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勇者「お母さんが恋しい」
Part24


561 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:20:54.86 ID:6wTOLlyuo
Section 19 美の都
勇者「住んでた村の名前、憶えてない?」
幼女「わかんない……」
勇者「うーん……」
勇者兄「平和協会に話は通しておいた」
勇者兄「親御さんの名前は幸い憶えてたんだし、すぐ見つかるだろ」
勇者「ありがと、お兄ちゃん」
勇者兄「情報魔術師のおかげで話の伝達だけは早いからなあそこ」

562 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:21:21.53 ID:6wTOLlyuo
数日後
魔王「……」
執事「作業効率落ちてますよ」
魔王「…………」
執事「そんなにエミル様の不在が辛いんですか」
魔王「………………」
狼犬「わふぅわふぅ」
メイド長「陛下の頭に貼り付いちゃだーめ!」
執事「……この書類の束が片付いたらエミル様の元へ行っていいですよ」
魔王「!」
メイド長「あらすごいスピード」
執事「最近いつもこうなんだから」

563 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:22:09.28 ID:6wTOLlyuo
ーー美の都ヴァナディース
勇者父「おっ、そうだそうだ。もう美女コンテストの時期か」
勇者兄「そんなことやってる場合なのか?」
勇者父「世界の危機だからって、なあんにも楽しいこと無かったら気が滅入るだろ」
勇者父「おー流石美の都。美人がいっぱい」
勇者兄「派手にめかし込んでるだけだろ」
勇者兄「……いや、彫りの深い天然の美女だらけだ……」
法術師「あらほんと」
魔法使い「むぅ……」
武闘家「よしエミル、ナンパしに行こうぜ」
勇者「いいよ」
勇者兄「あっこら! エミル、ナンパの意味わかってんのか!?」
勇者「お友達づくりのことでしょ?」
勇者兄「あ、あのなあ」
勇者父「夕刻にコンテスト会場前で集合な!」

564 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:22:41.39 ID:6wTOLlyuo
勇者父「よし、俺もコンテストの席取りをしに」
勇者兄「おい」
勇者父「いやもちろん破壊者探しもするから!」
勇者兄「……はあ」
勇者兄「どいつもこいつも鼻の下伸ばしやがって……女性陣、頼んだぞ」
法術師「はーい!」
魔法使い「まあがんばるわ」
幼女「はぁい!」

565 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:24:34.48 ID:6wTOLlyuo
幼女「このお花きれえ!」
法術師「植木も凝ってるわねー……」
魔法使い「黒と金の髪色の女の人……けっこういるわね……」
法術師「この町は髪の色を抜いたり、染めたりする技術が発達してるみたいだからね」
法術師「見た目で探すより、あの破壊の波動を探ったがよさそうね」
法術師「あ、ここのアクセサリー綺麗ね! アミュレット機能もあるみたい」
魔法使い「凝ってるわね……あっ、値段が……」
法術師「なんてお高い……」
幼女「これかわいいー!」
法術師「あら、これなら買えそうね。買ってあげちゃうわ!」
幼女「ほんと?」
法術師「ええ!」
幼女「わあ! ありがとうおねえちゃん!」
法術師「うふふ……イリスの黒い髪の毛によく似合ってるわ」

566 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:26:04.58 ID:6wTOLlyuo
武闘家「何の手がかりも見つかんねえ」
勇者「ねー……」
美少女1「破壊者騒ぎは時々あるんだけどねぇ」
美少女2「なんせここは美の都。より美しくなろうとするが故に、」
美少女2「自分より美しい者に嫉妬する者が絶えないのよ」
勇者(より嫉妬心を煽るようなコンテストをやっちゃあ危険なんじゃ……)
美少女1「でも、そんな強い破壊者が出たなんて聞いたことないわ」
勇者「捕獲された破壊者達は、今どこにいるのかな」
美少女1「王立研究所の地下らしいわよ」
武闘家「そうか。ありがとよ。お礼にここのケーキとお茶は俺等のおごりだ」
美少女1「きゃっ、ありがと」
美少女2「うれしー!」
勇者(流石美の都……スイーツのデザインも凝ってる……)

567 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:26:49.67 ID:6wTOLlyuo
魔王(素晴らしい景観だな……芸術的な彫刻が至る所に設置されている)
魔王(エミルがいるのはこの辺りか)
魔王(……美少女に囲まれて一体何をしているんだ……?)
魔王(ま、まさかそういう趣味が)
狼犬「?」
魔王(いや、エミルに限ってそんなことは)
魔王(しかし……元から男の装いをしていたし……)
魔王(……冷静になれ。頭を冷やそう)
ーーーー
美女1「キャーあの人素敵じゃなーい!?」
美女2「でも大きいわね……2メートルくらいありそうよ」
ーーーー
魔王(ん……あれは……)
魔王兄「よう」
魔王「貴様……ここで一体何をやっている……」

568 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:28:02.92 ID:6wTOLlyuo
魔王兄「あ? 美女見に来たに決まってんだろ」
魔王兄「お前こそ頭に犬ひっつけて何やってんだ」
魔王「……」
魔王兄「この国は素晴らしいな! 乳のでかい女が山ほどいるんだぜ!」
魔王「貴様が人の姿に化ける術を扱えるとはな」
魔王「流石、夜這いに便利だからという理由だけでテレポーションを身に付けただけのことはある」
魔王兄「おうよ」
魔王「間違っても人間の女を抱くんじゃないぞ」
魔王兄「あんでだよ」
魔王「貴様、大剣で女の内臓を切り裂くつもりか?」
魔王兄「あー確かに人間の女は小柄だよなあ。脆そうだし」
魔王兄「連れ込むんなら身長高くて丈夫そうな奴じゃねえと……」
魔王「……くだらん」

569 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:28:40.31 ID:6wTOLlyuo
魔王「わた……俺はエミルの元に行くぞ」
魔王兄「お前まだ俺が言ったこと気にしてんのかよ! がはは!!」
魔王「くっ……」
魔王兄「まあ待てって」
美女1「あの彼も素敵! 兄弟かしらね?」
美女2「声かけちゃおうかしら」
魔王兄「な? 付き合えよ」
魔王「断る!!」
魔王兄「そこのお姉さんがた〜ちょっとお茶しようぜ」
魔王「ふっ触れるな! 放せ! 放さぬか!!」
美女1「あら、ぜひともお願いいたしますわ」
美女2「うっふ」

570 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:29:32.23 ID:6wTOLlyuo
ーー王立研究所
研究員「一度破壊者となった者は、性格上再び破壊者となる可能性が高いのです」
研究員「よって、この牢屋に隔離し、平静を保てるようにしているのです」
元破壊者「おうち……帰りたい……」
破壊者「ウー! ウー! ウー ーー」
勇者「これじゃ、まるで囚人だ……悪いのは破壊神なのに」
研究員「解放したところで、彼女達が元の生活に戻るのは困難でしょう」
研究員「操られていたとはいえ、周囲に危害を加えたことには変わりません」
研究員「人を殺してしまった者もいます」
研究員「どのように法で裁くべきか、裁判所の議論も終わっておりません」
勇者「はやく……どうにかしなきゃ……」
武闘家「しかし、すぐに再封印できるわけでもないからな」
武闘家「封印がもっと緩まないとこっちからも干渉できないんだろ」
勇者「…………くやしい」

571 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:30:03.11 ID:6wTOLlyuo
美女1「破壊神が復活するなんて物騒よねえ」
美女2「ほんと、怖いわぁ」
魔王兄「んなもん俺が蹴散らしてやらぁ」
美女1「あら、頼もしいのね!」
魔王(戯れ言を)
魔王兄「おい、お前その仏頂面どうにかしろよ」
魔王「…………」
魔王兄「わりぃな、こいつ照れ屋でよ」
美女1「あら、可愛いのねぇ」
美女2「はあ……伝説の五つの宝珠でもあれば心強いのだけどねぇ」
魔王「! ……何だ、それは」
美女2「やっとこっちを見てくれたのね! 可愛いわ〜教えてあげちゃう」

572 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:31:36.25 ID:6wTOLlyuo
勇者兄(美男美女だらけで……なんかこう、場違い感が……)
美女A「キャー見て見て! この子シュトラール様にそっくり〜!!」
美女B「なんて凛々しいお顔立ちなの〜!」
美女C「勇者様なのね!!」
勇者兄「え」
勇者兄(な、なんて豊満な胸……)
美女A「ちょっとご一緒していただけないかしら?」
勇者兄「い、いやあの」
勇者兄(うわああああいい眺めだけど俺は父さんとは違う!!)
美女B「赤くなっちゃってぇ可愛いわねぇ」
勇者兄「ひぃん」
勇者兄(いやいや俺はいつか出会い結婚する嫁さんのために操を立てねば)
美女C「こ っ ち 、 行きましょ?」
勇者兄「ちょっあっ! だ、誰か助けてくれえええええええ!!」

573 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:32:32.29 ID:6wTOLlyuo
ーー
ーーーーーー
司会「えー、今年も美女コンテストを開始いたします!」
勇者父(最前列ゲットできて良かったぁ〜……!)
司会「厳しい予選を戦い抜いた美女達の入場です!」
勇者父「くぅ〜!!」
司会「さあ、今年のミス・ヴァナディースに選ばれるのは一体誰なのでしょうか〜!!」
魔王兄「後列からだと流石に遠いな……」
魔王兄「なあそこのエレクタイルディスファンクション」
魔王「何だオールウェイズエレクション」
魔王兄「…………一番抱き心地の良さそうな女はどいつだと思うか?」
魔王「俺に聞くなセクシュアルパヴェート」
魔王兄「おい何処行くんだよショートファイモシス」
魔王「……俺の心の病のことは知っているだろう」
魔王「ゲルディングにされたくなくばもう俺に近付くなスタリオン」
魔王兄「お前ほんと重症だよなあファミリーコンプレックス」
魔王「ふん……」

574 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:33:07.30 ID:6wTOLlyuo
弟「待ってよにいさま〜!」
兄「こらこら、走ったら危ないぞ」
弟「帰ったらチェスやろうよ!」
兄「ああ、いいよ」
魔王(兄を純粋に兄として慕うことができたら……楽しいのだろうな)
魔王(心の病が更にこの精神を蝕んでいく)
少年時代の自分の声が、己に語りかけてくる。
魔王『こっちから欲情すれば、父上から姦淫を受けたって苦しくないもの』
魔王(……父上はもうこの世にはいない。それなのに何故いまだに……)
魔王(ただエミルだけを愛していたい……彼女だけを……)
魔王(……私は、エミルを……愛することができているのだろうか……?)

575 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:33:51.31 ID:6wTOLlyuo
魔王(兄妹だから、条件反射的に情を欲してしまっているだけではないのか?)
魔王『だから強姦なんてできたんだ』
魔王(そんなはずはない……そんなはずは……)
魔王『本当に愛しているなら、泣き叫んでいたあの子にあんなことできるはずないよ』
魔王『姦淫される苦痛は知っていたはずなのに』
魔王「っ…………」
狼犬「?」
魔王『ぼくは、家族を身体で縛りつけることしかできないんだ』
魔王(私は、穢れている)
狼犬「! ワンワン!」
勇者「あ、パルル! 兄上!」

576 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:34:17.64 ID:6wTOLlyuo
魔王「……」
勇者「どしたの? 悩み事?」
魔王「いや、頭の上の犬が重くてな」
勇者「んもー、すっかり定位置になっちゃってる」
魔王「どうしても寂しがってな……連れてきてしまった」
狼犬「わふぅ」
勇者「全然会いに帰ってなかったもんね。ごめんね、寂しい思いさせちゃって」
狼犬「わふ!」
勇者「宿、動物OKだといいな」

577 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:34:47.68 ID:6wTOLlyuo
魔王「エミル、目を見せてくれ」
勇者「?」
魔王「……綺麗な色だ」
勇者「あっ、だ、だめだよこんな人が多いところでくっついちゃ」
勇者「はしたないよ」
魔王「…………」
勇者「……?」
魔王(……エミルは特別なんだ)
魔王(私の心が壊れる前に私が恋をした、唯一の相手なのだから)
美幼女「ままー何であそこの人達男同士で抱き合ってるの」
美母「シッ! 見ちゃいけません!」
勇者(誤解だああ!!)

578 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/03(木) 17:35:18.13 ID:6wTOLlyuo
優勝者「みんな、ありがとぉ〜!」
司会「優勝はアフロディータだー!」
ワァァァアアアアアアアアアアア
勇者父「おめでとぅぅぅ!」
準優勝者「私が二番のはずないわ……この世界で最も美しいのはこの私……!」
準優勝者「あの女……いつも私の邪魔ばかり……」
準優勝者「憎い……あの女も……あの女を選んだこの会場の連中もみんな……!」
準優勝者「全部……ぶちコワシテ ヤ リ タ イ 」
準優勝者「ーーーー コワス ゼンブ 」
勇者父「あ、やばい」
準優勝者の周囲に衝撃波が生じた。