Part22
515 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:52:03.10 ID:W9zzJ8cFo
魔王「これを機に和平交渉を行いたい」
勇者父「ほう」
魔王「沈黙を保つだけでは進展しないからな。ずっと機会を伺っていた」
魔王「私個人が戦うだけでは何かと不都合だ」
魔王「争いの混乱の中で人魔の争いが起こる可能性もある」
魔王「古の神話では、破壊神は人間を操った他、」
魔王「心を持たぬ人形により大地を血で染めたと言い伝えられている」
魔王「魔の気がある以上融和は困難であろうが、共同戦線を張るべきだ」
勇者父「俺も同じことを考えていた」
勇者父「各国の王様集めて会議でも開きたいもんだな」
魔王「ああ」
魔王父『我の可愛い息子に近付くなこの汚らわしい色情魔』
勇者父「……お前さん、俺を恨んでないのか?」
魔王「恨んだところで何になる。母上が悲しむだけだ」
魔王父『何故許せる!? お前の母親を我から奪ったのだぞ!!』
勇者父「そうかい。随分心の広い魔王様だな」
魔王父『死ね、死ね、体の端から少しずつゴキブリに噛み千切られて生き延びたことを後悔するがよい』
勇者父(悪寒が)
516 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:52:34.65 ID:W9zzJ8cFo
魔法使い「くっ……」
魔法使い「何なのよもう!」
魔法使い「あいつ魔族だったのにそれでも妹だなんてありえないありえないありえない」
魔法使い「許せない……何で死んでなかったのよ……!」
魔法使い「もういやーーーーうっ」
法術師「アイオ!? どうしたの!?」
魔法使い「一瞬、頭が痛くて……」
法術師「大丈夫? 今治療を」
魔法使い「……平気よ」
517 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:53:08.55 ID:W9zzJ8cFo
魔王城・食堂
勇者父「うめえ」
魔法使い「よく抵抗なく魔族のごはん食べられるわね……」
勇者「そっか……ぼく、死んだことになってるんだ」
武闘家「死んだままにしとけばお前は自由だ」
勇者「…………」
勇者「でも、お母さんに会いたい。町のみんなや、旅の途中で出会った人達とも」
武闘家「会いに行けば生存していることが確実に平和協会にバレるな」
勇者「ぼく、王様や平和協会に嫌われてるから、人間の社会に戻るのは怖いけど……」
勇者「でも、一生会わないままだなんてやだよ」
勇者兄「何かしらの交渉をして自由を確保してやりたいもんだが」
勇者父「破壊神対策に協力しますっつっとけば当分大丈夫だろ」
勇者父「卑怯な手で貶められたりしなけりゃの話だがな」
魔王「エミル……やはり、母親に会いたいか」
勇者「……うん」
518 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:53:51.88 ID:W9zzJ8cFo
魔王「……私も挨拶に伺わねばと思っていた」
勇者「え!?」
勇者兄「は!?」
魔王「明日、テレポーションで全員ブレイズウォリアまで送り届けよう」
魔王「破壊神の話をするにしても、平和協会の支部よりは本部の方がいいだろう」
勇者兄「お前……マジでうち来るのかよ?」
魔王「人間に化ける術なら心得ている」
執事「ちょっと陛下。仕事はどうするんですか」
魔王「……適当に戻る」
執事「魔王だってバレたら騒ぎになりますよ」
魔王「我が魔術の腕を疑っているのか」
執事「……はあ」
519 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:54:29.53 ID:W9zzJ8cFo
翌日
勇者「じゃあ行ってくるね!」
執事「はい。お気をつけて」
勇者「パルルのお世話、お願いします」
メイド長「はい! 絶対帰ってきてくださいね! ううっ」
執事「今生の別れじゃないんだから……」
執事「……テレポーション使った時点で高位の魔族だってバレませんかね?」
魔王「適当に誤魔化すまでだ」
執事(不安過ぎる……)
勇者父「こんな大人数一気に移動できるなんてすげえな。流石エリヤの息子だ」
魔王「……ふん」
勇者「元の姿に変身できてるかな」
武闘家「おっけ」
520 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:55:01.79 ID:W9zzJ8cFo
ーー東の果ての国ブレイズウォリア
勇者兄「久々の故郷だ。変わんねえな」
勇者「……帰ってこられたんだ」
勇者「お母さーん!」
勇者母「……エミル? エミルなの!?」
勇者「ぼく帰ってきたよ!!」
勇者母「ああエミル! 夢じゃないのね?」
勇者母「よかった……よかった……」
勇者「お母さん……会いたかったよ…………」
521 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:55:39.30 ID:W9zzJ8cFo
エミル達の家
アイオとセレナ、コハクはそれぞれ自分の実家に戻っている。
勇者母「そう……大変だったのね」
勇者兄「一休みしたら国王陛下に会ってくるよ」
勇者兄「あれ父さんは」
勇者「あっちで寝てる」
勇者母「そちらの方は」
勇者「あ、えっとね、ヴェルっていうんだよ」
魔王「……私はエミルの婚約者だ」
勇者母「まあ!」
勇者兄「…………」
勇者母「こ、こ、婚約者だなんて!」
勇者母「ごめんなさいねちゃんとしたおもてなしもできなくて」
勇者母「ええと、どこの国のどんな方なのかしら」
魔王「かなり西の方の国の王族だ」
勇者(嘘ではない……)
勇者母「お、王族……」
カトレアはよろめいた。
勇者「わー! お母さんしっかり!」
522 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:56:26.99 ID:W9zzJ8cFo
勇者母「そんな高貴な方が……うちの娘と……」
魔王「エミルは我が眷属だ。身分の差の問題はな」
勇者「待って! いきなり話してもややこしくなるから!」
勇者母「うう…………」
勇者「えっと……夜にまたゆっくり話そうか」
外
魔王「では私は城に戻る」
勇者「えっもう帰っちゃうの?」
魔王「城を長時間空けるわけにはいかないからな」
魔王「お母上には、お前から説明しておいてくれ」
勇者「うん」
魔王(上手く話せる自信がない……コバルト並みの会話力が欲しいものだ)
勇者兄(二度とくんなし)
魔王「……お前思いの良い母親のようだな」
勇者「!」
勇者「うん!」
523 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:57:04.47 ID:W9zzJ8cFo
ブレイズウォリア城・謁見の間
国王「ほう。シュトラールの術で魔王城からここまで一瞬で移動したと」
勇者父「魔王の協力も得られることとなりました」
勇者父「これを機に、魔王は和平を結ぶことを望んでおります」
国王「ふむ……」
協会代表「信用できぬな……所詮魔族の言ったことだ」
協会代表「裏切られる可能性も充分にある」
勇者父「今の魔王は先代までとは違います。彼は平和を望んでいるのです」
大魔導師「騙されているとは思わぬのか」
勇者父「魔力見りゃ相手がどんな奴か大体わかるだろ?」
勇者父「大魔導師さんなら、」
勇者父「実際に魔王に会えば信用に足る奴だってわかると思うんだけどな〜」
大魔導師「…………」
勇者父「というわけで、人間魔族合同会議を開きたい」
国王「……検討しておこう。全生命の危機だからな」
協会代表「……ところで」
524 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:57:43.31 ID:W9zzJ8cFo
協会代表「エミル・スターマイカ。お前は光の力を失っているようだが」
勇者「ぼくは長い間、ぼくを憐れんだ魔王に『保護』されていましたが、その……」
勇者(魔族だってバレないバレない! フィルターかけまくってるもん!)
勇者父「魔王城の魔気に光の力やられちまったんだよな」
大神官「そのようなことは聞いたこともないが……」
国王「ううむ……」
勇者兄「何疑ってんだよ」
国王「ヒッ!」
協会代表(幼い子供を一人で旅立たせるなど頭がおかしいと苦情が殺到している)
協会代表(表立ってこやつを処分すれば、協会の名が落ちてしまう)
協会代表「……まあよかろう。破壊神の攻撃に備えて体を休めよ」
協会代表(しばらくは様子見だ)
525 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:58:31.20 ID:W9zzJ8cFo
勇者「き、緊張した……」
勇者父「お前嘘吐くの下手っぴだもんなあ」
勇者父「明日からは忙しくなるだろう。今日はしっかり寝とけ」
勇者「うん……」
女子1「エミルあんた生きてたのね!」
女子2「キャーコハク君お帰りなさい!!」
女子3「意外と早かったじゃない!」
女子4「彼女作ったりしてないよね!?」
武闘家「うん」
女子5「エミルくぅぅぅぅぅん!!」
勇者「みんな……ただいま!」
526 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 19:00:22.06 ID:W9zzJ8cFo
夜
勇者母「みんなが無事に帰ってきてくれたお祝いよ」
勇者兄「こりゃまた豪華だな。ありがと母さん」
勇者母「リヒトの好物もいっぱい作ったんだから」
勇者「お母さんのごはんだあ!」
勇者「ヴェルにも食べてほしかったなあ」
勇者母「うちに泊まっていかれたらよかったのに」
勇者「あ、あはは……お兄ちゃんが許さないよそれ」
勇者兄「ったりめーだろ」
勇者父「おー久々のカトレアの料理だ」
勇者母「あんた、もうちょっと頻繁に帰ってきなさいよ」
勇者父「あ、うん、ごめん」
勇者「おいしい……おいしいよ……」
エミルは涙をこぼし始めた。
勇者「も……食べれないって……ぐすっ……思ってた……」
勇者「どんなに頑張ってもっ……お母さんとおんなじ味に作れなくてっ……」
勇者母「エミル……」
527 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 19:01:12.11 ID:W9zzJ8cFo
ーー
ーーーーーー
勇者父「ぐごご……」
勇者「お母さん、一緒に寝ていい?」
勇者母「……いいわよ。おいで」
勇者「んー」
勇者母「よくがんばったわね……」
勇者「お母さん……」
勇者「あのね、お母さん」
勇者母「どうしたの?」
勇者「ぼくを、本当の子供みたいに大事に育ててくれて、ありがとう」
勇者母「い、いきなり何言い出すの!?」
勇者「旅してたらね、知っちゃったんだ、本当のお母さんのこと」
勇者母「…………」
528 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 19:02:08.35 ID:W9zzJ8cFo
勇者「でもね、ぼくも、お母さんのことお母さんだと思ってるし、大好きだから」
勇者母「そう……」
勇者母「本当のお母さんには、会えたの?」
勇者「……何年も前に、死んじゃってた」
勇者母「…………そっか」
勇者「ヴェルがね、本当のお母さんの……その、関係者の人で」
勇者「ぼくのことほんとに大事にしてくれてるんだ」
勇者「だから、心配要らないよ」
勇者母「そう……良い人に巡り合えたのね」
勇者母「彼、悲しい目をした人だったわ。支え合って生きていくのよ」
勇者「……うん」
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529 :
◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 19:04:22.03 ID:W9zzJ8cFo
>>520下三行抜けてた
勇者兄「ただいま、母さん」
勇者父「帰ったぞカトレアー!」
勇者母「みんな……お帰りなさい」
kokomade
難産だ……
530 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/29(月) 20:51:12.13 ID:Z057Kh5s0
otu
533 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/01(火) 04:14:14.93 ID:ArcLHYS6o
成仏できそうにない魔王父ww
otu
534 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/01(火) 18:55:14.57 ID:DiSxIY0ko
otu !
火山兄さんは弟の為に人妻漁りをしているのか
535 :
◆qj/KwVcV5s :2016/03/01(火) 19:12:19.32 ID:yOrE3Gaio
コバルトが味方になってくれそうな魔族に話を持ち掛けつつ、
邪魔者にはヴォルケイトスが「お前の嫁さん美人だよなあ……」と不安を煽ることでヴェルディウスはなんとか権力を得たって感じですね
もっと早く描写するはずだったのですが、コバルトの過去編がずれこんでるので……そのうちちゃんとやりたいです
536 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/03/02(水) 16:44:34.93 ID:Lvdp8IGCo
兄さん案外ブラコンか