2chまとめサイトモバイル
勇者「お母さんが恋しい」
Part16


389 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/22(月) 21:08:11.99 ID:Yk8qxWZZo
ーー
ーーーーーー
即位して二年程経った。
兄上は気まぐれだから、時折姿を消しては城に戻ってくるという生活を送っていた。
まだぼくの容姿は女の様だった。変声すらしていなかった。
魔王兄『……もう終わりにしよう』
突然、兄上はぼくにそう告げた。
魔王『何故ですか!?』
魔王兄『こんな関係だって家臣どもにバレたら笑いもんだろ』
魔王『しかし…………』
魔王兄『このままじゃお前駄目になっちまうんだよ』
魔王兄『一生自立できねえ』
魔王『兄上……』
魔王兄『じゃあな』
母上が城を去っていった時のことを思い出した。
ぼくは、また肉親に捨てられてしまった。酷く虚しくなった。

390 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/22(月) 21:08:49.56 ID:Yk8qxWZZo
一晩泣き明かし、翌日から必死に食事を腹に詰め込んで体を鍛えた。
執事『どうしたんだい、急に』
魔王『…………筋トレに付き合ってくれ』
ぼくが兄上に強く依存してしまっていたのは確かだった。
でも、愛情に餓えたこの精神は何かに執着しなければ生きていけない。
魔王(エミルは今どうしているだろうか)
もうエミルとの幸せだった日々に依存するしか心を保つ手段は残されていなかった。
きっと、一生この虚しさを埋めることはできないのだろう。
そう、永遠にーーーー。
ーーーーーー
ーー

391 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/22(月) 21:09:16.74 ID:Yk8qxWZZo
魔王(今でも私は、肉親への愛情と性愛の区別が付かないままだ)
魔王(彼女は……エミルは、私をどう思っているのだろうか)
魔王(……落ちてゆく夕陽がなんとも物悲しい)
勇者「ヴェルー!」
魔王「エミル…………」
勇者「えっとね、あのね」
エミルは何かを言い出そうとした。
勇者「……ぁ…………あ、」
軽く微笑み、だが俯いていた。
勇者「あ、ぁ……ぅ…………ぇ……」
夕陽に照らされていたが、頬が紅く染まっているのがわかった。

392 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/22(月) 21:09:45.00 ID:Yk8qxWZZo
勇者「あに、うえ……」
上目づかいで、確かにエミルは私を兄と呼んだ。
魔王「えみ、る……」
長年見つけられずにいたパズルのピースが見つかったかのような、
熱い情が胸を襲った。
勇者「えへへ、コバルトさんがね、こう言ったらきっとよろこふぐぅっ!?」
思わず膝をつき彼女を抱きしめた。
魔王「エミル、エミル……!」
魔王「お前に兄と呼ばれる日が来るのをどれほど待ち望んでいたことか……!」
勇者「ん……兄上、だいすき」
魔王父(羨ましい…………)
Now loading......

393 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/22(月) 21:13:58.57 ID:Yk8qxWZZo
【読み飛ばした人に】
后を亡くしたことで魔王父は精神崩壊を起こした。
魔王は父親から性的虐待を受けるようになり、それが原因で家族愛と性愛の区別がつかなくなる。
魔王には異母兄ヴォルケイトス(オリーヴィア発見前に世継ぎの心配をした重臣達によって魔術で無理矢理作られた子、当時魔王父は童貞を死守)がおり、
愛情に餓えた魔王(当時美少女のような容姿)は、父親死亡後異母兄に依存するようになった。
このままではいかんと思った魔王兄は魔王の元を去り、魔王は再び肉親の愛に餓えるようになる。
という内容でした。丸々カットしてもよかったかもしれない……
母親と異母兄に捨てられたこと、父親から性的虐待を受けていたことで、
肉親に対して捨てられることを極端に恐れると同時に恋慕を抱いてしまうようになり、
依存心・独占欲が強いという魔王の人格ができあがったって感じです。
叔父や従妹は肉親として認識していないようですね。
コバルトの過去も織り交ぜるつもりでしたが、今回の内容がアレなのでまたいずれやることにしました。
ちなみに本編が原作より真面目要素を大量投入されているのに対し、
Section 11も含めて過去編は原作ほぼそのままです。Naanikoree。

394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/22(月) 21:28:39.17 ID:bAD9b+OQO
good job.

395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/22(月) 22:05:26.35 ID:b4Y6AL1Po
otu
BL ni taisei ga atte toku wo sita...

397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/22(月) 23:35:22.31 ID:dVkfN7beo

ヒェッ……と思いながらもしっかり読みました(半ギレ)

398 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/22(月) 23:41:20.35 ID:Yk8qxWZZo
sumimasensumimasenn arigatougozaimasu
RORI ERO ha tomokaku nande HOMO ERO kaiteta noka touji no jibun ni kiite mitai
girl ni shika mienai otokonoko tte dokutoku no iroke arimasenka......

399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/22(月) 23:50:10.39 ID:dVkfN7beo
理性は拒絶するが本能が理解しつつある(葛藤)

400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/23(火) 17:52:10.36 ID:ygZt7QSmo
musiro GOOD !!
otu

401 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 20:56:51.18 ID:BmHQe7jvo
勇者「あ……」
エミルは魔王を見かけると走り去っていった。
魔王「この頃エミルの様子がおかしいんだ」
執事「どうされたんでしょうね」
Section 13 慕情

402 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 20:57:24.93 ID:BmHQe7jvo
魔王「私は彼女に避けられているらしい」
メイド長「あら」
魔王「気づかない内に嫌われるようなことを言ってしまったのかもしれない」
執事「陛下口下手ですしね」
魔王「……」
魔王「だが向こうから甘えてくることもあるのだ」
執事「ふむ」
メイド長「話を聞いて参りますわ」
魔王「頼む」
魔王「エミルまで離れていってしまったら……私はもう生きていけぬ……」
執事「もっとどっしり構えたらいかがですか」

403 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 20:58:02.17 ID:BmHQe7jvo
勇者「はあ……」
メイド長「エミル様っ!」
勇者「ひぐっ! メルナリア……」
メイド長「この頃お顔の色が優れないようなので心配ですわ」
メイド長「何かお悩みでも?」
勇者「い、いや……その……大したことじゃ……」
メイド長「女同士なのですから、小さなお悩みでもなんでも話していただきたいですわ」
勇者「ん……でも……」
メイド長「エ・ミ・ル・さ・ま」
勇者「…………」
メイド長「もしかして……恋のお悩みですか?」
勇者「あぐっ……」

404 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 20:58:29.66 ID:BmHQe7jvo
メイド長「そんなことだろうと思いましたわぁ」
勇者「う……」
メイド長「恋バナ! 恋バナしましょう!!」
勇者「ぼく、その……」
勇者「友達と恋愛の話とか……したこともなくって……」
勇者「ど、どう話せばいいのかとかわからないし…………」
メイド長「ゆっくり、ちょっとずつお話してくださいな」
勇者「ん……」
メイド長「そうだ、紅茶とお茶菓子をご用意いたしましょう!」
メイド長「甘い物をつまみながらが楽しくて良いですわ!」

405 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 20:59:10.62 ID:BmHQe7jvo
勇者「……ヴェルって、ほら、魔王だし、綺麗な顔してるし……」
勇者「不器用だけど優しいし、けっこうモテたりとか……するのかな……」
メイド長「そうですわね……幼い頃はそれはそれは可愛らしかったので、」
メイド長「年上のメイド達から小動物のように可愛がられていたそうですが、」
メイド長「今でも高位の魔族にしては少し低身長ですので、あまりモテませんわ」
勇者「えっ……そういえば魔貴族の方々って人間より大柄な人がほとんどだ」
勇者「ヴェル充分おっきいのに……185くらいあるよね?」
メイド長「あ、コンプレックスですので陛下の前で身長の話は禁句です」
勇者「じゃあ……ぼくがいない間に恋人がいたりとかは……」
勇者「ぼくには他に好きな人できたりしたことなかったし、」
勇者「ヴェルに昔の恋人がいたりしたらやだなって……この頃胸が痛くって……」
執事「彼女ができたことはありませんよ」
勇者「ほんと?」
メイド長「あらあなたいつの間に」
執事「すみません、気になって様子を見に来てしましました」
メイド長「ガールズトークの邪魔をしないでいただけるかしら?」
勇者「いいよ……別に……」
執事「陛下のことなら僕の方が詳しいですし」

406 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 20:59:37.69 ID:BmHQe7jvo
執事「今のところ、僕の知る限り陛下のことを慕っている女性は一人だけいらっしゃるのですが」
勇者「!?」
執事「陛下は彼女を好いておられませんし、安心して大丈夫ですよ」
勇者「ん……」
勇者(もやもやする……)
メイド長「お悩みのきっかけはございますの?
勇者「そ、その……こんなこと言うの恥ずかしいんだけど……」
勇者「ヴェル……キスがすごく上手だし……」
勇者「ぼ、ぼくは他の人とキスなんてしたことないから、」
勇者「あんなものなのかもしれないけど、慣れてる感じがして……心配になっちゃって」
執事「……なるほど」
メイド長(ああもう可愛らしいですわ! 恋に悩むお姿って素敵!)

407 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 21:00:42.40 ID:BmHQe7jvo
執事「決して陛下のことが嫌いになったから避けているというわけではないのでしょう?」
勇者「初めて会った時から、ヴェルのことは好きだったけど……」
勇者「この頃、好き過ぎて胸が苦しくて、不安で仕方がなくて…………」
勇者「一緒にいたいのに……」
執事「陛下はエミル様のことを心配しておられましたよ」
執事「彼が最も恐れていることは、エミル様が遠くへ行ってしまわれることなのです」
執事「陛下を信じて、もっと甘えてもいいと思いますよ」
勇者「……そっか」
メイド長「いつかその激しい感情は深き慈愛になりますわ」

408 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 21:01:11.59 ID:BmHQe7jvo
魔王「……エミルはどうだった」
執事「心配には及ばないと思いますよ」
執事「いわゆる好き避けってやつです」
魔王「…………」
執事「感情が昂りすぎて落ち着かなかったようなんです」
執事「しばらく生暖かく見守ればいずれ落ち着きを取り戻されるでしょう」
魔王「そ、そうか」
執事(照れてる)
執事「そろそろ大魔族会議の準備に取り掛かりましょう」
魔王「……そういえばそろそろその時期だったな」
執事「頭痛薬持ってきますね」
魔王「……頼む」

409 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 21:01:37.83 ID:BmHQe7jvo
ーー魔王城・中庭
勇者「大魔族会議?」
メイド長「ええ。魔王陛下と、魔王族や五大魔族の代表者が出席する会議です」
メイド長「年に一度定期的に行われる他、必要に応じて開催されることもございます」
メイド長「エミル様もご出席なさるようにとのことですわ」
魔従妹「ちょっとあなた!」
勇者「……ぼく?」
魔従妹「ヴェルディウスの婚約者ってあなた?」
勇者「あ……はい……」
勇者(ツインテール美少女だ)
メイド長「エミル様、こちらは魔王陛下の従妹であらせられる……」
魔従妹「マゼンティアよ」
勇者(こ、怖い……)
魔従妹「あんたみたいなちんちくりんにヴェルディウスは渡さないんだから!!」
勇者「ひっ」

410 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 21:02:27.06 ID:BmHQe7jvo
勇者「う……うぁぁぁ……」
メイド長「昔はヴェルディウス陛下をライバル視しておられたのですが」
メイド長「陛下が男性らしくなられてから心境の変化があったらしく……」
勇者(ぼくは女の嫉妬の怖さを知っている)
ーーーー
魔法使い『あんたさえいなければ…………!』
ーーーー
勇者「……図書室行きたいな…………」
勇者(ええと……元の姿になれそうな術……)

411 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 21:02:58.57 ID:BmHQe7jvo
ーー魔王城・大会議室
魔王「……何故エミルは少年のようだった頃の姿になっているのだ」
執事「あの服は陛下のお下がりですね……」
勇者「…………」
メイド長「まあまあ」
執事「では、初めてご出席された方も二……いえ、三名いらっしゃいますので、」
執事「お一人ずつご紹介いたしましょう」
執事「こちらは、ヴェルディウス様の婚約者であらせられるエミル様でございます」
勇者「ど、どうも……」
魔従妹(…………)
執事「えー、力の一族代表、フラム=エカルラーティア様」
力族長「はぁい?」
力族長「炎を象徴とする力の一族の現族長、エカルラーティアよぉ」
勇者(色っぽい女の人だなあ)
力族長「コバルト君ったら相変わらずかわいいわねぇ、十年後が楽しみだわぁ」
執事「はは……」
力族長「陛下もお父上に似ていい男になってきたわねえ、五年後くらいが収穫時かしらぁ」
魔王「っ……」
勇者(女豹だ……)

412 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/23(火) 21:05:20.27 ID:BmHQe7jvo
執事「え、えぇと、知恵の一族代表、ロゴス=スキエンティウス様」
知恵族長「……エミル様は知恵の一族と聞いていたが」
知恵族長「とても我が一族の者には見えぬな」
勇者「あ、いや、その……」
メイド長「普段はオリーヴィア様そっくりですのよ」
魔政客「何っ!?」
魔王(エミルが人間の姿をしていて正解だったな……)
魔王(母上とよく似た姿では伯父上に卑猥な目で見られてしまっていただろう)
知恵族長「……失礼。確かに身に纏っている魔力は我等が眷属のものだ」
勇者(ふう……ちょっと堅苦しい)
執事「空の一族代表、ヴァン=ミラン様」
執事「本日は疾風のフォーコン様もご一緒のようで」
空族長「娘との結婚が決まったのでな。後継ぎとして連れてきたのだよ」
執事「それはおめでとうございます」
おぉ〜パチパチパチ
隼青年「……感謝する」
勇者(二人とも真面目そうだなあ)