当に勇者はいるさ。間違いなくその内名乗りを上げて、この世界を救ってくれるからよ」
マスター「……そうかい。まあ、期待しないで期待しておくよ」
名剣士「どっちなんだよ」ケラケラ
マスター「……さてね。どっちだろうね」ハァ

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 22:02:22.58 ID:oUuutzfIo
マスター「ああ、そういえば……。さっきの話で思い出したけど……」
名剣士「ん?」
マスター「この前、南の国に女神の神託を受けた勇者が出たらしいよ。そんな情報がこの前入ってきた」
名剣士「お、おい! それ、本当か?」ガタッ
マスター「え? あ、ああ……。何人もの情報屋が同じ事を言ってたし、南の国の国王も公式に発表してるよ。間違いないだろうね」
名剣士「それ、南の国で間違いないんだな? 勇者の年齢は? 生い立ちは? 名前は? 詳しく教えてくれ」
マスター「ああ、えっと……。名前は……何だったかな、ド忘れしちまった。確か年齢は26歳で……。元は騎士隊長を務めてた人間だ。もちろんあんたほどじゃないだろうが、剣と魔法の才能は天才的だという評判だよ」
マスター「ただねえ、肝心の女神の神託ってのが眉唾ものなんだ。それと言うのも、教会側が沈黙を保ったままなんだよ。勇者が選ばれたっていう公式発表を一切してない」
マスター「だから、これは南の国側が教会に無断で行った、政略としての単なるでっち上げだって言われてる。ただの宣伝工作か、もしくは潜入任務か何かだってのが一般的な見解らしくて」
名剣士「そんな事はどうだっていい! それより、肝心の名前は? 思い出してくれ」
マスター「ああ、名前ね。ちょっと待ってくれ、確かこの紙に」パラパラ……
マスター「あった。名前は『勇者』だよ。生い立ちは南の国の外れにある、山奥のへんぴな村だな」
名剣士「……間違いない」

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 22:03:14.18 ID:oUuutzfIo
マスター「……ん? なんだい、知ってる相手なのかい?」
名剣士「悪いがマスター、急用が出来た。これで失礼するぜ」サッ、タタッ
マスター「あ! ちょっと!」
名剣士「代金は、次来た時に払う! 悪い!」ガタッ
チリンチリーン……
マスター「いや、代金はいらないんだけどさ……。もう十分もらってる様なもんだし」
マスター「『名剣士、馴染みの酒場』ってだけで、ずっと大繁盛だもんな……」
マスター「そうじゃなくて、旅の話とか色々聞きたかったんだが……」
マスター「しかし、伝説の勇者ねえ……。あの名剣士がそこまで気にかけるなんて……」
マスター「まさか、本物……? いや、それこそまさかだろうけど……」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 22:03:41.85 ID:oUuutzfIo
とりあえず、ここまで

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 22:22:03.00 ID:postr8qeO
ツエエエエエエエエエエエエ!!

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 23:02:40.72 ID:62uOkGIL0

魔王と魔物TUEEEE!
仲間でもきついとか勇者ワンパンされるんじゃないか…

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/20(土) 23:15:21.49 ID:0QnMfj45o
予想以上にTUEEEEEEEEEEE
しかしカンストしてるのに苦戦する相手は数値で表せないレベルになるんじゃなかろうか

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 00:01:34.59 ID:3KsjZMeTo
いつから9999がカンストだと錯覚していた…?

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 00:34:13.59 ID:x4gyH6sL0
苦戦したのはもう何年も前の話だぞ

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 00:35:22.65 ID:zR9PEQA4O
乙です
勇者のステータスはどうなってるんだろ

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 01:59:50.17 ID:0kRIGUrUo
このレベルが4人いれば勇者とかいりませんわそりゃ

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 17:24:20.38 ID:0sl7vD+po
ー 中央国、とある町 ー
コンコン、ダンダン!!
騎兵A「旅の者だ! 開門せよ!」
騎兵B「…………」
騎兵C「…………」
騎兵D「…………」
大司教「…………」
見張りの兵士「んー……何だ?」ヒョイッ (城壁から顔を覗かせる)
兵士「……!? あいつら、鎧に十字マーク!?」
兵士「まさか、神殿騎士団!」
騎兵A「そうだ! 我らは教会本部より遣わされた神殿騎士団である! こちらの大司教様の、旅の護衛としてこの地までやって来た!」
騎兵A「わかったのなら、即座に開門せよ! 通行手形ならここにある!」サッ
兵士「は、ははーっ! すぐにお開け致します! しばしお待ちを!!」

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 17:25:18.09 ID:0sl7vD+po
兵士「伝達だー!! 開門、開門ー!」
兵士「大司教様と神殿騎士団様がお入りになる! 周囲に魔物なし! 急げー!!」
「了解ー!! 急げー! 大司教様と神殿騎士団様がおみえになられるぞー!!」
ギギギギギッ…… (門が開く)
騎兵A「うむ」
騎兵B「大司教様、門が開きました。馬をお進め下さい」
大司教「ああ」カッポ、カッポ
騎兵C「では、我らはこの後、情報収集に回りますので」
騎兵D「大司教様は一足先に教会へとお向かい下さい。念の為に騎兵Aは護衛として残しておきます」
大司教「わかった。あの方が見つかったら不用意に接触せず、まず私のところに知らせてくれ。それと……」カッポ、カッポ
騎兵B「はっ」
大司教「調べる際は、その鎧は脱いでおくように。教会本部の人間だとわかると、あの方が逃げてしまうからな」カッポ、カッポ
騎兵C「御意」

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 17:26:32.49 ID:0sl7vD+po
ー 広場 ー
ワイワイ、ガヤガヤ、ワイワイ、ガヤガヤ
老婆「ああ、ありがとうございます。ありがとうございます」ペコペコ
女「いえ、お気になさらないで下さい」ニコッ
女「では、次の方、どうぞ」
大工「すみません、お願いします。先日、屋根から落ちて足と腰をやっちまいまして……。この通り、足は折れちまってますが……」ヒョコ、ヒョコ
女「大丈夫ですよ。少しだけじっとしていて下さい」
女「治癒の光よ、この者に女神の庇護を……」パァァッ……
大工「おおっ……」
女「はい、もう治っているはずです。次からはお気を付けてお仕事して下さいね」
大工「え、もうですか? じゃ、じゃあ」ソッ
大工「お、おお! 凄い! まるで痛くない! 治っている!!」
女「」ニコッ
大工「ありがとうございます! ありがとうございます! 天使様!」ペコペコ
女「お気になさらず。それと、その呼び方はやめて下さい。私はそんなたいそうな人間ではありませんので」
女「それでは、次の方どうぞ」
病人「は、はい。お願いします。原因はわかりませんが、かなり前から咳が止まらなくて……」ゲホゲホ
騎兵B「流石、『紅の天使』様だな。有名なだけある。居場所はすぐにわかったな」ボソッ
騎兵C「ああ。お前はここに残って、もしもあの方が移動したら尾行を頼む。俺は大司教様のところに行って指示を頂いてくるから」
騎兵B「了解した」

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 17:27:55.79 ID:0sl7vD+po
ー 夜、みすぼらしい宿屋 ー
主人「……本当によろしいのですか、天使様? 天使様ならこの様な貧しい宿屋でなくとも、いくらでも無料でお泊めする宿がありますでしょうに……」
女「お気遣いなく。それと、天使様はやめて下さい。その様な大それた者ではありませんので」
主人「も、申し訳ありません」
女「いえ、謝る様な事ではありませんから」
主人「それと、天使……いえ、女様。今日、治して頂いた者たちから、お礼にとこちらを預かっています」スッ
主人「全部で銅貨が678枚ありました。既に換金して銀貨3枚と銅貨78枚にしてあります。みな、口を揃えて少なくて申し訳ないと言っておりましたが、旅の路銀の足しにして下さいと……。どうかお受け取り下さい」
女「では、銅貨だけありがたく頂いておきます。銀貨の方は、この町の城壁の補修費用に加えておいて下さい」
主人「それは……。ですが」
女「構いません。城壁は町の防御の要ですので。魔物に壊されないよう、どうか補修費用に当てて下さい」
主人「本当に……よろしいのですか?」
女「はい。よろしくお願いします」
主人「ありがとうございます。無料で皆を治療して頂くだけでなく、この町の事まで心配してくださるなんて……」グスッ
女「女神様は、持つ者に厳しく、持たざる者に優しいお方です。私は人を治す力を既に頂いていますので、これ以上は何も望みません。それだけで十分幸せです」
主人「本当にあなた様は、地上に舞い降りた天使です。どうか女様に女神様の愛と祝福が与えられますように……」グスッ
女「ありがとうございます」ニコッ

83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/21(日) 17:28:48.06 ID:0sl7vD+po
ー 深夜 ー
コンコン
女「……?」
女「どちら様ですか?」
「この町の神父です。夜分遅く申し訳ありません」
女「いえ。それでどうされました? 誰か急患でも出ましたか?」
「そうではありません、御安心を。ただ、女様に少しお話がありまして……。中に入れてもらってもよろしいですか?」
女「ええ、構いません。今、開けますので」タタッ、ガチャッ
神父「すみません……女様……」
騎士A「」サッ (ドアを手で押さえて固定)
女「!?」
騎士B「」ササッ
騎士C「」サッ (整列)
騎士D「どうぞ」
大司教「御苦労」スッ
女「……その服装、教会本部の! そして、神殿騎士団まで……!」