勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
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Part6
218 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/13(土)22:37:49 ID:
wlbQqPHKK
盗人「どうやってこちらの居場所を把握した?」
勇者(答えると思うのか)
盗人「そもそも、なぜお前がこっちを追ってきた?」
勇者(だから答えるつもりはない、そう言ってるだろ)
盗人「だんまりか。まあいい」
会話はあきらめたらしい。
敵は腰に吊り下げていたダガーを逆手に構える。
ただの盗人だったら、こんな持ちかたはしない。
盗人「やられちまえ」
敵の繰り出したナイフをとっさにかわして、勇者は蹴りをくりだす。
だが勇者の予想通り、盗人はぎりぎりでこれをかわして反撃してくる。
勇者(やっぱり。ただのコソ泥じゃないな、コイツ)
219 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)22:39:14 ID:6GQia6Io0
キター
220 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)22:49:31 ID:
wlbQqPHKK
勇者(普通にやりあったら面倒だ。だったら)
勇者「ーー今だ!」
視線を、ダガーを振りあげた目の前の盗人から、さらに奥へ向けて叫ぶ。
盗人「誰がそんな手に!」
「またせたにゃあ」
盗人「なっ!?」
驚きのせいだろう、敵の動きが一瞬だけとまった。それで十分だった。
拳を容赦なく敵の頬にぶつける。
はっきりとした手応え。盗人が大きく吹っ飛ぶ。
勇者「猫だまし、成功」
猫「お前は猫だましの意味をきちんと調べろ」
221 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)22:51:41 ID:zXg9qxMfg
>>218>勇者(だから答えるつもりはない、そう言ってるだろ)
言ってねえじゃんww
222 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)22:56:52 ID:
wlbQqPHKK
盗人「な、なんで猫がしゃべってやがる?」
猫「猫だって小言のひとつや二つ、言いたくなるときがある」
猫「とくにこんなふうに、見ず知らずの人間に誘拐されたときなんかは」
盗人「ぐっ……」
猫「ふん。パンチ一発で気絶したか」
勇者「お前は俺より、しゃべりのセンスがあるみたいだな」
猫「お前がなさすぎるだけだにゃん」
勇者「ついでに悪口のセンスもな」
226 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)23:17:02 ID:
wlbQqPHKK
猫「そういえば、ひとつ気になることがある」
勇者「質問はあとだ」
猫「にゃ?」
「気づいてたか」
勇者の真上から声と影がどうじにふってくる、とっさに横転してその場をはなれる。
頭上からあらわれたのは、もうひとりの盗人だった。
勇者(そりゃあな。四人が二手にわかれたのは見てたからな)
盗人「ふん。どうやらアンタ、敵とは口をきかないタイプのようだな」
勇者(次の敵は剣、しかも二刀流かよ。エモノがないときに、これとはね)
盗人「来ないならこちらから!」
227 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)23:37:22 ID:
wlbQqPHKK
勇者(二刀流……手数で攻めるスタイルか)
勇者(武器がない今、これを処理すのはキツイ……いや、まてよ)
盗人「見えたーースキ有り!」
どうやら敵はこちらの硬直を見逃さなかったようだ。
振りあげられた刃が勇者目がけて振りおろされる。
勇者「ところがどっこい」
甲高い金属音が木々の葉むらに吸いこまれたときには、二振りの剣は空中を舞っていた。
盗人「ば、馬鹿な……!?」
勇者「そしてこれが俺の必殺技だ、くらえ」
猫「……」
いつのまにか勇者にかかえられた猫が、口から巨大な水弾をはなつ。
超光速ではなたれた水弾が敵の顔面を直撃する。
228 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)23:53:53 ID:
wlbQqPHKK
盗人「かはっ……!」
勇者「人のモノを盗むとこうなる。肝に銘じな」
猫「おまえ、堂々とセコイな」
勇者「こんなところでくたばりたくないからな」
猫「わざわざ手伝ってやったんだ、あとで礼のかわりにブツをよこせにゃん」
勇者「はいはい」
猫「しかし、よかったにゃあ」
勇者「なにが?」
猫「あの魔法使いのおかげで、命拾いしたじゃないか」
勇者「……まあな」
229 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/13(土)23:56:30 ID:Iro731wyl
なるほど
230 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:02:24 ID:
SeHoEaGT6
勇者「この腰にぶら下げてたナイフが、まさか役に立つとはな」
猫「アイツはこういった状況を想定して、その服を着せてたのかにゃ?」
勇者「それは絶対にない」
猫「でも結果的にアイツのおかげで助かったんだろ?」
猫「だったら礼を言うのが筋ってもんだと思うにゃあ」
勇者「……」
勇者(なんと憎たらしい顔っ! 俺がしゃべれないことをわかって言ってやがんな)
猫「俺様、なにかおかしいことを言ってるかにゃん?」
勇者「おまえに言われるまでもないっつーの」
猫「で、さっき聞こうとしたことだが」
猫「どうやってコイツらの居場所を突きとめたのにゃん?」
勇者「べつに、この盗人どもを追いかけてきたわけじゃない」
231 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:04:04 ID:kjKm7jmtk
魔法使いのチョイスが役に立ったのか
232 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:06:23 ID:jkwOvQFIf
凄い!カッコいい!!
233 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:12:54 ID:
SeHoEaGT6
勇者「ほら、お前についてる首輪だよ」
猫「……ああ、魔法使いが俺様につけたヤツか」
猫「まったく。俺様には魔王さまからいただいた立派な首輪があるというのに」
勇者「二つも首輪ついてる猫もそういないよな」
猫「それで? 首輪がなんなんだにゃん?」
勇者「その首輪でお前の居場所が特定できたんだよ、これを使ってな」
猫「杖?」
勇者「仕組みは俺にはわからない」
勇者「でも、この杖はお前に近づけば近づくほど光るんだよ」
猫「この首輪は、俺様が逃げ出さないようにするためのものだったのかにゃん」
234 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:27:52 ID:
SeHoEaGT6
勇者「さてと。コイツらの目的、その他もろもろ聞くとするか」
猫「満足に人と話せないお前が? どうやって?」
勇者「……俺のかわりに尋問してくれ。あとでなんか買ってやるから」
猫「お前、やっぱりダサいのにゃん」
勇者「うるさい。とりあえず起こしてくれよ」
猫「おい、盗人どもよ。さっさと起きろ」
勇者(そういえば戦士たちも気になるな……ん? 煙?)
勇者「ーーまずいっ」
猫「にゃ!? な、なんで急にひっぱるのにゃん!?」
勇者「トラップだ!」
勇者(しかも毒煙! どんなカラクリかは知らないけど事前に仕込んでたな、この盗人)
235 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:29:01 ID:jkwOvQFIf
!
236 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:39:11 ID:
SeHoEaGT6
猫「ふぅ、なんとか煙を吸いこまずにすんだか?」
勇者「最近はつくづく毒に縁があるみたいだな」
猫「だがアレだと、毒煙の罠をしかけたアイツまで……」
勇者「それだけじゃない。コイツらの行動、ひっかかることが多すぎる」
勇者(そもそもアイツら、なんで逃げようとしなかった……あれ?)
猫「どうした?」
勇者「やばい。どうも吸っちゃったみたいだ、煙」
猫「あらまあ」
勇者「なんだその淡々としたリアクションは。ご主人様のピンチだぞ」
猫「俺様のご主人様はお前じゃない」
勇者「ていうか、そんなことはどうでもいい」
勇者(ヤバイ、これけっこう本気でヤバイ……)
僧侶「どうなさいましたか、勇者様?」
勇者「そ、僧侶?」
237 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:49:55 ID:
SeHoEaGT6
勇者「あ、あのですね……そ、その……」
勇者(けっこうな生命のピンチに人見知りが! 人見知りがっ!)
僧侶「傷口は見当たらないですね」
勇者(ちっがう! 傷じゃないんだよ! 毒なんだよお!)
僧侶「ひょっとして食あたりでもしましたか?」
勇者(するかボケぇ! て、ていうか痺れてきた、か、からだががががが……)
猫「……勇者は毒煙を吸いこんだんだにゃん」
僧侶「そうなのですか、勇者様?」
勇者(めっちゃ首を縦にふる俺)
僧侶「そうでしたか。それで口がきけなかったのですね」
猫「あまりに情けなくて見てられないにゃん……」
238 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)00:56:52 ID:bpt6yLaxr
期待を裏切らない情けなさだ
239 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)01:16:47 ID:
SeHoEaGT6
勇者(そして一分後、俺はあっさりと僧侶の治癒術で回復した)
勇者(僧侶の術が効くスピードは尋常じゃない、もう完治してる)
勇者(しいて言うなら、術をかけてもらうたびにチクッとするのが気になるけど)
僧侶「どうですか? 顔色はまだ優れないようですけど」
勇者「おかげで、なんとか……」
猫「人見知りのせいで死にかけるとは、愚かなヤツにゃん」
勇者(なにも言い返せない)
僧侶「勇者様は必要以上に無口ですからね。いい意味で」
勇者(この場合の『いい意味で』は、どういう意味なんだろ)
僧侶「勇者様が木に目印をつけてくださって助かりました」
僧侶「それがなかったら、ここにたどり着くこともなく、勇者様も……」
勇者「あ、あはは。そうですね」
240 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)01:50:54 ID:
SeHoEaGT6
僧侶「ところで。前から気になってたことを聞いてもいいですか?」
勇者「……なんでしょう?」
僧侶「勇者様はひょっとして苦手なんじゃないですか、私のこと」
勇者「……」
◆
戦士「敵は逃げない。ボクの予想は当たったでしょ?」
盗人「……」
魔法使い「本当に当たったね。でもどうしてわかったの、この人たちの場所?」
戦士「あとで教えてあげる。とりあえずは今は取り返すよ」
戦士「『勇者の剣』をね」
241 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/14(日)01:51:07 ID:
SeHoEaGT6
つづく
242 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)03:57:39 ID:bpt6yLaxr
続き気になる
243 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/14(日)09:25:57 ID:3Hz07b9kp
気になる気になる
248 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/15(月)21:09:16 ID:
qNDJULlTA
盗人「居場所を把握していがら、あえて正面から来るとはな」
戦士「ボクは無駄な争いがきらいでね」
戦士「たいていの物事はなるだけ穏便にすませたいと思ってる」
戦士「それに。いくら剣を盗んだ連中とはいえ、ボコボコにするのは気がひけるしね」
盗人「ずいぶんと自信過剰な兄ちゃんだな、ああっ!?」
魔法使い「もー、怒らせてどうするの?」
戦士「怒る人間はなに言われても怒るよ」
戦士「相手はひとりだし、さっさと剣を取り返すよ」
魔法使い「この人たちを捕まえてから、でしょ!」
戦士と魔法使いがそれぞれ武器をかまえる。戦士は剣、魔法使いは小さな杖を。
まばゆい光が飛び散る、ふたりの武器からだ。
戦士「動かないでよ、術が外れるから!」
地鳴りに似た低い音。
次の瞬間には、盗人の足もとから巨大な突起が生えていたーー戦士の魔術だ。
249 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)21:12:34 ID:
qNDJULlTA
敵は突起を飛び退いてかわした。
盗人が着地した場所には、すでに魔法使いが火炎球をはなっている。
魔法使い「ビンゴ!」
戦士「いや、まだだ」
なんの前触れもなくあらわれた水の渦、それが炎の球をあっさりと飲みこんでしまう。
魔法使い「相手はひとりじゃないってことね」
戦士「陰険な連中だね。人のモノを盗むわ、戦うときはコソコソ隠れるわ」
盗人「卑怯で陰険なことは堂々とやる、それが俺たちだ」
戦士「ふーん、なるほどね」
再び地面から突き出した突起が盗人を襲う。
だが敵は予想よりも素早いらしい、これもギリギリでよけられる。
盗人「不意打ちかよ」
戦士「そっちがその気ならこっちもその気ってね。卑怯には卑怯でしょ」
250 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)21:15:12 ID:
qNDJULlTA
盗人「アンタ、戦士のくせに魔術の扱いに長けてるようだな」
戦士「いやいや。こちらのお嬢さんには負けるよ」
盗人「このガキンチョが?」
魔法使い「……ガキンチョ?」
盗人「ガキンチョだろ? オレらみたいなのに囲まれて、お気の毒だな」
戦士「だってさ。パーティ内で一番年上なのにね、魔法使い」
魔法使い「……」
戦士「まあ毎度年齢を誤解されるのは、それだけ若々しく見えるってことでしょ?」
戦士「よかったじゃん」
魔法使い「そういう問題じゃない。私はこれでもーー」
魔法使いが自身をくるんでいたマントを大きく広げる。
盗人「な、なんだその……」
戦士「相変わらずマントの下はすごい服……じゃなかった。すごい数の杖だね」
マントの裏にはびっしりと大量の杖がはりつけられていた。
251 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)21:25:17 ID:
qNDJULlTA
魔法使い「会う人会う人、みんな同じこと言ってくるんだもん」
魔法使い「私はみんなが思ってるよりずっとオトナなのっ!」
マントの下にひそませていた杖を次々と、鬱蒼と生い茂る木々にむかって投擲する。
盗人「なにをする気かしらんが。やらせはしない」
魔法使い「手遅れだよ、とっくにね」
山を覆う木々のあいだをぬって悲鳴がきこえた。しかも複数。
盗人「なにがーー」
魔法使い「だから遅いんだってば」
敵の足もとに杖が突き刺さる。次の瞬間。
その杖が小さく爆ぜた。
盗人「これがどうしたって言うんだよ」
戦士「自分の足もとをよーく見てみることだね、目をこらして」
252 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/15(月)21:55:41 ID:
qNDJULlTA
盗人「は? なに言ってやがんだ?」
盗人が鼻でわらう。だが、すぐに盗人の口もとの嘲りは消え失せた。
盗人「……こ、これは、ど、どうなってやがんだ!?」
杖が爆ぜたことで生じた煙が、盗人の足首にからみつくように漂っている。
盗人「どうなってんだ!? 足がビクともしねえ!」
魔法使い「私の術だよ。これ、普段はあまり使わないんだけどね」
盗人「くっそ……!」
戦士「人間、気づくと失言してるなんてことは珍しくない。
言葉を舌に乗せるときは、きちんと吟味することだね」
魔法使い「あと、人のものを盗むのは普通に最低最悪な行為だから」