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勇者「お母さんが恋しい」
Part12


282 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/18(木) 17:44:36.22 ID:+mQqlEJ4o
勇者『『   』は、将来の夢なあに?』
  『将来の、夢……?』
  『……わからない。ぼくは、一体どうしたいんだろう……』
勇者『ぼくはねぇ、お嫁さん!』
勇者『大好きな人と結婚して、元気な赤ちゃんを産んで、お母さんに見せてあげるんだあ』
  『……………………』
  『……好きな人、いるの?』
勇者『あ……えっとね、えっとね』
勇者『ぼくの、好きな人はね…………』
  『…………』
幼いエミルは隣に座っている少年の手に自分の手を重ねた。
勇者(そうだ、ぼく、あの子のことが好きだった)

283 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/18(木) 17:45:11.98 ID:+mQqlEJ4o
勇者「う……」
魔王「…………エミル」
ヴェルディウスは病床に伏しているエミルの手を握っている。
勇者『え?』
  『…………』
勇者『もう会えないの?』
  『……うん』
勇者『……何で? 遠くに行っちゃうの?』
  『……うん。母上が、心配してるから』
勇者『やだ……やだよ…………』
  『………………』
勇者「…………やだ……」
魔王(熱は多少落ち着いたが……まだうなされている)
魔王(悪い夢でも見ているのか)

284 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/18(木) 17:45:50.88 ID:+mQqlEJ4o
勇者『……いつか、また会いに来てくれるよね?』
  『…………ごめん。だめなんだ』
  『もう二度と、会っちゃだめなんだ』
  『君がこの町で幸せになるためには、ぼくはもうここに来ちゃいけない』
勇者『ど……して…………』
  『……君が幸せになれるように』
  『君が寂しい思いをしないように、魔法をかける』
  『ぼくのことは、忘れて生きていくんだ』
勇者『やだ……やめて…………』
勇者「やめて……」
  『目を閉じて』
勇者「…………たくない」
勇者「わす……れ……たくないよ…………」
勇者「やめて……ヴェル!」
魔王「……!?」

285 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/18(木) 17:46:45.40 ID:+mQqlEJ4o
ーーーーーー
  『ぼくは……』
  『ぼくの名前は……ヴェル』
ーーーーーー
勇者「ヴェル……そこにいるの?」
魔王「馬鹿な……!」
魔王「あの記憶を思い出したというのか!?」
魔王「あの記憶は……私が、エミルの脳から消去したはずだ」
魔王「思い出せるはずがない……!」
勇者「……魂からは、記憶、消せないもの」
勇者「会いたかったよ……ヴェル……」
魔王「エミル……エミル…………!」
勇者「抱いて……胸が痛いの」
勇者「あなたに抱いてもらえたら、きっと、この痛みが治まる……そんな気がするから」
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286 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/18(木) 17:48:24.19 ID:+mQqlEJ4o
kokomade
gensaku ha boukenn youso kaimu no maou ga yuusya wo okashiteita dakeno ero syousetsu dattanoni
nanikore nagai

287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:50:39.78 ID:1isH8gJno
foooo nanikore omosiroi otu

288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 17:51:17.12 ID:JN/GYPRno
saikoudana!!

289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 18:24:39.25 ID:uf2UdID20
otuuuu

290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 19:25:04.45 ID:45Xxx4Tpo
otu!!
dokidoki...

294 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/18(木) 23:20:40.91 ID:+mQqlEJ4o
※しばらく後のことになりますが早めに注意書きしておきます
数話後の過去編で同性愛描写有(片方は男の娘ショタ、18歳未満お断りになってしまうシーンは描写しません)
見たくない人はその時何レスほど飛ばすべきかあらかじめ予告する予定です

298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/19(金) 11:58:00.89 ID:zjv6wpjT0
登場人物の年齢を見て>>1の歪んだ性的嗜好が垣間見えて少し引いた
話自体が面白いから応援してます

300 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 14:04:34.44 ID:08qEORKno
話面白いと言っていただけてありがたいです
原作はリアル16歳の頃に書いていた上に、
自分は当時も今もロリコン大好き(ただし二次元のイケメンに限る、三次は論外)なロリコンコンなので色々と察していただきたい
ロリエロに限らず歪んだ性愛描写はこれから増えていくのでご注意。最初の方に書いておくべきでした。申し訳ない
マニアックめな性的嗜好に耐性のない方は閉じた方が安全です

301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/19(金) 14:15:57.76 ID:qzd4bdino
お巡りさん!こっちには何もありません!何もないんです…・…!
続き楽しみすー

302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/19(金) 15:51:53.07 ID:+vR1YXvgo
今のところまったく問題ない続けろください
otu

303 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:26:49.38 ID:08qEORKno
Section 10 お母さん
勇者「ん……」
勇者(朝だ。……気持ち良く起きれたのは久しぶり)
魔王「……エミル、目が覚めたか」
魔王「…………鏡を見てみろ」
勇者「……」
勇者「…………!」
勇者「これ……ぼく……?」

304 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:27:19.56 ID:08qEORKno
魔王「それがお前の本当の姿だ」
面影は残っているものの、
少年のようだったエミルの面貌は、少女らしい顔付きに変貌していた。
髪色も漆黒から茶褐色となっており、光の当たり具合により豊かな色彩変化を見せている。
また、元が直毛気味だったのに対し、柔らかな髪質に変化していた。
勇者(魔王とおんなじ、遊色の髪。オリーブ色になったり、オレンジ色になったりしてる)
瞳の色だけは変わらず鮮やかな緑であった。
勇者(……そっか。魔王はヴェルだったんだ)
勇者(ヴェル……ヴェルディウス)
勇者(昔会っていた頃は、ツノを消して、髪を単色の灰色にして、)
勇者(人間の姿を装っていたのかな)
勇者(でも、悲しそうな表情、白緑色の目は、そのまま)

305 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:27:53.20 ID:08qEORKno
魔王「エミル……愛している」
ヴェルディウスは後ろからエミルを抱きしめた。
勇者「ヴェル…………」
勇者(もう、触れられても怖くない)
勇者「ずっと、ずっと会いたかった」
魔王「…………」
勇者「……ぼくの本当のお母さんのこと、教えて」
勇者「そして、幼い頃、あなたがぼくのところに現れた理由も」
魔王「……ああ」

306 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:28:21.41 ID:08qEORKno
ーー回廊
歴代の魔王やその后の肖像画が並んでいる。
勇者(一番端っこの魔王の肖像画……先代さんかな。ヴェルとちょっと似てる)
勇者(その隣……とても綺麗な、線の細い人。)
勇者(ヴェルと……今のぼくに、よく似てる)
勇者(! 今のぼくと、ヴェルの魔力……波動が似てる……)
勇者「ねえ、ヴェル…………」
魔王「……先代魔王ネグルオニクス。私の父親だ」
魔王「先代魔王妃オリーヴィア。私の母親であり、そして」
勇者「…………」
魔王「……お前の、母親だ」
勇者「…………!」
ぼく達は、昔からよく似ていた。

307 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:30:09.12 ID:08qEORKno
勇者「ぼく達……兄妹……なの…………?」
魔王「……ああ」
魔王「母上は知恵の一族出身の魔族だった」
魔王「……幼い頃から剣よりも勉学を好むというのは、」
魔王「知恵の一族の子供によく見られる特徴だ」
勇者「…………」
魔王「……もっと早く伝えるつもりだったのだが、」
魔王「お前が育ての母親を強く慕っていたため、言い出せなかった」
勇者「っ……ぁ……」
魔王(……相当ショックを受けているようだ)
魔王「残りはおいおい話そう。ゆっくり受け止めればいい」

308 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:30:36.39 ID:08qEORKno
執事「あれ、陛下……朝早くからこんなところに」
執事「もうそろそろ夜明けですが……って」
執事「……え?」
勇者「コバルトさん……」
執事「! ……おめでとうございます」
魔王「エミルは我が眷属として目覚めた。もう心配はない」
魔王「紅茶を淹れてくれ」

309 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:31:04.79 ID:08qEORKno
魔王「不完全ではあったが、条件に基づき魂にかけられた封印を解こうとした影響と」
魔王「病により意識レベルが低下したこと、そして」
魔王「お前が私に関する記憶を思い出したいという強い願いにより、」
魔王「魂に眠っていた記憶と接触することができたのだろう」
勇者「…………」
魔王「結局正しい解術条件は不明のままだが……封印が解けてよかった」
勇者「…………」
勇者「…………きょう、だい……」
魔王「………………」

310 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:31:32.98 ID:08qEORKno
ーー中継地点の島
勇者兄「エミル……」
勇者兄「魔王は、一体何のためにエミルを攫ったんだろうな」
法術師「普通に考えたら、エミルちゃんの魔力を利用するためかなってなるけど」
法術師「妙だったわね、あの伝言」
勇者兄「…………」
法術師「まるで、魔王がエミルちゃんを大切に思っているかのような内容だったわ」
勇者兄「やっぱ見初められたんじゃ……」
法術師「ハッ……勇者と魔王の禁断の恋…………」
勇者兄「うわあああ!! お兄ちゃん魔族の旦那さんなんて認めませんからね!!!!」
武闘家「あんな奴見初めるなんてどんな物好きだよ……」
魔法使い「案外もうお嫁さんになってたりしてね」
勇者兄「いやだああああああああああ」
魔法使い「もう!! あんたこそ一体なんなのよ!!」
魔法使い「いつもいつも妹のことばっかり!!!!」
魔法使い「世界と妹、どっちのために戦ってるのよ!?!?」

311 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:31:58.99 ID:08qEORKno
勇者兄「えっそんなこと言われてもな」
魔法使い「そんなにあの子が大事ならあんたこそあの子と結婚しなさいよ!!」
法術師「まあまあ落ち着いて」
魔法使い「妹以外の女の子に一切興味持ってない変態なんじゃないの!?!?」
勇者兄「そんなことねえよ!!!!」
武闘家「怒りのあまりわけのわからないこと口走ってるぞ」
法術師「そういえばリヒト君って好きな女の子いないの?」
勇者兄「言われてみればまともに恋したことないな……」
魔法使い「やっぱり妹にしか興味がない変態じゃない!」
勇者兄「何でそうなるんだよ!!!!」
勇者兄「……父さんが自由奔放すぎたから怖くて恋愛できねえんだよ」
勇者兄「近所の綺麗なお姉さんに憧れたくらいはあったが」
勇者兄「本来、恋愛して結婚したら、責任とかいろいろついてくるだろ?」

312 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:32:27.85 ID:08qEORKno
勇者兄「俺はその辺母さんからきっちり教育されてるから重みも理解しているつもりだし」
勇者兄「その上、勇者の子供なんて平和協会の目とかいろいろあって面倒だしさ」
勇者兄「恋愛するとしたら、俺がもうちょっと大人になってからかなって思ってるんだ」
魔法使い「そ、そう……」
魔法使い(でも、こうして女の子がすぐそばにいるんだから、)
魔法使い(ちょっとくらい意識してくれたって……)
勇者兄「……ああでも、エミルの旦那になる奴は幸せだろうな」
勇者兄「毎日旨い飯を食える」
勇者兄「この旅にエミルが同行してくれてたらなあ……」
魔法使い「私やセレナの料理に不満があるっていうの!?」
勇者兄「そうじゃねえ!! あいつの味が恋しいだけだ!!!!」
武闘家(学習しねえ……)

313 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:33:43.14 ID:08qEORKno
勇者(光の力、無くなってる。……というより、ぼくの魔気と相殺しあって、)
勇者(常に0の状態になってるみたい)
メイド長「エミル様! 良かったですわ……」
勇者「メルナリアさん……」
メイド長「ああ、なんてお綺麗になられたのでしょう!」
メイド長「元々お顔立ちは整っておられましたが、これほど女の子らしく……」
メイド長「ドレスや装飾品をたんまりご用意いたしましょう!」
メイド長「陛下、いいですよね!?」
魔王「ああ。魔貴族らしくしてやってくれ」
勇者(足腰立たなくてずっとお姫様抱っこなの恥ずかしいな)
勇者(いつも女の子をお姫様抱っこする側だったのになあ)

314 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/19(金) 18:34:12.97 ID:08qEORKno
勇者「ねえ、ヴェル」
魔王「どうした」
勇者「……ぼくのこと、どういう意味で好きなの?」
勇者「妹として? 女の子として?」
魔王「……最初は妹として見ていた」
魔王「共に育ったわけではなくとも、出会ってすぐ血の繋がりを実感した」
魔王「だが……何度も会っている内に、異性として惹かれていくようになった」
魔王「肉親としても、恋の相手としても愛していた……はずだった」
勇者「…………?」
魔王「……しかし、お前に別れを告げた後、」
魔王「私の人格形成に大きく影響を与える出来事があってな」
魔王「今の私は……家族愛と恋慕の区別がつかないんだ」
勇者「……!?」
魔王「だがお前を愛していることに変わりはない!」
魔王「愛して……いるんだ……誰よりも…………」
勇者「ヴェル……」