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勇者「仲間TUEEEEEEEEEEEEEE!!」
Part2


34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:37:55.24 ID:nZITnjFWo
ー 夜、自宅 ー
勇者「色々考えさせられたけど、壮行会、行って良かったな」
勇者「昼間に挨拶回りに行った人たちも、みんな別れを惜しんでくれて……。励ましてくれて……」
勇者「……嬉しかった」
勇者「…………」
勇者「でも……」
勇者「本当に明日、この町とはお別れなんだな」
勇者「寮から出て、自宅をこの前買ったばかりだってのに、もうここには帰ってこれなくなるのか……」
勇者「騎士団のみんな、それに近所の人、馴染みの店の人たち、神父さん……。その全員ともお別れだ……」
勇者「そして、団長とも……」
勇者「必ず、魔王を倒して生きて帰ってくる……。そういう約束をした。だけど逆に言えば、それまではずっと会えないって事だ……」
勇者「……流石に寂しいな」

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:38:49.20 ID:nZITnjFWo
ヒヒーン
勇者「あ」
勇者「いけない、相棒も腹が空いてるよな。すぐに用意しないと」
勇者「人参はと……」サッ
勇者「よし、今行くからな」タタッ

36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:40:37.85 ID:nZITnjFWo
ー 厩舎 ー
馬「」カキ、カキ
勇者「よしよし、ちょっと待ってろ。飼い葉を餌箱に入れてと」ザッ、ザッ
勇者「あと、明日からたっぷり走る事になるからな。これもたっぷり持ってきたぞ。食ってくれ」っ人参
馬「」ヒヒーン
勇者「ああ、嬉しいか。ふふっ」
馬「」モグモグ
勇者「これからは辛く厳しい旅になると思うけど、頑張ってくれよ」
勇者「一緒に、生きて帰ろうな、相棒」ナデナデ
馬「」ヒヒーン

37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:43:24.21 ID:nZITnjFWo
ー 家 ー
勇者「さてと、少し早いけど、明日の為にもう寝るか」
勇者「仕度も全部終わってるし、体調を万全にして出発しないと」
コンコン
勇者「……?」
勇者「誰だ……こんな時間に?」
勇者「」テクテク、ガチャッ
団長の娘(以下、幼馴染み)「あ……こんばんは」
勇者「幼馴染みか……。どうしたんだ?」
幼馴染み「今、ちょっといい……? 中、入っても大丈夫?」
勇者「いいよ。どうぞ。何か温かい飲み物でも出すよ。紅茶だけはまだ少しだけ残ってるから」
幼馴染み「うん……。ありがと」

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:44:55.89 ID:nZITnjFWo
勇者「」コポコポ
勇者「はい、どうぞ。残念な事に少ししかなかったけど」スッ
幼馴染み「うん……」ソッ
幼馴染み「」ゴクッ
幼馴染み「…………」
幼馴染み「……部屋、綺麗に片付いちゃってるんだね。物とかほとんど無くなってる……」
勇者「明日出発だからな。きっと当分は帰って来れないだろうし。物があっても埃をかぶるだけだよ」
勇者「その間、管理してもらうのも悪いし、結局売りに出したんだ。明日には、このベッドもそこのテーブルも食器棚もなくなってるよ」
勇者「その持ってるティーカップも。何もかも」
幼馴染み「そっか……。全部、売りに出しちゃったんだ……」
勇者「まだ一年ぐらいしか住んでなかったから、もったいないとは思ったけどな。でも、帰ってきて蜘蛛の巣だらけの家を見るのは嫌だったから」
幼馴染み「……そっか」
勇者「うん」

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:46:00.78 ID:nZITnjFWo
勇者「それで、どうしたんだ? 明日の式典の前に、もう一度会いに来てくれたのか?」
幼馴染み「そうじゃない……。ただ……」
勇者「うん」
幼馴染み「本当に行くんだなって……。それを確かめに来たの」
勇者「……うん。行くよ」
幼馴染み「だよね……。もう町中その話だらけだし、広場じゃ明日の為の式典の準備してるし……」
幼馴染み「私の家にも挨拶に来たし、お父さんからも帰ってきてから話をされたし……」
勇者「団長が……。何か言ってた?」
幼馴染み「……寂しくなるけど、明日は笑顔で見送ってやりなさいって。……そう言われた」
勇者「……うん。俺も明日は笑顔で見送って欲しいと思う」
幼馴染み「うん……。だけど……」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:47:01.81 ID:nZITnjFWo
勇者「だけど?」
幼馴染み「……なんかね。今までずっと、実感わかなかったの」
勇者「何が?」
幼馴染み「勇者が魔王討伐の旅に出るっていう、その実感。頭では理解出来てるけど、どこか現実味がないっていうか……」
勇者「……うん。かもね。女神様から神託を受けたって話を初めて聞かされて、俺もしばらくはそんな感じだったから。ふわふわしてて、どこか他人事みたいな」
幼馴染み「そうなんだ……」
勇者「うん」
幼馴染み「だけど……。今日、このがらんどうな部屋を見て……それでやっと実感したんだ。本当にいなくなっちゃうんだなって……」
勇者「……うん」

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:48:19.10 ID:nZITnjFWo
幼馴染み「昔の事……覚えてる?」
勇者「覚えてるよ。毎日、幼馴染みに意地悪されてたっけ」
幼馴染み「……ごめん」
勇者「いいよ。今はもうそんな事ないし」
幼馴染み「あの頃は……お父さんやお母さんが取られちゃったみたいに思ってたから……」
勇者「いきなりやって来て、今日からこの子も一緒に住む事になった、家族だと思って仲良くしてくれ、なんて言われたらきっと俺もそう思っただろうね」
幼馴染み「……お墓参りはもう行ったの?」
勇者「こっちのお墓には。でも、中は空っぽだからね。向こうの村に戻ったら、きちんと墓参りするつもりだよ」
幼馴染み「そっか……」
勇者「うん」

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:48:51.36 ID:nZITnjFWo
幼馴染み「…………」
勇者「…………」
幼馴染み「ねえ、勇者……」
勇者「うん」
幼馴染み「……私。話、聞いちゃったんだ……」
勇者「何の?」
幼馴染み「…………」
勇者「…………」

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:49:56.59 ID:nZITnjFWo
幼馴染み「……私も」
勇者「うん」
幼馴染み「ついてく……」
勇者「……どこに?」
幼馴染み「旅に……」
勇者「…………」
幼馴染み「……私さ、魔法、使えるし」
勇者「うん」
幼馴染み「……学校の成績、魔法と数学が良かったの勇者も知ってるでしょ。学年で7位と4位だったんだよ」
勇者「うん」
幼馴染み「……料理も出来るし。洗濯も、掃除も、裁縫も。一通りの家事は全部出来るし」
勇者「うん」
幼馴染み「……体力も意外とあるんだよ。子供の頃みたいにすぐバテたりとかしないよ。体も丈夫な方だから、風邪とか滅多に引かないし」
勇者「うん」
幼馴染み「魔物だって怖くないよ。お父さんについていって、魔物と出くわした事が二回あったけど平気だった。普通に戦えるよ」
勇者「うん」
幼馴染み「……だから、私も一緒についてく」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「…………」
勇者「……ごめん」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:50:49.43 ID:nZITnjFWo
幼馴染み「……何で」
勇者「危険だから」
幼馴染み「危険だから、私がついて行くんだよ。一人より二人の方がいいじゃない」
勇者「……ごめん」
幼馴染み「……足手まといにならないから」
勇者「ごめん」
幼馴染み「……なら、どうすればいいの」
幼馴染み「……どうやったら、私、勇者と一緒にいられるの」
幼馴染み「……教えてよ」グスッ
勇者「待ってて」
幼馴染み「ぅ……」ポロポロ
勇者「帰るのを待ってて。幼馴染みやみんながいるから、俺はここに絶対に帰ろうって思えるんだ」
勇者「俺が魔王を倒すから、幼馴染みは帰ってきた俺を誉めてくれ」
勇者「だから、ここで待ってて」
幼馴染み「ぁぅ……」ポロポロ

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:51:42.49 ID:nZITnjFWo
幼馴染み「待ってたって……」エグッ
幼馴染み「意味……ない……!」エグッ
勇者「幼馴染み……」
幼馴染み「だって……私は……聞いたんだから……」エグッ
幼馴染み「帰ってきたら……お姫様と結婚するって……」エグッ
勇者「…………」
幼馴染み「なら……何で……私が……待つ意味……」グスッ、エグッ
幼馴染み「どうして……何で……どうして……。どうして……こうなるの……」ヒック、エグッ
幼馴染み「私は……勇者が……勇者の事が……。前からずっと……ずっと……」グシュッ、エグッ
勇者「…………」

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:52:32.33 ID:nZITnjFWo
勇者「……もう遅いし、送ってくよ」
幼馴染み「いや……やだ……」グスッ
幼馴染み「ねえ……何で……」グスッ
幼馴染み「何で……私は……ダメなの……。何で……」グシュッ
勇者「……幼馴染みの事は、妹みたいに思ってるんだ。ずっと一緒に過ごしてきたし、もう家族なんだよ」
幼馴染み「好きで……私……そうなった訳じゃない……」エグッ
幼馴染み「なら……幼馴染みなんか……嫌だ……。嫌だよ……なりたくなかった……」エグッ、ヒック
勇者「俺も好きで孤児になった訳じゃないよ」
幼馴染み「違う……。そんな……つもりじゃ……」エグッ
勇者「でも、団長と亡くなった父さんが親友で、俺を引き取って色々と面倒を見てくれた。そうでなかったら、俺はきっとどこかの教会に引き取られて、今頃、貴族や大金持ちの家で下働きをやっていたかもしれない」
勇者「俺にとっては、優しくしてくれた団長はもう一人の父さんだし、奥さんはもう一人の母さんなんだよ」
勇者「そして、幼馴染みは妹なんだ。それ以外にはもう見えないんだよ……ごめん」
幼馴染み「う……うぅ……」グシュッ
勇者「……送ってくよ。立てる?」
幼馴染み「ぅぅ……ぁぅ……」ガタッ
勇者「……ずっと大事に思ってるよ。幼馴染み」
幼馴染み「ぅん……ぅぅ……」エグッ

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:57:09.02 ID:nZITnjFWo
ー 翌朝、広場 ー
国王「それでは勇者よ、期待して待っておるぞ」
王妃「吉報を待っています。道中、困難や苦境もあるでしょうが、挫けず頑張りなさい」
勇者「ははっ! ありがたき御言葉、旅の励みに致します!」
ワーワー、キャーキャー、パチパチ!!(大歓声、大拍手)
王女「」ツイッ
王女「勇者よ」
勇者「はっ!」
王女「父上からお話は聞いています。その上で貴方にこう言いましょう」
王女「必ずや、生きて帰ってきなさい。私はいつまでもそれを待っています」
勇者「……姫」
王女「返事は、はい、しか私は受け取るつもりはありません。……どうかお気をつけて」
王女「そして、私をあまり待たせないようにして下さい。頼みましたよ」
勇者「……姫のお気持ち、しかと承りました。最善を尽くします」
王女「ええ……」
ワーワー、キャーキャー、ピーピー、パチパチ!!(更に大きい大歓声、大拍手)
団長「……姫も心を決めたか」
幼馴染み「……ぅ」グスッ

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:59:09.50 ID:2dtJ0G3mO
大事なところで姫の一人芝居に……

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:59:53.76 ID:dgWdwgEwO
これは幼馴染ワンチャンあるで

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 18:06:01.42 ID:nZITnjFWo
国王「では、女神より祝福を受けし勇者を総出で見送れ!」
国王「かの者の旅立ちに、幸運と幸福が舞い降りる様に!」
団長「楽隊、前に!」スサッ
楽隊「」ザッ、ザッ
楽隊「」パッパッパー、パッパパー
カラーン、コローン、カラーン、コローン
(盛大なファンファーレが鳴らされ、教会からは一斉に鐘の音が響く)
勇者「行くぞ、相棒」サッ
馬「」ヒヒーン
隊長A「開門! 開門せよ!」
隊長B「勇者様が旅立たれる! 門を開け!!」
ギギィーーー…… (ゆっくり門が開かれる)
団長「全隊! 旅立つ勇者様に向けて敬礼!」ビシッ
隊員全員「はっ!」ビシッ
団長「魔法弾、打上用意! 放て!」
ヒュー……ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!! (花火)
市民A「勇者さまー、必ず世界に平和を!!」
市民B「この世界の事を、お願いします!!」
市民C「勇者様、お気をつけてー!!」
市民D「勇者様、バンザーイ!!」
市民E「勇者様、バンザァーーイ!!」
幼馴染み「勇者! 必ず帰ってきて!! 必ず!!」
隊員たち「隊長ー! 俺たち待ってます! この国を守りながら待ってますから!!」
隊員E「隊長! どうか御無事で!!」
『南の国、王宮日誌より一部抜粋』
かくして、勇者は王都より旅立てり。市民の惜しみ無い大歓声を背中に、漆黒の馬にまたがり颯爽と門を駆け抜け、外へと勇ましく進んでいった。
国王陛下はそれを無言で見送り、姫は名残を惜しむ様にその姿が見えなくなるまでいつまでもその場に立ち尽くされた。
男は口々に勇者の名を熱狂的に叫び、女はハンカチを振ってその門出を祝い見送る。
旅立っていくその勇姿は正に伝説の勇者に相応しきものなり……。

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 18:08:06.07 ID:nZITnjFWo
勇者「さあ、行くぞ、相棒!」パシッ
馬「」ヒヒーン
勇者「約束の期日まであと十日あまり」
勇者「お前の足なら、ゆっくり行ってもお釣りが来るぐらいだ」
勇者「途中の魔物に気を付けつつ、十五年前の約束を果たしに行こう!」
勇者「ひょっとしたら、約束を覚えているのは俺だけかもしれないが、それでも構わない!」
勇者「父さんと母さんに改めて挨拶をして、決意新たに魔王の城へと向かおう!」パシッ
馬「」ヒヒーン!!
パカラッ、パカラッ、パカラッ
勇者「いざ、魔王討伐の旅へ!!」

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 18:09:46.20 ID:nZITnjFWo
ここまで。また

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 19:36:07.76 ID:UMEmYJ6Ao
乙です

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 19:59:50.03 ID:ePTTanvRo
ここまで真面目にやってること自体が既にギャグになってる感すごい

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 20:02:22.51 ID:4MuzvSrjO
乙!

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 20:11:32.48 ID:D1cNa7W90
スレタイ想像しながらだとねw