2chまとめサイトモバイル
勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
Part7


253 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)22:09:34 ID:qNDJULlTA

魔法使い「全員拘束したし、剣も取り返したし。これでオールオッケイ」
戦士「ボクら、思いのほか歓迎されたてみたいだね」
魔法使い「五人も待ち伏せしてくれてたもんね」
戦士「それにしても。キミの術は相変わらず便利だね。ぜひボクにも種を教えてほしいね」
魔法使い「ダーメ、教えてあげない」
戦士「相変わらず魔術に関しては秘密主義だなあ」
戦士「ボクの予想を言おう。さっきの術は空間を操作する類の魔術……ちがう?」
魔法使い「さあ? どうかなあ」
戦士「いちおうそう思う根拠もあるんだけど。キミはどう思う?」
魔法使い「誰に話しかけてるの?」
戦士「彼にだよ。ほら、あそこ」
魔法使い「え……」
?「……バレてましたか」

254 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)22:18:31 ID:qNDJULlTA
?「いつから気づいてたんですか、私があなた方を見張っていたこと」
戦士「さあ? どうかなあ」
魔法使い「ちょっと私のマネしたでしょ」
魔法使い「……ていうかこの人って、さっきの占い師の人だよね?」
戦士「そのとおり。おそらくこの泥棒くんたちとグルだったんでしょ」
占い師「グル……そうですね、一番近い表現はそれですかね」
戦士「まんまとキミの手に引っかかったよ」
戦士「おそらく占いに使う水晶、あれになんらかの魔術が施されてたんだ」
戦士「気づいたら魅入られてるような、あるいは見た人間の意識を奪うような術をね」
魔法使い「で、私たちは見事にしてやられたってわけね」

255 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)22:28:36 ID:qNDJULlTA
戦士「普通にボロ出してたのにね、キミ」
占い師「はて? 心当たりはありませんが」
戦士「ふーん。あのときの会話は、たしかこんな感じだったはずだけど」
占い師『かしこまりました。ではお二方は水晶を見つめてください』
占い師『よかったら勇者さまも』
勇者『あ、はい』
魔法使い「そうだよ! この人、名乗ってないのに勇者のこと、勇者って呼んでた!」
占い師「これはこれは。私もまだまだツメが甘いようですね」
戦士「まあすんだこと、これはどうでもいいんだよ」
戦士「ボクが解せないのは、どうしてそのまま剣を盗んで逃げなかったのかってことだ」

256 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)22:46:18 ID:qNDJULlTA
戦士「ボクらとたわむれるために、わざわざこんなパーティを開いてくれたのかい?」
占い師「さあ? どうかなあ」
魔法使い「……もしかしてそれ、私のマネ?」
戦士「ボクはね、こういう歓迎のされかたは好きじゃないんだよ」
占い師「次は気に入ってもらえるよう努力します」
戦士「次はない」
占い師「そう言わずに。次回もお楽しみくださいーー」
魔法使い「……っ!? スモーク弾!?」
戦士「まったく、めんどうだなあ」
魔法使い「追わなくていいの!?」
戦士「おそらく、逃げる手段はあらかじめ用意してるでしょ」
戦士「ハナから剣を盗むつもりはなかったんだよ、たぶんだけど」

257 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)23:37:33 ID:qNDJULlTA
魔法使い「気がかかりなことがいっきに増えたね」
戦士「今後のことについては、またみんなで話しあおう」
魔法使い「ところで。泥棒さんの場所がわかった方法、まだ聞いてないよ」
戦士「これを使ったんだよ」
魔法使い「……シール?」
戦士「ボク、道具屋で購入したでしょ? この虫寄せシール」
戦士「最初にこの泥棒くんたちを捕まえようとしたとき、とっさに貼ってみたんだよね」
魔法使い「すれちがいざまに、よくそんなことができたね」
戦士「ボクを誰だと思ってるんだい?」
魔法使い「でも、どうしてそれでこの人たちの居場所がわかるの?」

258 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)23:49:28 ID:qNDJULlTA
戦士「このあたりは虫がウジャウジャいるからね」
戦士「当然彼らも携帯してたでしょ、虫除けスプレーは」
魔法使い「まって、すこし考えるから。答えは言わないで」
魔法使い「……つまりそのシールのせいで、虫が泥棒さんたちにまとわりつく」
魔法使い「それで虫除けスプレーを、この人たちは使った」
戦士「言っとくけど、そんな考えるような方法じゃないよ」
魔法使い「……わかった! 昨日雨が降ってたこと、これが関係してるんでしょ?」
戦士「どうやら答えがわかったみたいだね」
魔法使い「たぶんそのシールって相当効き目が強いものなんだよね」
魔法使い「だから何回もスプレーを自分に吹きかけた」
魔法使い「そしてスプレーが、昨日の雨でできた水たまりに残った」
戦士「そういうこと。剣を持ち逃げするなら、虫なんて無視するべきだからね」
魔法使い「スプレーのあとから、居場所と待ち伏せしてるってことがわかったんだね」

259 :名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)23:50:59 ID:SBon2BKcx
虫を無視

260 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)00:25:02 ID:dFfV7EAOp
乙!
えらくカッコいいな!

261 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)00:25:17 ID:bidySl8v9
魔法使い「でも運がよかったよね、虫寄せシールをたまたま買ってて」
戦士「たまたまじゃないんだ、これが」
魔法使い「どういうこと?」
戦士「言わなかった? ボクも占ってもらったこと」
戦士「その人に言われたんだ。虫関連の商品がラッキーアイテムって」
魔法使い「すごい、私も占ってもらいたいな。どこにいたの、その占い師さん」
戦士「道具屋のそば。美人さんだったし、とても親切だったよ」
戦士「わざわざラッキーアイテムの詳しい説明までしてくれたんだ」
魔法使い「美人は関係ないと思うけど。……ん? あれ?」
魔法使い「虫グッズの説明を親切にしてくれたんだよね、道具屋のそばで」
戦士「そうだけど? それがどうか……あっ」
魔法使い「……うん。その占いが当ったのは、本当に偶然だね」
戦士「……まんまと引っかかったわけね、アコギな商売に」
魔法使い「まあ、雨降って地固まるってことで。結果オーライ!」

262 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)00:43:56 ID:bidySl8v9

勇者(盗まれたモンを取り返した俺たちは、街に戻って合流した)
勇者(そのあとは教会に報告したり、コソ泥どもを市警につきだしたり……)
勇者(とにかく予想外に時間と体力を奪われることになった)
魔法使い「さすがに疲れちゃったね」
猫「俺様もまきこまれて疲れたにゃん」
戦士「今後はもっと警戒心ってヤツをもたないとね、今日みたいなのはもうコリゴリだよ」
勇者(めずらしく俺も戦士に同意)
僧侶「とりあえず今日の宿を見つけましょう」
勇者(これまた同意。ていうか早く着替えたい)
勇者(危うく俺まで市警に捕まるとこだったからな、このファッションのせいで)

263 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)00:55:58 ID:bidySl8v9
魔法使い「勇者、私のせいでさっきはごめんね」
勇者(もしかしてこのファッションのことを謝ってるのか?)
魔法使い「私のチョイスのせいで、勇者が泥棒に間違われるとは思わなかった……」
勇者「あ、いえ。その……」
猫「魔法使い、コイツはお前に言いたいことがあるらしいぞ」
勇者(なに!?)
魔法使い「言いたいこと?」
勇者(さっきの会話……猫の野郎、完全に覚えてたのか!)
勇者(猫のヤツめ。俺が礼のひとつも言えないと思ってるんだな、憎たらしい顔してんな)
勇者「……あの……魔法使い、さんのおかげで…………」
魔法使い「?」
勇者(落ち着け、俺! なに緊張してんだ!? ただお礼を言うだけじゃないか!?)

264 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)01:00:20 ID:bidySl8v9
魔法使い「……やっぱり私には服のセンスがないって言いたいの?」
勇者「い、いや。そういうことじゃなくて」
勇者(センスがないことは聞くな! 自覚しろ!)
勇者(ていうか俺が言いたいことはファッションセンスのことじゃない)
勇者「あの、これです……」
魔法使い「ナイフ?」
勇者「このナイフ……魔法使いさんが選んでくれたおかげで、助かりました……さっき」
勇者「その……あ、ありがとうございました」
魔法使い「あ、そのことね。うん……そっか」

265 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)01:31:02 ID:0IUXedbCe
勇者「と、とにかく……助かったんです、マジで」
魔法使い「なんか新鮮」
勇者「?」
魔法使い「勇者にお礼言われたのって、はじめてな気がするもん」
勇者「あ、あはは……と、とにかく魔法使いさんの服選びのおかげで、助かりました」
魔法使い「……ってことは、これからも私が選んだほうがいい!?」
勇者「いいえ、服選びは自分でします」
魔法使い「……そうだよね。センスのない私にチョイスなんてしてもらいたくないよね……」
勇者「あ、いや、今のはその……」
猫「礼は言えても、お世辞は言えんみたいだにゃん」
戦士「勇者くんにしては上出来だよ、本当に」

266 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)01:31:25 ID:0IUXedbCe
 つづく

267 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)01:36:14 ID:QUqOolW6L


268 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)01:44:13 ID:cTTNSi8oK
伏線が意味なさげな会話の中にバッチリ組み込まれてて感心したわ
話の流れも綺麗で締めもしっかりしてて今後にも期待できるな

273 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:01:40 ID:ddzvohbXI

勇者「ああっ! もう無理もう無理マジで無理っ!」
戦士「逃げちゃダメだ!」
勇者「そんなこと言われてもっ!」
戦士「人間、たいていのことには慣れで対応できる! ほら、しっかり」
勇者「ていうか羽交い締めをやめてっ! お、俺死んじゃううぅ!」 
僧侶「……」

274 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:05:56 ID:ddzvohbXI
猫「さっきからコイツら、なにをしてるのにゃん?」
魔法使い「勇者がシャイすぎて、僧侶ちゃんに回復を頼めなかったことがあったでしょ?」
猫「あったな」
魔法使い「今後も同じことがあったら困るでしょ?」
魔法使い「で、見てのとおり。勇者のシャイをなおそうとしてるわけ」
猫「なおす?」
魔法使い「うん、なおそうとしてるでしょ?」
猫「戦士が勇者を羽交い締めにして、僧侶に近づけようとしてるのが?」

275 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:14:07 ID:ddzvohbXI
勇者「あぅ……」
戦士「あ、気絶してしまった」
僧侶「……」
魔法使い「うーん、この方法ならいけると思ったけど強引すぎたかな」
戦士「今までの人生で染みついた習性みたいなものだからね」
戦士「やっぱりそう簡単には克服はできないよ、人見知りならなおさらだ」
僧侶「勇者様、どうしますか?」
戦士「とりあえずベッドで寝かせておいてあげよう」
猫「……」
猫(コイツらは魔王様の敵……なのに、どうもそういう風に感じられん)

276 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:15:45 ID:ddzvohbXI
戦士「やっぱり勇者くんには、もっと適した治療法があるのかなあ」
猫(コイツはロン毛でいかにも軽薄そうだし)
猫(今のところ戦闘の様子を見てるかぎり、戦士というよりは魔法使いのスタイルに近い)
猫(でもこのパーティを仕切ってるのはコイツだし。勇者よりは絶対に頼りになる)
魔法使い「もっと適した治療って?」
猫(俺様に『居場所特定』、『魔術を使うと反応』の首輪をつけた魔法使い)
猫(見た目とは裏腹に相当な魔術の使い手だ)
猫(そのわりに一番年上っていうのを感じさせないのは、性格のせいかにゃあ)
僧侶「……完全に気絶してる」
猫(ある意味一番謎が多い女、僧侶)
猫(性格は沈着冷静そのもの。この女の治癒術の回復スピードはあなどれない)
猫(なにより俺様を見る目が……ちょっとコワイにゃん)

277 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:16:55 ID:ddzvohbXI
勇者「うぅ……彼女は最高よ……」
猫(そしてベッドの上でくたばってる勇者)
猫(やっぱり一番謎なのはコイツにゃん)
猫(実力はある。しかし替えがきかないというほどではない)
猫(なによりコイツにはあの感覚がない。まだ見えない底、という未知の感覚)
猫(戦士や魔法使いはこれまでの旅で、おそらく本気を出してない)
猫(わずかな期間しか一緒にいない俺様でも、それが手に取るようにわかる)
猫(だがコイツには……)
猫(とても魔王さまを追いつめるほどの実力があるとは思えない)

278 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:22:02 ID:ddzvohbXI
戦士「まあ今日はいろいろあったし。食事の時間まで自由行動といこう」
魔法使い「どこ行くの?」
戦士「情報収集もかねて、ボクはすこしこの街の観光と洒落こむよ」
僧侶「では私はいったん、自分の部屋に戻ります」
魔法使い「じゃあ私は……どうしようかな?」
猫「俺様に聞いてるのかにゃん?」
魔法使い「ほかにいないでしょ」
猫「俺様も今日は疲労困憊にゃん。すこし寝させてほしい」
魔法使い「えー、ちょっとだけお話しようよー」
猫「……」

279 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:33:00 ID:ddzvohbXI
猫「前から思ってたことがあるにゃん」
魔法使い「なあに?」
猫「お前といい勇者といい、俺様のことを敵と認識してるのか?」
猫「俺様はこんなナリでも立派な魔物にゃん」
魔法使い「もちろん。普通の猫はおしゃべりしないし」
魔法使い「だからその首輪をつけたんだしね」
猫「……」
魔法使い「いちおう今だって、あなたが勇者に悪いことしないか見張ってるんだよ?」
猫「そうなのか?」
魔法使い「うん……あっ。私、ちょっとトイレ行きたくなったから」
魔法使い「勇者のこと見ててね」
猫「え、あ、はい」

280 :名無しさん@おーぷん :2014/09/16(火)23:46:30 ID:Z6eDVTwMh
前言撤回はやっww

281 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/16(火)23:59:59 ID:ddzvohbXI
勇者「……ん、俺ってばいつの間に……」
猫「ふん、起きたか」
勇者「あれ、みんなは?」
猫「食事の時間まで、各自自由行動だそうだにゃん」
勇者「ふーん。おおかた戦士のヤツはまた街に繰り出したのか」
勇者「ホントあいつは、街をうろちょろするのが好きだよなあ」
猫「本人は情報収集と言っていたが」
勇者「俺も軽くトレーニングでもして、時間つぶそうかな」
猫「どうでもいいが、お前らってあんまり仲はよくないのか?」
勇者「そりゃあな。俺たちのパーティは急遽できた寄せ集めみたいなもんだ」

282 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/17(水)00:02:43 ID:1FkdYRte2
勇者「戦士と俺はもともと知り合いだった」
勇者「あっ、あと魔法使いと戦士も旧知の仲なんだっけ」
猫「その寄せ集めが魔王さまをたおそうなんて、無理な話にゃん」
勇者「べつに魔王退治を命じられてるのは俺たちだけじゃない」
勇者「魔王城探索のためだけに編成された部隊だってあるぐらいだ」
猫「それぐらいなら俺様だって知ってるのにゃん」
猫「だが世間では、魔王さまを討つのは勇者だと言われてるらしいじゃにゃいか」
勇者「それはおとぎ話や作り話の世界だ」
勇者「現実では国の連中が血眼になって魔王を探してる」
猫「では万が一、いや、億が一。
  魔王さまを討つものがあらわれるとしても、それはお前ではないわけだ」
勇者「時と場合しだいとしか言えないな、現状では」

283 :はい◆N80NZAMxZY :2014/09/17(水)00:11:35 ID:1FkdYRte2
猫「ふん……」
勇者「なんだよ、その目は」
猫「どうにもお前からは覇気を感じられんのにゃん」
猫「お前は本気で魔王さまを討ち取ろうと思ってるのか?」
勇者「……おとぎ話の中の勇者は、魔王をたおすためだけに生きてる」
猫「いきなりなにを言い出すにゃん?」
勇者「俺はおとぎ話の中の勇者じゃないって言ってんの」
勇者「俺の人生は魔王をたおすためにあるんじゃない」
勇者「だいたい俺と魔王のあいだに、いったいどんな因縁があるっていうんだ?」
猫「それを俺様に聞かれても」

285 :名無しさん@おーぷん :2014/09/17(水)00:24:28 ID:1FkdYRte2
勇者「まっ、たぶん闘うことになるんだろうけどな。魔王とは」
猫「……」
勇者「そんな気はする」
猫「ところで勇者」
勇者「なんだよ」
猫「さっきからドアの外で、聞き耳をたててるものがいるぞ」
勇者「聞き耳? 誰が?」
猫「俺様じゃなくて、扉のむこうにいるヤツに聞けにゃん」
僧侶「その必要はありませんよ」
勇者「そ、そそそそ僧侶さん!?」
猫(コイツは人が相手だと、とたんにカッコ悪くなるのにゃん)