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勇者「お母さんが恋しい」
Part21


496 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:01:38.89 ID:sOi7JawAo
勇者父「相手は誰なんだ? お父さんよりイケメンか!?」
魔王「私だ」
勇者兄「は?」
執事(一人称安定しないなあ)
勇者父「おお! こりゃ綺麗な顔だわ! でもおまえら兄妹じゃなかったっけ?」
魔王「近親婚なぞ珍しいことではない」
勇者父「お、そうか! なら問題ないな!」
勇者兄「…………は!?」
勇者「……………………」
勇者兄「魔王テメェやっぱブッ殺す!!!!」
魔王「ふん。返り討ちにしてやる」
勇者「やーめーて!!」

497 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:03:02.64 ID:sOi7JawAo
魔王「何用で我が城に参った」
勇者父「あーまあ、一つずつ説明するわ」
勇者父「二万五千年前に大いなる破壊の意思、別名破壊神が封印されたのは知ってるだろ?」
勇者父「そいつが復活しかけてる」
勇者兄「何だと……」
勇者父「この頃の異常気象や災害もそいつが原因だ」
勇者父「人魔の争いなんてやってる場合じゃない。協力しあわなきゃ全員お陀仏だ」
勇者父「というわけで、魔王の協力を仰ぎにここまで来たわけだ」
魔王「ふむ」
勇者「今までお父さん一体何やってたの?」
勇者父「十二年前、エミルをカトレアに預けた頃に光の大精霊さんから助けてーって言われてなあ」
勇者父「東奔西走、二万五千年前の資料を探しに旅をしてたってわけだ」
勇者父「彼女も五千年前に代替わりしたばっかで、当時のことは詳しくな」
勇者兄「十二年前!?」

498 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:04:17.22 ID:sOi7JawAo
勇者兄「そんな前から助けを求められていたなら、何で俺は魔王討伐の旅なんてしてたんだよ」
勇者兄「平和協会の連中は一言もそんなこと言ってなかったぞ」
勇者父「おまえ、光の大精霊さんの声聞いたことあるか?」
勇者兄「い、いや……」
勇者父「差別意識が強いと彼女の声は聞こえないんだとよ」
勇者父「あと、魔族も彼女の声を聞くことはできない」
勇者父「魔属ってのは、破壊神の呪いを受けて生まれたらしいからな」
勇者「!」
勇者父「光があれば闇があるように、正反対の属性を持つ物があらゆる物に対して存在する」
勇者父「創造神がこの世界を創った時に破壊の意思が生まれた」
勇者父「そして、光の大精霊は創造神の子供みてえなもんだ」
勇者父「相反する者との接触は困難を極める」
勇者父「あ、光の大精霊さんに限らず、大精霊はみんな創造神の欠片らしい」
勇者父「ちなみに、闇の大精霊さんもな」

499 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:05:22.06 ID:sOi7JawAo
勇者父「というわけで、大精霊さん方の声を聞ける勇者は俺しかいなかったわけだ」
勇者父「なんせ魔族の女の子と子供作っちゃうような人間だし! ははは!」
勇者兄「…………」
勇者父「……が、あんまり破壊神云々言って民衆の不安を仰ぐのはよくないし、」
勇者父「そんな神話レベルの話を信じる奴もそういない」
勇者父「平和協会には一応訴えたが無駄だった」
勇者父「あいつら利益第一で動いてるし、」
勇者父「俺、一時期とある女の子と行方晦ましたりしてたから信用なかったわけよ」
勇者(母上のことだ……)
勇者父「だから俺はギリギリまで一人で行動してたってわけだ」
勇者父「いやあ苦労したわ、破壊神に関する情報集めるの」
勇者父「破壊神を封印するために戦った二人の勇者の内、一人は姿を消した」
勇者父「お父さんはその勇者の力を受け継ぐ者を探さなきゃいけなかったわけよ!」
勇者父「二万五千年前に行方不明になった力なんだぞ!! この苦労わかる!?!?」
勇者父「けほっ……ずっと喋ってたら喉乾いた。水ない?」
魔王「コバルト」
執事「はい」
メイド長「あ、私が用意いたします」

500 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:06:18.87 ID:sOi7JawAo
勇者父「あんがと」
勇者父「んでまあ、ついに破壊神の封印が本格的に緩んできちまった」
勇者父「数日前、破壊神に操られた人間により、平和協会の支部が破壊されたんだ」
勇者父「漸くお父さんの言ったことを信じた平和協会は、魔王討伐を取りやめ、」
勇者父「対破壊神の体勢を整えるという決断を下したわけよ」
勇者兄「…………」
勇者父「だからおまえらが争う理由なんてないわけよ!」
勇者父「手を組んで仲良くやろうぜ!」
法術師「突然のことすぎて頭に入ってこないわ……」
勇者父「要するに、共通の敵が現れたから共闘しようぜってことだ」
勇者「あ、で……その、見つかったの? もう一つの力」
勇者父「大陸中探しても見つからなかった……が、一つ閃いたことがある」
勇者父「光の珠と闇の珠って共鳴するだろ?」
魔王「ああ」
勇者兄「めっちゃ力が増幅した」
勇者父「あれ、相手を倒すために強くなってるわけじゃないんじゃね? って」
勇者兄「何だと!?」

501 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:06:59.50 ID:sOi7JawAo
二人の勇者は、大精霊からそれぞれ力の結晶を授かり、
大いなる破壊の意思を封印した。
勇者の内一人は東にある故郷へ帰還し、
もう一人の勇者はいずこかへ姿を消した。
時を同じくして、大陸の生命の半分は魔に侵された。
勇者父「二人の勇者は、光の大精霊と闇の大精霊からそれぞれ一個ずつ力を授かったんだ」
勇者父「俺の仮説だけどな」
勇者父「確かめようにも今の闇の大精霊さんは寝てばっかだし、」
勇者父「多分当時のことは把握してないだろう。悠々自適だからなー彼女」
法術師「でも、闇の力は人間や動物にとって猛毒……」
勇者父「呪いで変質したんだろう、おそらく」

502 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:07:25.19 ID:sOi7JawAo
魔王「我が祖先もまた勇者だったかもしれないというわけか」
勇者「破壊神の呪いを受けて、魔族になってしまったから姿を消したのかも……」
勇者父「ふぅ〜疲れた。今日泊めてもらっていい?」
魔王「構わんが、一つ聞きたいことがある」
勇者父「ん?」
魔王「……エミルに施されていた封印の解術条件。あれは一体何だ……!?」
魔王「あれのおかげで……どれほどの苦難を強いられたことか……!!」
勇者父「いやでもあの条件考えたのエリヤだぞ?」
魔王「な……ん、だと……」

503 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:07:54.53 ID:sOi7JawAo
勇者父「エミルには人間として幸せになってほしかった」
勇者父「だが、もし魔族の男と恋に落ちたら……」
勇者父「人間の体のままじゃ子供を産むなんて不可能だ」
勇者父「だから、両想いの魔族の男と交わったら封印が解けるようにしよう」
勇者父「……っていう、親の真心だったわけよ」
魔王「…………」
勇者「…………」
勇者父「何で『苦難を強いられた』のか聞いていい?」
勇者「やめて」
魔王「………………………………」
勇者兄「……ぐすっ……俺のっエミルがっ……こんな男にっ……」
勇者兄「うわあああああああああん!!!!」
狼犬「?」
狼犬「あおおおおおおおおおおん!!!!」
勇者「パルル、あれ遠吠えじゃないよ」
第一部 完
DISC 2 に取り換えてください。

504 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:08:22.63 ID:sOi7JawAo
夜の闇の中、炎が全てを焼き尽くそうと燃え上がっている。
ーー響け 滅びの唄 純然たる破滅の意思よ 
少女は唄いながら、刀を振るった。
ーー私と、私達の命を奪った人間を、私は決して許しはしない
血飛沫を浴びても尚、少女は笑顔を崩さなかった。
ーーねえ、私、生まれ変わったのよ。
瞳に宿った破壊の神気に駆り立てられるがまま、彼女は憎しみに身を任せた。
ーーもう一度、あなたに会うために
思い出の地を目指して、少女は歩を進める。

505 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/27(土) 15:10:01.30 ID:sOi7JawAo
kokomade
第二部はちゃんと骨組み作ってからやりたいので、開始するまでちょっと時間かかるかもしれません
先日申し上げました通り、三月中には完結させます
じゃないと忙しくなってエタるので

506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/27(土) 15:42:29.85 ID:8dDK782iO
otsu!

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/27(土) 15:45:45.78 ID:KgIaTdaYo
さりげない魔王父が…ww
今度は共闘か
otu

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/28(日) 00:02:35.88 ID:nJ9+aL+4o
otu!
魔法使いの重いが報われる時はくるのか…

509 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:47:03.50 ID:W9zzJ8cFo
勇者兄「まさか敵の本拠地で一泊することになるとは……」
魔法使い「魔気濃いわね……うっぷ」
勇者兄「俺の近くに寄れよ、光の力で結界張るから」
魔法使い「あ、ありがと」
勇者「よかった……誰も死なずに済んで……」
勇者「でも、戦いはもう始まってるんだね」
勇者父「お前の夢を叶えるチャンスだぞ?」
勇者「え?」
勇者父「仲が悪かった者同士が最も仲良くなりやすい時って、どんな時か知ってるか?」
勇者父「共通の敵ができた時だよ」
Section 17 里帰り

510 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:47:40.06 ID:W9zzJ8cFo
勇者「でも……」
勇者父「相手は神様ってか、破壊衝動そのものだ。生命を持たない」
勇者父「それどころか人間を操って攻撃してくるやっかいな奴だ」
勇者父「ためらうことはないぞ」
勇者父「話し合いが通じる奴でもない。戦うしかないんだ」
勇者「……わかった。ぼくのこの魔力を活かす時が来たのかもしれない」
勇者「戦うよ、ぼく」
勇者父「よしよし」
勇者「ん……」
勇者父「一人でよくがんばったな」
勇者「……何で助けに来てくれなかったの?」
勇者「結果的にヴェルのこと思い出せたからよかったけど……」

511 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:48:23.58 ID:W9zzJ8cFo
勇者父「昔、今の魔王と一緒に遊んでただろ?」
勇者「えっ知ってたの?」
勇者父「まあな」
勇者父「ガキの頃のあいつを見てすぐに正体を見破ったさ」
勇者父「あいつがお前を殺すはずがないと信じてた」
勇者「……そっか」
勇者父「何より、お前の人生はお前のもんだ」
勇者父「お前がどう生きるかはお前と周囲の奴等次第」
勇者父「赤ん坊のお前を守るために魔族の血を封印せざるを得なかったが、」
勇者父「お前はもう赤ん坊じゃない。自分の意思を持って生きてるだろ?」
勇者父「生命の危機にでも晒されようもんなら助けるが、」
勇者父「お父さんは必要以上に子供の人生に介入しない主義なんだ」
勇者兄「いやふざけんな!!!!」
勇者父「下手に乗り込んで騒ぎを起こせば戦争になりかねんだろう」
勇者父「そもそもお父さんもう肉体衰えてるし魔王に歯向かうなんて無理無理無理」
勇者兄「エミルがどんなに怖い思いをしたのか想像できねえのかよ!?」
勇者「お兄ちゃん落ち着いて」

512 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:49:07.29 ID:W9zzJ8cFo
勇者兄「ああエミル!」
勇者「ふぎゃっ」
リヒトはエミルを抱きしめた。
勇者兄「どんな姿をしていてもお前は俺の妹だ!」
勇者兄「すぐに助けてやれなくてごめんな、ごめんな」
勇者「お兄ちゃん……」
勇者兄「これからは絶対守るからな」
魔法使い「…………」
魔王「今すぐ我が妹から離れろ下郎」
勇者兄「んだとぉ!?」
勇者「お願いだからケンカしないで」

513 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:49:38.12 ID:W9zzJ8cFo
魔兵士1「ひっ真の勇者一行だぞ」
魔兵士2「殺される! 魔王陛下は何故避難勧告を解除されたんだ……」
法術師「こう恐れられると傷付くわね……当然のことなのだけれども」
武闘家「戦わなさすぎて旅立つ前より腕なまってる気がするんだよな」
勇者「じゃあ久しぶりに打ち合いやろうよ」
武闘家「そうするか」
魔法使い「あんた剣なんて使えたの?」
武闘家「エミル達とは流派違うけど少しはな」
勇者「……ぼくのこと、まだ友達だと思ってくれてるの?」
武闘家「そもそもお前が魔族だって知ってたし俺」
勇者「え!?」
勇者兄「は!?」
魔法使い「何ですって!?」
武闘家「俺と俺の師匠だけは気付いてた。気功のおかげでな」
勇者「じゃあ……ぼくが魔族だって知った上で友達になってくれたの……?」
武闘家「ナンパに利用できさえすればそれでいい」
勇者「…………」
勇者「……あ、ありがとう」
武闘家「そんなドレスじゃ剣振れねえだろ。さっさと着替えてこいよ」
勇者「うん」
魔王「奴は……一体エミルとどのような関係なのだ……」
執事「ただのご友人らしいですから落ち着いてください」

514 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/29(月) 18:50:20.32 ID:W9zzJ8cFo
魔貴族A「まさか真の勇者と手を組むとは……そもそも破壊神なぞ実在するのか?」
魔貴族B「どうにかして王位を剥奪したいものだが……」
魔貴族A「逆らえばヴォルケイトスに妻を寝取られてしまうからな」
魔貴族B「何人の女が奴に骨抜きにされてしまったことか……」
魔貴族A「我等に抗う術はないな。大人しくしておくとしよう」
執事「おや、賢明な判断をなさったようで」
魔貴族A「ひぃっ!」
執事「悪いことは言いません。邪な考えは捨てた方がいいですよ」
魔貴族B「だ、だが、真の勇者を城に泊めるとは危険にもほどがあるだろう」
執事「先程伝令があったと思いますが、」
執事「彼等はそちらから襲わない限り魔族に危害を加えることはありません」
執事「見張りもついています。どうかご安心を」
魔貴族A「よく人間を信用できたものだな……」
魔貴族A「……コバルト。お前は人間が憎くはないのか」
魔貴族A「お前の群れは……」
執事「あなた方には関係のないことです」