Part8
183 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:34:37.13 ID:MMWUNhP1o
村娘1「あの……」
勇者兄「ん?」
村娘1「エミル君が……死んじゃったって……本当なんですか……?」
武闘家「ここだけの話、それデマ」
村娘1「ほんと!?」
勇者兄「ああ」
村娘1「あの、もしエミル君に会ったら……この手紙を渡してほしいんです……」
法術師「あら、ラブレターかしら」
村娘1「……」
村娘は頬を赤らめた。
村娘1「足を挫いてたところを助けてもらったのに、ちゃんとお礼、言えなくて……」
村娘1「出す宛てもないのにこんなの書いちゃったんです」
勇者兄「ああ、必ず渡すよ」
184 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:35:40.80 ID:MMWUNhP1o
村娘2「実は私も……」
村娘3「私も……」
幼女「えみるかえってくるよね?」
村娘4「エミル君にこの種を……」
老女「わたしの荷物を運んでくれたのに、何のお礼もしてやれなかったのう……」
法術師「あらあら」
勇者兄「あいつも何人たらしこみやがったんだ!!」
町人1「こらお前達!! すぐに家へ帰るんだ!!」
勇者兄「先が思いやられるな……」
魔法使い(あんただってわりとモテるくせに)
185 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:36:18.47 ID:MMWUNhP1o
勇者兄「あいつはそこそこ顔が良くて、」
武闘家(少年としてならな)
勇者兄「人一倍他人の心の痛みに敏感だからな」
勇者兄「…………男にモテるよりはマシか。変な奴に言い寄られてたりしたらと思うと」
武闘家「魔物退治はやらなくても人助けはかなりやってたみたいだな」
勇者兄「あいつ……頑張ってたんだな」
勇者兄(旅をしている間、あいつは一度も魔属を殺さなかった)
勇者兄(小さい頃からの信念を曲げなかったんだ)
勇者兄『魔属にはあらゆる道徳は適用されないし殺して当然の敵なんだ』
勇者『お兄ちゃん何するの? やめて! 剣しまってよ!!』
勇者『いやあああああ!!!!!』
『やめろ!!』
一人の少年がリヒトを突き飛ばした。
186 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:36:44.56 ID:MMWUNhP1o
『エミルを泣かせる奴は許さない!!』
勇者『 『 』! 』
勇者兄『何すんだよ!! 俺はこいつに現実を教えなきゃいけないんだ!!』
『エミルの気持ちをわかってやれない奴がこの子の兄だなんてぼくは認めない!!』
勇者兄『いつもいつも俺の邪魔しやがって!!』
『この!!』
勇者兄『今日こそ決着つけてやる!!』
187 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:37:10.28 ID:MMWUNhP1o
勇者『ケンカしないで!』
勇者『やめてよ!! お兄ちゃん! 『 』! 』
勇者『 『 』!! 』
勇者兄「っ……」
武闘家「どうしたんだ、怖い顔してるぞリヒトさん」
勇者兄「いや……嫌なことを思い出しただけだ」
188 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:37:52.14 ID:MMWUNhP1o
魔王「こちらから争いを起こしてはならぬ」
重臣「しかし陛下! 若き真の勇者が旅立ったのですぞ!」
重臣「これを機に全面戦争をしかけるべきです!」
重臣「人間に舐められたままで屈辱ではないのですか!?」
魔王「自衛以外の攻撃は認めぬ。以上だ」
重臣「魔王陛下!」
魔王「我に逆らうのか」
重臣「くっ……」
魔王「……はあ」
執事「お疲れ様です。紅茶を淹れましょう」
魔王「即位してから五年が経ったが……魔王らしく振る舞うのはいまだに疲れる」
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189 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:38:32.94 ID:MMWUNhP1o
kokomade
190 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/15(月) 16:43:02.71 ID:ITEJKf4Oo
ichiotu…
191 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/15(月) 19:57:10.71 ID:5K1Xr0pAo
kitai sien
192 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/15(月) 20:46:19.55 ID:6jtq2FZP0
otuotu
193 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/15(月) 21:21:42.36 ID:
MMWUNhP1o
勇者【エミル・スターマイカ】
12歳 動物や魔物に好かれる不思議な少女(見た目は少年)。
魔王【ヴェルディウス】
17歳 平和主義のせいで支持率が低い。
執事【コバルト】
16歳 魔王がポンコツ気味であるため苦労している。
メイド長【メル=ルナリア(メルナリア)】
15歳 年齢の割に何故か地位が高いが、
高位の種族であるため本来メイドをやっていること自体ありえない。
勇者兄【リヒト・スターマイカ】
17歳 根はまともなのだがエミルのこととなると暴走してしまう。
魔法使い【アイオ・アメシスティ】
16歳 リヒトに想いを寄せているが、リヒトがシスコンであるためエミルを疎ましく思っている。
エミルの方が自分より魔翌力が大きいことも気に入らない。
法術師【セレナ・シトリニィ】
17歳 恋する者の味方。人の恋路を邪魔する者の敵。
武闘家【コハク・トウオウ】
12歳 足りない腕力を気功で補っている。モテる。
196 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:07:33.38 ID:qK0/Hpfto
勇者「あの」
調理師「ん?」
勇者「魔王陛下は……あなた方にとって、どんな王様ですか」
調理師「俺等にとってねえ。まあいい王様だよ」
調理師「先代までの魔王様はおっかなくてねえ、ビクビクしながら従ってたもんだが」
コック「ヴェルディウス陛下は多少ミスっても怒らないからなあ」
調理師「安心して働けるんだ」
コック「おもむろに逆らった奴でさえ追放処分で済んでるんだぜ、ありえないだろ」
調理師「優しすぎてお偉いさん方からはあんまり好かれてないみたいだがね」
コック「平和好きの魔王様なんて、好戦的な連中からは邪魔者以外の何者でもないしな」
勇者「そう……ですか。ありがとうございます」
Section 7 接近
197 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:08:03.13 ID:qK0/Hpfto
勇者(あんまり魔術の勉強をしていない下級魔族には、)
勇者(ぼくの光の力を感知する能力がほとんどないみたいだ)
勇者(おかげで情報を収集できる)
勇者(ぼくの願望通り、今の魔王は争いを好まない優しい魔族だった)
勇者(極力犠牲者が出ないよう最大限頑張っているみたい)
勇者(でも、不思議だ。先代魔王は残酷だったのに、)
勇者(その息子である今の魔王が平和を好んでるなんて)
勇者(一体どうしてそんな風になったんだろう)
勇者(きっと生育環境か何かにその原因が……)
198 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:08:57.59 ID:qK0/Hpfto
メイド長「エミル様! 何処へ行っておられたのですか!」
勇者「あ……ごめんなさい」
勇者「たまには一人で散歩したくて」
メイド長「私は常にエミル様のおそばについているよう命じられているのです!」
メイド長「お気持ちはわかりますが、お一人で何処かへ行かれるのはお控えください」
メイド長「城内には人間嫌いの魔族もたくさんいるのです。何が起きるかわかりませんわ」
勇者「……はい」
勇者(あんまり探りを入れてるところ、見られたくないんだけどな)
勇者(……お兄ちゃんからも同じようなことでよく怒られてたなあ)
勇者(今となっては懐かしい)
199 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:09:23.52 ID:qK0/Hpfto
ーー魔王城・謁見の間
魔王「隠居したというのに駆り出してすまなかったな」
老賢者「いえ、このような老いぼれを使っていただき光栄です、魔王陛下」
老賢者「北の魔物達には落ち着きが見られるようになりました」
老賢者「しかし天災は当分静まらないでしょう」
魔王「うむ、ご苦労。後は現地の魔族に任せて隠遁生活に戻るがよい」
老賢者「はい」
魔王「……個人的な話がある。後で書斎に来てはくれぬか」
勇者「…………」
魔王(……この頃やけに観察されているようだ)
勇者は柱の影から魔王の様子を窺っている。
老賢者「あの子のことですかの」
魔王「……ああ」
200 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:10:24.95 ID:qK0/Hpfto
勇者「魔王陛下ってどんな子供だったんですか」
執事「え? うーん、僕がこの城に来たのは五年ほど前ですので、」
執事「それ以前のことは存じませんが」
執事「綺麗な女の子だなあ、っていうのが第一印象でしたよ」
勇者「!?」
執事「まあ、男性だったんですけどね。あはは」
勇者(びっくりした……)
201 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:11:31.75 ID:qK0/Hpfto
執事「ここ二、三年で随分男らしくなられたものです」
メイド長「私も四年前から奉公に来ましたので、あまり昔のことはわかりません」
メイド長「私の知る限り、今も昔も、陛下は寂しそうな方です」
勇者「そういえば、魔王陛下の年齢って……」
メイド長「この間十七歳になられました」
勇者「随分若いんですね」
勇者(お兄ちゃんとおんなじだ)
202 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:12:12.43 ID:qK0/Hpfto
老司書「ヴェルディウス様の子供時代ねえ」
老司書「勝手に喋っちゃだめかもしれないから、ナイショだよ」
老司書「剣や攻撃魔術の稽古がお嫌いでねえ、」
老司書「いつもこの図書室に籠って本を読んでおられたよ」
勇者(ぼくとよく似てる……)
老司書「魔王族にしてはお体も小さい方だし、気が弱くて顔も女の子のようだしで、」
老司書「こんな王子が次期魔王で大丈夫なのかってよく心配されてたねぇ」
勇者「そう、なんですか……ありがとうございます」
勇者「あ、そうだ。エリヤって人間の女の人を知りませんか?」
老司書「エリヤ……? わたしゃここに長いこと勤めてるが、聞いたことないねえ」
老司書「人間なんて、嬢ちゃんが来るまで一度も見たことなかったしねえ」
勇者「そうですか……」
203 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:13:02.55 ID:qK0/Hpfto
ーー魔王の書斎
老賢者「……ふむ」
魔王「一刻も早く彼女の封印を解かなければ、彼女は死んでしまいます」
魔王「大賢者の力を以ってしても、解くことはできないのでしょうか」
老賢者「知恵の一族の封印術と光の力」
老賢者「その二つが重なっては、」
老賢者「魔族にも人間にも術式の全てを解読することは不可能じゃろう」
魔王「……」
魔王「曾爺様……私は父上と同じ道を歩んでしまいそうです」
老賢者「お前は相手の痛みを感じられる優しい心を持っておる」
老賢者「慈しみを持てば同じ結果にはならぬじゃろう」
老賢者「未来を信じるのじゃ」
204 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:13:37.42 ID:qK0/Hpfto
ーー城門
老賢者「テレポーションは老体に堪えるからのう」
老賢者「ゆっくり馬車で帰ることにするよ」
魔王「ありがとうございました」
老賢者「私も、久々に可愛い曾孫の顔を見れて嬉しかった」
勇者「…………」
エミルは城の窓から外の様子を窺っている。
魔王(また視線が)
勇者(やっば見てるのバレた)
魔王「……」
老賢者(その悲しみに満ちた瞳が喜びに満たされる日が来るのを祈っておるよ)
老賢者(オリーヴィアもそう望んでおるじゃろう)
205 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:14:21.96 ID:qK0/Hpfto
勇者「さっきのお爺さん、すごく優しそう……」
勇者(狂暴な魔族もいるけど、みんながみんなじゃない)
勇者(それなのに憎しみあってるなんて、悲しい)
勇者(何でわざわざ殺し合わなくちゃいけないんだろう)
勇者(……ぼくがこんなことを考えたところで、何になるんだろう)
勇者(何の力も持っちゃいないのに)
娘父『真の勇者でもないのに、そんな簡単に人を動かせると思うな』
206 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:14:45.26 ID:qK0/Hpfto
勇者「…………」
勇者(真の勇者であるお兄ちゃんは、魔属を殺して当然だと思ってる)
勇者(あの日だって、ぼくの目の前で魔物を殺した)
勇者(……あれ? でもその時ぼくは魔物の血を見ていない)
勇者(…………そうだ。あの後、誰かが止めに入って未遂に終わったんだ)
勇者(誰だったかな)
勇者(思い……出せない……)
207 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:15:14.54 ID:qK0/Hpfto
魔貴族1「メル=ルナリア、そやつは魔王陛下が飼っておられるという噂の人間か」
メイド長「ええ、そうでございます」
魔貴族1「随分人間に優しい魔王だとは思っておったが、」
魔貴族1「まさかこんな趣味までお持ちとは」
勇者「…………」
魔貴族1「……! こやつ、小さいが光の力を持っておるぞ!!」
勇者「あ……」
魔貴族2「何!?」
魔貴族1「ヴェルディウスは何という化け物を飼っているのだ!」
魔貴族2「事故で死んだことにして殺してしまおう!!」
魔貴族1「やれ!」
魔兵士1・2・3「「「はっ!」」」
208 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/16(火) 16:15:47.69 ID:qK0/Hpfto
メイド長「なりません!」
メイド長「このわたくしがいることをお忘れですか!?」
魔貴族1「ゴールドドラゴンの血を引くとはいえ、所詮半端物の雑用係」
魔貴族2「我等貴族に牙を剥くというのか! そこを退け!」
メイド長「わたくしは魔王陛下直属の部下です。陛下以外の命令は聞きませんわ」
メイド長は魔兵士達を軽やかに薙ぎ倒した。
勇者(つ、つよい)
魔貴族1「覚悟するがよい!!」
魔貴族2「葬ってくれる!」
勇者(! 柱の影にもう一人いる!!)
魔貴族3「焼け朽ちろ! シェイディブレイズ!!」
メイド長「!?」