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勇者「お母さんが恋しい」
Part34


757 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:16:21.15 ID:/Pc4GdUAo
Section 27 平和の礎
翌日
魔賢者「……破壊神との戦いが終わり次第、ブレイズウォリアで葬儀が行われるそうです」
魔賢者「そして、明日……封印の神殿に向かうようにとのことです」
勇者兄「連絡ありがとな」
勇者「……」
勇者兄「……死にかけてるんだったら、そう言って休んでくれたらよかったのによ」
勇者「お父さん、ぼく達に心配かけたくなかったんだよ」
勇者兄「……………………」
勇者兄「悲しんでる暇はないな!」
勇者兄「みんな、今日は軽い運動だけやってしっかり休むぞ!」
武闘家「りょーかい」
法術師「……ええ」

758 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:17:06.22 ID:/Pc4GdUAo
勇者兄「闇の力って、闇の珠の所有者しか持ってないのか?」
魔王「ああ。光の珠と違い、伝播性は無い」
魔王「後天的に差異が生じたのかもしれんな」
魔王「魔族の方が人間よりも平均魔力容量が大きく、体も頑丈だ」
魔王「魔族に対抗するため、多くの者が光の力を持てるよう伝播性を付与したのだろう」
勇者兄「ふーん」
魔王「尤も、最初から差異があった可能性もあるがな」
魔王「授けた大精霊は別の個体だったわけだからな」
魔王「本当にこの力が大精霊から古の勇者にもたらされた物であるとすれば、の話だが」
勇者兄「今更不安になるようなこと言うなよ」
勇者兄「他にそれらしき物は見つからなかったんだ。力の性質的にも確定だろ」
勇者兄「防御以外の魔術の使用一切無しで打ち合いしようぜ」
魔王「よかろう」

759 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:17:37.00 ID:/Pc4GdUAo
武闘家「破壊神本体への対抗手段は光の珠と闇の珠しか存在しないから、」
武闘家「無理に同行する必要は無いってよ。ライカさんは例外的に護衛を命じられてるが」
武闘家「おまえらはどうすんだ?」
法術師「もうアイオのような破壊者を出したくない」
法術師「そのために私もリヒト君達と一緒に戦うわ。少しでも彼等の負担を減らしたいの」
武闘家「俺もついていくとすっかな」
武闘家「破壊神本体に辿り着くまでは一緒に戦う」
魔賢者「封印の神殿へは私の術で皆さんをお送りいたします」
武闘家「おーいエミル」
勇者「…………」
武闘家「大丈夫か?」
勇者「あ、ぼくなら平気だよ」
勇者「この世界を守るために、がんばらなくちゃね」
勇者(ぼくの魔力容量は、最上級魔族の中でもかなり大きい)
勇者(きっと役に立つはず)

760 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:18:17.99 ID:/Pc4GdUAo
勇者(お兄ちゃん達どこにいるんだろ)
キィン キィン
勇者「あっ」
勇者兄「なかなかやるじゃないか!」
魔王「ふん、貴様もな!」
勇者(お互い自分に超防御魔術かけながら打ち合ってる)
勇者(ケンカしてるわけじゃないみたいだ。よかった)
魔王「貴様、生殖細胞の大きさの差を知っているか!?」
勇者兄「知るかよ! 習ったけど忘れたわそんなもん!」
魔王「精子が約0.0025mmであるのに対し、卵子は約0.2mm!」
魔王「つまり、私の方が貴様よりエミルに近いということだ!!」
勇者兄「だ か ら な ん だ よ !」
勇者(百年の恋も冷めそう)

761 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:18:43.76 ID:/Pc4GdUAo
勇者兄「あ、エミル! 来てたのか!」
勇者「うん」
魔王(今の会話……聞かれていたのだろうか……)
勇者「二人ともぼくの大事な人なんだからさ、張り合っても意味ないよ」
魔王「…………」
勇者「明日の戦いのためにがんばってごはん作ったから食べに来て」
勇者兄「やったぜ! エミルのメシだ!」
勇者「いっぱい食べてね! 食べなきゃ力出せないでしょ」

762 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:19:10.05 ID:/Pc4GdUAo
ーー夜 宿
母上、父上、兄上ーー
みんな私から離れていく……
魔王「はっ……」
魔王(……決戦前夜に悪夢を見るとは)
勇者「すー……」
魔王(エミル……いつの間に潜り込んでいたんだ)
魔王(私から離れていかぬよう……刻み付けなければ)
ヴェルディウスは横向きに寝ていたエミルの肩を押さえ、天を向かせ、
覆い被さる姿勢を取った。
勇者「んー……ヴェルー……だいすき」
エミルは寝ぼけてヴェルディウスに抱き付いた。
魔王「…………!」
魔王(……夢のせいでどうかしていた)
魔王(父親を亡くしたばかりのエミルに対し、私は何を……最低だ)

763 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:20:03.19 ID:/Pc4GdUAo
魔王「……このような兄ですまないな」
勇者「……どしたの?」
魔王「おまえに……歪んだ愛情を向けてしまっている自分を許せないのだ」
魔王「おまえを深く傷付け、幼き日のように純粋な愛情を向けることもできず……」
魔王「さまざまな医学書を読み漁っても我が病を治すことはいまだ叶わない」
勇者「ん……」
魔王「私は、親兄弟であれば誰に対しても歪んだ愛情をいだいてしまう」
魔王「穢れているんだ……私は……」
勇者「……」
勇者「昔何があったのかはわからないけど、」
勇者「そうなっちゃうくらいつらいことがあったんでしょ?」
勇者「そうならないと、もっと兄上の心が壊れちゃってたんだよ」
勇者「無理に治そうとしなくていいんだよ」
勇者「ぼくの他に姉妹がいるわけでもないんだからさ」
魔王「エミル……」
魔王「すまないな……ありがとう」
魔王父『…………ああ、そうであった』
魔王父『我が精神はオリーヴィアを亡くしたと同時に崩壊し、そして……』
魔王父『謝罪の言葉の一つも届けられぬとは』
魔王父『なんとも……もどかしいものよ』
魔王「喉が渇いた。水を飲んでくる」
勇者「あ、二段ベッドだから体起こすとあぶ」
ゴッ
魔王「うっ」
勇者「ふっ……くすっ」
魔王「……どうせ私は間抜けだ」
勇者「そんなところも好きだよ」

764 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:20:28.51 ID:/Pc4GdUAo
ーー翌朝
勇者兄「みんな、準備は万端か?」
魔王「愚問だな」
武闘家「いつでもおっけ」
法術師「大丈夫よ」
魔賢者「はい」
勇者「生きて帰ろうね」
魔賢者「では皆さん、参りましょうか」
女勇者「あたし達にこの世界の未来がかかっているのね」
女勇者「覚悟は決まってるわよ」

765 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:21:40.12 ID:/Pc4GdUAo
勇者兄「これが、封印の神殿……」
法術師「二万五千年前に建てられたにしてはきれいに残ってるわね」
勇者「封印の力がかけられてるからだろうね」
勇者兄「ああ。エミル、扉を開けられるか」
勇者「うん。手順通りにやれば開くはず」
破壊神の力が悪用されないよう、外部からの侵入を防ぐ術が施されていた。
勇者「魔光放出!」
勇者兄「おい、かなり魔力を消費してないか」
勇者「そう簡単に解けたら苦労しないからね……」
ゴゴゴゴゴ
勇者兄「よくやった!」
魔王「大丈夫か」
勇者「うん。まだ魔力残ってるよ。戦える」

766 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:22:31.91 ID:/Pc4GdUAo
勇者「この空間、破壊の波動が満ちてる……空気が重いよ」
武闘家「おお、雑魚が沸いてきたぞ」
法術師「幽霊を見るのにも慣れてきたわね!」
法術師「リヒト君とヴェルディウス君はできるだけ力を温存して!」
魔王(君付け……)
勇者兄「すまないな」
女勇者「道を拓くわよ!」
勇者「はっ! たあっ!」
武闘家「ていっ! 獅子怒昂!」
法術師「聖なる矢<セイクリッド・アロー>!」

767 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:23:21.85 ID:/Pc4GdUAo
勇者兄「この扉の奥に、破壊神がいるんだな」
勇者兄「……開けるぞ」
ーー我は破壊の神
ーー純然たる破壊の意思
ーー創造神の対たる存在
勇者兄「何だ……これは」
広い空間の中央部に大きな光の塊があり、幾つもの輪で囲まれている。
魔王「あの輪で封印されているようだな」
破壊神は輪の隙間から波動弾を撃った。
法術師「なんて力なの……!」
魔王「あの輪を消滅させねばこちらからの攻撃も困難だ」
勇者兄「あの輪に俺達が封印を上乗せするんじゃ駄目なのか?」
魔王「見ろ、輪が減った。破壊神を弱らせねば再封印を行っても長くはもたぬ」
魔王「残っている封印も既に脆くなっている」
勇者兄「ならあの輪っかを打っ壊して即行で倒すぞ!!」

768 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:24:10.09 ID:/Pc4GdUAo
勇者「封印を完全に解くことは、世界を危険にさらすのと同じ」
勇者「でも、放っておいてもどちらにしろ封印は解けてしまう」
勇者「はやく終わらせなくちゃ」
勇者「お兄ちゃん達はあんまり力を使わないで! ぼくが封印を破壊する!」
勇者「ーーーー」
勇者(忌み嫌われていたぼくの魔力で、世界を救う手助けができるんだ)
勇者「ーーーーーー生命の結晶、輝き散れ! クリスタル・エクスプロージョン!!」
武闘家「す、すげえ」
法術師「綺麗だわ……」
勇者兄「封印が砕け散った……」
女勇者「やるじゃない」

769 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:24:37.65 ID:/Pc4GdUAo
魔王「だが魔力容量にまかせて一気に力を放出すれば体が持たない」
魔王「フローライティア、まだおまえの魔力は残っているな」
魔王「私とリヒト以外の者を全て連れて飛べ」
魔賢者「し、しかし陛下」
魔王「はやくしろ! 封印が解けた以上、戦力となるのは私と真の勇者だけだ」
魔賢者「……わかりました。ご健闘をお祈りいたします」
法術師「リヒト君達なら勝てるって信じてるから!」
武闘家「死ぬんじゃねえぞ!」
女勇者「帰ってきなさいよね、兄さん!」
勇者「う……」
勇者「お兄ちゃん……ヴェル……」
勇者「ごはん作って、待ってるからね…………」
勇者兄「ああ、楽しみにしてる」
魔王「必ず生きて帰る」
魔賢者「瞬間転移<テレポーション>」

770 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:25:34.16 ID:/Pc4GdUAo
勇者兄「あいつらが頑張ってくれたおかげで力が有り余ってるぜ」
魔王「よし、やるぞ」
破壊神は無数の波動弾を放ち始めた。
勇者兄・魔王「「制限解除<リミット・ブレイク>」」
勇者兄「この光の力を最大限ぶっぱなって世界を守ってやる!」
魔王「我が闇の力、とくと味わうがよい!」

771 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:26:00.13 ID:/Pc4GdUAo
魔賢者「殿下、大丈夫ですか!?」
勇者「命を落としちゃうようなことはしないよ」
女勇者「あんまり心配させないでよね」
勇者「ちょっと休めば大丈夫」
勇者「人間だった頃と違って、この体丈夫だもん……産んでくれた母上に感謝しなきゃ」
武闘家「体中負担かかりまくりじゃねえか」
武闘家「今治療してやる」
勇者「ありがと、コハク君」
法術師「私も鎮痛を」

772 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:27:53.95 ID:/Pc4GdUAo
勇者(ぼくにはお母さんが二人いる)
勇者(そして、たくさんいるかもしれないお兄さんの内の二人は、)
勇者(同じお母さんに育てられたお兄ちゃんと、同じ母上から産まれた兄上)
勇者(片方は勇者で、片方は魔王)
勇者(対極に立つ二人が、今、世界のために共闘している)
勇者(どっちにも死んでほしくない)
勇者(生きて帰ってきてほしい)
勇者(どっちが欠けたってだめなんだ)

773 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:28:53.85 ID:/Pc4GdUAo
ーー滅 び を
勇者兄「はっ、なかなかしぶとかったがだいぶ小さくなったじゃねえか」
魔王「おまえもだいぶバテてるがな」
勇者兄「おまえもだろっ!」
ーー全てを 無に 返す
勇者兄「そんな力、もう残ってねえだろ?」
ーー再び我を封印するというのならば
ーーこの世に更なる厄災を
魔王「ふん、やはりな」
勇者兄「どういうことだよ」
魔王「破壊神は二万五千年前、封印される間際にこの大陸に呪いをかけた」
魔王「再封印を行ったとしても、新たな呪詛が生まれる可能性があったのだ」
魔王「完全に滅しなければこの世に平和は訪れぬ」
魔王「しかし、ただ戦うだけでこやつを滅することができるのならば、」
魔王「古の勇者達がやっているだろう」
ーー混沌の時代の幕開けだ
勇者兄「……仲間のおかげで、幸い俺達にはまだ余力が残されている」
魔王「だがこやつを消し去ろうとすれば……」
勇者兄「珠ごと俺達の体は消し飛ぶだろうな。きれいに相殺されるってわけだ」
魔王「我等が贄とならねば平和な世は訪れぬ」
勇者兄「……まいったな。またエミルのメシ食いたかったってのに」
魔王「……同感だ」

774 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/09(水) 22:29:31.05 ID:/Pc4GdUAo
勇者「神殿があった場所が爆発してる……」
封印の神殿がそびえていた地から、天へ向かって光が伸びていた。
勇者「封印術の波動は感じられない……」
法術師「……!」
武闘家「…………」
魔賢者「………………」
女勇者「嘘でしょ……」
勇者「そんな……お兄ちゃん……ヴェル……」
勇者「いやああああああ!!」
Now loading......

775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/09(水) 23:43:40.61 ID:I8D2ijMV0
乙乙

776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/10(木) 03:56:01.38 ID:LA4oJ5MzO
haha wa tuyoshi

777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/10(木) 15:42:05.45 ID:xh9htxSQo
otuotu...

778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/10(木) 15:47:22.26 ID:G6dZTJkKo
また勇者を泣かせて…
それはともかく>>760魔王は一体なにを言っているんだ(真顔)
otu