Part10
224 :
おはようございます :2012/09/15(土) 06:53:43.96 ID:
RyjsSxIa0
ーーーー初の国と参の国の国境線付近ーーーー
ガラガラ
龍「なあ、勇者」
勇者「どうした?」ガラガラ
龍「私が台車引きを代わっても良いぞ。そろそろ疲れただろう」
勇者「いや、大丈夫だ」
黒「ムチャしちゃダメだよ」
勇者「分かっている」
ガラガラ
225 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 06:57:27.13 ID:
RyjsSxIa0
参少女「あの、勇者さま」
勇者「花を摘みたいのか?」
参少女「……? 今はどこに向かってるんですか?」
勇者「君には言っていなかったか?」
参少女「あ、はい」
勇者「初の国に戻って、三人を師匠に預ける。その後に肆の国に向かう。
肆の国が初の国に侵攻した為に戦争が勃発した。それを終わらせにいく」
龍「出発前にも言ったぞ。私はお前についていく」
黒「わたしも」
勇者「……しょうがない」
参少女「じゃ、じゃあ、わたしも」
勇者「それは駄目。君には危険過ぎる。吾人が必ず護りきれる保証もない」
226 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 06:59:55.86 ID:
RyjsSxIa0
参少女「で、でも、わたしだけ……」
勇者「できれば誰も連れて行きたくない。この二人は話を聞かないから諦めただけ」
龍「勇者のそばに居たいからな」
黒「わたしは手風琴を返したい。あの人は肆の国にいるらしいから」
勇者「吾人が返す」
黒「ダメ。わたしが返すの」
勇者「強情だな」
黒「うん。それに、この手風琴もヘタクソなわたしよりあの人に弾いてほしいだろうから」
龍「お前の演奏も中々のものだぞ」
参少女「わたしもそう思います。知らない言葉だけど、胸がキュウッてなって、涙が出そうになります」
黒「ありがとう」ニコ
ガラガラ
227 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:05:51.44 ID:
RyjsSxIa0
ガラガラ
龍「なあ、勇者」
勇者「今度はどうした?」
龍「魔物と人間は和解できるだろうか?」
勇者「難しい。多くの国で聖神教が信仰されている。肆の国では帰依神教。
両宗教とも魔物は神の敵であるというのが基本的な教え。
対立の歴史も相当なまでに長いし、敵意も非常に強い」
龍「……そうか。魔物側でも人間を憎んでる者は多い。和解は難しいか」
勇者「そもそも和解を押し付けるのは良くない。
当人たちの大多数が望んで初めて為されるものでなければならない」
龍「……ならば憎しみ、争うことしかできないのか」
勇者「別に争わなければ良い。住み分けをして、お互いに武力ではなく議論で戦うようになれば平和には近づく」
228 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:07:39.09 ID:
RyjsSxIa0
龍「なるほどな。そこからゆっくり改善させていけば、いつかは和解も可能になるのかもしれない」
勇者「そうだな」
ガラガラ
ガタンッ
参少女「きゃっ!?」
勇者「ごめん。大丈夫か?」
参少女「だ、大丈夫です」
勇者「石に気付かなかったか」
黒「すっかり暗くなっちゃったしね」
勇者「水場のある場所を見つけたら今日は休もう」
参少女「はいっ」
229 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:09:36.26 ID:
RyjsSxIa0
・
・
・
パチッパチッ
黒「おいしくない」モキュモキュ
龍「燻製なんてこんなものだろう」モグモグ
参少女「勇者さまはいつもパンとお水だけですけど、大丈夫なんですか?」チビチビ
勇者「最低限の食事だけで充分。そもそも食べなくても問題はない」
龍「……本当に人間なのか?」
勇者「……どうだろう。ところで。体を洗う?」
黒「わたしは良い。自動で浄化されるから」モキュモキュ
参少女「あの……わたしは……入りたい、です……」モジモジ
勇者「そうか。龍、後で付き添ってあげて」
龍「分かった」
230 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:11:02.67 ID:
RyjsSxIa0
パチッパチッ
黒「……ねえ」
勇者「どうした?」
黒「さいきん、ヘンタイなところが減ってない?」
勇者「美幼女が増えると、その希少性が減る。
人間は手に入りにくいものほど欲するし、獲得しようと必死になる」
黒「つまり?」
勇者「積極的になる必要がなくなった」
黒「ふうん」
勇者「それでも美幼女は相変わらず大好きだ。可愛くない幼女なんて極少だけれど」
黒「そう。あと、どうしていつも淡白なの?」
231 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:13:52.73 ID:
RyjsSxIa0
勇者「淡白か?」
黒「いつも無表情だから。それでヘンタイなこと言われると身の危険を感じる」
勇者「そうか。……無表情なのは感情が湧かないから。降り落ちた剣と出会った時から徐々にそうなった。
師匠はホルモン分泌に異常が起きたからと推論していたけれど詳しい事は分かっていない」
黒「ホルモン」
勇者「知っているのか?」
黒「知識として存在してる。あたまの中ではべつの言葉だけど」
勇者「そうか。黒は謎の塊だな」
黒「……わたしも自分がよく分からない」
勇者「……そうか」
黒「だから、勇者のことを知りたい」
勇者「……面白い話はない」
黒「べつにいい」
勇者「……そのうち話す。あまり楽しい話にはならないから」
黒「……うん」
勇者「テントを張るか」
232 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:15:57.72 ID:
RyjsSxIa0
・
・
・
勇者「狭いか?」
龍「いや、広過ぎるくらいだ。少し大き過ぎたんじゃないのか?」
勇者「大は小を兼ねるから」
龍「なるほどな。それで、勇者は私の隣で寝るだろう?」
参少女「あ、わたしのとなりですよっ!」
黒「眠い……」ウトウト
勇者「吾人は外で見廻りをしているから」
龍「寝ないつもりか?」
勇者「そうだ」
参少女「体こわしちゃいますよ……」
勇者「大丈夫だ。一ヶ月は寝なくても問題ない」
233 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:17:23.53 ID:
RyjsSxIa0
黒「すう……」
龍「ならば、私も一緒に起きてよう」
勇者「それは駄目だ。さっさと寝るべきだ」
龍「む……。じゃあ頭を撫でてくれ」
勇者「分かった」ナデナデ
龍「ん……」
参少女「わ、わたしも……」
勇者「よしよし」ナデナデ
参少女「ふあ……」
黒「……」スヤスヤ
234 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/15(土) 07:21:33.40 ID:
RyjsSxIa0
おしまいです。
完全台本は初めてなので拙いのは許して。
235 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2012/09/15(土) 11:28:50.56 ID:RNXVdf7DO
乙!
238 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:21:54.79 ID:
muxE9CGP0
ーーーー初の国・王都郊外の山林ーーーー
ガラガラ
キイッ
勇者「着いた」
黒「ここ?」
参少女「大きいお家ですね。でも……」
ボロッ…
龍「……その、あれだな。風情があるな」
勇者「拾って貰った時からボロかった。取り敢えず入ろう」スタスタ
龍「私の配慮を無碍にしないで欲しいな」
ガチャッ
初少年「……帰って来た」
239 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:24:04.90 ID:
muxE9CGP0
勇者「おはよう」
初少年「おはようじゃないよ! 初王に喚び出されたと思ったら、帰ってこなくなるし!?
外じゃ魔王征伐に駆り出されたって噂が広がってるし! 心配してたんだよ!」
勇者「ごめん」
初少年「もう! ……その女の子たちは?」
勇者「色々有って一緒に行動している。師匠は?」
初少年「師匠ならまだ寝てるよ。昨日は一晩中、アンモニア生産装置の改良をしてたみたい」
勇者「そうか。結局、間に合わなかったな」
初少年「うん……。師匠も今更発表するつもり無いみたい。
それで、魔王を倒してきたの?」
勇者「まだだ。それよりも先に肆の国に向かう」
240 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:25:34.99 ID:
muxE9CGP0
初少年「……そう。やっぱり、お兄ちゃんは……」
勇者「……この娘の面倒を頼む。師匠によろしく伝えておいてくれ」
参少女「え……」
初少年「わ、かわい……じゃなくてっ! もう行っちゃうの!?」
勇者「既に初軍と肆軍が国境線上で交戦しているから。それじゃ」
初少年「行っちゃった……」チラッ
参少女「えっと……」オドオド
初少年「こ、こんにちは」
参少女「あっ、こ、こんにちはっ」
初少年「その、よく事情が分からないから教えてもらえる?」
参少女「は、はいっ」
241 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:27:17.43 ID:
muxE9CGP0
・
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・
初少年「こ、ここに住むんだ。緊張しちゃうな」
参少女「その、師匠さんという人に断られたりしませんか?」
初少年「んー、大丈夫じゃないかな。師匠は気難しいけど、何だかんだで優しいから」
参少女「そうなんですか」
初少年「そんな丁寧に喋らなくてもいいよ。年も近いだろうし」
参少女「そ、そう?」
初少年「うん。一緒に暮らすんだったら尚更ね」
参少女「う、うん」
初少年「それじゃ、家の中を案内するからついてきてね」
参少女「あ、うんっ」
242 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:30:10.75 ID:
muxE9CGP0
・
・
・
カチッ
パアッ
参少女「わわっ、光が!?」
初少年「これは電球だよ。電気を線条に流して発光させるんだ」
参少女「でんき……?」
初少年「えーと、雷の弱いものだよ」
参少女「雷!? ?こわい……」
初少年「これは大丈夫だよ。それで、ここがキッチンね。
君にも料理を作ってもらうことになると思うから」
参少女「わたし、お料理できないよ……」
初少年「僕が教えるから大丈夫だよ。僕も最初は全然できなかったけど、お兄ちゃんの指導で得意になったんだ」
参少女「勇者さまはお料理もできるんだ。かっこいいなぁ」
初少年「あー、うん。お兄ちゃんは確かにかっこいいよね。優しいし。あはは。……はあ」
243 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:33:47.28 ID:
muxE9CGP0
・
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初少年「まあ、大体の説明は終わったかな」
参少女「はじめて見るものがいっぱい有ってびっくりしちゃった」
初少年「師匠の発明品だよ。師匠は凄い人で、色々な発明や発見をしたんだ。
数十年前に荒稼ぎしたらしくて、今ではひっそりと暮らしながら色んな研究をしてるけど。
一旦研究に没頭すると周りのものが見えなくなるらしくて、ご飯も食べなくなったりするんだよ」
参少女「不思議な人だね」
初少年「そうなんだよね。昨日も夜明け近くまで、納屋にあるアンモニア生産装置をいじってたみたい」
参少女「あんもにあ……?」
初少年「簡単に言うと毒なんだけど、とても重要なものなんだ」
ガチャッ
244 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:35:13.82 ID:
muxE9CGP0
師匠「……」ボンヤリ
初少年「おはようございます」
参少女「お、おはようございますっ」
師匠「あん? 何処から連れてきたんじゃこの童女は?」
初少年「お兄ちゃんが預かって欲しいって言ってました」
師匠「阿呆が帰ってきたのか?」
初少年「はい。すぐに肆の国に行っちゃいましたけど」
師匠「……まったく、うつけもんが。
……どうせ、身寄りがないんじゃろ?」
245 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:36:16.10 ID:
muxE9CGP0
参少女「あ、は、はい」
師匠「どもるな。質問にははっきりとした口調で答えんか。
まったく、阿呆の奴め。此処は孤児院じゃないんじゃぞ」
参少女「……」
師匠「此処に住まわせてやるが、家事炊事雑用はこなしてもらうぞ」
参少女「は、はい」
師匠「どもるなと言ったじゃろう。まったく」
参少女「はいっ」
師匠「うむ。小僧、メシ」
初少年「もう作ってありますよ。今、持ってきます」
246 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区) :2012/09/16(日) 18:37:07.70 ID:
muxE9CGP0
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参少女「なんだかこわい人だね」
初少年「んー、まあ、二人きりで過ごすのは結構しんどいかな。
でも粗野だけど良い人だよ」
参少女「そうなんだ……」
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