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勇者「お母さんが恋しい」
Part18


436 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:14:16.47 ID:xE3RRmhpo
ーー魔王城・魔王の書斎
勇者「パルルーおいで!」
狼犬「わんっ!」
勇者「あはは! こっちこっちー!」
メイド長「うふふ」
魔王「……楽しそうで何よりだ」
執事「……犬に嫉妬してるなんてことないですよね?」
魔王「そこまで私の器は小さくない」
狼犬「アン! わぉぉん!」
魔王「こ、こら、くっつくな! 舐めるな! 毛が服に付く!」
勇者「兄上にも懐いたね! よかったー!」
魔王「くすぐったいぞ……まったく……」

437 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:14:47.65 ID:xE3RRmhpo
ーーセントラルの南の村
武闘家「今日はここで一泊か」
魔法使い「小さな村ね……宿屋も無さそうだわ」
勇者兄「確かこの村に親戚が住んでるはずなんだ。訪ねてみよう」
法術師「〜♪」
魔法使い「さっきの商人から買ったイヤリング、気に入ってるのね」
法術師「婚約者の分まで買っちゃった! おそろい〜」
魔法使い「いいわよね……将来の相手がいる人は……」
勇者兄「すみません、バーント・シェンナさんですか?」
娘父「宿なら他を当たってくれ」
バーントはリヒトの顔を確認した瞬間戸を閉じた。
娘父「その憎たらしいツラを二度と俺に見せるな」
勇者兄「ぁ……ぁ……」
武闘家「ちょっと待ってくれよ」

438 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:15:44.90 ID:xE3RRmhpo
武闘家「調べはついてるんだぜ? バーント・シェンナさん」
武闘家「いたんだろ、エミルがいた討伐隊の中に」
武闘家「ちょっと話を聞かせてほしいんだ」
娘父「……入れ」
法術師「あなたいつの間にそんなこと調べてたの?」
武闘家「さっきの町で平和協会の支部に行った時にちょこっと気功催眠で」
娘祖父「本は……わしの本は無事かのう……」
娘母「お父さん、シールド張ってきたでしょ」
娘母「幸い溶岩は町まで流れてこなかったそうよ」
娘祖父「早く帰りたいのぉ……」

439 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:16:26.55 ID:xE3RRmhpo
娘父「悪いがそいつの顔を紙袋で隠してくれないか」
娘父「胸糞が悪くなって仕方がない」
法術師「仕方ないわね」
娘母「ごめんなさいね、この人若い頃からシュトラールさん絡みで色々あったものだから」
勇者兄(紙袋)「親父は一体何をやらかしたんだ……」
娘父「……ああ。エミルは俺の目の前で魔王に攫われた」
娘父「恐ろしかったな……今こうして生きているのが不思議なくらいだ」
武闘家「魔王が美形ってほんとか?」
娘父「ああ、遠目でも綺麗な顔立ちだってわかったな。先代よりも多少小柄だったが」
勇者兄(紙袋)「よし、戦う時はチビと罵倒して激怒させ、隙ができた瞬間に倒そう」
娘父「それでもそこら辺の人間の男よりは高身長だぞ」
勇者兄(紙袋)「えっ俺より?」
魔法使い「真面目に話しなさいよ」

440 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:22:45.56 ID:xE3RRmhpo
法術師「先代の魔王を見たことがあるんですか?」
娘父「……ああ」
娘父「俺は若い頃、協会からの命令でほんの数年だがシュトラールと旅をしていたからな」
娘父「何度か戦ったことがある」
勇者兄(紙袋)「そうなんですか! 大変だったでしょう、あの親父と旅をするのは」
娘父「俺がいなかったらあいつの子供の人数は数十倍に膨れ上がっていただろうな」
娘父「避妊魔法も絶対じゃないしな……」
勇者兄(紙袋)「ああ……苦労している様子が容易に想像できる……」
魔法使い「もうそろそろ本題に入ったら……?」

441 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:23:26.22 ID:xE3RRmhpo
ーー
ーーーーーー
娘父「……とまあ、こういうことがあったわけだ」
娘父「お偉いさん方に迫害されていたにも関わらず、あいつはめげずによく頑張ったよ」
勇者兄(紙袋)「エミル…………」
娘「お茶、入ったわよ」
娘父「……本気であいつを助けるつもりなんだな?」
勇者兄(紙袋)「ああ」
娘父「あいつは世界に殺されそうになったんだ」
娘父「もし無事連れ帰ることができたとしても、」
娘父「平和協会の連中はなんやかんやで理由を付けて再びエミルを殺そうとするだろう」
勇者兄(紙袋)「……その時こそ、俺はあいつを守ってみせます」
娘父「世界に迫害されるってのは、それだけの理由があるってことだ」
娘父「不当に思えたとしてもな」
娘父「……あいつの身に何が起こっていたとしても、絶対に助けるんだな」
勇者兄(紙袋)「当たり前だろ! 大切な妹なんだ!」
娘父「…………そうか」

442 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:24:26.90 ID:xE3RRmhpo
ーーーーーー
ーー
十二年と数ヶ月前
勇者父『くっ……』
娘父『お前! 行方不明だって聞いてたが何処行ってやがったんだ!?』
勇者父『おっぱいくれよ』
娘父『は!? いきなり何を!! 地獄に堕ちろ!!』
勇者父『いや俺にじゃなくて……この子にさ』
娘父『まさかお前が抱えてるのって……』
勇者父『ああうん俺の赤ちゃん』
勇者父『おまえんとこにも赤ん坊いるだろ?』
娘父『…………ミントの母乳はミモザのもんだ』
勇者父『頼むよ! またいとこのよしみで助けてくれ!!』
勇者父『母親と離れ離れになってこのままじゃ飢え死にしちまうんだ』

443 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:25:18.23 ID:xE3RRmhpo
娘母『よしよし……』
娘父『……どこの女との子だ』
勇者父『西南の森の村出身の美人さん』
娘父『どんな事情で離れ離れになった』
勇者父『ああ、ええっと……』
娘父『あの赤ん坊、何かの魔法を施したばかりだろう。妙な魔力の残り香がするぞ』
娘父『答えろ。あの赤ん坊の母親は何者だ』
勇者父『……驚くなよ。魔王の嫁さんだ』
娘父『はっ…………』
勇者父『魔王の奥さん寝取っちゃった』
娘父『…………眩暈がする』
勇者父『安心してくれ、今日だけ休ませてくれたらもう迷惑かけねえから』
勇者父『魔力が回復したら故郷までバヒューンと飛んで帰るよ』
娘父『は?』
勇者父『俺、魔王の嫁さんからテレポーションのコツ教えてもらっちゃった』
勇者父『目的地の障害物判定が不安だから基本的に自分一人しか飛べねえけど、』
勇者父『赤ん坊くらいの大きさなら多分大丈夫だ。あいたたた……』
娘父『頭痛がする……』

444 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:25:49.50 ID:xE3RRmhpo
ーーーーーー
ーー
娘父「なあお前、自分の母親の腹が膨れているのを見たことあるか?」
勇者兄(紙袋)「いや……覚えてません。エミルが生まれた頃、俺もまだ小さかったし」
勇者兄(紙袋)「まあエミルの時はあんまり腹が膨らまなくて、」
勇者兄(紙袋)「妊娠に気付かなかったって母さんは言ってましたが」
勇者兄(紙袋)「いきなり何ですか」
娘父「いや、何でもないさ」
娘父「生憎狭い家なんでな」
娘父「悪いが全員この部屋で雑魚寝してくれ」

445 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:26:33.52 ID:xE3RRmhpo
魔法使い「ねえリヒト」
勇者兄「ん?」
魔法使い「もうエミルが攫われてから二ヶ月以上経ったわ」
魔法使い「今でも無事だと思う?」
勇者兄「そう信じないとやってらんねえよ」
魔法使い「魔族の領地、それも魔王の直轄管理地は大地に魔気が染みついているらしいわ」
魔法使い「常人なら死んでいる濃度だそうよ」
魔法使い「普通の真の勇者の子供であれば、光の力で浄化できるけど」
魔法使い「あの子は無理でしょうね」
勇者兄「…………お前、俺をどうしたいんだよ」
魔法使い「どうって……」
魔法使い「私はただ、エミルが死んでいた場合、」
魔法使い「あなたが戦意喪失してしまわないか心配なだけよ」
勇者兄「……もう寝かせてくれ」
魔法使い「…………」

446 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:26:59.45 ID:xE3RRmhpo
翌朝
娘父「何が起きても現実として受け止めろよ」
勇者兄「はい」
法術師「お世話になりました」
魔法使い「あなたの料理、おいしかったわ」
娘「ありがとう」
武闘家「ありがとうございました」
娘「……私、エミルの身に何が起きていたとしても、帰ってきてほしいわ」
娘「あの子を絶対に助けて」
勇者兄「ああ、もちろんだ」

447 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:28:24.41 ID:xE3RRmhpo
勇者(お兄ちゃん達、今頃どのあたりだろ)
勇者(多分、ぼくと同じように真っ直ぐ西に向かってるんだろうな)
勇者(お父さんやおじいちゃんの頃は、魔王自ら出向いてくることが多かったし、)
勇者(各地で争いがあったから、すぐには魔王城に向かわずあちこち旅をしていたらしい)
勇者(おじいちゃんは先々代の魔王と相討ち)
勇者(お父さんは先代魔王に大怪我を負わせて、結果的に死に追いやった)
勇者(お兄ちゃんと兄上は……どうなるんだろう)
勇者(……二人とも死なせはしない。絶対に)
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448 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/24(水) 21:34:15.91 ID:xE3RRmhpo
kokomade
>>80の
娘父「その上あの時は」
は、魔王妃との子供を連れてきた時のことです
nagai......wasuu ooi......
mou sankai kuraide daiichibu owarasetai

449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/24(水) 21:35:38.98 ID:hUntQZH/O
otsu

450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/25(木) 03:14:10.72 ID:JX13G1y5O


451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/25(木) 08:52:11.20 ID:VD8H5uWco
勇者父は今ナニ……何やってんだかなー
otu

452 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/25(木) 17:53:03.51 ID:+mXE6E/Co
魔王「エミル、私の上に乗ってくれないか」
勇者「はい」
魔王「くっ……」
勇者「……大丈夫? 苦しくない?」
魔王「問題ない。……動くぞ。そのままじっとしていてくれ」
勇者「うん」
魔王「5401……5402っ…………」
勇者「そんなに腕立て伏せしなくっても、筋力なら魔術で強化できるんじゃ」
魔王「体型をっ……作るためにやってるんだっ……5405っ……」
Section 15 誘拐

453 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/25(木) 17:53:40.30 ID:+mXE6E/Co
魔王「私の不在時にエミルが消えたとは一体どういうことだ」
バンッ、と机を叩く音が響いた。
魔王が一時間ほど城を離れている間に、城からエミルの魔力が消え去っていた。
メイド長「私も仕事から手を放せず、上級騎士達に護衛を頼んでいたのですが」
メイド長「一瞬でいなくなられていたそうです」
魔王「くっ……エミルも連れていくべきだった」
執事「妙ですね……一瞬で姿を消したということは」
執事「テレポーションで誘拐された可能性が非常に高い」
執事「しかし、魔王城でテレポーションを使用できるのはごく限られた者のみ」
魔王城には目に見えないシールドが張られており、
魔王城に出入りするためにテレポーションを使用できるのは魔王族の血を濃く引く者か、
許可されたほんの数名のみである。
ただし、許可された者がテレポーションを使用すれば、同行者も同様に出入りできる。
メイド長「ストゥルトゥス様は」
魔王「テレポーションを習得してすらいない。念のためブロックをかけてはいるが」

454 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/25(木) 17:54:15.07 ID:+mXE6E/Co
上級騎士1「も……申し訳ございません……」
上級騎士2「どのような罰でも受ける所存でございます……」
魔王「…………」
上級騎士達「「「「…………」」」」
魔王「……エミルが消えた際、妙な魔力は感じなかったか」
上級騎士3「ひっ……一瞬ですが、炎の魔力を感知しました」
上級騎士4「こう、激しく噴火する火山の様な……」
上級騎士2「探知されぬよう魔力を最小限に抑えているようでした」
上級騎士1「しかし確かに暑苦しい気でございました」
魔王「……下がってよいぞ。犯人の目星がついた」
魔王「相手が悪過ぎたな。今回は減給だけで済ましてやる」
上級騎士1「な、なんと寛大な……」
上級騎士2「我等は何処までも陛下についてゆきます!」

455 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/25(木) 17:54:49.39 ID:+mXE6E/Co
ーー
ーーーーーー
勇者「う……」
勇者(図書室でうとうとしてる内に何処かに連れ去られてしまったらしい)
勇者「えっと……」
    「まあ座れや」
勇者「は、はあ」
ーーーーーー
ーー

456 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/25(木) 17:55:25.69 ID:+mXE6E/Co
魔王「あやつ……今更何のつもりだ」
魔王「殺してくれる」
執事「陛下!?」
魔王はテレポーションを発動した。
執事「陛下! 僕もお供します! ……あーもう!!!!」
メイド長「陛下があれほど憤っておられるのを見たのは初めてよ、私」
執事「はあ……どうなることやら」