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勇者「お母さんが恋しい」
Part28


639 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 14:59:05.29 ID:1cPqm476o
メイド長「うっ……うぅっ……」
勇者「メルナリアどうしたの!?」
メイド長「陛下がっ……陛下がぁっ……」
勇者「兄上に何かあったの?」
メイド長「コバルト無しでもちゃんと仕事できてるんです!!」
勇者「!?」
メイド長「私っ……陛下のご成長に感動してしまってっ……」
魔王「……泣くな」
魔王「いつまでもあいつに頼りっきりではいかんからな……」
勇者(すごい。あ、ちょっと目の下に隈できてる)
魔王「メルナリア、お前に朗報があるぞ」
魔王「マリンの町とマリンドラゴンが協力体制を取ることとなった」
メイド長「!?」
魔王「つまり、接触禁止令が解かれたというわけだ」
魔王「想い人に会えるぞ」
メイド長「まあ!」
メイド長「ああ、ああ、今日はなんてすばらしい日なのでしょう!」
メイド長「ううぅぅぅぅぅぅぅ」
勇者「よかったね!」

641 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:03:33.42 ID:1cPqm476o
魔王「エミル、今日は怪我をしなかったか。どこか悪いところはないか」
勇者「大丈夫だよ。兄上こそ疲れてるね……肩揉もうか」
魔王「すまないな。頼む」
勇者「細かいルールとかいろいろ考えなきゃいけないんでしょ?」
勇者「大変だね」
魔王「ああ……人間も魔族も納得できるようにせねばならないからな」
魔王「……これを身に着けておけ」
勇者「ペリドットの腕輪?」
木で作られた輪にペリドットがはめ込まれている。
魔王「母上の形見だ。破壊者の増加を防ぐために、現在その石が利用されているのだろう?」
魔王「お守りになるかと思ってな」
勇者「わあ、ありがとう!」

642 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:05:31.70 ID:1cPqm476o
魔王「日に日に封印は弱まっている。戦いは険しくなっていくだろう」
魔王「私も暇があれば一行に加わる」
勇者「うん。兄上がいてくれたら心強いよ。なんたって魔王だもん」
魔王「…………」
勇者(照れてる)
魔王父『…………』
魔王父『我に足りなかった物……それは……』
メイド長「あら……今、誰かの気配がしませんでしたか?」
魔王「……わずかだが私も感じた」
勇者「幽霊かな?」
メイド長「や、やめてくださいよ! 怖いじゃありませんか!」
魔王父『……』
カタッ
勇者「誰も触ってないのにペンが動いたような……」
魔王「除霊師でも呼んだ方がいいかもしれんな」
魔王父(一瞬物体に触れることができたような……何が起こっているというのだ)

643 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:06:08.93 ID:1cPqm476o
勇者兄「なあ、魔王族もゴールドドラゴンの血を引いてるんだろ?」
勇者兄「魔王も竜になれたりすんのか?」
執事「いいえ」
執事「他の人型魔族との間に子を成しても、子供に竜族の遺伝子は受け継がれません」
執事「ただし、ゴールドドラゴンが持つ雷の力は受け継がれます」
勇者兄「なるほど」
魔賢者「閣下、私、ちゃんと人間に擬態できているでしょうか……」
執事「大丈夫ですよ」
執事「それに、僕等は平和協会公認ですから万が一民間人にバレてもなんとかなります」
執事「あと、僕の方が年下なんですからかしこまらなくていいですよ」
魔賢者「もうこの話し方で慣れてしまいましたし……」
勇者兄「な、何歳なんだ?」
魔賢者「今年で17になりました」
勇者兄「あ、じゃあ同い年だ!」
魔法使い「…………」

644 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:07:00.13 ID:1cPqm476o
勇者兄「……ちょっと外の空気吸ってくるわ」
魔法使い「よ、夜中に一人でうろついちゃ危険よ」
勇者兄「俺を誰だと思ってんだ? へーきへーき」
勇者兄「はー……」
勇者兄(星が綺麗だな)
勇者兄(……どうしちまったんだろうなあ、俺)
勇者兄(こんなことに現を抜かしてる場合じゃないんだけどな)
勇者兄(……いや、守りたいものが増えたってだけだ)
勇者兄(あの家、なんか騒がしいな)
女勇者「ほんといつもいつもいきなり来るんだから!」
勇者父「ごめんってぇ」
女勇者母「まあまあ、落ち着きなさい」
女勇者「母さん、こんな男泊めることないわよ!」
勇者父「あんま怒るとせっかくの綺麗な肌が荒れちゃうぞ〜ライカ」
女勇者「黙りなさい!」
勇者兄(うわ……なんだか……イライラするような……複雑な心境だ)
勇者兄(父さんは母さんの気持ちを考えたことがあるのか?)
勇者兄(俺には複数の女性と関係を持つなんて無理だな)

645 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:07:30.12 ID:1cPqm476o
魔法使い(いっそのこと、はっきり告白してしまった方がいいのかしら)
魔法使い(でも、今はあまりリヒトの精神を乱すようなことを言うのは躊躇われるわ)
魔法使い(だからといって、このまま放っておいたら、もしかしたらあの女に……)
魔賢者「……?」
魔賢者(歓迎されていないのでしょうか)
魔賢者(そりゃそうですよね、魔族ですもの……)
武闘家「なあ、寝る前に駄洒落大会しようぜ」
執事「あ、いいですね」
武闘家(シュトラールさんが置いてった石が無かったらもっと空気悪かったかもしれんな)
法術師(私は一体どうすれば……)
法術師(ああ、イリスちゃんのぬくもりが恋しい)

646 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:08:30.10 ID:1cPqm476o
ーー
ーーーーーー
法術師「ふっふふっはははははは!」
武闘家「くっ……お前笑いとるの上手いな!」
執事「ははは、得意分野ですから」
魔賢者(すごい、人間とあんなに打ち解けているなんて)
魔賢者(高位貴魔族の方々を次々と説き伏せた伝説の持ち主だものね……いいなあ)
勇者兄「俺がいない間に随分と楽しそうな空気になってるじゃないか〜混ぜてくれよ」
魔法使い「あら、意外と早かったわね」
勇者兄「仲間も増えたことだし、人数分飲み物買ってきたぜ」
勇者兄「当然酒じゃなくジュースだがな! ほらよ」
武闘家「おっ流石リヒトさん」
魔賢者「あ、ありがとうございます」
執事「どうも」
法術師「やったあ」
魔法使い(リヒト……どうして……)
魔法使い(破壊神がいなくなったら、どうせまた魔族と敵対するかもしれないのに)
魔法使い(魔族なんて……魔属なんて敵なのに)

648 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:10:14.02 ID:1cPqm476o
翌日
法術師「……アイオ、やっぱりもうそろそろはっきりさせた方がいいと思うの」
魔法使い「…………」
魔法使い「リヒトが魔族なんかに惹かれるわけない」
魔法使い「この旅が終わるまで、この気持ちは封印するわ」
法術師「そう言って、いつも先延ばしにしてばかりじゃない!」
魔法使い「……」
女勇者「もう来ないでよね!!」
勇者父「えー」
魔賢者「!」
魔賢者「平和協会からメッセージを受信しました」
魔賢者「ここからすぐ北北西の町に、破壊者の少女が現れているそうです」
勇者兄「すぐに飛べるか!?」
魔賢者「はい! エミル殿下にもすぐに連絡を転送します」
勇者兄「頼む」

649 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 15:11:10.60 ID:1cPqm476o
歌唱者(破壊神からの力の供給が安定しつつあるわ)
歌唱者(力を消費しすぎなければ、この姿を保てるはず)
歌唱者(私、生きてさえいれば、今頃このくらいに成長していたわ)
歌唱者(復讐を遂げて、あの山でまた暮らすの)
歌唱者(そのための滅びの力ーーーー)
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651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 15:27:21.88 ID:5vyCWFvZo
勇者父が眠そうなのは、なんかあるのかな…
otu

652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/06(日) 17:40:50.36 ID:JLuUy6KZO
イッた後は眠くなるだろう?つまりそういうことだ

653 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:06:19.04 ID:1cPqm476o
Section 23 滅びの唄
執事「アリア!」
歌唱者「……コバルト」
少女の足元には血で塗れた瓦礫が転がっている。
執事「…………やめるんだ、こんなこと」
執事「僕は、君に罪を犯してほしくない」
歌唱者「罪? 私は罪を犯した者をただ罰しているだけよ」
法術師「無関係の人だって大勢巻き込んでいるわ!」
法術師「イリスちゃんを返して!」
歌唱者「……邪魔をするなら、コバルト以外全員消すわよ」
武闘家「消耗させるしかなさそうだな!」

654 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:06:54.79 ID:1cPqm476o
勇者父「おい、しっかりしろ! 立てるか!?」
協会兵「う……」
歌唱者「ーー揺らめく光」
勇者兄「聖光の大刃<シャイン・ブレード>!」
魔法使い「劫火の華<サイクリックペタル・コンフラグレイション>!」
武闘家「気流砲!」
勇者父「人形兵が沸き出てきたぞ!」
歌唱者「ーー舞い踊る闇」
武闘家「やべえ……」
法術師「聖なる盾<ホーリィ・シールド>!」
魔賢者「鋼の鮫牙<メタル・シャーク・クラッシュ>!」
執事「……君に雷を放ちたくはなかった。叫びの雷光<ロアリング・ライトニング>」
歌唱者「ーー虚空の旋律ーー」
滅びの波動が刃となり、ありとあらゆるものを切り刻んでいく。

655 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:07:28.19 ID:1cPqm476o
勇者兄「つええ……」
勇者「もう始まってる!? 大いなる水の流れ<カタストロフィック・フロッド>!」
勇者兄「魔王は来ねえのか!?」
勇者「政治で忙しくてとても来られる状態じゃないんだ!」
どれほど大規模な魔術を叩きこんでもアリアには届かない。
執事「思い出すんだ! 君は誰かを憎んだりするような子じゃない!!」
執事「誰よりも平和を愛していたじゃないか!!」
歌唱者「あなたこそ忘れてしまったの?」
歌唱者「あの夜の地獄を、みんなの痛みを、死を!!」
執事「アリア……」
武闘家「なあ、人形以外にもなんか変な奴出現してないか……?」
法術師「これは……魂? 怨念?」
魔法使い「死者を操ってるっていうの!?」

656 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:08:06.12 ID:1cPqm476o
歌唱者「この世に強い未練を残した者は成仏することもままならない」
歌唱者「破壊神は死者にも力を与えるのよ!」
歌唱者「ーー生への執着」
勇者「……アリアさんの魔力に、違和感があるんだ」
勇者「まるで、不純物がいっぱい混じっているような感じ」
勇者「ぐちゃぐちゃに混ざって、ぐるぐる渦巻いてる」
執事「……何かが、混ざっている」
歌唱者「ーー死への嘆き」
執事「アリア、思い出して! 君の優しさを!」
執事「君は、そんな歌を歌う子じゃなかったはずだ!」
歌唱者「ーー悔恨の唄ーー」
癒しの歌は、滅びの唄へと変わってしまっていた。

657 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:08:56.49 ID:1cPqm476o
法術師「いやあああ! お化けえぇぇ!!」
魔法使い「きゃああ!」
勇者兄「埒が明かねえ……いつになったらエネルギー切れ起こすんだ……」
武闘家「幽霊は俺の気功に任せろっ!」
執事(……僕だけは攻撃されていない。こうなったら)
勇者兄「おい!」
コバルトはアリアの下へ走った。
執事「これ以上みんなを攻撃するなら、先に僕を殺せ!」
刀を握っているアリアの右手を掴み、刃を自らの首に添えた。
歌唱者「な、何をするの!?」
執事「君が誰かを傷付けているところを、これ以上見たくないんだ」
執事「さあ、殺せるものなら殺してみろ!!」
歌唱者「そんな……」
歌唱者「そんなこと、できるわけないじゃない……」
執事「……アリア」
歌唱者「っ……」
コバルトはアリアを抱きしめ、
執事「……」
歌唱者「…………!」
彼女の唇を奪った。

658 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:09:32.69 ID:1cPqm476o
法術師「まあ!」
勇者兄「ななななな何やってんだあいつ」
執事「僕の魔気を彼女の体内に送り込んで気絶させました」
執事「しばらくは目を覚まさないでしょう」
魔賢者「な、なんとかなったんですね……」
執事「しかし、イリスの姿には戻っていません」
執事「目を覚ましたら何をするかわかりません。厳重に拘束しなければ」
勇者「……大丈夫じゃないかな。コバルトさんがキ、キスした瞬間、」
勇者「アリアさんから、毒素のような何かが抜けていくのが見えたから……」
法術師「王子様のキスで呪いは解けるのよ!」
魔法使い「あんたはいつでも平常運転ね……」
勇者兄「よし、雑魚一掃しつつ怪我人助けるぞ」

659 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/06(日) 20:10:50.40 ID:1cPqm476o
魔王「幽霊が攻撃を仕掛けてきただと?」
魔団長「各地で被害が相次いでおります」
魔王「……破壊神の影響かもしれぬ。警備を怠るな」
魔団長「はっ」
魔王兄「カメリアちゃーん」
メイド「きゃっ、殿下ったら」
魔王父『ふしだらな!』
ドンッ、と石壁を叩く音が響いた。
魔王父(今までは何度壁に八つ当たりしてもすり抜けておったというのに……)
魔王兄「誰だよ壁叩いたの」
魔王「貴様に腹を立てている幽霊でもいるのだろう。この頃出るらしいからな」
魔王兄「マジかよ……」
魔王「この城では淫らな行為を慎むのだな」
魔王兄「でも幽霊に性行為見せつけると除霊できるらしいぜ?」
魔王兄「生の波動にやられるらしい」
魔王「……どうだか」
魔王父(確かに近付けなくなるな)
メイド長「あんまり私の部下の腰を砕かないでくださいよ?」
メイド長「人手が減ると困りますので」