勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
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Part8
286 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)00:35:52 ID:
1FkdYRte2
僧侶「申し訳ありません。盗み聞きするつもりはなかったんです」
僧侶「勇者様の様子を窺いにきたら、扉の向こうでとても流暢に話す声が聞こえたので」
僧侶「思わず扉の前で立ちどまってしまいました」
勇者「あ、あはは、そうでしたか」
僧侶「もしかしてひとり言かと思いましたけど、ちがうみたいですね」
勇者「ええ、まあ……」
僧侶「……」
勇者「……」
猫(気まずい、この空間息苦しいぐらいに気まずいっ)
猫(旅を一緒にしてきた人間同士で、よくこんな空間が作れるものだにゃん)
287 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)00:44:13 ID:
1FkdYRte2
僧侶「その猫の魔物が相手だと、そんなふうにお話できるんですか?」
勇者「……はい、まあ」
僧侶「……ごめんなさい。今の言い方は失礼でしたね」
僧侶「私も実はそれほどおしゃべりは得意なほうではないんです」
勇者「……そうですか」
僧侶「でもそのせいで、後の旅に支障が出るのは困りますよね?」
勇者「そう、ですね……」
僧侶「特に戦闘中にコミュニケーションが取れないって、一番の問題だと思うんです」
僧侶「そこで私なりに考えたアイディアがあるんです。聞いてもらってもいいですか?」
勇者「あ、はい」
288 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)00:57:46 ID:
1FkdYRte2
僧侶「ハンドサインなんですけど。どうでしょうか?」
僧侶「これならいちいち話さなくてもいいし、一瞬で意思疎通ができると思うんです」
勇者「ハンドサイン、ですか」
僧侶「もちろん状況によっては使えない場合もあります」
僧侶「でも、なにもしないよりはいいかと」
勇者「……いいと、思います」
猫(それから二人は、というか僧侶が主導で話し合いをはじめた)
僧侶「とりあえずはこれで、必要最低限の意思疎通はできるはず」
勇者「僕がミスしなければ、ですよね。あはは」
僧侶「勇者様は時折期待を裏切りますからね……いい意味で」
猫(ふと思ったが僧侶の『いい意味で』は、冗談の類なのかもしれないのにゃん)
猫(非常にわかりづらいが)
289 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)01:10:26 ID:
1FkdYRte2
僧侶「そろそろ食事の時間ですし、一旦ここまでにしましょうか」
勇者「そうですね……あの……」
僧侶「なんですか?」
勇者「わざわざ……ありがとうございました」
僧侶「…………べつに。こちらこそ、勇者様には申し訳ないことをしました」
勇者「申し訳ないこと?」
僧侶「苦手な私と同じ空間で、しかも二人きり。こたえたんじゃないですか?」
勇者「え、いや、本当に……ありがたいと思ったんです……」
猫(僧侶は勇者をふりかえると、小指を立てて自分のアゴに二回あてた)
猫(そしてなにも言わずに出ていってしまった)
290 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)01:19:51 ID:
1FkdYRte2
勇者「今のハンドサイン、なんて意味だったんだろ」
猫「『死ねこのクソ野郎』みたいな意味じゃにゃいか?」
勇者「それは絶対にないと思う。それに……」
猫「それに?」
勇者「いや、なんていうか俺が思ってたよりイイヤツなのかもな、僧侶って」
猫「……メスにすこし優しくされただけで、すぐオスはなびく」
猫「人間も猫も、オスがアホなのは変わらんようだにゃん」
勇者「お前だって……ん? そういえばお前ってオスなの?」
猫「なんだ、薮から棒に」
291 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)01:23:28 ID:
1FkdYRte2
勇者「まさかお前」
猫「な、なんだにゃん?」
勇者「ちょっと見せてくれよ」
猫「は?」
勇者「いいから。なんか無性にお前の性別が気になってきた」
猫「や、やめろにゃん! 触ってくるな!」
僧侶「勇者さま。食事の準備が……」
勇者「こら暴れるな! おとなしくしろっ。そして股間を見せろっ!」
猫「んにゃあああっ!?」
僧侶「……」
猫(このあとどうなったのか、それはご想像におまかせする)
302 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/19(金)22:48:59 ID:
WJsHTlD4N
◆
戦士「いい腕をしてるね、ここのシェフは」
魔法使い「……相変わらずすごい量食べるよね、戦士」
戦士「野宿のときは腹六分目までしか食べられないんだ」
戦士「街にいるときぐらい、きっちり栄養はとっておかないと」
魔法使い「だとしても食べすぎ。重ねた皿が揺れてるし」
僧侶「でも、おいしいです。とっても」
魔法使い「そうだね。さすが勇者、宿のチョイスが上手だね」
勇者「どうも」
勇者(毎回泊まる宿に関しては、俺が選ぶことになっている)
勇者(宿にはちょっとしたこだわりがあるのだ)
303 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)22:55:12 ID:
WJsHTlD4N
戦士「さて、眠くなっちゃう前に今後の方針について話しておこ」
魔法使い「山を越えてくのは、もう決定なんだよね?」
戦士「うん、問題はそのあと。どの街に行くかだ」
魔法使い「山越え大変だろうなあ」
魔法使い「また足がパンパンになりそう……」
僧侶「山を降りたあとだと港町か」
僧侶「街道を北へまっすぐ行ったところにある『夜の街』ですね」
魔法使い「もう一個街なかった?」
戦士「そっちはすでに向かってる集団がいる。さっき教会で聞いてきた」
勇者(魔王討伐のために編成された隊は公にはされてない)
勇者(でも、実は意外と存在する)
304 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:01:34 ID:
WJsHTlD4N
勇者(そしてそれらには、教会への報告義務がもうけられてる)
勇者(ただし、味方どうしでの情報のやりとりは基本的にしない)
戦士「騎士団なのか斥候隊なのかは、当然わからないけどね」
魔法使い「仕方ないとは言え、味方の状況がわからないって少し不便だよね」
僧侶「そのかわり敵に捕まったとしても、情報の漏洩は最小限ですみます」
魔法使い「それはまあ、そのとおりなんだけど」
戦士「猫がウソをついてないなら、『夜の街』に行くべきかな」
僧侶「あの街は過去の争いの名残で、売春や人身売買などが横行してるそうですね」
魔法使い「国も対応できてないのが現状だもんね」
勇者(アナーキーを象徴するような街ってわけか)
305 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:04:00 ID:SdDHgYSq2
『夜の街』やはりそっち系か・・・
306 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:04:08 ID:
WJsHTlD4N
戦士「人間の管理がほとんど届いてない場所だし、行く価値は絶対にある」
魔法使い「……戦士、顔がなんかゆるんでない?」
戦士「よくわかったね」
魔法使い「私たちは魔王をたおすために『夜の街』へ行くんだよね?」
戦士「なにを今さら」
戦士「ただまあ、オトコとしては少し興味がわいてしまうよね」
戦士「ねえ、勇者?」
勇者「へ?」
307 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:05:34 ID:
WJsHTlD4N
僧侶「そうなのですか?」
勇者「え? い、いや、急に話をふられても」
僧侶「さきほども、猫にいかがわしいことをしてましたけど?」
魔法使い「勇者、なにしたの?」
勇者(なんか猫にしたか、俺?)
僧侶「勇者様は少し特殊なのですね。いい意味で」
勇者「……」
勇者(こういうとき、戦士みたいにサラッと言葉が出る口がうらやましい)
308 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:11:46 ID:SdDHgYSq2
猫の伏線ワロタwww
309 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:13:09 ID:an
nSkU1bx
勇者自覚ないのか
310 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/19(金)23:25:01 ID:ub8KPHgHt
いい意味でを語尾につけるの楽しいな
311 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/19(金)23:55:47 ID:
WJsHTlD4N
すまん
ちょっと続きで迷ってて今日はここまで
明日の夜はなるべく多く更新する
313 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/20(土)00:57:45 ID:KcptrpI6E
面白いんで頑張って
314 :
あぴゃぁぁぁァア!? :2014/09/20(土)02:02:18 ID:LBNGlDWVb
応援してるよ
319 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/25(木)00:06:00 ID:
XloV88vtE
◆
勇者(現在山で昼食もかねた休憩のさいちゅう)
勇者(山登り。俺もいくつもの山を越えているが正直きらいじゃない)
勇者「……」
戦士「……」
魔法使い「……」
僧侶「……」
勇者(そう。キツイ山を登っていれば自然と口数が減る)
勇者(会話をしなくていい)
勇者(魔法使いなんて、かれこれ三十分以上口をきいてない)
勇者(僧侶はもとから口数がすくないヤツだが、やっぱりつらそうだ)
勇者(戦士はなぜか機嫌がいいみたいだ。鼻歌なんか歌っている)
320 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/25(木)00:15:17 ID:
XloV88vtE
戦士「大丈夫かい。なんだかみんな元気がないみたいだけど」
魔法使い「……なんで戦士はそんな元気なの?」
戦士「ボクは山が好きだからね」
魔法使い「でも山より海のほうが好きなんでしょ?」
戦士「たしかに露出した肌を拝むのに、海は適してるけどね」
戦士「海。苦手なんだよね」
魔法使い「苦手?」
戦士「うん。ボク、あまり泳ぎが得意じゃないんだよね」
勇者(なんか意外だ)
321 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/25(木)00:16:25 ID:DP8F3SgzU
キタ━(゚∀゚)━!
勇者がイキイキしとるww
322 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/25(木)00:17:13 ID:
XloV88vtE
勇者(……そうだ。今のうちにすましておこう)
僧侶「勇者さま。どちらへ?」
勇者「……」
僧侶「……なるほど」
勇者(ハンドサイン、便利だな)
勇者(これなら俺でも、ある程度は普通に意思疎通できるぞ)
323 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/25(木)00:30:23 ID:
XloV88vtE
◆
猫「パーティからはなれてなにをするかと思えば、小便か」
勇者「ついてきたのか」
猫「俺様はいつでもお前の首をねらっている」
勇者「無理だよ。優位に立ったぐらいで浮き足たつようなヤツにはな」
猫「隠していたが、実は俺様には奥の手があるんだにゃん」
勇者「お前には足しかついてないぞ」
猫「そういう意味じゃない」
勇者「しかし、ハンドサインって便利だな」
猫「そういえば、僧侶に送ったサインはなんだったんだ?」
勇者「『トイレ』」
猫「……にゃるほど」
324 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/25(木)00:33:45 ID:U
w49D4UZB
それくらい口で言えよww
333 :
はい◆vpZmHuIQzk :2014/10/01(水)22:21:34 ID:
XvuESumeU
◆
サキュ「で、結局あたしの水晶は役に立たなかったってわけ?」
?「そうでもありません。数秒間、勇者たちの意識を奪うことに成功してました」
サキュ「数秒間だけ? あたしの魔力をたっぷりと吸わせた水晶なのに?」
サキュ「普通の人間なら、人形みたいになっていてもおかしくないのに」
?「相手は勇者たちです」
サキュ「まっ、一筋縄じゃいかないってことね」
側近「んなことより、魔王様の傷はまだ治らねえのかよ?」
?「様々な癒し手に試させましたが、やはり天敵とも言える勇者につけられた傷」
?「そう簡単には治らないようです」
側近「こうなったら俺たちの出番なんじゃねえの?」
姫(なぜ私の部屋で会議じみたものを……)
334 :
はい◆vpZmHuIQzk :2014/10/01(水)22:23:45 ID:
XvuESumeU
側近「魔王様が動けない今、俺たちが勇者を始末する……どうよ?」
サキュ「アンタはてきとうに理由つけて勇者と戦いたいだけでしょ?」
側近「どっちにしてもヤることは決まってんだ。だったら早い方がいいだろ」
サキュ「あのねえ。あたしは魔術研究機関に探り入れるので忙しいの」
サキュ「それ以外にもやることは山積みだしー」
側近「じゃあ俺一人でヤる。それなら文句はないだろ?」
?「しかし、相手は仮にも勇者。一人で相対するのは危険かと」
?「あなたの雑務、私が引き受けましょう」
サキュ「……本気で言ってんの?」
?「ええ」
335 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/01(水)22:24:42 ID:
XvuESumeU
サキュ「んー、まあ戦うのはいいんだけど」
側近「……お前、またセコイ手を考えてんのか?」
サキュ「だって、真っ正面から戦う必要はないじゃない」
側近「ガチンコ勝負がしてえんだよ、俺は」
サキュ「セコイ手に籠絡されるような連中だったら、勝負するまでもなくない?」
側近「……言われてみりゃそうだな。雑魚には興味ねえ」
サキュ「じゃ、そういうことで決定ね。でも」
?「どうかしましたか?」
サキュ「アンタはアンタで例の装置の開発、やらなくていいわけ?」
?「なんとかなりますよ、おそらくですが」
336 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/01(水)22:29:08 ID:
XvuESumeU
側近「いやあ、ひさびさにイイ血が流せそうで楽しみだぜ」
サキュ「うわあ。物騒だこと」
側近「物騒? 流した血は勲章だろ?」
サキュ「……それを言うなら汗でしょ、アホ」
側近「いちいち細けえヤツだな。そんなんじゃ小じわが増えてく一方だぞ」
サキュ「はあ!? 増えてないし! そんな年齢でもないし!」
?「二人とも、落ち着いてください。姫様が困惑してらっしゃいます」
側近「あ? なんでこの嬢ちゃんがここにいんだよ?」
姫「……」
?「ここはいちおう彼女にあてがわれた部屋ですから」
337 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/01(水)22:31:40 ID:
XvuESumeU
姫「敵の目の前で、よくペラペラとおしゃべりできますね」
側近「敵? 誰のこと言ってんだ?」
姫「……私に決まっているでしょう?」
側近「……ひひひっ」
姫「な、なにがおかしいのですか?」
側近「ひひっ……ふははははっ!」
側近「おいおいテメエは笑いの天才か!? 俺を笑い死にさせようってか!?」
姫「なっ……」
側近「片腹、いや、両腹が痛えぞ。血がにじむ痛みも、外の世界もなんにも知らねえ小娘が」
側近「俺たちの敵だって? 最高のジョークだな」
姫「わ、私は……」
側近「大声で笑ったら腹がすいた。メシを食ってくる」
338 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/01(水)22:35:04 ID:
XvuESumeU
?「私もこれで失礼します」
姫「……」
サキュ「あなたのジョーク、受けてよかったねー」
姫「私は冗談なんて……」
サキュ「でしょうね。悔しそうな顔してるし」
姫「あなたたちは勇者に勝てるって、本気で思ってるの?」
サキュ「勝てる勝てないって、この場合関係あるわけ?」
サキュ「あたしらの生きていける世界はどんどんなくなってく、人間のせいでね」
姫「……」
サキュ「だったら生き残るために抗うしかないじゃない?」
339 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/01(水)22:37:43 ID:
XvuESumeU
サキュ「まっ、人間からしたら魔物は悪魔みたいなものだし。理解できない感覚よねー」
サキュ「あたしも昔はあなたと同じで、魔物はコワイ存在だって思ってたもん」
姫「……え?」
サキュ「でも。そういう価値観なんていいかげんなもんよ」
サキュ「姫様ってさあ、あたしはすんごくカワイイと思うのね」
姫「な、なにを急に言いだすのよ? あ、あとなんでくっつくの?」
サキュ「姫様のすべすべの肌を堪能しようと思って」
姫「意味がわからないわ」
サキュ「ねえ、美人の基準ってなんだと思う?」
姫「唐突すぎます。なにが言いたいの?」
サキュ「いいからさあ、考えてみてよ」