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魔法使い「え、えろ魔道士です…」
Part2


27 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 05:39:12.37 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「ひぇっ…!ちょっ、ちょちょちょっとまって!」
俺は涙目で命乞いをする魔法使いを無視し問答無用で刃を彼女に振り下ろした…つもりだった。
勇者(!)
また頭痛が強くなった。
手は勝手に刃を振り下ろすのを止めた。
魔法使い「ひっ、ひぇぇ…」
勇者(馬鹿な…この感じ、俺自身がこいつを殺すことを躊躇した?)
勇者(これも呪いの力だと言うのか)
勇者「手がぶれた。次はない」
もう一度剣を上に振り上げたときだった。

28 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 05:40:25.99 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「ひっ、解きます!解きます!解けるようにしますっ!だっ、だから殺さないで!殺さないでくださぃ!お願いいたします!」
今更何をいっているんだこいつは。
勇者「だがお前は他の魔法は全く使えないのだろう?それともなんだ、自害でもするのか?」
魔法使い「た、旅に同行させてください!ももももしかしたら旅の中で魔法を解く手がかりが見つかるかもしれませんし、勇者様の隣に私を置いておけばいざとなったときいつでも私を殺せるでしょう!?」
魔法使い「だっ、だから、今殺すのは勘弁してくださいぃ…」
勇者「なるほど。だがお前を連れて行って俺に利はあるのか?」
魔法使い「あっ、あります!あります!多分あります!」
勇者「多分?」
魔法使い「す、すみません!絶対いいことあります!ありますからぁっ!」
勇者(必死すぎるだろ…)
勇者「はぁ…分かった」
見事なまでの命乞いだ。
さすがの俺も同情してしまった。

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 05:41:06.59 ID:pXI/sN9x0
勇者「では、今からもう出発するとしよう。立て」
魔法使い「あ、あのうすみません。一度王都に帰っていいですか?」
勇者「何を言う。俺は一刻も早く魔王を撃たなければ………そうかそういうことか。ここはなんとか凌いでこの俺から逃げようというわけだな?そうはさせんぞ」
魔法使いの手を引いて無理やり立たそうとする。
魔法使い「まっ、まってくださ…い、いやあ…」
立ち上がった魔法使いは俺に引かれていないもう片方の手でスカートを抑えていた。
勇者「……?」
魔法使いの足元を見てみると彼女の座っていた地面だけが水分を吸って黒くなっていた。
勇者「お前もしかして…」
魔法使い「いやぁ…ぐすっ…もぅお嫁に行けませんよぉ…」
勇者「……」
クソ魔道士というのには語弊があったようだ。
クソじゃない方の魔道士の間違いだった。

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 05:41:58.53 ID:pXI/sN9x0
勇者(結局また一日伸びてしまった)
魔法使い「勇者様〜!お待たせしました!」
勇者「遅いぞアホ魔道士」
魔法使い「すみません。お師匠様に挨拶してまして」
勇者「師匠?」
魔導師「まさか本当に私の弟子が駆り出されることになるとは思いませんでした。弟子のことを頼みましたよ。勇者殿」
魔法使いのいた宿から出てきたのはなんと魔導師殿だった。
勇者「これは驚きました。まさかこいつに貴方のような優秀な師がついているとは…」
魔導師「まぁその様子なら勇者殿は魔法使いの毒に当てられることもなさそうで安心です」
勇者「毒?」

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 05:42:45.46 ID:pXI/sN9x0
魔導師「この子は大量の魔力をまだコントロールできていなくて常に垂れ流してる状態なんですけどその魔力一つ一つに誘惑の力が込められているのです」
勇者「は、はぁ…」
勇者(また面倒に巻き込まれそうな体質だな)
魔法使い「すみません…」
勇者「もういい、では出発するぞ垂れ流し魔道士」
魔法使い「変な呼び方いっぱい作らないでくださいよぉ〜!それではお師匠様、行ってきます!」
魔導師「達者で」
魔導師(必ずや、生きて私の元に帰ってきてくれ…魔法使い)
魔導師殿は優しい微笑みで俺たちを見送ってくれた。

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 05:43:26.44 ID:pXI/sN9x0
魔法使い「い、いざ魔王を倒しに冒険に行くとなるとなんだかドキドキしてきました…」
勇者「この旅は遊びではないぞ」
魔法使い「分かってます!」
魔法使いはフンスと鼻息を出しながら何処かの軍人のような敬礼をして答えた。
旅仲間ができるのなら己が実力を認めた者だけと決めていたがいきなり例外を出してしまうとは…
我ながら情けない。
勇者(いや待て)
旅仲間ではなくかけられた呪いも含めお荷物と考えればノーカンか。
勇者(さっさと何処かで捨てられるといいな)

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 09:50:21.48 ID:UT8CumWq0
そのお荷物、言い値で買い取ろう

34 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 10:56:01.46 ID:BErtjPvHo
うらやまけしからん

35 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/20(土) 11:33:57.00 ID:Qo1ssE8dO
期待

38 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:43:19.36 ID:0zMHN2Vm0
旅が始まって一週間ばかり過ぎた。
ファング「グルァ!」
勇者「ふっ!」
俺たちはファングに遭遇し戦闘をしていた。
ファング「グルッ!?」
勇者「鋼の味は美味いか?」
最後の一匹の牙を剣で受け止める。
勇者「今だ!やれ!」
魔法使い「ぼ、ぼむふぁいあ!」
魔法使いが炎の魔法を唱える。
が、
魔法使い「えいっ!えいっ!ああ…ダメダメです…」
相変わらず炎は放たれることなく魔法陣は消え失せた。

39 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:44:44.80 ID:0zMHN2Vm0
勇者(やはり無理か…)
彼女の攻撃魔法で止めをさすことを諦めた俺はいつものようにファングに蹴りを入れ、真っ二つに切り裂いた。
勇者「…はぁ」
魔法使い「す、すみません」
もう何度目になるか分からない謝罪を回復魔法を使いながら聞き流しす。
勇者「行くぞ」

40 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:45:50.78 ID:0zMHN2Vm0
…………
勇者「お前は魔導師殿から一体何を教えてもらったんだ」
魔法使い「攻撃魔法とか補助系の魔法とかそれはもういろいろ教えてもらいましたよ」
魔法使い「全部できなかったんですけどね…えへへ」
勇者「よくそれで魔道を志すことをやめなかったな」
魔法使い「ええ、私はお師匠様の側に居なければ生きていけませんでしたから…」
勇者「どういう意味だ?」

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:46:55.37 ID:0zMHN2Vm0
勇者「どういう意味だ?」
魔法使い「私、お師匠様と出会う前の記憶がないんですよね。気がついたときにはもうお師匠様の隣にいて…お師匠様は私の親のような人なんです」
勇者「…お前も本当の親がいないということか」
魔法使い「それすらも分からないんです。私の記憶は10歳からなんでそこまで私を育ててくれた人がいると思うんですけど」
勇者「10とはお前にとってはかなり最近の話だな。なんだどこかで頭を打ったか?そのときに記憶と共に賢さすら失ったか」
魔法使い「酷いこと言いますね…いや確かにそうかもしれませんが!」
勇者(自分が馬鹿だという自覚はあるようだな)

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:48:01.21 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「森の中にいたんです…」
勇者「森の中?」
魔法使い「はい。森の道でただ一人座っていたんです」
魔法使い「そこに涙で目を赤くしたお師匠様と出会って、家とか名前とかいろいろ聞かれたんですけど名前しか答えられなかった私を見てお師匠様は『お前も一人なのか。私も一人になってしまったんだ。よかったら私に付いてこないか』って言ってくれて…」
勇者「今に至るというわけか」
魔法使い「変な話ですよね。でもそこって魔王城の近くだったらしいんですよ。だから勇者様について行こうって決意できたのは実はそこまで行けたら何か思い出せるかなっていうのもあったんです」
勇者「は?」
今聞きづてならないことを聞いてしまった。

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:48:58.99 ID:0zMHN2Vm0
勇者「クソ魔道士、お前魔王城まで付いてくるつもりなのか?」
魔法使い「え?だってそのための旅なんですよね?」
勇者「俺は呪いが解けたらお前を適当なところで捨てるつもりだったんだが…」
魔法使い「えぇ!?そ、そんな…冗談ですよね?」
勇者「悪いが冗談ではない。今は何もできないお前を俺が守りながら戦う形になっているがこの戦い方はあと二つ三つも村や町を抜ければ通用しなくなるはずだ」
勇者「魔王城まで付いてくるつもりならそれまでに攻撃魔法を使えるようにしておけ」
魔法使い「ふぇぇ…四年も修行して無理だったのにそんなの無茶振りですよぉ…」
勇者「口答えするな。俺はお前をここで殺すことだってできるんだぞ?」
剣を抜いて魔法使いに向けてみせる。
魔法使い「ひッ!はひぃ!使えるようにします頑張ります!だからそれだけは…」
勇者(相変わらず必死だな)
勇者「そら、村が見えてきたぞ」
魔法使い「は、はぃ…」

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:49:41.44 ID:0zMHN2Vm0
村に着いて宿を取る。
すると受付の中年の男に妙なことを言われた。
中年「あんたが噂の勇者様か。連れのお嬢ちゃんもお強いのかい?」
魔法使い「わ、私は…」
勇者「まったくの雑魚だ」
魔法使い「あぅ」
中年「そうなのかい。お嬢ちゃん可愛い顔してるし、気をつけろよ」
何をだ?
勇者「……」
魔法使い「?」
横目で魔法使いの方を見るも彼女も何の心当たりもないようで首を傾げていた。
勇者「何の話だ」

45 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:51:17.53 ID:0zMHN2Vm0
中年「実はな、この辺で最近人喰いの豚の亜人が暴れてるんだ」
勇者「人喰いだと?」
中年「ああ、それも若い女ばかり狙うゲス野郎だ」
魔法使い「ひぇっ」
勇者「なるほどそういうことか」
もしかしたら魔王の力の一部を受け取った残党かもしれん。
勇者「その話、引き受けよう。そいつは俺が斬る」
中年「それは本当かい!?本当は俺からも討伐をお願いしたかったんだが勇者様は先を急ぐ身だ、無理は言えねぇって思ってたんだが…」
勇者「何の罪もない者たちが襲われているのを放ってはおけん」
魔法使い「私も罪はないと思うんですけど〜…」
小さな声で魔法使いが横槍をいれた。
勇者「お前は俺に呪いをかけただろ」
魔法使い「うぅ」

46 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:52:15.93 ID:0zMHN2Vm0
中年「じゃあさっそく今日の夜からお願いするぜ勇者様。あいつは夜に若い女のいる場所に忍び込むんだ」
勇者「ああ分かった。おい呪い魔道士、今のうちに寝て夜に備えておけ」
魔法使い「はい…」
俺は魔法使いに準備を促し、部屋に入った。

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:52:46.94 ID:0zMHN2Vm0
第2章
人喰いの夜

48 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:53:22.38 ID:0zMHN2Vm0
「…さま」
「…しゃさま」
「ゆーしゃさまぁ…」
勇者「ん、んん…」
大分日も落ちて外も薄暗くなってきたころ、誰かの声で目が覚めた。
勇者「なんだ?」
目を開けるとそこにいたのは枕を抱えた魔法使いだった。

49 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:54:26.59 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「勇者さまぁ…」
勇者「どうした?例の亜人がでたのか?」
魔法使い「そうじゃないんですけど…あの、私も一緒の部屋で寝ていいですか?」
何を言っているんだこいつは。
勇者「お前の部屋は別で取っておいたはずだが?」
魔法使い「だ、だだだだってぇ…怖いじゃないですかぁ。私の部屋にいきなりその亜人が出たら私何もできずに食べられちゃいますよぉ…」
勇者「それはお前が死ぬということか?」
魔法使い「そうですよ死んでしまいますよ」
勇者「それは幸運だな。お前を守りながら戦うこともなく呪いも解けていいことづくめだ」
魔法使い「酷い!」
勇者「だから大人しくあっちの部屋で寝ろ」
魔法使い「お願いします!ここで一緒にいてください!」
ベッドの下で土下座する魔法使い。
勇者(こいつにはプライドというものがないのか?)

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:55:21.36 ID:0zMHN2Vm0
ベッドを降りて魔法使いの前にしゃがむ。
魔法使い「実は私寝相には自信がある方なんです!絶対に勇者様の邪魔にはなりませんのでどうか!」
勇者「俺はお前に起こされて目が冴えた。そこで好きなだけ寝てろ」
魔法使い「え!?それじゃあ意味がないじゃないですか!」
勇者「何がだ」
魔法使い「ここにいてくれないと…」
勇者「じゃあお前のアホみたいな寝づらをじっくりと拝んでやるから安心して寝ろ」
魔法使い「うっ、それは恥ずかしいですけど仕方ありませんね。ありがとうございます」
勇者(ここまで俺の前に散々醜態を晒しておいてこれ以上何を恥ずかしがることなんてあるのか?)

51 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:55:58.36 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「そ、それでは寝ます。お休みなさい…です」
さっきまで俺がいたベッドに上がり布団を被る魔法使い。
そのまま目を瞑るのかと思えば何やらこちらをチラチラ見ている。
勇者「どうした」
魔法使い「あの…あまり寝顔見ないでくださいね?」
勇者「ならこうしておくか?」
掛け布団の上の方を掴んで魔法使いの顔に押し付ける。

52 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:57:19.37 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「んばっ!んんー!!!!」
魔法使い「や、やめ…!んぐぁ…いいですから!もがっ!…寝顔ガン見してもいいですから!」
勇者「むしろ本音はできるだけ見たくないからこうしてるんだがな」
魔法使い「ほんっとーに!んがぁ!やめっ!いぎでぎなっ…できまぜんっが、らぁ!じぬっ!じぬっ!」
勇者「この程度で死ぬのか。なら死ね」
魔法使い「そ、それいじょ…うんっ…やったら…また魔法…がげぢゃいま、ずよぉ!」
勇者「なっ!」

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:58:05.03 ID:0zMHN2Vm0
さすがに手を離す。
ただでさえまだ頭痛が残っているというのにこれ以上の呪いは気が狂いそうだ。
魔法使い「およ?ふふふふ…勇者様の弱点見つけちゃいました」
魔法使いは何故か得意げだ。
少し腹が立った。
勇者「いいだろうその代わりもし本当に俺にもう一度あの魔法を使ったときには問答無用でお前を殺す」
魔法使い「ひぇっ!冗談ですよぉ…」
すぐにいつもの涙目に戻った。
やはりこいつはアホだ。
勇者「もういい。さっさと寝ろ」
魔法使い「ふぁーい…むにゃ…」
その後魔法使いは10分も経たないうちに眠りについた。

54 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2016/08/21(日) 06:59:27.12 ID:0zMHN2Vm0
魔法使い「んー…くぅくぅ…」
勇者(さっきまで怯えてたのが嘘みたいな寝顔だな。連れてかれても食べられるまで起きそうにないな)
魔法使い「ん〜…しゃさまぁ…むにゃ…」
勇者「?」
勇者「寝言か…夢の中でまで俺の足を引っ張ってるのか。本当に迷惑な奴だ」
魔法使い「ふにゅ…」
勇者(しかしこうして見ると幼い子供のそれだな。男を魅せる魔性の力と身体を持っていても、所詮中身はまだまだ少女というわけか)
そのまま数時間後…村人たちもみな寝静まりほとんどの家の灯りが消えた。