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勇者「幼女大好き」
Part11


247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:39:05.07 ID:muxE9CGP0
ーーーー初の国・師匠宅・納屋ーーーー
師匠「現時点、800℃が一番アンモニアの生産効率が高いようじゃ」
初少年「なるほど」
師匠「つっても、もう躍起になって改良する必要は無くなちまったけどな。肆の国との戦争が始まっちまったし。
アンモニア生産装置も硝酸生産装置も今じゃ戦争激化の種になるだけじゃ」
参少女「あの、そのアンモニアというものが有るとどうなるんですか?」
師匠「空気には窒素ってもんが多分に含まれてる。
この窒素ってやつは生物にとって必要なもんなんじゃが、空気から取り込むことができなくてな。
他の生き物を食って得るしかないんじゃ。
植物ーー小麦なんかも空気中の窒素を取り込むことができないから、土の中の窒素化合物から窒素を摂取するんじゃ。
ここまで理解できるか?」
参少女「えーと、たぶん……」
師匠「濁すな。はっきりと言え」
参少女「わかりましたっ」

248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:44:13.08 ID:muxE9CGP0
師匠「うむ。それでワシは空気中の窒素から窒素化合物ーーアンモニアや硝酸を生成しようと考えたのじゃ。
窒素化合物ができれば土地は肥沃になり、農耕地は飛躍的に増え、食糧の生産を爆発的に増やせる。
また、硝酸は火薬の原料にもなり、戦争でも重要なんじゃ」
参少女「すごいですね」
師匠「うむ。それで、今回の戦争なんじゃが。
初の国は軍事に重点を置いていることは知っているか?」
参少女「知りませんでした」
師匠「なら、憶えておけ。肆の国は、周辺諸国で唯一、硝石が大量に採掘できるんじゃ」
初少年「その硝石というのを蒸し焼きにするとアンモニアができるんだ」
参少女「そうなんだ」
師匠「以前から初の国と不仲では有ったが硝石の貿易はおこなわれていた。
しかし、最近即位したばかりの肆王は極度の初の国嫌いでな。
硝石の輸出を禁止にしたんじゃ。怒った初王は様々な理由をかこつけて肆の国をあらゆる面で包囲しちまった」
初少年「国境付近に軍を配置するところまでやっちゃいましたしね」
師匠「そして見事に戦争は勃発。肆軍が国境付近に駐在していた初軍に攻めかかったという知らせが広がったのは昨日の夜更けか」

249 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:46:26.16 ID:muxE9CGP0
初少年「戦争を防ぐ為に準備してたこの装置たちはもうその意義を果たせなくなったんだ」
参少女「ど、どうしてですか?」
師匠「だから、どもるな。……一旦戦争が始まったら遅いんじゃ。
ワシが考案したこの装置はパンと火薬を生み出して、戦争を長期化かつ非道なものにするだけじゃろうよ」
参少女「……でも勇者さまが戦争を止めにいきました。
きっと無事に戦争を終わらせてくれるはずです」
初少年「……」
師匠「そりゃ、あの阿保はバケモンになっちまったからな。
初の国の勝利で戦争を終わらせるだろうよ。虐殺の果てにな」
参少女「勇者さまはそんなことしません!」
初少年「……僕は、お兄ちゃんに人間で有って欲しい。
……例え、それが人を殺すことでも」
参少女「なに言ってるのっ!」
師匠「童女はあの阿保の事を何も知らねえからな」
参少女「……どういうことですか」
師匠「せっかくだから聞かせてやるよ。あの阿保の身の上話を」

250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:49:38.32 ID:muxE9CGP0
ーーーー初の国と肆の国の国境付近・戦場・最前線ーーーー
ドッ
肆兵士「っ……」
ドサッ
勇者「これで、この戦線は制圧したか」
龍「勇者!」タッタッ
黒「……」トコトコ
龍「……短時間で全員を戦闘不能にしたのか」
黒「途中でおいていかないで。手風琴を背負いながら走るのはタイヘンなんだから」
勇者「安全地帯で待っていろと言ったはずだ」
龍「心配だったからな。黒も楽器を返したいと言って聞かないし」

251 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:52:05.22 ID:muxE9CGP0
勇者「……あまり見せたくなかった」
龍「この兵士たちの死体か?」
黒「……ひどいね」
勇者「……違う。今からの行ないだ」
ズルッ
龍「……? 別にお前が殺したわけではないだろう」
勇者「“今”転がっている死体は、そうだ」?スッ
龍「……その掲げた剣は、距離に関係なく対象を斬れるようだな」
勇者「そうだ。距離は関係ない。数も関係ない。振る力さえ関係ない。
ただ振るだけで、“斬る”と意識した対象を斬れる」

252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:57:39.88 ID:muxE9CGP0
黒「……なにを斬るつもりなの?」
勇者「此処にいる肆軍の兵士たちだ。そして肆の国民全員だ」
龍「……どうして殺すんだ」
勇者「……復讐だ」
龍「……復讐?」
勇者「父を、母を、多くの友を肆の兵士たちに殺された。
……目の前で、義妹を殺された。飛び散った脳漿をーー義妹自身を全身に浴びた」
黒「……冗談じゃなかったんだ」
勇者「一人だけ生き残ったのは大切な者たちの、義妹の恨みを晴らす為に違いない。
バケモノの力を手に入れたのは偶然ではなく、この手で復讐を果たす為に違いない」
龍「……初めてお前の表情を見た。しかし、そんな哀しい顔は見たくなかった」
勇者「……そうか」
黒「あなたは優しいからそんな事できないよ……」

253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/16(日) 18:59:58.70 ID:XtTyK/vDO
ぱんつ脱いだ

254 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 19:01:18.92 ID:muxE9CGP0
勇者「多くの人間を殺してきた。害になっていない魔物も殺した。
今更、殺す事を躊躇うほど、この手は綺麗じゃない」
龍「……私だって人間を殺したし、謀反を起こした魔物を殺した事だって有る。
でも、復讐なんかの為に人を殺さないでくれ。ましてやお前にそんな事をして欲しくない」
勇者「勝手な事をのたまうな」
ギュッ
黒「あなたは、優しい人だよ」
勇者「……離れろ! 優しさは感情じゃなく意思によるものだ!
この憎しみは数少ない大切な感情なんだよ!」
ギュッ
龍「優しさだって、感情に決まってるだろう」
勇者「違う! 違うんだよ! そもそも優しくなんてない!
この憎しみを失ったら、人間じゃ居られなくなるんだ!」

255 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 19:09:29.83 ID:muxE9CGP0
龍「人間である必要なんて無い」
勇者「……は」
龍「憎しむ人間より、優しいバケモノであって欲しい。
私は優しいお前が好きなんだ」
勇者「ふざけるな……!」
黒「……ねえ。あの人の唄をきいた時、あなたはお金をわたした。
それはどうして?」
勇者「……それ、は」
黒「あの人の奏でる音に、声に、唄に感動したからでしょ?
あなたには唄に感動できる心があるんだよ。それが憎いと思ってる人の唄でも」
勇者「ちが、う……。自分は……」
黒「あなたは、どこまでも“優しい人”だよ」
勇者「っ……」
黒「そしてわたしは、そんなあなたが好きだよ」

256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 19:11:48.11 ID:muxE9CGP0
勇者「…………」
勇者「……くそっ」
ズブッ
勇者「……両兵士を無力化する為に全員を軍服で縛る。
二人は出来る限り兵器を壊してくれ」
龍「……ああ! 任せろ!」
黒「がんばる」
勇者「急がないと目を覚まされてしまう。迅速に頼む」ギュッギュッギュッ
龍「ああ。……勇者」
勇者「どうした」
龍「私はお前が大好きだからな」
勇者「……そうか」
黒「……わたしも」
勇者「……そうか」
ーーーーーー
ーーーー
ーー

257 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 19:12:28.75 ID:muxE9CGP0
なんかバッドエンドしか浮かばない。

258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋) :2012/09/16(日) 20:09:35.52 ID:plq510/ko

バッドエンドも好きだぜ

261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方) :2012/09/16(日) 22:28:05.79 ID:fCM/aeOko

バッドエンドは嫌

263 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:35:35.49 ID:xRQj42580
ーーーー肆の国・王城ーーーー
勇者「兵は全て無力化した。降伏しろ」
黒「ーーーー。ーー」
肆王「……ーー」
龍「バケモノ、だそうだ」
勇者「そうか。講和会議はその内取り決められるはず。
その間に、もう一度戦争を仕掛けようとしたら、次は貴方を含め、肆の民を皆殺しにする」
黒「ーーーーーーー。ーーーーーーーーーーーー」
肆王「……ーー」
龍「承諾したぞ」
勇者「そうか。それじゃ」

264 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:39:49.12 ID:xRQj42580
ーーーー肆の国・王城・回廊ーーーー
黒「手風琴をかえすにも、当てがない」ムー
龍「訊き込むしかないんじゃないか?」
黒「うん。じゃあ、まずはあの人から」トテトテ
肆将軍「……」
黒『人をさがしてるの』
肆将軍『……バケモノ娘か。貴様等のせいで肆の国はお終いだ。
……いや、どちらにしろ敗ける戦いだったか。戦争を避ける以外に勝利はなかったのだ……』
黒『…………。この手風琴の持ち主をさがしてるんだけど」
肆将軍『知るわけないだろう』

265 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:41:28.48 ID:xRQj42580
勇者「何と言っている?」
龍「知らないそうだ」
勇者「そうか。黒は何と訊いた?」
龍「ん、この手風琴の持ち主を知らないか、と訊いていた」
勇者「そうか。黒、つい最近に戦争に反対していた若い男はいなかったか訊いてみると良い。
状況を見るに、彼は反戦を訴える為に肆の国に戻ったように思える」
黒「ん、分かった」
黒『つい最近、戦争に反対していた男の人はいなかった?
若い人なんだけど』
肆将軍『……背丈や顔の特徴を言ってみろ』
黒『えっと、ーーーー』

266 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:44:23.31 ID:xRQj42580
肆将軍『なるほどな。その男なら二日前に王城まで押し掛けて開戦反対を訴えていた』
黒『ほんと? 今はどこにいるの?』
肆将軍『……一応は、城の地下だ』
龍「城の地下にいるらしい」
勇者「……そうか。黒、帰ろう」
黒「どうして? 会いに行こうよ。それで、なにか唄ってもらおう」
勇者「……帰ろう」
黒「イヤ」
勇者「……」
龍「……勇者の言葉を聞き入れた方が良いだろう」
黒「……龍までどうしたの?」
黒『ねえ、案内してくれる?』
肆将軍『……』チラッ
龍「勇者……」
勇者「分かった。吾人もついていく」

267 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:46:54.18 ID:xRQj42580
ーーーー肆の国・王城・地下拷問室ーーーー
肆歌手「ーーーー」
黒「……」ペタン
勇者「拷問によるショック死か。罪状は不敬罪だろう」
肆将軍『屍体は騒乱のせいでまだ片していない。もう暫くしたら腐臭が増すだろうから迅速に処理したいところだ』
龍「黒に楽器を託したのも、死を想定してだろうな」
黒「……こんなのおかしいよ」
勇者「帰ろう。美味しい物を食べて風呂に入って寝ると良い」
龍「そうだな。黒、行こう」
黒「……」
スクッ

268 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:49:49.48 ID:xRQj42580
黒「この人が作った唄をうたう」
勇者「……そうか」
龍「彼にとって最高の手向けのはずだ。気の済むまで歌うと良い」
肆将軍『楽器を弾くのか? 安らかに音楽に耳を傾けられる心持ちではないんだがな』
龍『静かに訊いてろ』
肆将軍「……」

269 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:52:48.01 ID:xRQj42580
ーー♪
ーー♪
勇者「……」
黒『傷ついた少年はその目を閉じた ? ?小さく哀しみを呟く』
ーー♪
黒『銃声はまだ続いている ? ?悲鳴も鳴り止まない』
ーー♪
黒『願わくは魂に安寧を与えよ ? 肉体に愛を授けよ』
ーー♪
黒『唄よ遠き神まで届け』
黒『唄よ全ての人へと伝われ』
ーー♪
ーー♪
龍「……」
黒『新品の大砲はまた人を殺す ? ?硝煙はもう見たくない』
ーー♪
黒『淡い幸せを望む少女 ? ?涙は止まらない』
ーー♪
黒『願わくは人間に安らぎをもたらせ ? ?全員に慈悲の心を』
ーー♪
黒『唄よ遠き神まで届け』
黒『唄よ全ての人へと伝われ』
ーー♪
ーー♪
肆将軍「……」

270 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/17(月) 23:59:42.34 ID:xRQj42580
肆将軍『……その唄はお前が作ったのか?』
黒『ちがう。あの人』
肆将軍『……そうか。……その楽器は彼の物と言っていたな』
黒『……うん。かえそうと思ってた』
肆将軍『私に預けなさい。責任をもって彼の家族を探し出して渡そう。
唄を聴かせてくれたせめてもの礼だ」
黒『……うん』
スッ
肆将軍『……彼の亡骸は手厚く葬ろう。それで私たちが赦される訳では無いが』
黒『……うん』

271 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/18(火) 00:00:41.67 ID:Hf8ypfAM0
肆歌手「ーーーー」
黒『さようなら』
黒『ありがとう』