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勇者「お母さんが恋しい」
Part23


537 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:02:55.28 ID:YFKGm2p2o
『君の歌には、不思議な力があるんだね』
『この村に伝わる、神様の歌なのよ』
『枯れかけた花だって、また綺麗に咲くわ』
『聞かせて、くれるかな』
『聞きたいんだ。君の歌を』
Section 18 少女

538 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:05:07.75 ID:YFKGm2p2o
協会職員「現在大陸中に呼びかけているのですが」
協会職員「怒りや憎しみ等の、破壊衝動の元となる感情を継続して持っていると、」
協会職員「破壊神に操られてしまうので、できる限り穏やかな精神状態を保ってください」
勇者兄「で、俺等は具体的に何やればいいんだ?」
協会職員「とある少女を追っていただいきたいのです」
勇者兄「少女?」
協会職員「破壊神に操られた者……『破壊者』のほとんどは、」
協会職員「捕獲してしばらくすれば正気を取り戻すのですが、」
協会職員「一人だけ、あまりにも力が強くて手が付けられない者がいるのです」
勇者兄「そいつは今どのあたりにいるんだ」
協会職員「それが、突然姿を消してしまうものですから、正確な位置はわかりません」
協会職員「ただ、少しずつ北に向かっているようなのです」
協会職員「現在は大陸中央部のやや北側にいるものと思われます」
協会職員「しかし、その……」
勇者兄「ん?」

539 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:06:48.23 ID:YFKGm2p2o
協会職員「通常、破壊者は無差別に破壊と殺戮を繰り返すのですが、」
協会職員「その少女だけは平和協会の支部のみを攻撃しているのです」
勇者兄「破壊神とは無関係の、協会に恨みのある奴の犯行じゃねえのか?」
協会職員「それが、目撃者の証言によると、」
協会職員「破壊神の下僕である人形を従えていたそうなのです」
協会職員「奇妙な力を使っていたことからも、破壊者で間違いないかと」
勇者「奇妙な力?」
協会職員「魔術とも法術とも異なる、未知の力の波動です」
協会職員「また、彼女が歌うと、周囲の物が崩れ去ったり、絶望的な気分になったりするとか」
勇者「うーん……」
武闘家「気功とも違うな」
勇者兄「話はわかった」
協会職員「彼女は15歳程の美しい少女だそうです」
協会職員「なんでも、黒髪が部分的に金に輝いたりする不思議な頭髪だとか」
勇者「魔族……ではないんですか?」
協会職員「確かに人間だと報告が入っています」
協会職員「では、シュトラール様、テレポーションを習得なさっているのですよね?」
協会職員「一行を連れて大陸中央部辺りまで飛んでいただきたい」
勇者父「あ゛っ、うん」

540 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:07:43.19 ID:YFKGm2p2o
勇者父「どうしよう。多分また魔王来るよな? エミルに会いに」
勇者「あ、ぼくごく最近テレポーション覚えたよ」
勇者「まだちょっと不安だから、自分含めて5、6人くらいが限界かな」
勇者兄「ギリギリいけるか?」
勇者「やってみる」
勇者「……瞬間転移<テレポーション>!」
ーー大陸中央付近
勇者「うっ……疲れた……」
勇者兄「大丈夫か!?」
勇者「力が入らない……慣れの問題だと思うけど」
勇者「すごい量の魔力消費した……」
勇者父「必要な魔力量がばかでかいからな……こんな人数運んだのなら尚更だ」
勇者兄「近くの村までちょっと距離があるな。おんぶしてやるよ」
勇者「ありがとう、お兄ちゃ」
魔法使い「っ!」
勇者「!?」
勇者「う、ううん、歩いてくから大丈夫」
勇者兄「遠慮すんなって」
勇者「あわわ」
魔法使い「…………」
法術師「嫉妬しないの!」
武闘家(リヒトさんが鈍感なのがなあ……問題なんだよな)

541 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:08:15.34 ID:YFKGm2p2o
勇者兄「昔はよくエミルをおんぶしてやったもんだなあ」
勇者兄「転んでひざ擦り剥いたり、寝ちまったりした時とかにさ」
勇者「……そうだったね。懐かしいな」
勇者兄「でかくなっちまったもんだよなあ」
勇者兄「少し会わない間に旅に出てるわ俺以外の奴を兄と呼んでるわ恋人はできてるわで」
勇者兄「うっ……なんか……ざびじ……」
勇者「泣かないで」
勇者「……ぼくにとってのお兄ちゃんはお兄ちゃんだけだよ」
勇者「ヴェルのこと、お兄ちゃんだと感じたこと、実はあんまりないんだ」
勇者兄「えっマジか!?」
勇者「ヴェルは初恋の相手で、誰よりも大好きな恋人で……」
勇者「喜んでもらえるから『兄上』って呼んでるけど、」
勇者「ほんとは兄妹だって実感沸いてないの。ぼくのお兄ちゃんは、お兄ちゃんだけ」
勇者兄「……ぅ……ぐずっ……」
勇者父「泣き虫なところそっくりだよなお前等」

542 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:08:47.82 ID:YFKGm2p2o
少女『ちょっと、あんた達何やってんのよ!』
ガキ1『あ?』
ガキ2『あんだよ』
ガキ3『カトレアじゃん』
いじめられっ子『うう……いたいよ……』
少女『大勢で一人に暴力振るうなんて卑怯よ! ケンカなら一対一でやれば!?』
ガキ1『お前も殴られてえのか』
ガキ2『てめえみてえなガサツな女、女じゃねえ!』
少女『あ、んた達……許さないんだからっ……ぅ……』
ガキ3『こいつ泣きやがったぞー!』
ガキ『『『なーきーむし! なーきーむし!』』』
少年『おまえらまーたいじめかよカッコ悪いぞ』
ガキ2『げっシュト何とかだ!』
少年『勇者様の名前くらい覚えろよ……』

543 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:09:22.66 ID:YFKGm2p2o
勇者父(あいつ、負けん気が強いわりに、感情が昂るとすぐ泣くんだよなあ)
勇者「ほら鼻水拭いて。村に着いちゃうよ」
勇者兄「ふぐっ……ずずっ……」
勇者父(二人とも、あいつに育てられたんだもんなあ。そりゃ似るわ)
ーー村
勇者兄「黒髪と金髪が混じった、15歳くらいの女の子を見かけませんでしたか?」
村人「うーん、そんな変わった頭の子は見てないねえ」
村人「4歳くらいの、迷子の女の子なら保護してるんだがねえ」
勇者兄「ありがとうございます」

544 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:10:11.48 ID:YFKGm2p2o
勇者兄「目撃情報は全然無かった」
武闘家「同じく」
魔法使い「何の手がかりも無しよ」
勇者父「眠い……宿行こうぜ宿」
勇者兄「……おい、その子どこの子だ」
幼女「…………」
法術師「迷子らしくて……この村にはご両親らしき人はいないそうなんです」
勇者「懐かれちゃったね」
幼女「きがついたらひとりだったの」
勇者「魔力で一応探したんだけど、見つけられなかったんだ」
勇者兄「参ったな……」

545 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:10:39.91 ID:YFKGm2p2o
幼女「いっしょにつれてって! さみしいの!」
法術師「か、かわいぃ……」
法術師「ねえ、リヒト君……」
勇者兄「危険な旅なんだ。連れていくのは無理だぞ」
勇者父「いいんじゃねえの? こんだけ人数いるし」
勇者兄「考えが甘いんだよ!」
幼女「んぅ……おねがい」
勇者兄「うっ……」
勇者「引きはがしてもついてきそうだよ」
勇者兄「しゃーねえな……セレナ、しっかり面倒見ろよ」
法術師「うん! あなた、お名前は?」
幼女「イリス!」
法術師「あら、可愛いお名前ね」
勇者「虹かあ。綺麗な名前だね!」
幼女「えへへ〜」

546 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:11:06.12 ID:YFKGm2p2o
勇者父「あれ、お前この村に帰ってきてたのか」
少年勇者「あっ父さん!」
勇者「えっ……?」
勇者兄「は……?」
勇者父「あ、こいつ俺の息子の内の一人」
少年勇者「僕の兄さんと……弟……かな? はじめまして」
勇者「あっ、うん。妹です。エミルです」
勇者兄「……リヒトだ」
少年勇者「僕はブラット。趣味は農業です」
勇者父「暇ありゃ畑いじってるような奴だ」
勇者父「普段はセントラルの平和協会支部で訓練受けてるんだが」
少年勇者「謎の少女の襲撃により訓練どころじゃなくなったんで」
少年勇者「村に破壊者が現れないか警戒しつつ、」
少年勇者「こうして大好きな野菜を育てているんです」
少年勇者「剣を振るより鍬で土を耕す方がずっと好きですね」

547 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:11:50.67 ID:YFKGm2p2o
勇者「この畑からすごい生命のエネルギーを感じる……」
勇者父「こいつが育てた作物はうまいぞ」
少年勇者「たまにしか帰ってこられないんで、」
少年勇者「普段は母さんや弟達が面倒をみてくれているんですけどね」
勇者兄「その弟達って……」
勇者父「いや、俺の子じゃないぞ」
少年勇者「母さんは僕を産んだ後に結婚してるんです。父親違いの兄弟ですね」
勇者兄「頭が痛い……」
勇者「あ、あはは……」
少年勇者「なんなら、今日採れた野菜を少し差し上げましょう」
勇者「え、いいの?」
少年勇者「兄弟のよしみです」
勇者「やったあ! ぼくお料理大好きなんだ。大切に調理するね!」
少年勇者「喜んでもらえてよかったです」
武闘家「複雑な関係なのに心の広い奴だな」

548 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:12:31.49 ID:YFKGm2p2o
勇者「……お母さんは、どうしてこんな浮気者のお父さんと結婚したんだろう」
勇者「美人だし優しいししっかりしてるし絶対他に貰い手あったよね……」
勇者兄「若い頃けっこうモテてたらしいが全員振って父さんと結婚したらしい」
勇者「何でだろ……」
勇者兄「全く理解できん」
妻「離婚してやる!! この浮気者!!」
夫「だから誤解なんだって!!」
妻「もう許さないんだから!! うっーーーー」
妻「ーーーー」
夫「お、おい、どうした?」
妻「ホロベ    コノヨニ ホロビヲ」

549 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:13:36.28 ID:YFKGm2p2o
勇者「あっちから妙な力の波動が!」
妻「ホロベ  ワタシハ スベテヲ     コワス」
夫「うわあああああ!!」
勇者兄「様子がおかしいぞ!」
夫「助けてくれ!!!!」
勇者(これが破壊の波動……)
勇者「クリスタルバリア!」
エミルは水晶状のバリアで破壊者と化した女性を囲んだ。
妻「コワセ  コワセ」
夫「ひぃぃぃぃ」
幼女「こわい」
勇者兄「これが破壊者か。目が逝ってるな」
勇者父「何があったんだ?」
女性はガンガンバリアを叩いている。
夫「た、ただちょっと痴話喧嘩をですね」
勇者父「ただの痴話喧嘩程度じゃあ破壊者化しねえよ」
勇者父「普段から不満溜めてたんじゃないのか?」

550 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:14:24.78 ID:YFKGm2p2o
夫「……俺には幼馴染の女性がいるんだ」
夫「お互い姉弟みたいに思っていたから、恋仲にはならず別の人と結婚したんだが」
夫「ずっと妻が彼女に嫉妬していてね……」
夫「さっきも幼馴染と俺が喋っているところを見られてしまって」
勇者兄「……断じて浮気じゃないんだな?」
夫「そうだ! 愛しているのは妻だけだ!!」
妻「ーーーーーー!」
勇者「反応した?」
勇者父「よし、そのまま愛を叫べ」
夫「えっこんな人前で」
勇者父「そうしなきゃ、奥さんはお前さんだけじゃなく誰でも殺す殺人鬼になっちまうぞ」
夫「う……」
妻「コワ ス  コ ロ セ 」
夫「愛してるぞ嫁さん! この世の誰よりも!!」
妻「っーーーーーー」
夫「俺が愛してるのはお前だけだ! 一生お前だけを愛し続ける!!」
妻「ーーーー」
夫「戻ってこい!!」
妻「……」

551 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:14:51.31 ID:YFKGm2p2o
妻「あら? 私、一体……」
夫「ああ、よかった……」
妻「あなた……」
夫「ちょっと、悪い夢を見ていただけなんだよ」
シュトラールは魔力でペリドットの塊から小さな欠片を切り落とした。
勇者父「一応、これ持ってけ」
勇者兄「何だ? それ」
勇者父「人の心を落ち着かせる効果のある石だ」
夫「ありがとうございます……」

552 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:15:22.07 ID:YFKGm2p2o
勇者父「まだ力の弱い破壊者でよかったな」
勇者父「人形も出現しなかったし、旦那に愛を叫ばせるだけで落ち着いた」
勇者父「人としての意識がまだ残ってたんだな」
勇者父「沸き上がった破壊衝動が強ければ強いほど破壊者の力も強くなり、」
勇者父「正気を取り戻させるのも困難になるらしい。最悪の場合、殺さなきゃならねえ」
勇者父「誰でも破壊者になってしまう可能性はあるが、」
勇者父「嫉妬深い奴や不満を溜めこむタイプの奴は要注意だな」
勇者兄「…………」
勇者父「ん?」

553 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:15:53.79 ID:YFKGm2p2o
勇者兄「いや、母さんはよく父さんの浮気を許せるなと思って」
勇者父「あーまあ、幼馴染だから俺の性格よく知ってるしあいつ」
勇者兄「……ほんと、何で父さんなんかと結婚したんだ?」
勇者父「……何でだろうな? 他の男と幸せになれたはずなのに」
勇者父「何でわざわざ俺なんかを選んだんだろうな……」
勇者「その石、綺麗だね」
勇者父「だろ?」
勇者父「今、協会がそこら中にこの石を設置している最中だ」
勇者父「完全に破壊者の出現を防ぎきることはできないかもしれないが」
勇者父「ないよりマシだろ」
勇者(肖像画に描かれた母上の瞳と同じ色だ)

554 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:16:22.56 ID:YFKGm2p2o
勇者(産んでくれた母上と、育ててくれたお母さん)
勇者(ぼくには、二人のお母さんがいる。二人とも、大事なお母さん)
勇者(死んでしまった母上の願いを叶えるため、今生きているお母さんを守るため、)
勇者(この世界を守りたい)
幼女「セレナお姉ちゃーん!」
法術師「ああんもうほんと可愛いわね!」
魔法使い「あんたは将来いいお母さんになれそうね」
法術師「アイオだって、いいお母さんになれるわよ!」
法術師「あははくすぐったーい!」
幼女「あははぁ!」
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555 : ◆qj/KwVcV5s :2016/03/02(水) 18:17:34.04 ID:YFKGm2p2o
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556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/02(水) 18:23:34.70 ID:WBKTdpe80
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557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/02(水) 18:26:23.90 ID:szXqutRFO
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558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/03(木) 00:48:46.73 ID:GvNaGZprO
魔法使いが嫉妬で…

559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/03(木) 02:00:45.90 ID:GVAq2PwqO
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560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/03(木) 15:56:42.32 ID:Iyc/AuzTo
魔法使いがやばいな…
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