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勇者「お母さんが恋しい」
Part10


231 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:24:40.86 ID:qmM4/jhSo
ーーマリンの町・診療所
少女「ちゃんとした仕送りもしてやれなくてすまない、か……」
法術師「御両親が心配していたわ」
少女「そう……でも私、立派な医者になれるまでは村に帰るつもりはないわ」
少女「肌が青くなる病気にかかって、私あの村の人達に村を追い出されたの」
少女「そんなことになった原因は、村にまともなお医者さんがいなかったことよ」
少女「だから、ここで働かせてもらいながら勉強しているの」
少女「エミル君に会ったら伝えて。リラは頑張ってるって」

232 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:25:08.22 ID:qmM4/jhSo
勇者兄「船に乗れない?」
船乗り1「ああ、この頃やけに沖の方が荒れてるんだ」
船乗り2「ドラゴン達が喧嘩しているらしい」
船乗り1「俺等とは不戦条約を結んでいるから襲ってはこないが」
船乗り1「おっかなくて仕方がない」
船乗り2「とても大陸西側まで船を渡せる状態じゃないんだ」
勇者兄「北の陸路を行くしかないのか」
勇者兄「くそっ、急ぎの旅だってのに」

233 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:25:47.34 ID:qmM4/jhSo
ーーマリンの町付近の丘
青年「…………」
勇者兄「こんな所で何やってるんだ?」
青年「…………ほっといてくれ」
漁師「おーいヒルギ! また海を眺めてるのか!」
漁師「親父さんが心配してたぞー!」
青年「ここにいさせてくれ……」
法術師「この憂いに満ちた瞳……間違いないわ! 恋の病ね!!」
青年「えっ……」
青年「まあ、そう言えるかな……」
勇者兄「また始まった……おい、置いてくぞ」
法術師「先に行ってて! 後で追いかけるから!」
勇者兄「はあ……麓で待ってるから手短に終わらせろよ」

234 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:26:19.77 ID:qmM4/jhSo
法術師「私はセレナ。あなたの恋の悩み、私に話していただけないかしら」
青年「……君も月の名前を持っているんだね。」
青年「好きな女の子がいたんだ。この丘や、周辺の砂浜でよく遊んだものだったよ」
法術師「うんうん」
青年「でも、もう会えないんだ」
青年「思い出の中でしか、俺は彼女に会うことができない」
青年「だから暇さえあればこうして海を眺めているんだよ」
法術師「あら、どうして会えないのかしら」
青年「禁断の恋だったんだ」
法術師「身分違い……とか?」
青年「そんな感じかなあ」
武闘家「おい、波が荒れてきてないか?」
青年「あれは……!」

235 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:27:08.43 ID:qmM4/jhSo
海面から巨大な蒼いドラゴンが姿を現した。
海竜長「真の勇者…………!」
勇者兄「海竜!?」
魔法使い「なんて大きいの……!!」
青年「う、嘘だろ!?」
青年「五年前に不戦条約を結んだじゃないか!!」
海竜長「条約を結んだのはあの町だけだ」
海竜長「そこの勇者はあの町の住人ではない」
青年「でもこの辺で人間を襲っちゃあ町の連中が黙っちゃいない!」
海竜長「知ったことか! 魔王城へ辿り着く前に消し去ってくれる!!」
海竜1「族長、おやめください!」
海竜2「光の力に殺されてしまいます!」

236 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:28:20.39 ID:qmM4/jhSo
海竜3「仮に助かったとしても、」
海竜3「魔王陛下の命令に背いたらどんな処分が下されることか……!」
海竜長「ええい邪魔するでない!」
海竜長「我は何としても真の勇者を葬らねばならぬのだ!!」
海竜4「族長を全力で止めろおおおおお!」
勇者兄「揉めてる内に逃げるぞ」
海竜長「この間の小さな勇者とは訳が違う!!」
海竜長「その勇者は容赦なく魔属を殺す真の勇者!! 黙っておれるか!!」
青年「落ち着いてくれ!! 何でわざわざ襲おうとするんだよ!!」
青年「隠れてりゃ殺されずに済むじゃないか!!」
海竜長「あの子が今魔王城にいるのだ!!」
青年「!?」
青年「悪いがここで死んでくれ!」
勇者兄「え?」
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237 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 13:28:52.35 ID:qmM4/jhSo
atode saikai shimasu

238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/17(水) 16:01:35.22 ID:feidIa5Ko
ittan otu

239 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:13:19.54 ID:qmM4/jhSo
勇者兄「ちょっと待ってくれ」
勇者兄「どういうことだ」
青年「俺は愛する女の子のためなら世界を敵に回す覚悟だってできているんだ!!」
法術師「まあ!」
勇者兄「関心している場合か! わけがわからんぞ!!」
青年「ぅぉぉおおおお!!」
武闘家「一般人に負けるかよ」
コハクは関節技で青年を組み伏せた。
青年「うぐっ」
セレナは二人を追い越し、リヒトの元に合流した。
海竜長「ええい邪魔だ!!」
海竜の長は竜達を薙ぎ払った。
魔法使い「来るわよ!!」
法術師「光の守護壁<シャインバリア>!」

240 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:13:52.15 ID:qmM4/jhSo
勇者「……高位の魔族の方々って、人間嫌いが多くて、」
勇者「魔王陛下を支持している方は少ないですよね」
メイド長「ええ。好戦的な方が多くおられます」
メイド長「先代までは人間と争うのが常識でしたし」
勇者「メルナリアさんは、どうして魔王陛下に忠誠を誓っているんですか?」
メイド長「私も……志が同じなんです」
メイド長「私の恋の相手は、人間の男の子でした」
勇者「!」
メイド長「人間と魔族が仲良くしている世の中だったら、」
メイド長「私達が引き裂かれることはなかったでしょう」

241 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:14:38.25 ID:qmM4/jhSo
ーー五年前・海底洞窟
少女『お母さま〜見て見て! 人間みたいな姿になれたの!』
海竜長『! お父さまの能力が遺伝したのね』
海竜長『お父さまはゴールドドラゴンだから、人型魔族の遺伝子も持っていたのよ』
弟1『お姉ちゃんいいなあ』
弟2『ぼくもー! ぼくもー!』
海竜長『あなたたちは純粋なマリンドラゴンだから無理よ』
海竜長『たくさんお勉強して、人身変化の術を覚えない限りこのような姿にはなれないわ』
少女『お母さま! ちょっとお散歩してくるね!』
海竜長『あんまり遠くへ行ってはだめよ』

242 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:15:43.30 ID:qmM4/jhSo
少年『だ、だれかったすけっ』
少女(人間が溺れてるわ!)
少女『つかまって!』
少年『あ、ありがとう……』
少年『俺はヒルギ。君は?』
少女『私は……ルナリア』
ーーーー
メイド長「私と彼は不思議と惹かれあい、すぐに仲良くなりました」
メイド長「でも……」

243 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:16:35.94 ID:qmM4/jhSo
大人1『ヒルギ! わかっているのか!? その子は魔族なんだぞ!』
大人2『離れなさい!!』
少年『いやだ!!!!』
少女『あ……ぁ……』
大人3『これ以上一緒にいると魔の気を受けて死んでしまう!!』
少女『抑えてるもん! 魔気出さないようにしてるもん!』
大人4『どけ!! 魔族は殺さなければ!!』
少年『ルナに手を出すな!!』
その時、海から竜の群れが現れた。
海竜長『人間共……!!』
大人1『ま、マリンドラゴン……!?』

244 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:17:25.04 ID:qmM4/jhSo
海竜長『ルナリア、この頃妙に出かけることが増えたと思ったら』
海竜長『人間の小僧に現を抜かしておったのか』
少女『お母さま……』
海竜長『お仕置きは後だ。お前から魔族の誇りを奪ったその小僧と』
海竜長『お前に武器を向けた人間共を葬ってやる』
少女『やめてお母さま! お母さまだって種族違いの恋をしたじゃない!』
少女『私と彼の仲を否定するのなら、』
少女『それは私が生まれてきたこと否定するのと同じだわ!』
海竜長『な、何を言うのだルナリア……』
大人2(なんてでかい竜だ! もうおしまいだ)
大人2(だがただで死んでたまるか! この隙に)
大人2『うおおおおお!!』
少女『っ!!』
少年『ルナリアー!』

245 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:17:58.71 ID:qmM4/jhSo
ーーーーーー
ーー
メイド長「彼は私を庇って大怪我を負いました」
メイド長「私の母は彼に敬意を払い、マリンの町の住人とは互いに接触を避け、」
メイド長「争いをしないという協約を結んだのです」
メイド長「以後、私も彼と会うことはできなくなりました」
勇者「そんなことが…………」
メイド長「そのしばらく後、争いを好まないヴェルディウス陛下の噂を聞き、」
メイド長「お仕えすることとなったーーというわけですわ」

246 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:18:24.30 ID:qmM4/jhSo
勇者兄「魔術で反撃だ!」
魔法使い「ええ!」
青年「お義母さんに手を出すなあああああ!!」
武闘家「動くんじゃねえ!」
勇者兄「そう言われてもな……何だよお義母さんって」
勇者兄(エミルならこんな時どうすんだろうなあ)
勇者兄(意地でも攻撃せず和解を目指すんだろうが)
勇者兄(一体どうやって争いを鎮めていたんだろうか)
勇者兄「…………」
リヒトはヒルギの元へ駆け寄った。
勇者兄「そのまま攻撃を続けてみろ! この男にも当たっちまうぞ!」
勇者兄「それでもいいのか!?」
海竜長「くっ……」

247 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:19:13.49 ID:qmM4/jhSo
勇者兄「魔王城に着いてもお前の言う『あの子』にだけは手を出さない!」
勇者兄「それでいいだろ!?」
海竜長「信じられるか!!!!」
勇者兄「くっ……やはり倒すしかないか」
勇者兄(俺にエミルの真似はできそうにない)
執事「やれやれ、マリンドラゴンに落ち着きが見られないと聞いて様子を見にきたら」
執事「案の定戦闘ですか」
法術師「人間の男の子……? いえ、魔族ね」
海竜長「ゴールドドラゴン……」
海竜長(似ている……彼と……)

248 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:20:24.69 ID:qmM4/jhSo
執事「お初にお目にかかります、伯母上様。そして真の勇者御一行様」
執事「魔王ヴェルディウス陛下の側近を務めさせていただいております、」
執事「ゴールドドラゴンのコバルトと申します。以後、お見知りおきを」
勇者兄「魔王の……側近だと!?」
魔法使い「ゴールドドラゴンですって!?」
法術師「全ての竜の頂点に立つ、伝説レベルのドラゴンじゃないの」
武闘家「その神々しさから、」
武闘家「魔族でありながら人間から崇拝の対象とされることさえあるとかいう」
勇者兄「人間の姿に化けてるのか」

249 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:20:54.82 ID:qmM4/jhSo
執事「真の勇者を葬りに行こうとしていた族長メル=スクテラリアを、」
執事「海竜達が必死に止めようとしていたため海が荒れていた……」
執事「といったところでしょうか」
海竜長「ぐぬ……」
執事「御安心ください」
執事「魔王陛下は真の勇者が訪れる際、全ての魔属を避難させるご予定です」
執事「メル=ルナリアを決して真の勇者には殺させません」
海竜長「……本当だな」
執事「ええ」
執事(この間大火傷を負ったなんて言ったら怒るだろうなあ)

250 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:21:31.38 ID:qmM4/jhSo
執事「このまま引き下がれば不問としましょう」
海竜達((((良かった……))))
執事「そして、真の勇者様」
勇者兄「!」
執事「おっと、構えないでください。僕は戦いに来たわけではないのです」
勇者兄「……」
執事「魔王陛下から伝言を預かっております」
執事「『エミルを守ることができなかった者に兄を名乗る資格はない』と」
勇者兄「!?!?!?」
執事「では」
コバルトは黄金に輝く竜の姿に変化し、瞬く間に飛び去っていった。

251 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:22:33.37 ID:qmM4/jhSo
ーーーーーー
ーー
武闘家「なんやかんやで船に乗れてよかったな」
法術師「人間と魔族の禁断の恋……ああ、素晴らしいわ!」
法術師「愛は種族をも超越するのね!」
勇者兄「あほか」
勇者兄「子供でも生まれてみろ、人間からも魔族からも迫害されて不憫だろ」
法術師「それはそうだけど……」
勇者兄「種族違いの恋は前例がないわけでもないが」
勇者兄「女性が人間だった場合なんて悲惨だったらしいぞ」
勇者兄「妊娠したものの、腹の中の子の魔気にやられて出産前に母子共々死んじまったり」
法術師「いやあああ!!」
魔法使い「そんなエグい話女の子の前でしないでよ!! 最っ低!!」
勇者兄「わ、悪かったって」

252 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:23:16.96 ID:qmM4/jhSo
勇者兄「『エミルを守ることができなかった者に兄を名乗る資格はない』か……」
勇者兄「魔王……ヴェルディウス……」
  『エミルの気持ちをわかってやれない奴がこの子の兄だなんてぼくは認めない!!』
勇者『 『   』!! 』
勇者兄(まさか……なあ)
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253 : ◆qj/KwVcV5s :2016/02/17(水) 16:23:47.71 ID:qmM4/jhSo
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254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/17(水) 21:48:14.65 ID:0Y6Ac3YVo
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256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/17(水) 21:56:13.33 ID:iiNr0Ths0
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261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/02/18(木) 15:52:23.93 ID:nb1qIRyEo
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