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勇者「お母さんが恋しい」
Part7


156 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/14(日) 16:21:20.78 ID:XIR0jn7Ro
メイド長「頑張れば私だってもっと人間に近付けるんですけどね!」
執事「魔族の領域にいる時は完全に化ける必要もないですからね」
執事「コバルトと申します。以後、お見知りおきを」
メルナリアは人型となっていても二本のツノがあり、目元などに魔族らしさが残っている。
それに対し、コバルトと名乗った執事は人間の少年とほとんど変わらない姿をしていた。
勇者(柔和な笑顔……)
勇者(青空の様な瞳。純金の様な深い色の髪……綺麗)
勇者(男の魔族、だけど……女の人みたいに雰囲気が柔らかい)
勇者(……平気、かな)
勇者「二人は……いとこ……かな……」
勇者「魔力、似てる、から……」
メイド長「ええ、その通りでございます」

157 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/14(日) 16:21:54.20 ID:XIR0jn7Ro
勇者「……どうして今も、そこまで人間の姿に似せてるんですか」
執事「この姿の方がエミル様と親しみやすいかと思いまして」
勇者「……そっか」
執事「とはいっても、人型の姿の方が僕達の本当の姿なのかもしれないんですけどね」
勇者「?」
執事「僕達の種族には人型魔族の遺伝子と、竜族の遺伝子の両方があるんです」
執事「どちらが本当なのか、どちらとも本当なのか、僕達ですら知らないのですよ」
勇者「本では読んだことなかった……不思議……」

158 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/14(日) 16:22:34.18 ID:XIR0jn7Ro
メイド長(右腕のコバルトを短期間であっても城から離すなんて、)
メイド長(陛下はそれほどこの子が大事なのね……)
勇者「お母さんの味……出ない……」
勇者「お母さんが作ってた通りにしてるはず……なのに……」
メイド長「エミル様……」
魔王「おい、飯はまだか」
勇者「っ!」

159 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/14(日) 16:23:06.27 ID:XIR0jn7Ro
魔王「……この雑炊は誰が作ったんだ。味見するぞ」
魔王「…………旨いな。はじめて食べる味だが」
勇者「ぁ……」
魔王「あ……」
エミルはその場でガタガタ震え出し、魔王は気まずそうに目を逸らした。
メルナリアは優しくエミルの肩を抱いた。
メイド長「エミル様がお作りになったんです」
魔王「その……よい料理の腕を持っているようだな」
勇者「…………」
魔王「………………」
執事「あーもう! 僕がすぐに運びますから部屋に戻っててください!」
魔王「う、うむ」

160 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/14(日) 16:23:35.06 ID:XIR0jn7Ro
ーーーーーー
ーー
国王『お前は本当にシュトラール・スターマイカの子供なのか?』
大魔導師『魔力検査・遺伝子検査共にシュトラールの実子で間違いないとの結果が出ております』
勇者兄『こんだけ似てるんだから疑いの余地ねえだろうがぁぁあああ』
勇者『お兄ちゃん落ち着いて!!』
大神官『二人を自宅へ帰せ!』
勇者兄『エミルに何かしたら王様でも許さないんだからな!』
勇者『王様にそういうこと言うのやめてよお!』
国王『……ふう。静かになったな』
大魔導師『しかしながら……極端にシュトラールの遺伝が強すぎるのです』
大魔導師『まるで、母親の遺伝を隠したかのような……』
国王『奴め、一体何処の女と子供を作りおったのだ』
ーーーーーー
Now loading……

161 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/14(日) 16:24:06.76 ID:XIR0jn7Ro
kokomade

164 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/14(日) 22:29:25.13 ID:lvHzrny+o
nande aete alphabet nano?

165 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/14(日) 22:32:11.95 ID:XIR0jn7Ro
nantonaku
SS no soto de ningen kusasa dashitaku naishi

166 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/14(日) 22:33:54.91 ID:lvHzrny+o
>>165
naruhodo

167 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/15(月) 15:25:42.23 ID:SBRTrpf6o
naze ERO wo habuita...


168 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:24:23.48 ID:MMWUNhP1o
勇者兄『おいエミル、また魔物と遊んでるのか!?』
勇者『魔物さんだけじゃないよ、動物さんも一緒だよ』
勇者兄『動物はいいが魔物は駄目だ!』
勇者『なんで!? 魔物さんも動物さんもおんなじだよ!』
勇者『おんなじ命なんだよ!』
勇者兄『違うんだって!! そんなんだからいじめられるんだよ!!』

169 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:25:00.22 ID:MMWUNhP1o
勇者兄『魔属にはあらゆる道徳は適用されないし殺して当然の敵なんだ』
勇者『お兄ちゃん何するの? やめて! 剣しまってよ!!』
勇者『いやあああああ!!!!!』
ーー
ーーーーーー
勇者「ぁぁああああっ!」
勇者「はあ、はあっ……嫌な夢」
Section 6 記憶

170 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:25:27.79 ID:MMWUNhP1o
勇者「綺麗な朝日だなあ」
勇者(魔王城に連れてこられて数日が経った)
勇者(メルナリアさんの付き添いがあれば城内をわりと自由に移動できる)
勇者(おなかの痛みも治まった)
勇者(図書室の本は読み放題で、退屈はしていない)
勇者(でも、心が休まる時は……ない)
勇者(バーントさん達はどうしてるだろう)
勇者(お兄ちゃんはどこまで試練を進めたのかな)
勇者(お父さん、どうして助けに来てくれないの)
勇者(アミュレットがあったって完全に魔気からの影響を遮断できるわけじゃない)
勇者(このままじゃ、ぼく……少しずつ弱って……)

171 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:25:54.23 ID:MMWUNhP1o
勇者「二十年前、エリヤ・ヒューレーさんって人間の女の人が魔王城に攫われたんだって」
勇者「何か知っていることはありませんか」
メイド長「二十年前……? エリヤ……聞いたことはございませんわ」
メイド長「現在、この城に人間はおりませんし……」
勇者「そう、ですか」
勇者(人間はいない、か……)
勇者「図書館……行きたいです」

172 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:26:22.56 ID:MMWUNhP1o
ーー魔王城・図書室
魔王「……有益な文献は見つからないな」
勇者「あ……」
勇者(魔王がいる……入れない……)
執事「かなり高等な魔術ですからね……地下の書庫も当たってみましょう」
魔王「知恵の一族出身の賢者達はどうしている」
執事「この頃の異常気象から各地の魔物達を守るので精いっぱいらしく」
執事「しばらく城に戻るのは無理だそうです」
魔王「そうか……」
勇者(知恵の一族……聞いたことある)
勇者(五大魔族の一柱だけど、随分前の争いでかなり数が減ってしまったらしい)
執事「陛下は公務にお戻りください」
魔王「…………」
執事「ただでさえ人望ないのに最低限の仕事も放ったらまともに統治できなくなりますよ」
魔王「……うむ」

173 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:28:11.16 ID:MMWUNhP1o
勇者(人望ないんだ……)
勇者(人間と戦争をしようとしないからって、不満が高まってたな)
勇者(そういえば、雪の魔族も、魔王のこと腰抜けって……)
勇者(ぼくと、おんなじだ。ぼくも、腰抜け勇者ってよく言われてた)
魔王「! エミル……」
勇者「…………」
魔王「その……腹はまだ痛むか」
勇者「………………」
メイド長「早く書斎へお戻りください。書類にサインをし終えたら謁見の間へ」
メイド長「仕事はたんまりあるんですからね!」
魔王「あ、ああ」

174 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:28:41.80 ID:MMWUNhP1o
勇者(ぼくにかけられた封印を解く方法を探していたんだ……)
勇者(本当にそんな魔法、かけられてるのかな、ぼく)
執事「彼は、あなたを助けたいだけなんですよ」
勇者「…………」
執事「信じられないかも、しれませんが」
勇者「……わかります。魔王……陛下の魔力は、とっても澄んでて、綺麗」
勇者「ぼくに敵意や悪意を向けているようには感じられません」
勇者「でも……」
勇者(あんなこと、されて……許せるはずないもの……)

175 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:29:09.70 ID:MMWUNhP1o
村に立てられた掲示板を見て、村長の孫は目を丸くした。
村長の孫「あいつが、死んだ……?」
村長「優しい子であったのに、残念じゃのう」
村長の孫「……」
勇者兄「お前、エミルをいじめてただろう」
勇者兄「あいつを化け物呼ばわりしといて何今更ショック受けてんだよ」
村長の孫「本当は……本当は、年下の女の子に助けられて情けなかっただけなんだ!」
村長の孫「そりゃ魔物と喋れるのには驚いたけどよ……」
村長の孫「こんなことになるなら……意地なんて張らなけりゃよかった……」
勇者兄「改心するのが遅すぎたな」
勇者兄(胸糞わりぃ)

176 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:29:36.66 ID:MMWUNhP1o
協会職員「心優しき勇者エミルを葬った魔族を許すなー!」
協会職員「魔属を殺せえええ!!」
武闘家「散々エミルのことを腰抜けだの弱虫だと馬鹿にしていたくせに、」
武闘家「魔属を根絶やしにするために今度はあいつの名前を利用してやがる」
勇者兄「あいつら自身がエミルを殺そうとしたようなもんだってのに……ちくしょう」
ガヤガヤ
勇者兄「広場の方が騒がしいな」
魔法使い「演劇をやってるみたいね」
法術師「アベルとリリィの物語……魔王に捕らわれたお姫様を勇者が助けに行くお話だわ」
町娘1「ねえねえ聞いた?」
町娘1「今の魔王って、この世の者とは思えないほどの美形らしいわよ!」
町娘2「きゃー!」

177 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:30:07.61 ID:MMWUNhP1o
町娘3「一度でいいから見てみたいわよね!」
町娘2「私も魔王に見初められて捕らわれてみたいわぁ」
町娘1「あんたじゃ無理よ」
町娘2「何ですってー!」
武闘家「暢気なやつらもいるもんだな」
勇者兄「捕らわれのお姫様ねえ」
武闘家「そういやあいつも一応女だったな。お姫様じゃねえけど」
勇者兄「!!」
勇者兄「魔王に見初められて誘拐された可能性が……」
武闘家「いや、ない」
勇者兄「エミルは可愛いし!」
武闘家「いやいや女としてはイケてな」
勇者兄「今兄ちゃんが助けに行ってやるからな!!!!」
魔法使い「……昔から、あいつは妹のことばっかり」
魔法使い(最上級魔族並みの魔力容量を持った化け物の一体どこが可愛いのよ)

178 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:32:18.56 ID:MMWUNhP1o
ーー魔王城
魔王「…………」
勇者(何で同じテーブルでご飯食べてるんだろ)
勇者(緊張してお料理の味わかんないよ)
勇者(……何メートルあるのかな、このテーブル)
魔王「……一度、話を……しようと思ってな……」
勇者「…………」
魔王「謝って済むことではないとはわかっているつもりだが……」
魔騎士「魔王陛下!」
魔王「何事だ」
魔騎士「新たな真の勇者が旅立ったとの報告が入りました!」
勇者「!」
魔王「……そうか」

179 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:32:45.32 ID:MMWUNhP1o
勇者(お兄ちゃん、もう試練を終わらせたんだ)
勇者(助けに来てくれるのかな)
勇者(でも、大陸の東から西まで横断するには、どう頑張っても五ヶ月くらいかかる)
勇者(ぼくの体が……そこまで持つとは思えない)
魔王「何者も真の勇者と戦ってはならない。犠牲が増えるだけだからな」
魔王「真の勇者と出会った場合には即刻退避するよう全魔属に伝えるのだ」
魔騎士「はっ」

180 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:33:16.88 ID:MMWUNhP1o
勇者「……ぼくが旅をしていた間も、刺客から襲われることはありませんでした」
勇者「あなたの命令だったのですか」
魔王「……ああ」
魔王「お前を戦わせたくなかった」
勇者「…………」
魔王「………………」
勇者「ぼくが本当に魔族だったとしても」
勇者「ぼくを魔族にしたところで、あなたにどのような利益があるのですか」
勇者「ぼくは人間として育ちました。魔族だけの味方にはなりませんよ」
魔王「……利益だとかそのような問題ではない」

181 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:33:43.52 ID:MMWUNhP1o
勇者「ならばなぜぼくを守ろうとしているのですか!」
魔王「っ……………………」
勇者「……………………」
魔王「………………………………」
勇者「…………………………………………」
執事(この沈黙苦手なんだよなあ)
メイド長「料理が冷めますよ」
勇者(綺麗な魔力。でも、寂しくて、胸が張り裂けそうなくらい切なくて、)
勇者(何かに飢えているような、悲しい色をしてる)
勇者(魔王の本当の目的は……一体何なのだろう)

182 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/15(月) 16:34:11.64 ID:MMWUNhP1o
勇者(お兄ちゃんはぼく以上にお父さんそっくりだから、)
勇者(行く先々で苦労してるかもしれないなあ)
町人1「真の勇者様がいらっしゃったぞ! 丁重に持て成せ!」
町人2「奴の若い頃と瓜二つだ……」
町人1「かみさんと娘を避難させるのを忘れるなよ!」
町人3「おう!」
勇者兄「あらゆる村や町でこんな扱いをされるんだが」
勇者兄「父さんはどれだけ節操なしだったんだ」
町人4「女性は全員避難したか?」
勇者兄「俺は!! 父さんと違って硬派だから!!!!」
勇者兄「女の人口説いたりとかしないから!!!!!!」