Part30
681 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:40:56.88 ID:fXmH/9koo
ーー翌朝
武闘家「もう限界だ。決着つけてすっきりするしかない」
法術師「そうね……でも」
法術師「フロルさん、ちょっと来てくれるかしら」
魔賢者「は、はい……」
法術師「……リヒト君のこと、どう思ってる?」
魔賢者「ええと……優しい人だなって、思っています」
法術師「……好き?」
魔賢者「え!? い、いえ……その……知り合ったばかりですので、まだ何とも……」
法術師「気になってはいる?」
魔賢者「……」
フロルは小さく頷いた。
法術師「……あなたの気持ちを否定するつもりはないわ」
法術師「でも、この旅が終わるまでは、あまりリヒト君と二人になってほしくないの」
法術師「アイオが、このままじゃ……」
魔賢者「っ……そう、ですか」
魔賢者「私、魔族だから邪険にされているのかとばかり……ごめんなさい」
682 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:41:56.45 ID:fXmH/9koo
勇者「そういえばお兄ちゃんどこ行ったんだろ」
勇者「夜勤があった分朝はお休みのはずだよね?」
武闘家「欠員が出て東門の警備に呼び出されたらしい。……ってあれ」
武闘家「東門って今はアイオさんともう一人での警備のはずだよな」
勇者「あ」
勇者兄「おまえと二人か〜」
魔法使い「悪かったわね」
勇者兄「おまえこの頃何ピリピリしてんだよ」
魔法使い「……別に」
ーーーー
武闘家「二人っきりになったのが吉と出るか凶と出るか……」
勇者「心配だ……」
ーーーー
683 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:42:22.60 ID:fXmH/9koo
勇者兄「おまえとも長い付き合いだよな」
魔法使い「そ、そうね」
勇者兄「ガキの頃からずっとだもんなあ」
魔法使い「……あんた、あの子のことどう思ってるの」
ーーーー
武闘家「あぁっそれ聞くのかよ」
ーーーー
勇者兄「えっ……」
勇者兄「ええ〜っと……その…………」
魔法使い「……その態度で答え出てるじゃない」
勇者兄「あ、うん……まあ……」
魔法使い「…………何で?」
684 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:42:48.83 ID:fXmH/9koo
魔法使い「あんた、あんなに魔族を嫌ってたじゃない」
勇者兄「昔の話だろ」
魔法使い「私はずっとずっと前からあんたのこと好きだったのに」
勇者兄「えっ」
ーーーー
武闘家「ああー」
勇者「覗いてることに罪悪感出てきたんだけど」
武闘家「安全のためだ仕方ない」
ーーーー
勇者兄「……マジ?」
魔法使い「マジよ」
685 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:43:51.28 ID:fXmH/9koo
魔法使い「それなのにあの女!!」
魔法使い「いきなり沸いて出てきてあんたを奪ってった!!!!」
勇者兄「おおおおお落ち着け」
魔法使い「許さない許さない許さないユルサナイ ユ ル サ ナ イ 」
武闘家「あぁ……」
勇者「この破壊の波動……やばいよ!!」
勇者兄「わー! ごめん!!」
勇者兄「でも俺あの子と出会ってても出会ってなくてもおまえとは無理だったから!!!」
武闘家「リヒトさんもう刺激すんな!!!!」
魔法使い「コワシテヤルゼンブコワシテヤル コ ワ セ コ ワ セ コ ワ セ」
勇者父「おいどうしたんだこれ!」
法術師「うそ……」
法術師「動くのが……一足遅かった……」
魔賢者「そんな……私のせいで……」
686 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:44:39.27 ID:fXmH/9koo
勇者父「おまえなあ! 惚れられたんなら両方もらっとけばいいだろ!!」
勇者父「そしたら誰も泣かずに済むだろ!?!?」
勇者兄「あのなあ!!!!」
勇者「アイオさん戻ってきて!」
魔法使い「エ、ミル……」
魔法使い「元はと言えば……あんたさえ……あんたさえいなければ」
魔法使い「あんたさえいなければリヒトは私を見てくれたのに!!!!」
勇者「うぐっ!」
勇者兄「エミル!!」
勇者「がはっ……う……」
勇者父「まだ人としての意識が残ってる! 何か呼びかけろ!」
勇者兄「何言えばいいんだよ!?」
魔法使い「コ ロ シ テ ヤ ル 」
勇者「ひっ……」
法術師「だめえええ!」
687 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:45:08.02 ID:fXmH/9koo
勇者「!?」
勇者(母上の腕輪が光ってる……)
魔法使い「うっ……」
勇者兄「隙ができたぞ!」
法術師「今の内に……キャアッ!」
武闘家「攻撃対象がこっちに移ったぞ」
魔法使い「こんな世界ーーーー イ ラ ナ イ 」
勇者兄「まだ若いんだから俺より良い人見つかるって!!」
勇者父「仕方ねえな……あいつを止めるぞ!」
688 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:45:41.48 ID:fXmH/9koo
執事「…………」
メイド長「この頃ぼうっとしがちじゃない。大丈夫?」
執事「ああ、心配いらないよ」
執事「すぐ仕事に戻るから」
メイド長「…………」
魔王「そっとしておいてやれ」
メイド長「ええ……」
魔王「規定の内容もだいぶまとまってきた」
魔王「このまま順調に話が進めばいいのだが」
689 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:47:44.61 ID:fXmH/9koo
ーー
ーーーーーー
勇者兄「ぐっ……アイオ……」
勇者兄(魔王がいたら力が増幅して余裕で倒せるってのに……)
勇者兄(……いや、そしたら強力になりすぎてアイオを殺しちまうかもしれねえ)
勇者兄(両方の力が揃ってると手加減が難しくなるんだよな)
勇者兄(少しでもミスると町一個余裕で吹っ飛ぶ)
法術師「……う…………」
女勇者「あら……真の勇者御一行様と平和協会職員の方々」
女勇者「破壊者一人に対してボロボロじゃない」
武闘家「殺さねえ程度に手加減するのむずいんだよ……あだだだ」
女勇者「……あの女、とんでもない破壊の波動出してるわね」
女勇者「よっぽどつらいことでもあったのかしら」
勇者兄「お、お前は……」
勇者父「ようライカ……」
魔法使い「コ ワ セ ハ カ イ ノ カ ミ 」
女勇者「あいつもだいぶ消耗してるみたいね。あたしがカタを付けてあげるわ」
勇者兄「待て! あいつは仲間なんだ! 殺さないでくれ!!」
女勇者「そんなこと言ったら死人が出るわよ」
女勇者「流星の駿馬<シューティングスター・ギャロップ>」
勇者兄(あれは……身体強化魔術)
ライカは流れる星のように駆け出し、一瞬でアイオの元へ辿り着いた。
690 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:48:57.56 ID:fXmH/9koo
女勇者「っはぁぁあああああああああ!!」
勇者「だ、め……待って!」
ライカは剣に光を纏わせてアイオに剣を振りかざしたが、
エミルがギリギリのところで障壁を張った。
しかしその障壁は脆く、剣戟を防ぎきることはできなかった。
魔法使い「あぐっ……!」
女勇者「斬れなかったけど、相当のダメージは入ったようね」
女勇者「……自分達が殺されそうだったのに邪魔するなんて、何考えてんだか」
法術師「助かったの……?」
魔賢者「よかった……」
勇者父「おまえ、どうしてこの町に……」
女勇者「平和協会のお使いよ。この戦いに加勢するよう呼び出されて走ってきたの」
女勇者「現真の勇者と前真の勇者がいるってのに情けないわね」
女勇者「あの女、何で破壊者化しちゃったわけ?」
勇者父「失恋」
女勇者「……そんな理由で破壊者化するなんて、今頃大陸中破壊者だらけだわ」
女勇者「世も末ね」
691 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:49:51.79 ID:fXmH/9koo
勇者兄「アイオ……」
魔法使い「…………」
勇者兄「ごめんな、おまえの気持ちに気付いてやれなくて」
勇者兄「俺じゃ、おまえの気持ちに応えてやれないんだ」
魔法使い「ぅ…………」
勇者兄「おまえがエミルのこと嫌いなんだろうなとは肌で感じてたよ」
勇者兄「俺が原因だってことまではわからなかったけどな」
勇者兄「俺の家族と仲良くできないんじゃ、仮に付き合ってもうまくやっていけないだろ?」
勇者兄「……仲間としては大切に思ってるよ」
勇者兄「ごめん」
魔法使い「…………」
勇者兄「エミル、大丈夫か?」
勇者兄「あ……」
692 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:50:24.65 ID:fXmH/9koo
勇者「う……」
協会兵1「こ、この勇者……魔族だぞ!」
協会兵2「協会を騙していたというのか!?」
勇者兄「こ、これにはわけが」
協会魔術師「上部に知らせろ!」
勇者兄(人身変化を維持しつつバリアで町を守り続けていた上での戦闘だった)
勇者兄(もう限界だったんだ……!)
協会僧侶「捕らえよ!!」
勇者父「待て! 待ってくれ! うっ……」
女勇者「ちょ、ちょっとシュトラール何寝てんのよ! 今何が起きてるの!?」
693 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:51:20.03 ID:fXmH/9koo
協会魔術師「真の勇者一行に種族を偽っている者がおったとは」
勇者兄「……」
協会魔術師「貴様等は知っていたのか?」
勇者兄「魔族に生まれてきて何が悪いんだよ! そいつは俺の妹なんだ!! 放せ!!」
協会魔術師「そなたらも裁判にかけねばならぬ」
協会僧侶「おまえはテレポーションを使用できたな」
協会僧侶「ブレイズウォリアの協会本部まで我々を送れ」
魔賢者「し、しかし……」
協会僧侶「逆らえば魔族そのものが再び敵と見做されるぞ」
協会魔術師「一行を全員連行しろ!」
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694 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/07(月) 19:51:46.30 ID:fXmH/9koo
kokomade
695 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 02:24:06.67 ID:vbMck9Ry0
otu
697 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/08(火) 09:08:53.05 ID:JhbWPCDmo
魔法使いの自業自得感ハンパねえ
otu
701 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/08(火) 17:48:53.63 ID:IAKLY5uMo
ーー牢屋
勇者(よかった、ヴェルの石と、母上の腕輪は取り上げられなかった)
勇者「……はあ」
勇者(せっかくうまくいってたのに、これで和平が無くなったりしたらどうしよう)
兵士「あなた方はこちらに入ってください」
勇者兄「けっ」
武闘家「……」
法術師「こんなことって……」
勇者父「いてて」
魔賢者「…………」
兵士「くれぐれも脱獄なんてしないでくださいね……罪が増えてしまいますから」
勇者「みんなー」
勇者兄「エミル、無事か!?」
勇者「ちょっと離れた牢屋にいるよー……」
Section 25 半魔
702 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/08(火) 17:50:17.81 ID:IAKLY5uMo
看守「このエリアの牢には、魔術・法術の発動を無効にする術がかけられています」
勇者兄「それじゃ傷の治療もできないだろ。エミル、大丈夫か?」
勇者「大丈夫だよ。致命傷は負ってないし。お兄ちゃん達だって怪我してるでしょ」
勇者兄「……この封術、本気出せば破れないこともないが」
看守「ひいい、やめてください」
勇者「……アイオさんはどうなったの」
勇者兄「破壊者の収容所に連れていかれた」
勇者兄「破壊神の再封印が完了するまでは出られないだろうな」
勇者「……そっか」
法術師「アイオ……」
法術師「友達なのに、助けてあげられなかった……ごめんね、ごめんね……」
魔賢者「…………」
勇者兄「…………」
703 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/08(火) 17:51:00.87 ID:IAKLY5uMo
国王「やはりエミル・スターマイカは半魔であったか……」
協会幹部1「もっと早い段階で何かしらの罪を着せて極刑にしておくべきだったな……」
協会幹部2「光の力が無くなったのも、魔気と相殺されているためだろう」
大神官「今からでも遅くはございません。魔族の血を引いていることが判明した以上、」
大神官「生かしておく術はありません」
大神官「魔族でありながら人間と偽った者は極刑だと大陸法で定められております」
協会代表「先日特例を出した魔族とは状況も異なるしな」
大魔導師「しかし、今下手に魔族を殺して魔王が黙っているとは限りませぬ」
大魔導師「和平の決裂は人間としても痛手となります」
女勇者「んで、あたしは何で連れてこられてるんです?」
大神官「……リヒトが駄目だった場合、次の真の勇者は」
女勇者「ああそうでしたわね、あたしは真の勇者第一候補」