Part14
319 :
一週間更新しないと言ったが、ありゃ嘘だ。 :2012/09/27(木) 20:28:27.22 ID:
oyEfLeJ60
ーーーー終の国・王城ーーーー
側近(民は中々まとまってくれないな)
側近(陛下の偉大さが身に染みる)
側近(……あの時。あの剣を私が最初に触ってしまえば良かった)
側近(そうすれば陛下は……)
側近(ーーいや、今はそのような事を考えても仕方が無い。早く新制度の草案を作らなければ)
側近(骸がいれば世界の大部分は陥落できるが凶行軍の後には死体しか残らない。生きた人間も労働力として欲しいところだ。
しかし、洗脳するにも魔蟲も大した数がいるわけではない)
側近(ならば私と人狼が出張る必要も有るが、取り敢えず今は人狼に任せるしかないか)
スッ
魔姫「だーれだ?」
側近「姫様、職務のお邪魔をなさらないでください」
320 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:30:08.22 ID:
oyEfLeJ60
魔姫「あ、ごめんなさい……。だって、誰もいないから」
側近「使用人とお遊びになられたらいかがでしょう」
魔姫「だってよそよそしいんだもん。狼と骸まで帰って来ないし」
側近「彼等も忙しいのです」
魔姫「黒ちゃんと龍さんもずっと帰って来ないし」
側近「龍は一旦帰って参りましたよ。すぐに出掛けましたが」
魔姫「そうなの!? 声をかけてくれても良いのにっ!」
側近「彼女も忙しいのでしょう。姫様もお勉強をなさってください。王を継ぐ者なのですから」
魔姫「えー、もうつかれたよ」
321 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:31:09.97 ID:
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側近「とにかく、私は忙しいのです」
魔姫「……人間を殺すの?」
側近「……ええ」
魔姫「そんなのダメだよ。 お父さんは許さなかったはずだよ」
側近「そうでしょうね」
魔姫「魔物も人間もいっぱい死んじゃうんだよ。みんなが泣いちゃうんだよ」
側近「ええ」
魔姫「そんなのダメだよっ!」
側近「勝ち取らなければいけない物が有ります。殺してでも」
魔姫「……側近のバカっ!」
側近「……重々承知しております」
322 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:32:59.19 ID:
oyEfLeJ60
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「花飾りの完成だよ!」
……綺麗。
「黒ちゃんにあげるよ!」
ありがとう。
「お姫様みたいだよ」
お姫様はあなた。
・
・
・
「釣れないねー」
うん。
「お魚いないのかなあ。骸がここはよく釣れるって言ってたんだけどなあ」
のんびりやろう。
「そうだね」
323 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:36:03.13 ID:
oyEfLeJ60
・
・
・
「お父さんと一緒にお母さんのところに行ってきたよ」
知ってる。
「きれいにしてお花を置いてきたの。お母さん喜んでくれるかなあ」
きっと喜んでるよ。
「そうだといいなあ」
・
・
・
「お城のてっぺんはきもちーね」
うん。
「側近に見つからないようにしなきゃね。口うるさいし」
わたしは腹黒男が嫌い。わたしにだけ冷たい。
「ほんとにひどいよね。今度イタズラしてやろ?」
うん。
324 :
とりあえず納得のいく結末を模索することにしました。 :2012/09/27(木) 20:45:27.82 ID:
oyEfLeJ60
・
・
・
「……雪だ」
嫌いなの?
「うん……。また国中のみんなが寒さで死んじゃうから……」
……そっか。
「いますぐお城によんでみんなで住めばいいのにね。少しずつでもあったかいスープをみんなで飲んで、毛布をみんなで使って」
そうだね。
「でもお父さんや側近に言っても、わたしの頭を撫でるだけなんだよ。龍は怒ったような顔で黙っちゃうし。
骸は賛成してくれたけど、本当にやるのは今のままじゃ無理だって」
……うん。
「だからもっと勉強してね、みんなが幸せになるようにがんばるんだ。
みんなが幸せにならないうちは、誰も幸せになれないから」
すごくいいと思う。
「ありがとう」
325 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:47:47.39 ID:
oyEfLeJ60
・
・
・
「勉強むずかしいなぁ」
簡単だよ?
「黒ちゃんは頭良いもんね。なのましんだっけ?」
うん。昔生きてた人間に造られた。
「どうして昔の人は黒ちゃんを造ったのかな?」
それはーーーー。
「ふうん。よく分かんないや」
そっか。
・
・
・
どうしよう。
このままじゃ、わたしはあの子を傷つけてしまう。
どうすればいいの?
どうすれば……。
ーーああ、そっか。
簡単な方法があった。
わたしは、わたしのーーーー
326 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:48:57.35 ID:
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ーーーー伍の国・二番街・宿屋ーーーー
黒「……」パチ
黒「……夢?」ポー
勇者「おはよう」
黒「……勇者」
勇者「……どうかした?」
黒「ううん、夢を見ただけ」
勇者「夢か」
黒「うん。夢の中でわたしは女の子と遊んでた。きっと、あの子が魔姫って子なんだと思う」
勇者「失った記憶が夢として表出したのか?」
黒「そうなのかも。完ぺきに消去されたわけじゃなかったみたい」
勇者「なるほど」
黒「また会える気がする」
勇者「そうか。取り敢えず着替えて。朝食にしよう」
黒「うん」
327 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:50:59.14 ID:
oyEfLeJ60
ーーーー伍の国・中央街・市場ーーーー
ガヤガヤ
黒「人が多いね」
勇者「はぐれないようにしてくれ」
黒「じゃあ、手をつなご?」ニコ
勇者「……」
ギュッ
伍歩兵「……そんで、何を買うんですか?」
勇者「水とパン、日持ちする食料。あとは服だ」
伍歩兵「生活必需品ですか。水なら、あっちで真面目な男が売ってます。そんで、あそこは食料の品揃えは良いです。服屋はーーーー」
・
・
・
勇者「サイズはどう?」
黒「ぴったり」
勇者「そうか。それにしよう」
黒「にあってる?」
勇者「黒は可愛いから何を着ても似合う」
伍歩兵「本当に可愛らしいなあ」
黒「……」ニコニコ
328 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:55:35.60 ID:
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・
勇者「これで買い物は終わりだ」
伍歩兵「あんまり買わないんですね。軽くて助かりますわ」
勇者「吾人も半分持とう」
伍歩兵「いやいや。俺にも仕事をさせてくださいよ」
伍少女「……あの」
黒「……?」
伍少女「たべもの、ちょーだい」
伍歩兵「ああ。乞食のガキが市場で食いもんをねだるのはよく有ることです」
伍少女「き、きのうから、ごはんたべてないの」
勇者「……」
伍少女「お、おねがいします」
黒「勇者……」
勇者「……」
黒「勇者……!」
伍歩兵「……」
329 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 20:58:13.31 ID:
oyEfLeJ60
伍少女「……」オドオド
勇者「……分かった。ほら」スッ
伍少女「あ、ありがとう」
黒「……」ホッ
伍少年「おれにもちょーだい!」
伍童女「アタシも!」
伍児童「おなかすいたー」
伍稚児「たべもの! たべもの!」
伍幼児「ちょーだい」
ゾロゾロ
黒「わ、わ……」オロオロ
伍歩兵「ぬはは、一人に施したら三十人に乞われると思え、ってね」
勇者「そのような気はしていた」
330 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 21:02:42.18 ID:
oyEfLeJ60
・
・
・
伍歩兵「結局、水も食料も全部やっちまいましたか」
黒「……ごめんなさい」
勇者「謝る必要は無い。吾人の勝手な判断だ。どうせ幼女を見捨てる事はできなかった」
伍歩兵「……まあ、あれで何が変わるって話ですよ」
勇者「……」
伍歩兵「ガキどもは一晩を生き残れるでしょうよ。そんで?
何になるんですか。また同じ事の繰り返しですよ。
行き詰まって、店の商品を盗ろうとして撃ち殺されるかもしれない。
生き残っても、食い扶持の為に反政府集団に隷属して、人を殺したり建物を破壊したり男どもの便器になるかもしれない」
勇者「……」
伍歩兵「あんたのやったことは偽善なんだよ。誰も救われちゃいねえ」
黒「……っ! そんな言い方をしないで! 勇者は……!」
ナデナデ
勇者「怒ってくれてありがとう。でも、良いから」
黒「……」
伍歩兵「……すんません。俺が言えることばなんかじゃ無いです。人殺しの俺には」
勇者「だが事実だ。有り難う」
伍歩兵「……けったいな方ですね」
331 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 21:05:54.54 ID:
oyEfLeJ60
ーーーー伍の国・二番街・宿屋前ーーーー
伍少女「あの……なんですか……?」ビクビク
伍ゴロツキ「パン持ってんじゃねーか。よこせよ」
伍少女「こ、これはお兄ちゃんとわたしの……」ビクビク
伍チンピラ「てか、ちびっ子が独りで出歩くなよ。拐われるぜ。俺たちみたいのにな」ニヤッ
伍少女「ひっ……」
伍ゴロツキ「奴隷として捌くとして。その前に仕込むか?」ニタニタ
伍少女「や……」ビクビク
勇者「何をしている?」
伍ゴロツキ「あん? 何だテメー」
伍歩兵「……あー、宿の用心棒ってもしかしてこいつらか?」
332 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 21:08:36.39 ID:
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伍チンピラ「そうだぜ。客ならさっさと中に行けや」
伍歩兵「なんつうか、三下だな」
伍ゴロツキ「っんだとテメー!? 俺らは革命軍の一員だぞ!」
伍チンピラ「撃ち殺されてえのか!?」
伍歩兵「……へえ」
チャキ
伍ゴロツキ「……は?」
パンッ
伍ゴロツキ「ーーーー」
伍歩兵「だったら、問答無用だな」
ドサッ
黒「……え?」
伍チンピラ「ひっ……」
333 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 21:12:51.18 ID:
oyEfLeJ60
伍歩兵「逃げるなよ」ガシッ
伍チンピラ「くそがぁ!」ブンッ
伍歩兵「何だそりゃ。素人の動きだぜ」ブワッ
伍チンピラ「ぐえっ」ドテンッ
ガッ
伍チンピラ「う……」
伍歩兵「じゃあな」チャキ
伍チンピラ「……うあぁ」ガクガク
勇者「待て。その男から反政府集団について訊きたい」
伍歩兵「ん、そうですか」
勇者「場所を変える。黒と女の子の面倒を見ていて。死体はどうすれば良い?」
伍歩兵「あー、後で始末するんで一目につかない道端にでも置いといてください」スッ
勇者「分かった」ガシッガシッ
伍チンピラ「はっ……はっ……」ジョワァ
ズルズル
334 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 21:15:29.39 ID:
oyEfLeJ60
伍歩兵「ケガはないみたいだな。さて嬢ちゃんたち、何する?」ニッ
伍少女「ぁ……」ガクガク
黒「……カンタンにころしたね」
伍歩兵「仕事だからな。躊躇ったら俺が死ぬ。まだ死ぬわけにはいかねえんだよ」
黒「そう……」
伍歩兵「おっしゃ唄でもうたうか。俺の美声に聞聴き惚るといいぜ!」
黒「……うん」
335 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/27(木) 21:17:01.18 ID:
oyEfLeJ60
あ、ミスった。
聞聴き惚れる
を
聴き惚れる
に訂正で。