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勇者「幼女大好き」
Part12


272 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:03:09.61 ID:Hf8ypfAM0
ーーーー初の国と肆の国の国境付近ーーーー
龍「私は終の国に帰る」
黒「え……?」
龍「勇者のように、もう誰かに憎しみを背負わせたくない。
少しでも早く憎しみを無くし、平和に近づくように尽力したいんだ」
勇者「……」
黒「……そう」
龍「黒はどうする? 私と共に戻るか? 魔姫はお前を待っているだろうが」
ズキッ
黒「っ……」
龍「……どうした?」
黒「なんでもない。頭がいたくなっただけ」
龍「……」
黒「わたしは、勇者といる」
龍「……そうか。それじゃあな」
勇者「それじゃ」
黒「ばいばい」
龍「また会おう」

273 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:04:53.21 ID:Hf8ypfAM0
ーーーー初の国・王城ーーーー
初王「おい、勇者」
勇者「何?」
初王「お前、ふざけてるのか?」
勇者「何の話?」
初王「参王を見殺しにしたんだろ? あのデブは扱いやすくて便利だったってのに」
勇者「そんなことはない。吾人にだって出来ない事は有る」
初王「それと、何故肆王を殺さなかった? 渡したメモには暗殺しておけと書いておいたはずだったが」
勇者「見落としてた。おっちょこちょいだから」
初王「……」スラッ

274 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:06:26.74 ID:Hf8ypfAM0
スタスタ
勇者「吾人を斬ろうとしても怪我をするだけだ」
ヒュンッ
初近衛兵「ーーーー」プシャッ
勇者「……何を血迷った?」
初王「あまりに腹が立ったからな。代わりにこいつを殺した」
勇者「……愚かだ」
初王「次に苛立った時は姫を殺すか。参王がいない今となっては価値は薄いからな」
勇者「……」
初王「困るよな? 姫が欲しいんだろ?」
勇者「……」

275 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:08:22.39 ID:Hf8ypfAM0
初王「そんなに、義妹に似てるのか?」
ピクッ
勇者「……」ジロッ
初王「お前が初めて姫と会った時に、お前の呟きを聞いた奴がいた。女の名前らしき呟きをな。
お前の身の上は聞いていたから、カマをかけてみたが、その反応だと的中らしいな」ニヤ
勇者「……」
初王「姫はお前の義妹じゃないぞ」
勇者「知っている」
初王「それでも欲しいか? 歪んでるな」
勇者「……」
初王「伍の国に行け。やることはメモに書いてあるだろ。
ちゃんと魔王も倒してこいよ」
勇者「……」
初王「姫が欲しいならな」
勇者「……」
スタスタ

276 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:10:05.22 ID:Hf8ypfAM0
ーーーー初の国・師匠宅ーーーー
師匠「ふぎぎぎ、このクソガキ……!てをはなせ……!」グググッ
黒「そっちこそ……」グググッ
初少年「師匠! 流石に大人げないですよ!」
参少女「黒ちゃんもおちついて……!」アタフタ
ガチャッ
勇者「……何が有った?」
初少年「お兄ちゃん、二人を止めて!」

277 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:11:44.39 ID:Hf8ypfAM0



勇者「些細な言い合いからの喧嘩か」
師匠「……」ガルル
黒「……」シャーッ
初少年「師匠は子ども過ぎて困るよ……」
師匠「うるさいぞ小僧!」
初少年「どっちが小僧ですか」ハア
勇者「短時間で随分と仲良くなった」
参少女「これは仲が良いんでしょうか……?」
勇者「師匠」
師匠「あん?」
勇者「伍の国に行ってくる。黒の面倒も頼みたい」
師匠「だから此処は孤児院じゃねえんじゃって」

278 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:14:49.37 ID:Hf8ypfAM0
黒「わたしもついてく」
勇者「今度は本当に駄目だ」
初少年「伍の国って、激しい紛争が起きてるよね……?」
師匠「自由を夢見る若者と政府の戦いじゃな。
尤も、反政府の武装集団は当初の目的を失って形骸化しとるがな。
今じゃ極悪非道の犯罪集団じゃ」
黒「絶対についてく」
勇者「今度は駄目だ」
黒「……ついてく」ウルッ
勇者「……駄目だ」
黒「……」ウルウル
勇者「……分かった。泣かないでくれ」
黒「……!」パアッ

279 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:16:10.21 ID:Hf8ypfAM0
師匠「けっ、二人とも野垂れ死にしちまえ」
黒「……むっ」
グググッ
師匠「いだだだっ! ゆるさんっ……!」
参少女「はわわ……」
初少年「やめなって……」

280 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:19:12.04 ID:Hf8ypfAM0



勇者「車輪が変わってるな」
初少年「師匠が変えてたよ。黒いのはゴムだって。
木の車輪よりも長持ちで快適になるんだってよ」
参少女「やっぱり師匠さんは優しい人ですね」
勇者「師匠、有り難う」
師匠「……けっ、さっさと行け。この阿呆め」プイッ
黒「……」ジー
師匠「あん?」
黒「……」ベー
師匠「このクソガキ!」ウガー
参少女「……たしかに仲がいいのかも?」
ーーーーーー
ーーーー
ーー

281 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:21:44.10 ID:Hf8ypfAM0
ーーーー陸の国・王城・地下ーーーー
カツカツ
側近「気分はどうですか?」
龍「……最悪だな」
側近「魔姫様のご生命がお大事ならそのまま静かに投獄されていてください。もしくは考えを改めてください」
龍「断る。……貴様は屑だな」
側近「そうですか。……しかし誰に感化されて人間と友好関係を築こうなどと考えるようになったのですか?
人間の幼体の姿までして」
龍「勇者だ」
側近「……ああ、あの名高い彼ですか。生前の陛下が熱に浮かされたように呟いてましたね」

282 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:24:28.94 ID:Hf8ypfAM0
龍「大体、お前だって人間の姿をしているだろう」
側近「私は人間への憎悪を常に忘れないように、この姿をしているのです。
勇者もその対象なので始末しますが」
龍「お前では勝てないさ。私でも全く敵わないんだ」
側近「それは凄まじいですね。まあ、戦うのは私では無いんですけどね」
龍「誰でも同じだ。魔王が生きていたら分からなかったがな」
側近「人狼が魔剣を手中に収めました。今の強さは陛下と遜色ありません」
龍「……なんだと」
側近「おそらく寿命は著しく減っているでしょうけどね。
彼は気にしないでしょうが」
龍「……」

283 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:27:54.74 ID:Hf8ypfAM0
側近「龍。私は全ての魔物に、豊かに、そして誇り高く生きて欲しいのです。
穀物もロクに育たない不毛の土地で飢えと寒さに苦しむ民の姿はもう見たくありません。
亡命した者たちが人間共に殺されるのも見たくありません」
龍「……だからといって、魔蟲を大量に繁殖させて人間を襲わせると?
魔蟲の歴史を忘れたのか? 世界の半分を蹂躙して、魔物さえも食い殺した歴史を。
駆逐したのは私とお前だろう」
側近「ええ。しかし色々と交雑を繰り返しましてね。人肉を極度に好み、調教が容易な種を作り出しました。
魔物への被害は殆ど出ないでしょう」
龍「……魔王は人間を虐殺する事なんて望んでいなかったはずだ。
あれほど魔王に忠誠を誓っていたお前がそれをするのか?」
側近「……誰かがやらなくてはいけないんですよ。
憎まれても、恨まれても為さなければいけないんです」
龍「……お前は、悲しい奴だ」
側近「お好きに言ってください。……次に会う時、世界の覇権は我々が握っているはずです。期待していてください」
カツカツ
龍「……勇者」

284 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:32:46.35 ID:Hf8ypfAM0
せめてビターエンドにしたいところです。

285 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/09/18(火) 00:38:58.77 ID:KUpGiDbAo
良くてビターエンドかよ……

286 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/18(火) 07:32:49.61 ID:RQX6yGZ7o
ビターってことは結構死にそうだね

287 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/18(火) 07:39:55.89 ID:pPujAVjMo
bitterだと最悪死にそうだな

288 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/18(火) 14:27:51.61 ID:7FwCmIXIO
追いついた
勇者が衰弱している原因は聖剣の力+黒のナノマシン?ってことですか?

289 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(愛知県) :2012/09/21(金) 04:13:12.29 ID:z/dmwvZko
面白い

290 :>>288多分、そんな感じです。 :2012/09/22(土) 08:50:37.52 ID:SNnSLokV0
ーーーー伍の国・中央街ーーーー
伍衛兵「……」ザッザッ
黒「ものものしいね……」
勇者「それだけ危険に溢れている国だから。この辺りでは最貧国だけあって治安は最も悪い」
黒「そうなんだ」
勇者「絶対に吾人から離れるな」
黒「だったら」
ギュッ
黒「手をつなげば良いよね」ニコ
勇者「っ……」
黒「……どうかした?」
勇者「褐色美幼女のぷにぷにの手。ふひひ」
パッ
黒「……きもちわるい」ジトー
勇者「ぐすん」

291 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/22(土) 08:53:58.40 ID:SNnSLokV0
ーーーー伍の国・王城ーーーー
伍宰相「勇者殿、此度はわざわざご足労いただき恐悦至極に存じます。
かねがねより頼み申していた賊軍の殲滅をお引き受けなさっていただけるとは真に嬉しゅうございます」
勇者「堅苦しい挨拶は要らない。伍王は?」
伍宰相「アレは賊軍に腰を抜かして、腹心の部下を見捨てて他国に亡命しております。建国以来の愚王と称される恥晒しですから」
勇者「……そうか。それで。反政府軍の情報は有る?」
伍宰相「勿論でございます。こちらです」トサッ
勇者「貰って良い?」
伍宰相「勿論ですとも。……それでは、食堂においでください。勇者殿をお持て成しする仕度が整っております」
勇者「……連れを待たせているから無理だ。
それに一刻を早く伍の国に安寧をもたらしたい」
伍宰相「……左様でございますか。いや、有り難きお言葉でございます」
勇者「そうか。それじゃ」

292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/22(土) 08:56:37.73 ID:SNnSLokV0
黒「そういえば、あなたはどうして眼帯をしているの?」
伍歩兵「貪欲な畜生に潰されちまったんだ。でも結構渋いだろ」
黒「うん」
伍歩兵「そういや、軍規に“勝手に髭を剃るな”と有るんだけどよ、俺って髭無い方が色男だよな。
いや、眼帯に顎髭も中々様になってるか」
黒「そうかも」
伍歩兵「因みに勝手に剃ると体罰を受けるんだぜ」
黒「ヘンなの」
伍歩兵「ぬはは、俺以外の兵士の前で言っちゃ駄目だぜ」
黒「分かった。……あ、勇者」
伍歩兵「おっと。これはどうも」
勇者「どうも。面倒を見てくれて助かった。有り難う」

293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/22(土) 08:59:26.27 ID:SNnSLokV0
伍歩兵「おっと。これはどうも」
勇者「どうも。面倒を見てくれて助かった。有り難う」
伍歩兵「なんの、なんの。下っ端なんざ犬のケツ穴嘗めた方がマシな仕事ばっかりでしてね。
可愛いお嬢ちゃんと喋るお仕事なんて金払ってでも就きたいぐらいですわ。ぬはは」
勇者「他の歩兵は出払っているみたいだけれど」
伍歩兵「俺は勇者様の警護を命じられましたんで。まあ、宿泊場所への案内役ですけどね。
本来はもっと警護に人員を回したいらしいんですが、財政がヤバくて人手不足ですわ」
勇者「警護は不要だ。用意された場所に止まるつもりも無い」
伍歩兵「そう言わないでくださいよ。俺だって仕事なんですから」
勇者「とにかく必要無い。別の任に当たって」
伍歩兵「まじで困るんですって。できる限り勇者様の行動を把握しろって任務も与えられてるんですよ」
黒「勇者」
勇者「……同行するのは別に構わない。だが宿泊場所は自分で決める」
伍歩兵「んー、まあ、分かりました」

294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/22(土) 09:03:31.14 ID:SNnSLokV0
ーーーー伍の国・二番街ーーーー
伍中年「……」ポケー
黒「……なんだか、生気が抜けてるような人がそこら中にいるね」
勇者「麻薬常習者だろう。死と隣り合わせの暮らしに絶望して麻薬に手を出すのかもしれない」
伍歩兵「餓死した屍もちらほら有りますねえ。嫌な時代だ」
黒「……こんなのひどいよ」
勇者「そういう国だから。生命の重さはまったく平等じゃない」
伍歩兵「そら、生物なんだから当たり前っちゃ当たり前ですわな。だが、この現状は政府の失策続きでの財政難と阿呆な浪費と執拗な搾取によるものだから、なんとも言えねえですわ」
勇者「……軍人がそのような言葉を口にするのは軽率だ」
伍歩兵「事実を口にする事さえ恐れていたら人殺しなんで到底出来ないですわ」
黒「……じゃあ、セイフと戦う人たちは正しいの?」
勇者「当初はそうだったのかもしれないが、今は違う」
伍歩兵「あいつらの暴れ振りは洒落にならないですからねえ」

295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/22(土) 09:07:00.88 ID:SNnSLokV0
勇者「麻薬を生産して密輸しているのは反政府の勢力。麻薬と奴隷貿易の利益を活動の資金に当てているらしい。厳密には上層部の私腹の肥やしか」
伍歩兵「しかも、各地の村々を巡って虐殺に及んでる。
徴発された少年は、殺された両親や好きだった女の子が強姦されるのを見て何を思うんだか」
勇者「麻薬漬けにされてすぐに忘れるだろう。良心など殺し合いには不要なのだから」
伍歩兵「ぬはは、違いないです」
黒「そんなのおかしいよ……」
伍歩兵「それがこの国の現在のスタンダードなんだぜ」
勇者「だから連れて来たく無かった。衛生も最悪、治安も最悪。死体や汚物、人殺しに麻薬が溢れる国だから」
伍歩兵「ぬはは、昔は良い国だったらしいですけどね。前王、前々王が無能だったのが駄目になっちまった原因のようですわ」
勇者「現王は?」
伍歩兵「どっかに身を潜めてるようですねえ。おっと、あそこに宿が有りますよ」
黒「……やっぱりボロい」
勇者「取り敢えず入ってみよう」