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勇者「お母さんが恋しい」
Part25


579 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:35:57.10 ID:6wTOLlyuo
会場から人が雪崩のように逃げ出している。
勇者「破壊者だ! 行かなきゃ!」
魔法使い「酷い騒ぎね」
法術師「怪我人が出てるわ!」
勇者兄「エミル! みんな!」
魔法使い「ちょ、あんた何でキスマークだらけなのよ!」
勇者兄「好きで付けられたんじゃない!!」
法術師「イリスちゃん、ここで待ってるのよ!」
幼女「うん……」
勇者兄「会場に乗り込むぞ!!」

580 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:36:42.37 ID:6wTOLlyuo
勇者「お父さん!」
勇者父「こいつ、やべえぞ!」
勇者父「破壊の人形まで召喚しやがった!」
破壊者と化した女性の周囲を、箱がいくつか組み合わさったような形の人形が飛んでいる。
魔王兄「女の嫉妬ってこえーな! ははは!!」
勇者「あれ? 兄上の兄上だ」
人形1「カタカタ カタカタタタ」
人形2「ガタタタッ タタタタタッ」
勇者兄「来るぞ!」
勇者「クリスタルバリア!」
人形1・2「「コオォォォォ」」
バヒューン!
人形は力を溜め、光線を放った。
ピシピシと水晶状のバリアにヒビが入り、あっさり割られてしまった。
勇者「嘘でしょ……あれ破られたことなんてなかったのに」

581 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:37:40.33 ID:6wTOLlyuo
魔賢者「過保護じゃないですか? わざわざ陛下を追いかけるだなんて」
執事「いやぁ、でも心配ですよ……陛下ですし……」
警備兵はまだかー!
はやく、はやく魔術師様を!!
魔賢者「なんだか騒がしいですね……」
幼女「ふあぁぁ……こわいよぉ……おねえちゃーん! どこー!?」
幼女「あ……ーーーーニク、イ」
幼女「ミギメノキズーーーー」
幼女「…………」
執事「君、どうしたんだい? 迷子かな?」
幼女「ん……セレナおねえちゃんまってるの」
執事「セレナ……その人は今どこに?」
幼女「あっちいっちゃったの」

582 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:38:28.94 ID:6wTOLlyuo
武闘家「俺怪我人運ぶわ!」
魔法使い「気高き焔の翼ーー我に立ちはだかる者を滅せよ!」
魔法使い「高貴なる紅焔<ノーブル・プロミネンス>!」
魔王兄「おお、なかなか綺麗な火ぃ出すじゃねえかあの姉ちゃん」
魔王「暢気に観戦なぞしおって……闇氷の障壁<ダークアイス・ウォール>!」
勇者兄「突き刺せ! 閃光の白雨<シャイン・エッジ・レイン>!」
人形1・2「「ヒキャアアァァァ」」
勇者兄「よし、人形は倒したぞ!」
勇者「でもあの人はどうすれば」
準優勝者「アァァァァァアァァ」
武闘家「衝撃波やべえ! 鋭すぎ!」
魔法使い「セレナ、あの術試すわよ!」
法術師「ええ!」

583 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:39:05.38 ID:6wTOLlyuo
魔法使い・法術師「「始祖アメトリーナの名の下にーーかの者に乗り移りし意思を浄化する」」
魔法使い・法術師「「ーーアウフェリムス アニムム マリーーー」」
準優勝者「アァー ァ ア……」
準優勝者「…………う……わた、しは……」
魔法使い「成功したみたいね!」
法術師「ふう……よかったわ」
勇者兄「おまえら、今の術何だ?」
法術師「私達の祖先の術で、役立ちそうなものがないか調べた結果よ」
セレナのシトリニィ家とアイオのアメシスティ家は、共にアメトリーナという女性を始祖としている。
彼女は魔術・法術の双方に精通し、それらを大いに発展させたと言われる大賢者である。

584 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:40:26.65 ID:6wTOLlyuo
勇者「あの人も、研究所の牢屋から出られなくなるんだ……」
法術師「死者が出なくてよかったわ」
法術師「でも、何人か治しきれなかった……あれじゃ、元通りの生活なんて……」
勇者兄「できるだけのことはやったろ」
勇者父「眠い……」
勇者兄「父さんって歳のわりに老けてるよな」
勇者父「心は若いぞ」
勇者兄「あっそ」
勇者父「それにしてもお前キスマークだらけじゃねえか! モッテモテだな!」
勇者兄「親父の弊害を受けたんだよ!! 逃げるの大変だったんだからな!!」
勇者兄「はあ、気の多い奴が身内にいると苦労するな……」
魔王(不本意だが同意せざるを得ない)
法術師「イリスちゃん? どこ?」
幼女「おねえちゃん!」
法術師「ああ、よかった……」
執事「やっぱりセレナさんを待っていたんですね、この子」

585 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:41:09.70 ID:6wTOLlyuo
法術師「あら、コバルト」
執事「陛下が心配だったので後を追っていたところ、この子と出会いまして」
魔王(信頼されていないのだろうか……)
法術師「一人で置いてけぼりにしちゃったから、とても心配だったの……ありがとう」
幼女「あのね、イリスね、こころがどっかいっちゃいそうになってね、」
幼女「そしたらこのおにいちゃんがたすけてくれたんだよ」
法術師「心が、どこかに?」
執事「酷く不安を感じていたようです」
執事「では陛下、帰りますよ」
魔王「ああ」
幼女「ねえねえ、またあえる?」
執事「……ええ、機会があれば」
執事(笑い方が……そっくりだ、あの子に)
執事(アリア……)

586 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:43:15.49 ID:6wTOLlyuo
メイド長「お帰りなさいませ陛下、コバルト。パルルはエミル様の元に?」
魔王「ああ」
魔王「人魔会議の日取りが決まった」
魔王「だが、その前に大魔族会議を開かねばな」
魔王「すぐに伝令を送ってくれ」
執事「はい」
魔王「かなり有益な情報を得ることができた。もしかすれば、上手くいくかもしれん」
魔王「調べ物を頼みたい」
執事「わかりました」
魔王「……頼んだぞ」
Now loading......

587 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:43:42.91 ID:6wTOLlyuo
kokomade

588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/03(木) 18:06:21.80 ID:8B3mkMVGO
otsu

589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/04(金) 02:01:07.55 ID:CySk1osUO
幼女の名前が破壊神なんだよなぁ
ガメラ呼ばなきゃ

590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/04(金) 19:18:35.77 ID:MY37MtwQo
犬被った魔王kawaii
幼女がキーか…
otu

591 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:37:50.04 ID:tszzSwKgo
『すごいすごーい! 風が気持ちいいわ!』
『こんなに高く飛べるのね!』
彼女は、この山が好きだった。
僕は、彼女を背に乗せて飛ぶのが好きだった。
実るはずのない想いだったけど、一緒に遊べるだけで……幸せだった。
Section 20 宝珠

592 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:39:31.30 ID:tszzSwKgo
魔王「……推測した通りでよかった」
執事「族長達の了承を取れたなんて奇跡ですよ、ほんと」
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美女2『やっとこっちを見てくれたのね! 可愛いわ〜教えてあげちゃう』
美女2『昔、大精霊達様は、人間に守護の力を持つ五つの宝珠を授けてくださったのよ』
美女2『それぞれ、赤、青、銅、緑、金の色に輝いていたらしいわ』
美女2『激しい争いがない間は各地の神殿に納められていたらしいのだけど』
美女2『魔族に奪われて、今はもうどこにあるのかわからないって言われてるわ』
美女2『取り戻せたら、人類の大きな希望になるでしょうね』
魔王『……まさか』
魔王兄『こんな感じの珠か?』
美女2『あら、綺麗に赤く輝いてるわね。きっとこんな感じよ』
魔王『何故貴様が力の珠を持っている』
魔王兄『お袋が、これ持ってたら男がビビッて逃げてくからってよく俺に預けてくんだよ』

593 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:39:57.43 ID:tszzSwKgo
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勇者父「大会議の会場はセントラルか」
勇者「テレポーションを使う魔族達の負担を考えたらそうなるだろうね」
勇者兄「魔族が伝説級の術で迎えに来るなんて、王様達ビビるだろうなあ」
勇者「絶対罠だって疑うだろうね……集まってくれたらいいんだけど」
勇者父「だがテレポーションを使わないと、」
勇者父「世界中のお偉いさんとすぐに話をするなんて無理だしなあ」
エミル達は国王達を安心させるため、各国の国王を迎えに行く賢者達に各々同行した。

594 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:41:11.00 ID:tszzSwKgo
執事「皆さんのご協力により、どうにか人間の方々をお迎えすることができました」
勇者「会議、上手くいくといいね」
執事「ええ」
執事「やあ、イリス」
幼女「ん……こんにちは」
法術師「あら、照れてるのかしら」
イリスはセレナの背に隠れている。
執事「会議が終わるまで、部屋の外で待っててね」
法術師「いい子にして待てるわよね? お姉ちゃんも一緒にいてあげるから」
幼女「うん」
勇者「パルルもね」
狼犬「……がふぅ」
勇者(無理矢理魔法で魔気抑えてるからこの頃機嫌悪いんだよなあ。ごめんね……)
幼女「……あのね、あのね、あとでね、イリスのおうたきいてほしいの」
幼女「イリスね、おうたうたうのじょうずなんだよ!」
執事「そっか。じゃあ、終わったら聞かせてもらうよ。楽しみにしてるからね」
幼女「うん!」
勇者(紳士だなあ)

595 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:41:55.88 ID:tszzSwKgo
セントラル城・大会議室
そこら中に魔気避けが設置されている。
人間の国や平和協会の代表達、高位の魔族達が一堂に会している様は正に異様であった。
国王達を守護するため、彼等の傍には最上級の術者や勇者の血を引く者が控えている。
魔族達は皆、完全に魔気を抑え込んでいる。
国王「……私はブレイズウォリアの国王だ」
国王「急に召集を呼びかけ、魔族の迎えを送ることとなったにも関わらず、」
国王「この場に集まっていただけたことに感謝しよう」
勇者(空気が張り詰めている……)
勇者父(俺こういうお堅い雰囲気苦手なんだよなあ)
執事「こちらは、第885代魔王ヴェルディウス陛下です」
魔王「…………」
大魔導師(確かに、邪悪な者には見えぬな……魔力が澄んでいる)

596 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:43:05.80 ID:tszzSwKgo
魔王「……破壊神の封印が更に弱まれば、いずれ人形の軍勢が攻めてくると予測される」
魔王「争いの混乱の中、人と魔族が剣を交え、無駄な血を流すようなことがあってはならぬ」
魔王「よって、我は和平を申し出る」
執事(よかった、噛まずに話せてる……)
執事(あーヒヤヒヤするなあ)
魔王「下位の魔族は魔気の制御が不得手な者が多い。そのため、融和は困難であろうが、」
魔王「新たな人魔の争いが起きぬよう、規律と秩序の確立が必要である」
魔王「協力体制を築くことができれば、破壊神による被害者の増加も抑えられるであろう」
国王α「うむ……」
国王β「魔族の口からこのような言葉が出るとは……」
勇者父「彼は平和な時代を築くため、これまで最大限尽力してきたのです」
勇者父「その上、勇者である我が娘エミルを憐れみ匿っていた」
勇者父「どうか信じていただきたい」

597 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:45:47.26 ID:tszzSwKgo
魔王「憎んでいる種族を、ただで信用することが困難なのは当然だ」
魔王「だがもし、和平への同意を得られたならば……」
魔王「我等魔族は『伝説の五つの宝珠』を人間に明け渡そう」
国王θ「な、なんだと……!?」
国王ρ「伝説の五つの宝珠だと!?」
魔王(大精霊から人類に授けられた物であれば、)
魔王(我々魔属には光の珠と同様拒絶反応が出るはず)
魔王(だが、闇の珠と同様、人間にも魔族にも扱える物に変質した可能性は否めなかった)
魔王「大陸各地に散らばる神殿の遺跡や歴史を調査した結果、」
魔王「現在五大魔族の族長の証となっている珠が、伝説の五つの宝珠であると断定できた」
魔王「これを相応しい者が所持すれば、人間であっても強大な魔術の使用が可能となる」
魔王「ここに集っている代表者全員の署名と引き換えだ。悪い話ではないだろう」
国王Ψ「願ってもない話だ……問題は、どの国の誰が所有するかであるが……」
会場がどよめく中、突如荒々しく扉が開かれた。
魔王兄「おいファミコンいるかー?」

598 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/04(金) 19:46:33.33 ID:tszzSwKgo
魔王「な、何だその呼称は」
魔王兄「あ? ファミリーコンプレックスの略に決まってんだろ」
魔王「何をしにきた!? ここは貴様が来るような場所ではない!!」
魔王兄「お袋から力の珠預かりっぱなしだったから返しに来たんだよ。要るんだろ?」
魔王「…………」
力族長「あぁんらぁごめんなさいねぇ。うっかりしてたわぁ」
魔王「……………………」
魔王兄「なんか大変そうだけど頑張れよ! どもらないようにな! はは!!」
魔王「帰れ!!!!!!」
魔王兄「泣くこたないだろお前」
魔王「泣いてなどおらぬわ!!!!!!」
執事「あっちゃー……」
力族長「ごめんなさいねぇみなさん。うちの長男いっつもこんな不作法なのよぉ」
勇者(ヴェル…………)
国王δ「魔族も……意外と人間臭いのぅ……」
国王ι「あの魔王、案外同族から舐められとるのでは……」
国王γ「魔王が恥かかされて涙目になっておるぞ…………」