Part12
337 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:00:44.21 ID:
GAxT1pDfo
地面に血でもって描かれた魔方陣が、注ぎ込まれる魔力に感応して、徐々に朱色に、緑に、黄金色へと変化していく……。
大魔導師「古より伝わりし、名も姿もなき魔神王よ……。黄泉と現世の狭間に降臨し、新たな世界を生み出せし、混沌と創造の大悪魔……」
大魔導師「血と我が魔力を贄に、その世界への扉を今ここに開けたまえ……。我らは祖を同じくする、闇の魔神の一族……」
大魔導師「敵でも味方でもなく、敵にも味方にもなる者……。混沌を好む魔神王よ。我らの呼び掛けに応えたまえ……」
その言葉が終わった直後、空間の揺らめきが魔方陣内に発生した。そして……。
フッ……
魔軍師「消えた……。魔王様と側近の姿が……」
大魔導師「」フゥ…… (額の汗を拭う)
大魔導師「異界送りの儀式は成功です。上手くいきました」
魔軍師「そうか……。これで当面の肩の荷は下りたが……」
魔軍師「問題は、次に魔王様がいつお戻りになられるか……。そして、その間、竜王軍との戦いに敗れぬ様にする事だな……」
魔軍師「各方面にいる魔将軍に伝えよ! 魔王様は予定通り、異界へと向かわれた! お戻りになるまで、各自奮起して持ち場を死守せよとな!」
魔兵士「はっ!!」
338 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:03:21.90 ID:
GAxT1pDfo
ー 同時刻、妖魔の森、最南端近く ー
大賢者「あれが……妖魔の森か」
大賢者「凄まじく広いんだな……。端から端が見えない。地平線一杯に広がってる……」
大賢者「それに、何て言うか……。見てて寒気がする……。こんなに遠くから見てるだけなのに……。おどろおどろしい……」
大賢者「流石、魔王城があるって言われてる森だ……。これは想像以上だけど……」
大賢者「恐れてばかりもいられないよな……。腕試しと様子見がてら、中に行ってみよう」
大賢者「」テクテク……
339 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:04:37.06 ID:
GAxT1pDfo
ー 妖魔の森、最南端 ー
闇死霊「……到着」フワッ (暗黒の霧から人型に)
焔鳥「」バッサ、バッサ (全長41メートル)
クラーケン「」ウネウネ (全長39メートル)
琥珀蝶「…………」バサバサ、バサバサ (全長34メートル)
雷獣「」ズダンッ (全長52メートル)
闇死霊「……ここから分担して攻撃。我は中央国」
闇死霊「焔鳥は、東の国」
焔鳥「SIGYAAA!」
闇死霊「クラーケンは南の国」
クラーケン「URYYYY!」ウネウネ
闇死霊「琥珀蝶は西の国」
琥珀蝶「…………」バサバサ、バサバサ
闇死霊「雷獣は北の国」
雷獣「GARRRRR!」
闇死霊「三日で人間を全滅。集合。二日で魔王城へ戻る」
闇死霊「では、散……」フワッ (暗黒の霧に変化)
闇死霊「む……? 向こうに人間?」
大賢者「っ! 何だ、この化物達は!!」
341 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:07:43.25 ID:
GAxT1pDfo
闇死霊「手始め。血祭り」
闇死霊「死の霧……」フッ……
闇死霊の体から暗黒の霧が放たれ、それはまるで生き物の様に大賢者めがけて近付いていく!
大賢者「っく! 即死系の霧か!?」
大賢者「結界魔法! 我を死神の鎌から守れ!!」フインッ
大賢者の周囲に光り輝く粒子が現れ、円を描く様に大賢者の体を包み込んだ!
闇死霊「……魔導師か。人間にしては高位」
闇死霊「面倒だ。焔鳥、雷獣。交代」
焔鳥「SIGYAAAAAA!!!」バサッ!! (全長41メートル)
雷獣「GAOOOOOOO!!!」ダダッ!! (全長52メートル)
大賢者「っ!!」(身長180センチ)
342 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:11:22.57 ID:1ChfMEE1O
180センチって書く必要あるのだろうかwww
343 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:15:10.57 ID:
GAxT1pDfo
巨大な二匹の生物が、大賢者めがけて襲いかかった!
片方は体が燃え盛る焔の怪物、もう片方は雷を身に纏った化物!
焔鳥はそのまま突撃してきた! その体は鉄をも溶かす高温! 最早、体自体が危険極まりない武器!
大賢者はすぐさま氷魔法を唱え、それで障壁を作る!
だが! それは横から放たれた雷撃によって瞬時に破壊された!
雷獣が口から吐き出した、魔力を伴った雷球だった。その間に焔鳥の突撃! 素早い! 逃げられない!
咄嗟に大賢者は右手で防御魔法を、左手で回復魔法を放った。だが!
気が付けば、大賢者の周りには琥珀蝶の鱗粉が舞っていた。魔法は放たれなかった。魔力そのものを無効化する特殊な鱗粉! それに大賢者が気付いた時には最早完全に遅かった!
「うぐあぁああぁっがっ!! ぎあっぐっがぁぁ!!!!」
焔鳥の灼熱の体が通過し、大賢者の全身を焼いていく! 熱さではなく最早痛み! 激痛!
そこへ雷獣からの雷撃! スパーク! 爆発! 大賢者が糸の切れた人形の様にその場に倒れこむ! そこへ、クラーケンの巨大な足が飛んできて、地面へと激しく叩きつけた!
クラーケンが足をどかした時にはもう、大賢者はその場で息絶えていた……。動かない……。亡くなった……。その魂は天へと召されていった……。
344 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:16:09.92 ID:wiBPY5f/O
絶対ジョジョ見てから書いただろw
345 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:16:29.28 ID:
GAxT1pDfo
闇死霊「多少、邪魔が入ったが……」
闇死霊「問題なし」
闇死霊「各自、人間を根絶やしに……」
闇死霊「散……」フワッ (暗黒の霧になって移動)
焔鳥「SIGYAAAAAA!!」バサッ、バサッ
クラーケン「URYYYYYYY!!」ウネウネ
琥珀蝶「…………」バッサ、バッサ
雷獣「GYAOOOOOOO!!」ダダダッ
大賢者「」…… (骸)
346 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:19:15.21 ID:kOKHV0Vw0
ジョジョじゃん
347 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:26:20.34 ID:j6biagpAo
地の文が完全にスピードワゴン
348 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:46:52.50 ID:VQvLt8Dq0
雑魚が忠告無視して調子にのるから…
349 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 20:56:36.38 ID:w/gd1zdFO
ステータス見たときからわかっちゃいたがこれ勇者の仲間すら雑魚だな
350 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 21:07:47.50 ID:
p/jXjTESo
ー 同時刻、西の国、小さな町 ー
女大富豪「ようやく着いたわね。予定より少し遅れてしまったかも」テクテク
秘書「そうですね。多少ですが」テクテク
馬車「」カッポ、カッポ
女大富豪「馬車一杯の魔結晶……。これだけの魔結晶を集めるには流石に手間取ったものね」テクテク
秘書「そうですね。買い占めとも誤解されてしまいましたし、入手がより困難になりましたから」テクテク
馬車「」カッポ、カッポ
女大富豪「最後らへんはかなり足元見られたしね。おかげで、財産の三分の一を使ったわ。まあ、必要経費だから仕方ないけど」テクテク
秘書「……国が動く金額なんですがね」テクテク
馬車「」カッポ、カッポ
女大富豪「いいのよ、別に。元からこの為だけに財を成したようなものだし」テクテク
秘書「はあ……」テクテク
馬車「」カッポ、カッポ
女大富豪「さ、着いたわ。私専用の特別研究所」ピタッ
秘書「はい」ピタッ
馬車「」ピタッ
女大富豪「行きましょうか。魔結晶は全部中に運んで」ガチャッ
秘書「はい」ゴトッ、ゴトッ (馬車に積まれた、魔結晶が大量に入った木箱を次々と下ろしていく)
馬車「」ブルルルッ (鳴き声)
351 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 21:09:24.96 ID:
0dO/pMb8o
ID変わってまったけど>>1
ここまで
352 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 21:25:11.78 ID:YhWYoQB60
乙です。
これ大賢者マジか?なんかで復活するのかどうか……てか仲間が本当に集まれるのか疑問になってきたな。
353 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 21:55:05.21 ID:Stul08nvO
乙
362 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:18:11.97 ID:
WzQzbLsqo
ー 翌日。鉄鉱の町、門付近 ー
勇者「それでは、相棒共々お世話になりました」
馬「」バルルルッ
町長「いえ、お世話になったのはこちらでございます。勇者様がいなかったら、この町は滅んでいたかもしれませんので……」
兵士A「そうです! あんな化物をよくぞお一人で倒して下さいました! 感謝の言葉もありません!」
兵士B「この町の者は全員、勇者様から頂いた御恩を忘れません! 改めて、ありがとうございます!」
勇者「元騎士隊長として当然の事をしただけだよ。それに戦闘になってしまったのは、見つかった俺の責任だからね」
町長「なんと勇者様らしきお言葉……。功を誇らず恩を売りもしない……。誠に貴方こそが真の勇者様でございます」グスッ
神父「まったくです。女神様と勇者様に感謝を……」
363 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:19:12.96 ID:
WzQzbLsqo
勇者「神父様も、どうもありがとうございます。昨日は無理を言って、相棒にまで回復魔法をかけて頂きまして」
神父「いえ。勇者様の愛馬となれば、それぐらいはお安い御用ですとも。それよりも、体調の方は大丈夫でしょうか?」
勇者「ええ。おかげさまで。自分でも回復魔法を使いましたし、万全とは言いませんが、傷はもう完治しています」
神父「ですが、本来ならもう何日か治療を要する怪我です。疲労などは完全に抜けてはいないはずですので……。やはり、もう少しここに滞在した方が良いのではないでしょうか?」
勇者「生憎、そうもいかないんです。とある約束をしていて、のんびりしていたら、その期日までに間に合わなくなってしまう」
神父「そうですか……。仕方ありませんね……。ですが、お気をつけて。人馬ともに決して無理をなさらないように」
勇者「ええ。御心配ありがとうございます」
神父「……しかし、我々、僧侶以外で回復魔法を使える方がいるとは思いませんでした。やはり、女神様の加護を受けておられる勇者様なのですな」
勇者「自分でも驚いてます。ですが、自信にもなりました。旅をする上でも役立ちますし、ありがたい事です」
神父「ええ。貴方にこれまで以上の女神様の加護があらん事を……」
364 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:20:28.38 ID:
WzQzbLsqo
勇者「それでは、行ってきます。皆さんもお元気で」
町長「勇者様も、どうか御無事で」
兵士A「ご武運を!」ビシッ (敬礼)
兵士B「お祈りしております!」ビシッ (敬礼)
神父「お気をつけて……」
勇者「行くぞ、相棒」ヒラリ
馬「」ヒヒーン
兵士A「勇者様の旅立ちだ! 開門! 開門ーっ!!」
兵士B「鐘を鳴らせー! 勇者様の御無事を祈れーっ!!」
カラーン、コローン、カラーン、コローン
ギギギギィィ…… (門が開く)
勇者「どうもありがとう。いつかまた」
勇者「さあ、出発だ、相棒!」タンッ
馬「」ヒヒーン!
パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……
【英雄譚、『伝説の勇者』より、一部抜粋】
かくして勇者は、鉄鉱の町から旅立つ
町の危機を未然に防ぎ、更には町の発展に貢献せり
町の者は勇者が去った後も、こう語る
彼こそ、魔王を倒す伝説の勇者に相違なしと……
365 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:21:11.48 ID:
WzQzbLsqo
ー 街道 ー
勇者「予定より、ずいぶん遅れてしまったからな」
勇者「途中で休憩を挟みつつも、飛ばしていくぞ、相棒!」タンッ
馬「」ブルルルッ!!
パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ!!
一角ウサギA「キュイ!!」
一角ウサギB「キュキッ!!」
【一角ウサギA、Bが現れた!】
勇者「押し通るっ!」ザシュッ、ズバッ
一角ウサギA「」ドサッ
一角ウサギB「」ドサッ
体力:8→0
四つ目カラス「ガァー! ガァー!」バサッ、バサッ
【四つ目カラスが現れた!】
勇者「はっ!」ザシュッ
四つ目カラス「」ドサッ
体力:19→0
パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ……
366 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:22:10.18 ID:
WzQzbLsqo
【古書、『勇者伝記』より一部抜粋】
その後、勇者は途上で何回か小さな町に立ち寄って宿泊しつつ、通常は六日の道程を四日で駆け抜けた
この頃には、勇者は自分が勇者である事を秘匿して旅をする様になっていたので、具体的にどこの町に立ち寄ったかまでは不明である
あるいは、木や枝を使って布を張り、野宿した可能性も否定出来ないが、一人旅の為、恐らくそれは選択しなかったと思われる
※『注釈』
当時は魔物が至る所に跋扈していた為、旅の途中で野宿する人間はほとんどいなかった
夜間の方が魔物の動きが活性化するし、暗闇である為、敵に気が付きにくいからというのがその理由となる
その為、馬で都市と都市とを点々と繋ぎながら旅をするのが一般的だった
どうしても野宿をする場合は、まず周りに聖水(アイテム)を振り撒き、焚き火をしながら交代で見張りをするのが基本となる
そして、勇者は生まれ故郷の比較的近くにある大都市、『商業で栄える町』へと辿り着く……
367 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:23:50.27 ID:
WzQzbLsqo
ー 商業で栄える町 ー
勇者「さて、宿屋に荷物や鎧とかは全部置いてきたし」
勇者「少し早いが、軽く酒場に行って英気を養うか」テクテク
勇者「ここから、俺の生まれ故郷までもう少しだ。明日にはきっと辿り着ける。丁度、約束の日だ」
勇者「みんな、あの木の下で待っていてくれてるんだろうか……」
勇者「別に戦士や僧侶とかになってくれなくててもいい。パーティーとか組まなくてもいい。みんなが普通に生活をしてて、元気に暮らしてくれてたらそれでいいんだ」
勇者「約束を覚えていて、待っていてくれるだけで嬉しいから」
勇者「ひょっとしたら、もう誰か結婚してるかもな……。結婚してても全然おかしくない歳だしな。もしかしたら子供もいるかもしれない」
勇者「明日が楽しみのような、誰もいなかったらどうしようみたいな……不思議な感覚だな……」
勇者「今日は何だか強いお酒が飲みたい。興奮して眠れなくなりそうだし」
勇者「でも、良い夢が見れそうな、そんな気分だ……」
勇者「本当に……」
勇者「明日なんだな……約束の日が」ソッ
ギィ……
カランカラーン
「いらっしゃいませー」
368 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 17:25:09.48 ID:
WzQzbLsqo
ー 酒場 ー
女店主「いらっしゃい。ご注文は?」
勇者「ウイスキーを。あと、オススメ料理を幾つか。予算は銅貨10枚以内で」
女店主「あいよ。にしても、お客さん、その注文の仕方ずいぶん手慣れてる感じがするね。旅の人かい? それも結構、旅慣れてる方でしょ? 賞金稼ぎか何か?」
勇者「まあ、そんなところかな」
女店主「そう。なら、懸賞金がついてる魔物の情報はいる? こっちは銅貨2枚で教えるけど」
勇者「いや、それはいいよ。それより、何か日持ちしそうでかさばらない食材を沢山包んでくれないかな。こっちは銀貨1枚出すから」
女店主「そりゃありがたいね。にしても、銀貨1枚分ってやけに気前がいいじゃん、結構な量になるし。そんなに長旅になるの?」
勇者「いや、昔の馴染みや知り合いにお裾分けしたいんだ。これから生まれ故郷に戻るものだから」
女店主「ああ、なるほどね。お土産か。それじゃ、保存のきく干し肉とかがいいかな。それでいいかい?」
勇者「いいよ。よろしく」
女店主「はいよ。おーい、キッチン。オーダーだよ。パンと特製ビーフシチュー、あと鴨のソテー。それから、干し肉を銀貨1枚分包んでおいて」
「へーい!」
女店主「あとウイスキーだったね。割るかい?」
勇者「いや、ロックでいいよ」
女店主「それじゃあ、グラス」トポトポ、トンッ
勇者「ありがとう」