Part10
283 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:50:32.85 ID:
Lh9hCcAyo
キメラ「ウォォォォッ!!」ダダッ
勇者「くそおおおおおっっ!!」(剣を構える)
キメラ「グオオンッッ!!」ガブッ!! (体に噛み付き)
勇者「ぐああああああああああっ!!!」メキョッ、バキッ
キメラ「ガウルッ!!」グググッ (顎に力を込める)
勇者「あっ! ぎあっ!! いぎゃああああああっっ!!」メキッ、ゴキッ
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:51:32.45 ID:
Lh9hCcAyo
勇者の体に巨大な牙が深々と食い込み、力任せに潰されていく。
骨も折れただろう、内臓も相当やられただろう、余りの痛みに脳が壊れそうになり、目の前の景色が一気に色を失っていった。
これが『死ぬ』という事なのか……。
薄れゆく意識の中で、ふと勇者の頭の中に次々と過去の光景が映し出されていった。
ああ、これが走馬灯というやつかと、勇者はぼんやりとそれを見つめていた。
少年B「せやっ!」ブンッ (木剣を振る)
子供勇者「当たるかっ! それっ!」ベシッ!!
少年B「うぎっ!! っ痛ーーー!!!」ピョン、ピョン
子供勇者「やったね! また、俺の勝ちだよ!」
少年B「ちっくしょー! 何でいっつもお前に勝てないんだよ!」
子供勇者「そりゃ、そうだよ。少年Bって、目でどこ狙ってくるかすぐわかるし!」
少年B「目って何だよ! そんなん俺、わかりゃしねえぞ!」
子供勇者「わかるって。目とか見てたら、多分ここ狙ってくるんだなあ、みたいなのが」
少年B「わかんねえよ! そんなのお前だけだ! ちくしょう、もう一回勝負だ! 覚悟しろ!」サッ
子供勇者「いいよ! でも、絶対負けないから!」サッ
「「そりゃ!!」」
カンッ、コンッ、カンッ
ベシッ!!
「っ痛ーーーーー!!! またかよ、ちくしょう!」
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:52:40.20 ID:
Lh9hCcAyo
少女A「ふふ……。ここをこうして……。これはこっちのがいいかな……?」ゴソゴソ
子供勇者「あれ、少女A。何してるの?」
少女A「あっ、見ちゃダメ……。秘密なんだから」サッ
子供勇者「えー、そういうの気になる」
少女A「気になってもダメ……。もうすぐ出来上がるから、その時に教えてあげる」
子供勇者「ホントに?」
少女A「ホント」
子供勇者「なら……待ってる。後ろ向いてればいい?」
少女A「うん」ニコッ
「出来たよ。お待たせ。ほら」ポフッ
「え? これ、花冠?」
「ううん、兜。子供勇者にあげたいと思って作ったの。……大事にしてね」
「兜なんだ。これ、カッコいい? 勇者みたい?」
「うん。勇者みたい」
「やった! ちょっと、お母さんに見せてくる!」
「あっ、待って、私も行く! 置いてっちゃやだ!」
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:53:32.59 ID:cLmF045So
主人公の聞きなのに茶番にしか見えないというこの
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:53:39.72 ID:
Lh9hCcAyo
少女C「川の向こう? そっちに行くの?」
子供勇者「うん! イチジク見つけたんだ! だから行こう!」
少女C「イチジク! あたしも食べたい。でも、他のみんなは誘わなくていいの?」
子供勇者「だって、危ないから。少女Cじゃないときっと無理だし。だから、みんなには秘密だよ」
少女C「秘密はいいけど、あたしじゃないと無理ってどいう事?」
子供勇者「ほら、ここ。あそこの川の上に出てる石を飛んでくんだ。見ててね」
子供勇者「よっ、それっ、もう一回っと」ピョン、ピョン、タンッ
少女C「うわ、上手……」
子供勇者「ほら、少女Cも」
少女C「え、でも……」
子供勇者「大丈夫。少女Cなら出来るよ。すっごい身軽じゃん」
少女C「う……。わかった。ちょっと怖いけど……」
「せーのっ」
「それっ、わっ、きゃあっ、っとっと」
「ほら、やっぱり! 少女Cなら絶対出来るって思ってた!」
「ホントだ……! スゴい、あたしスゴいかも!」
「じゃあ、行こう! ここ越えたらすぐだから!」
「うん! 二人でいっぱい食べようね!」
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:55:29.55 ID:
Lh9hCcAyo
子供勇者「蛇の脱け殻?」
少年D「そう。昨日、見つけたんだ。子供勇者も見に行く?」
子供勇者「何かちょっと気持ち悪そう」
少年D「じゃあ、やめる?」
子供勇者「でも、気になる」
少年D「だよね。みんな見たくないって言ってたけど、子供勇者だけはそう言うって思ってた。じゃあ、やっぱり行くよね?」
子供勇者「うん……。行く。で、どこで見つけたの?」
少年D「内緒だよ。村の柵の外に出ちゃうから」
子供勇者「え、それまずいよ。っていうか、外に出たの、昨日?」
少年D「うん。だから内緒。小さな抜け穴見つけてさ。そこからたまに外に出るんだ。そんなに遠くまで行かないけど」
子供勇者「見つかったら物凄く怒られちゃうよ」
少年D「その時はその時」
子供勇者「見かけによらず、こういう悪さするよね、少年Dって」
少年D「だって、外の世界って気になるじゃん。大きな柵で囲ってて、まったくわかんないしさ。だから、見たくなるんだよ。大人になるまで待ってられないもん」
子供勇者「それはわかるけど……」
「実は、この前、魔物も見たんだ。これは本当に内緒だからね」
「え! どんなんだった! 何を見たの!? スライム!?」
「うん。スライム。急いで逃げてきた」
「そっか、スライム見たんだ。いいなあ、俺も見たい。そして、倒したい」
「勇者とか魔物の事とかになると、僕以上に食いつくよね、少年勇者って」
「だって、俺、勇者になりたいもん!」
「そうなんだ。でも、僕は魔法使いになりたいなあ。そして、いつかは賢者になって、世界中を見て回るんだ。行けるんだったら、妖魔の森だって一度行ってみたいし」
「妖魔の森って?」
「ああ、それはね……」
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:56:51.51 ID:
Lh9hCcAyo
少女E「あーあ、今日は雨降りかあ……。つまんないね」
子供勇者「そう思ってさ、これ、持ってきたんだ」
少女E「本……?」
子供勇者「うん、この前町長さんから借りたんだ。冒険のお話。ほら」パッ (本を広げて挿し絵を見せる)
少女E「面白そう……。でも、子供勇者、この本読めるの? 難しい言葉でいっぱいなのに……」
子供勇者「お父さんとかに聞きながら、ちょっとずつ読んでる。もう半分まで読んだんだよ」
少女E「そうなの? どんなお話? この子、お姫様?」
子供勇者「うん、そうだよ。お姫様がお城の外に出ちゃって困ってるところを、この主人公が助けるんだ。それでね」
少女E「あ、待って。出来れば、私も読みたい。だから先に言わないで」
子供勇者「じゃあ、一緒に最初から読む? わからない言葉が出てきたら教えてあげるから」
少女E「うん! 読む。そうする」
「そういえば、子供勇者って、本、好きなの?」
「うん。好きだよ。外で遊ぶのも好きだけど、本を読むのも好きなんだ。だって、読んでてワクワクするから。大きくなったら、絶対、俺もこんな冒険するんだ」
「勇者になって?」
「うん! 勇者になって! それで、みんなと冒険の旅に出るんだ! もう約束してるし!」
「私も、一緒に行きたい……って言ったら、仲間に入れてくれる?」
「もちろん! 少女Eも大切な友達だもん!」
「そっか……。良かった。なら、私もがんばるから」
「うん!」
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:57:50.71 ID:
Lh9hCcAyo
「今日は、お父さん、お母さん……遅いな。まだ帰って来ない」
コンコン
「あ、やっと帰ってきた! お帰りなさい!」ガチャッ
「……子供勇者」
「おじさん……? どうしたの? 何か顔が真っ青だけど……」
「落ち着いて……よく……。よく聞いてくれ」
「え? うん……」
「昨日、大雨が降っただろ。それで……。お前の畑の近くで、ついさっき……」
「…………」
「土砂崩れが……あって……。お前のお父さんとお母さんが……そこで畑仕事してて……」
「!!」
「土砂をどけた時には……もう……」
「お、お父……さん……と……お母さん……は……?」
「天国に……。行ってしまった……」
「あ、う……あ、あ、ああああああああ!!」
291 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 17:59:58.39 ID:
Lh9hCcAyo
コンコン、コンコン、コンコン、コンコン
「ぇぐっ……ぅっ、ぅっ……」
ギィッ……
「鍵もかけてないのか……」
「あ……。騎士さん……ぅぐ……」
「あいつが亡くなったという報せを聞いてな……王都から飛んできた。残念な事に……葬儀には間に合わなかったがな……」
「ぅ、ぇぐっ……ぅぅっ……」
「墓にあいつの好きだった酒を供えておいた……。天国で飲んでくれてるといいが……」
「……ぉ、お母さんも……一緒に」
「わかってる……。良い人を亡くした。本当に、良い人間ほど早く亡くなる……。何でなんだろうな……」
「だから……お、俺……一人になって……。と、遠くの町の……教会に……。ぃ、行かなきゃ……ならなくなったって……。そう……言われて……」
「ああ……聞いたよ。去年も今年も冷害が続いてるからな……。どこも余裕がないんだろう……」
「ぃ、行きたく……ないっ……。この家も……離れたくない……。なのに……。みんなと……一緒にいたいのに……。行かなきゃ……いけないって……ぃ、言われて……」
「……それなんだが。良かったら……俺の家に来ないか?」
「ぅぁ、騎士さんの……家に……?」
「ああ、王都だから遠くに行かなきゃいけないってのは変わりないんだけどな……。だが、教会に孤児として引き取られるよりはいいだろう。あそこの生活は辛いと聞いているからな……」
「ぅう……ぅっ……」
「それに、うちにはお前と同じ歳ぐらいの娘がいる。きっと寂しくはないぞ。少しおてんばだから、お前と気が合いそうだしな」
「ほ……本当に……いいの……?」
「ああ、遠慮せずに来い。気にするな」
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:01:22.22 ID:
Lh9hCcAyo
「……みんな。……そういう訳で、俺、王都に行く事になったから……。だから、もうみんなとは……」
「何でだよ……。俺、お前にまだ一回も勝った事ないのに……!」
「やめなよ……! 少年勇者のせいじゃないでしょ! 辛いのはみんな同じよ!」
「見送らないと……。僕たちは何も出来ないんだから……」
「ぅっ、うあ……」
「泣かないでよ。泣いたら、私まで……ぅぅ」
「俺も……。みんなと離れたくない……。だけど、だけど……。う、ぅぁ……」
「いやだ……。そんなの俺はいやだ……! もっと一緒にいたいのに……! これでお別れなんていやだ!」
「もう会えなくなるなんて……。わたしもいやだよ……! また帰ってくるんだよね……? でなきゃ、でなきゃ……」
「また会えるよね……! そうでなきゃ……あたしもいや……!」
「だって……! 僕たち、仲間なんだから……!」
「また、きっと……。きっとじゃなくて、絶対に……ぅぅ」
「うん……! 絶対にまた……会おう……! 大きくなって大人になったら、絶対にまた俺はこの村に帰ってくるから……!!」
「だから、その時は……! この木の下で……!! もう一度会おう……!!!」
「その時、俺は……勇者になってるから……!! 絶対に勇者になってるから!! それまでみんな、待ってて……!!!」
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:02:13.78 ID:
Lh9hCcAyo
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そんな約束……してたのに……。
一体……何してんだよ……俺は……。
こんなんじゃ……勇者失格だ……。勇者だって……名乗れない……。
子供の頃からずっと……。ずっと聞かされてきたのに……。
勇者は諦めない……。
勇者は挫けない……。
だから、勇者は不可能を可能にするんだって……。
そう……俺は……こんなところで……死ねない……。
死んじゃいけない……。
あの木の下で……。
みんなが……。
きっと待ってるから……!
294 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:03:03.04 ID:
Lh9hCcAyo
『勇者よ……』
『聞こえますか……勇者よ……』
『貴方にこの世界の命運を託します……』
『この世界を正しい方向に導けるのは、世界にたった一人……。貴方しかいないのです……』
『今の私は封印されし身……。加護と祝福を与える以外、ろくな力を持ちません……』
『ですから、どうかお願いします……』
『魔王を倒し、必ずやこの世界に平和をもたらして下さい……』
『頼みましたよ……勇者よ……』
『負けないで……』
295 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:04:01.03 ID:
Lh9hCcAyo
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キメラ「ガルルルッ!!」ガギッ (噛み砕こうと更に力を込める)
勇者「ぅっ……がはっ……!!」ボキッ、メキャッ!!
その時の勇者は、ほとんど意識のない状態だった。
だが、手が、口が、体が、勝手に動いていた。
勇者「女神……よ……迷える……子羊に……祝福の光を……」パァァッ (回復魔法)
体力:1→29
キメラ「!?」
勇者「あぐっ!! ぬぐあああっ!!」ググッ (牙を掴んで持ち上げていく)
キメラ「!!??」
296 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:05:01.85 ID:
Lh9hCcAyo
勇者「俺は……!! もう諦めない……!!」グギギギッ!!
勇者「約束一つ果たせない勇者なんか……勇者と呼べない!!」グギギギッ
≪ 次に会う時は絶対にお前に勝ってやるからな! ≫
勇者「ああ……。わかってる……。決着……つけないとな……!」グギギギッ!!
≪ 約束……。忘れないでね……。またここで会うんだよ……! ≫
勇者「忘れる訳……ないだろ……! ずっと覚えてた……!」グギギギッ
≪ そして、あたしらで魔王を倒す冒険の旅に出るんだ! ≫
勇者「そうだよな……! なのに、俺がここで死ぬ訳にはいかないよな……!!」グギギギッ!!
≪ みんなで世界中を旅するんだよ! ≫
勇者「ああ……! 楽しみにしてるっ……!!」グギギギッ!!
勇者「ぬああっっ!!!」メキョッ、バキッ!! (牙をへし折る)
キメラ「グオアギガアアアアッッ!!!」ビクッ
≪ そして、世界を平和にするの! 私たちで! ≫
勇者「約束だっっ!! 絶対に果たす!!」ドスッ!! (剣を突き立てる)
キメラ「ギアアアアアアッッ!!」
勇者「雷よ! 我が剣に宿れ!!」バチバチッ!!
勇者「とどめだっ!!」
『魔法剣!! 雷 鳴 閃 !!』
297 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:06:01.52 ID:
Lh9hCcAyo
剣が煌めき、雷撃を伴って一閃された。
その剣はキメラの固い皮膚を斬り裂き、そしてーー。
一瞬の事だった。これまでの長い攻防がまるで嘘だったかの様に。
勇者の剣がキメラの体を一刀両断にした。
ズバッ!!
キメラ「ガ……!! ギッッ…………」ドサッッ
体力:51→0
勇者「倒した……! どうにか……勝てた……!!」ガクッ (膝から崩れ落ちる)
『勇者の強さが上がった!!』
【伝説の勇者】
『体力 :197
攻撃力:112
防御力:106
魔力 : 73
素早さ: 85』
↓
【伝説の勇者】
『体力 :204
攻撃力:115
防御力:110
魔力 : 77
素早さ: 87』
『勇者は回復魔法を覚えた!!』
回復魔法(弱)
『勇者は雷魔法を覚えた!!』
雷魔法(弱)
『勇者は魔法剣を覚えた!!』
雷斬り、炎斬り、氷斬り
298 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:06:28.97 ID:
Lh9hCcAyo
ここまで
299 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:08:18.68 ID:cLmF045So
乙
焼け石に水…
302 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:29:20.87 ID:ZjK/nS4uo
乙
オチがわかってる分シリアスがギャグに見える
303 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:34:42.61 ID:45IhySiKO
シリアスな展開なのに、ステータスのせいで茶番にしか見えないwww
レベルが上がっても、スズメの涙か…文章だけ見ると、レベルが1から10くらいいっきに跳ね上がった風に見えるけど
304 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:35:54.82 ID:kzK/iZ1k0
オチがどうとか考えずに普通に楽しんじゃってる
良いよここまでの展開
305 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 18:44:32.07 ID:DqbGAniI0
勇者には死に戻りの能力があるから(震え声)