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盗賊「コインの表と裏」
Part5


76 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 02:36:59.24 ID:IVe03aaio
盗賊(………ちっ、此処までか)
ーーーーだが、どうして。
盗賊は思考する。何故、このタイミングで自分を殺そうとするのか。
魔王「ーーーーー滅衝撃魔法!」
完全に魔王は勇者たちへ背を向けていて、弱点を完全に曝け出している状態だ。
僧侶「大障壁魔法!!」
加えて確かにあの一撃は自分は避けられないが、僧侶や魔法使いによる障壁を突破できない可能性もある。
魔法使い「大障壁魔法!!」
勇者が自分を助けようとした隙を狙うにしては、些かリスクが高いではないか。
盗賊(………俺は良いから、勇者、魔王を……)
まるでーーー倒される事を選んだ、ような。

77 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 02:37:28.44 ID:IVe03aaio
勇者「うああああああああああ!」
勇者の雄叫びと共に、魔王の呼吸孔に聖剣が突き刺さり、魔王を背中から貫いた。
えぐる様に剣を押しこみ、魔王は断末魔の叫びをあげるーーーー。
盗賊(………思い過ごしか? だが、どの道、俺は……助からない……)
魔王の放った最大の一撃は、僧侶と魔法使いの障壁に一瞬遮られるが、いとも容易く破る。
盗賊の全身を激痛が襲うーーーそれは、死を覚悟するには充分な程の激痛。
盗賊(ーーーーー)
意識が遠のく。
僧侶「ーーーーーー!!」
光が消える。
魔法使い「ーーーーーー!?」
耳には、
勇者「ーーーーーっ!!!」
みんなの叫び声と。
魔王「ーーーーーくっく」
魔王の笑い声。

78 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 02:38:12.11 ID:IVe03aaio
ーーーー盗賊は悪夢を見ていた。
自分が、今まで殺した人間に無数の剣で突き刺される。
見れば誰もが勇者の為に殺した魔王信仰者だった。
その奥には魔王がいた。
何だ、この夢は。
魔王「くっく、鼠よ死の間際に見せてやろう。真の絶望を」
これも、魔王の力?
魔王「言ったであろう?」
何を。
魔王「我は確かに言ったよのう」
だから、何をだ。
魔王「ーーーーー最初から、貴様らは我の掌の上だと」

79 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 02:39:22.86 ID:IVe03aaio
他のSSも書いてたりすると手がつかなくなったり

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 02:59:50.04 ID:2gikx7jbo
結構楽しみにしてたり

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 03:05:06.82 ID:eAdp0bDAO
結構期待していたり

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 04:26:54.83 ID:+a15OllWo
いいとこで切るとはドSめ

84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 11:38:02.40 ID:ADO0jb7bo
もう待ちきれないよ!早く(続きを)出してくれ!

85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 13:14:20.98 ID:wx+24FMlo
続きを待ってたり


86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 21:27:39.23 ID:gLFMzYye0
続きはよ

87 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:07:29.32 ID:IVe03aaio
僧侶「ーーーーー盗賊、盗賊!」
光が見えた。
激痛の渦から這い出る様に、盗賊は目を覚ました。
薄らと目を開けば、僧侶が涙を流しながら回復魔法をかけ続けていた。
盗賊「………ぁ」
声が出ない。
身体は殆ど動かないが、奇跡的に原型は留めている。
どうやら彼女達の障壁が、盗賊を瀕死に追いやる程まで魔王の魔法の威力を削いだらしい。
魔法使い「やった、目を、目を覚ましました!」
魔法使いが心底喜んだ表情を浮かべている。
声は出ないし、身体は動かないがどうやら自分は生きているらしかった。
僧侶がかけ続ける回復魔法は微力だが、徐々に盗賊の身体に生気を吹き込んでいた。
勇者「………盗賊、魔王は……倒したよ……」
勇者の背後には魔王の亡骸があった。
どうやら本当に、倒した様だーーーなら、良かった。

88 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:07:56.89 ID:IVe03aaio
勇者「ーーーーー」
笑みを浮かべる。それはそうだろう。漸く使命を果たしたのだから。
これから世界平和が始まる。それを感じて笑わずにはいられないのだろう。
僧侶「勇者様もご自身で回復してくださいよ……魔王の最後の一撃、お腹に受けてるでしょ?」
魔法使い「アレなんだったんだろうね? 勇者様に外傷はそんなにないみたいだし」
最後の、一撃?
勇者「はは、ははははは!」
ーーーー否、違う。
勇者はあんなに邪悪な笑みを浮かべて笑う人間だっただろうか。
僧侶「勇者、さま?」
魔法使い「ちょっと、勇者様ったら笑ってないで傷の手当しなよー」
二人が少し訝しげに勇者を見る。
盗賊は想うーーー”それ”は勇者なんかじゃ、ない。
盗賊「…………に………ろ」
逃げろ、と声が出せない。
二人は不思議そうに、盗賊を見る。掠れながら、盗賊は繰り返すーーー”逃げろ”。

89 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:08:25.94 ID:IVe03aaio
勇者「ふう、やっと魔王を倒せたんだ。少し、嬉しくなっちゃったよ」
「ねぇ、僧侶……僕は、漸く……魔王を倒したんだ……」
するり、と回復魔法をかけ続ける僧侶の手をとり、抱き寄せる。
僧侶「ちょっ、何をーーーーんぅ!?」
貪る様な、激しい口吻。勇者は僧侶の制止も聞かずに唇を奪う。
僧侶「だめ、そんな事してる場合じゃ……ふぁ、ぅ……!」
魔法使い「勇者様! 今はそんな事してる場合じゃないよ!」
勇者「………うるさいなあ、魔法使い。君も欲しいのかい?」
魔法使い「な……や、ぁん!」
魔法使いの秘部に勇者は手を伸ばす。それだけで、魔法使いは制止の声を失くしてしまう。
勇者「なあ、盗賊ーーー僕はさ、君が大嫌いだったんだ」
「君は躊躇なく、人を殺す。初めから思ってたんだ……コイツ、薄汚い盗賊だし、なんかするだろうって」
器用に勇者は両手を使って、二人を艶めかしく弄くる。

90 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:09:32.29 ID:IVe03aaio
僧侶「ひっ、ぁ……」
盗賊「ーーーーぁ」
勇者「僧侶? 知ってるよ。君が僕らに仇なす魔王信仰者を殺していた事」
「そうしたらさ、僧侶は君の行いを止められないって言うんだ……まあ、僕も助かってたから良かったんだけど」
「でもさ、僧侶ったら君の行いに失望するかなーって思ったらさ、結構君のやってた事、肯定的だったよ」
僧侶「は、ぁ……あぁ!」
勇者「君は自分の手が汚れている、だから僧侶には知られたくないって思ってたよね」
「だけど、実際は僧侶は大人だよ。いけない事だと知っても、信念の為ならば咎められないって言ってた」
「むしろ自分たちの為に罪を被った人間を愛おしく思いますとかーーー馬鹿げてるよねぇ」
勇者「僕は言ったんだ。どんな事情であろうと、人殺しは良くないって。でも、僧侶はわかってくれない」
「だから君の事を心の底から仲間だなんて、思わなかったよ。まあ、僕に出来ない事をしてくれたから随分楽には此処まで来れたけどね」
勇者が魔法使いを開放し、拘束魔法を発動する。
魔法使い「あうーーー勇者様、何を言ってるの!?」
勇者「はい、君は後から来た邪魔者だからね。今は大人しくしててね。後で、可愛がってあげるから」

91 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:10:13.76 ID:IVe03aaio
勇者「それで、話を戻すけどーーー何が言いたいかって言うと、ぶっちゃけ言って羨ましかったんだよね」
「正義の為に非道になれる。僕には出来ない。僧侶も、魔法使いも、信頼を置くはずだよね……」
僧侶「やめて、勇者様、やめ……っ!?」
勇者「君もね、本当は盗賊が好きだった。あの日、何で君が盗賊を僕らのパーティに強く推薦したのか、僕が知らないとでも?」
「君は昔、盗賊に助けられているだろう。君も貧民街の出身だものねぇ……最初に好きだったのは、盗賊だ」
盗賊「…………!」
僧侶「………でも、わたしはぁ!」
勇者「そう、今は僕が好きなんだよね。それってでも、同情でしょ?」
「僕は盗賊が羨ましかった。僕の好きな人に好かれてるし、正義の為に非情になれて、人一倍仲間思いだ!」
「そんな風に、羨ましくて羨ましくて、羨ましくてーーー毎晩、苦悩してた僕への同情なんだろ?」
僧侶「違う、違う……私は、勇者様が……」
勇者「うん、本心だろうね。君は勇者である僕を支える為に、自分の想いよりも僕を優先したんだもの」
「僕がどれだけ酷く、雌犬の様に扱おうと……耐え忍んで、受け入れてくれたね。本当に、可愛い人だ」
勇者が僧侶の法衣を引きちぎるーー肢体が露わになり、僧侶は叫ぶ。
魔法使いは信じられないと、絶望の表情を浮かべて地面に転がっているだけ。
そして盗賊はやはり声も出せず、その光景を眺めるしか出来なかった。

92 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:10:40.56 ID:IVe03aaio
勇者「だけど君は、あの晩……僕が魔法使いを口説く為だけに、盗賊の部屋に行けって言った時さあ」
「少し嬉しそうだったよね。抱かれろ、とは言ったけど……なんだか、白けちゃったなあ」
僧侶「ちが、う……ちがう……」
勇者「でもいいよ。今は僕の事が好きなんだものねーーーさて、盗賊?」
にこり、と盗賊へと笑顔を浮かべる。その目はドス黒く、淀んでいた。
勇者「君は間もなく死ぬ。だって、僧侶の回復がなければとっくに死んでるんだ」
「かけ続けないと死ぬよねえ……はは、死ぬよねえ! 最後はさ、僕と僧侶が愛し合ってる所を見て、死ねよ」
魔法使い「ゆうしゃさま……なんで、酷い!」
勇者「んー? だからさ、君は後からのぽっと出なんだから。黙ってなって……愛人にしてあげたじゃん」
「魔族なんて抱くの抵抗あったけど、案外エルフは人間と同じで良かったよーーーそうだ、君の里も僕のモノにしよう」
魔法使い「………なんて、ことを」
勇者「盗賊が言うからさ。魔法使いを泣かせるなってーーーああ、また仲間思いかよ、反吐がでるね」
魔法使い「最低……勇者様、本当に……最低!」
勇者「僕は元々こんな人間なのさ。嫉妬心が強くて、僕以上の人間は蹴落としたくなる」
「だから魔法使い、君も抱いてあげたんだよ。盗賊が憎いからさぁ!」
僧侶「どうして……そんな、ひどいこと……出来るのです……っ」
勇者「だから言ったじゃないか僕は、元々こういう……」

93 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:12:09.52 ID:IVe03aaio
ーーーーーー魔王。
勇者「………なんだって?」
盗賊「………う」
勇者「ふぅん。”鼠”の癖に……」
盗賊「てめ……ま、お……」
勇者「………くっく」
笑みが、一層邪悪なモノに変わる。
それを見据えて、搾りかすの様な声を振り絞る。
盗賊「ま……おう、だ……」
僧侶「………そ、そんな」
魔法使い「勇者様が、魔王……!?」
勇者「くっく、そうだねえ。元々そうだったわけじゃないよ? さっき、そう”成った”んだ」
魔王の最後の一撃。

94 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:12:40.56 ID:IVe03aaio
勇者「そう、魔王の最後の一撃は自身の魂を対象に貼り付ける魔法だったんだ」
「それには条件があって……狂おしい程に、ドス黒い感情の持ち主だったんだ」
「それに該当した僕はーーー魔王の魂を与えられ、魔王と成った」
僧侶「そんな、ありえません……」
勇者「ありえてるんだよ、淫婦さん。魔王の魂が流れこんで来た時、気づいたよ……僕は元からこんな人間だって」
「欲望に忠実に、邪魔なモノを消す。それがどんなに心地良い事か。正義の味方なんて、クソくらえだよね」
「正義を志てた人ほど、悪になりやすいのかな〜……でも、今は本当に良い気持ちだよ」
盗賊「…………ぺっ」
最後の力を振り絞り、口の中に溜まる血液を勇者へと噴いた。
勇者の足元に落ちたそれを、勇者は踏みにじる。
勇者「君はこの雌犬を犯してるとこ、見せながら殺そうと思ったけど……気が変わったよ」
「どうにも気に入らないし、今直ぐ殺そう。くっく、悪に染まった人ほど、正義になりやすいのかな〜」
「そんな風に挑発しても、みーんな、死ぬ事には代わりないのにーーーねぇ、僧侶」
僧侶「あがっ、あぁーーーっ!?」
僧侶の腹を思い切り殴り、勇者は立ち上がる。
引き裂かれた法衣のまま、僧侶は地面に蹲る。

95 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:13:10.02 ID:IVe03aaio
勇者が聖剣を手に、盗賊の前で邪悪な笑みを浮かべる。
勇者「僕に、疾さでしか勝てなかった、弱い虫けらなんて、殺す意味もないけど」
「魔王の魂が定着していない今、僕自身の力も弱まってるし、さっさと君を始末するに限るよね〜……」
聖剣を振り上げる。ぺらぺら、と饒舌に語りながら。
勇者「死ね」
盗賊「ーーーーー!」
あの悪夢の通り、盗賊は絶望していた。
何も、出来ない。彼女たちを助ける事もできない。勇者を”助ける”事も出来なかった。
魔法使い「ーーーーーだめぇええええ!」
勇者「な……っ!?」
聖剣は盗賊へと突き刺さらなかった。その一閃よりも速く、魔法使いが眼前へと躍り出ていた。
力づくで拘束魔法を解いたのか、彼女は盗賊を庇う様に勇者へと立ち塞がり。
魔法使い「…………あ、ぁ」
身を挺して、聖剣から盗賊を守った。
その代償はーーー彼女の心臓を貫いた、聖剣による一撃。

96 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:13:56.03 ID:IVe03aaio
勇者「驚いた、自力で破るなんて。低俗な魔物にしては、やるね」
魔法使い「………そ、うりょさん! おね……がい!」
魔法使いの声に呼応して、勇者の背後で僧侶が手を翳す。
僧侶「ーーーーー転移、魔法」
やめろ、と言いたくても、声がでなかった。
次の瞬間、視界が変わる。慣れた空間移動の魔法の感覚。
ぐるぐると、視界が回る。そして堕ちて行く感覚。

97 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:14:50.56 ID:IVe03aaio
瞬きの後、盗賊は森の中に横たわっていた。
その隣には、魔法使いが尋常ではない血液を吐き出して倒れていた。
盗賊「…………ぁ」
魔法使い「ん? あぁ……なんとか、逃げれたんだね……」
「だけど、ふたりとも、動けないね……だれか、きづいてくれると……いいんだけど……」
馬鹿野郎、なんで僧侶と逃げなかったんだ。
魔法使い「ごめんね、盗賊さん。私……馬鹿だったなあ」
「勇者様がね、あの夜に……私を愛してくれるって……でも、嘘だったんだなぁ……」
違う、違うんだ……アイツは、アイツは……。
魔法使い「ふふ、でも……盗賊さん、そうじゃないって眼をしてるね……」
「そうなのかな? 嘘じゃなかったのかな? あれは……魔王の所為、なのかな……」
そうだ、きっとそのはずなんだ……。
魔法使い「だったら、しょうが……ないか……」
「でも……盗賊さん、本当に……ごめんね? 辛い思いさせて……私、馬鹿だったよ……」
恨んじゃいない。憎んでもいない。お前は自分に素直になっただけじゃないか。
だから、生きろ。お前が生きろ。
魔法使い「……………………」
なあ、おい。
魔法使い「……………………」

98 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:16:12.86 ID:IVe03aaio
酷い土砂降りの雨の日だった。
その日、魔王が死んだ。
そして勇者が魔王となった。
それがこの日、起こったーーーー絶望。
- BAD END -

99 : ◆XtcNe7Sqt5l9 :2015/07/20(月) 23:22:56.72 ID:IVe03aaio
勢いでバッドエンドとか書いたけど、続きます(・ε・)

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/20(月) 23:42:12.56 ID:WXNkbrLko
続けろポッター

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/21(火) 03:14:46.45 ID:V6FLKzf+o
はよはよはよはよ

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2015/07/21(火) 05:10:52.75 ID:Ijg9IUqoo
よろしい、続けたまえ
僧侶はどうなったんだろ乙