勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
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Part4
131 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:30:06 ID:
dhUDJCJZD
魔王『つまり……』
魔王『いや、そなたの質問に答えるのは、余が全てを話してからだ』
魔王『姫よ、そなたは知っているか?』
魔王『魔族がこの世界の半分近くを、掌握した時代があることを』
姫『比較的最近の話でしょ? 人類にとっての暗黒時代』
姫『でも暗闇に覆われた時代は、長くは続かなかったはずよ』
魔王『そうだ。二十年も立たずに魔族の世界は崩壊した』
魔物『人間の真似事はしたが、魔族世界を保つことができなかった』
132 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:39:12 ID:
dhUDJCJZD
魔王『余はその原因をこう考える』
魔王『魔族が人間から、なにも学ぼうとしなかったから』
姫『……』
魔王『人間は支配下に置いた存在を単なる労働力に終わらせない』
魔王『それがもつ全てを徹底して貪り食らい、自分の血へと、肉へと変える』
魔王『魔族はそれをしなかった』
魔王『だから、あっという間にそのツケが回った』
姫『魔物と人間のちがい……学ぶこと……』
魔王『そうだ。人間と魔族のちがいはそこにある』
133 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:40:38 ID:
dhUDJCJZD
姫『あなたは……あなたたちの目的はなんなの?』
魔王『つまり、だ』
姫『……』
魔王『えーっと……』
姫『……』
魔王『……』
姫『……』
姫(結局ここで会話は終わってしまった)
134 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:41:50 ID:
dhUDJCJZD
姫(てっきりそこそこ会話できるのかと思ったけど)
姫(どうやら、そうでもないみたい)
姫(でも、いまだに自分の耳で聞いたことを信じられない)
姫(魔王が人間を恐ろしいと思う。そんなことって……)
サキュバス「お姫様。食事をお持ちしました」
姫(彼女は魔王の側近で、私の身の回りの世話する魔物)
姫(魔物、と言っても外見はほとんど人間と変わらない)
135 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:44:34 ID:
dhUDJCJZD
姫「……ありがとう。今日の食事もおいしそうね」
サキュ「でしょう? あたしが食べたいぐらい」
姫(このサキュバスは、やたら馴れ馴れしく私に話しかけてくる)
姫「ねえ。あなたたちの目的はいったい……」
サキュ「そんなことより! あたしは姫様の私生活が知りたいなあ」
サキュ「やっぱり王族って贅沢してるんでしょ?」
姫「話をそらさないで」
サキュ「そんな怖い顔しないでよ」
サキュ「つーか、あたしがその質問に答えると思う?」
姫「……」
136 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:44:40 ID:gJU39ErpP
魔王…
137 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)22:53:13 ID:
dhUDJCJZD
サキュ「お姫様、ご自分の立場をよーく考えたほうがいいですよ?」
サキュ「利用価値があるから、今は大事に大事にされてるけど」
サキュ「箱入り娘は、おとなしく箱に収まっててほしいなあ」
姫「……」
サキュ「あとそんなコワイ顔しないで。かわいいんだから、笑ってよ」
姫「誘拐されて、笑っていられるわけないじゃない」
サキュ「ふーん。じゃあ、こういうことしちゃおっかな」
姫「ひゃっ!?」
138 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:01:14 ID:
dhUDJCJZD
姫「ど、どこさわってるの!?」
サキュ「ヤバっ! 肌すべすべ! チョーきもちいいっ」
姫「や、やめ……」
側近「……お前ら。なにやってんだ?」
サキュ「……ちょっとぉ。レディーの部屋に入るときはノックを二回。
これ常識でしょ?」
側近「んなことはどうでもいいんだよ」
姫(魔王といたときはあんなに硬い口調だったのに)
姫(ずいぶんと乱暴な口調でしゃべるのね)
139 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:11:26 ID:
dhUDJCJZD
サキュ「なんかあたしに用?」
側近「魔王さまが呼んでる。それから、ヤツが捕まったそうだ」
サキュ「捕まったって、誰が? つーか誰に?」
側近「魔王さまがかわいがってた猫、それが勇者たちに捕まった」
サキュ「ああ、あのガキ猫ね。へえ、殺されなかったんだ」
側近「けっ。オレの予想は外れたようだ」
サキュ「じゃあ賭けはあたしの勝ちってことね。
今度、なんかご馳走してよね」
側近「ふんっ。勇者連中もとんだあまちゃんだな」
サキュ「だから言ったでしょ?」
サキュ「『カワイイは武器になる』って」
140 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:17:08 ID:
dhUDJCJZD
サキュ「容姿は生きてるかぎり、絶対につきまとうもの。ねえ、姫様?」
姫(なぜか私を見てサキュバスはニヤニヤしてくる)
側近「はっ、くだらねえ。見てくれなんざ、どうでもいいぜ」
側近「この世に必要なのはパワーだ。パワーこそが力だ」
サキュ「だーれもそんな話してないっつーの、この脳筋」
?「おや、ここにいたのですか」
姫(また部屋に入ってきた)
姫(姿はローブにほとんど隠れてるけど、当然魔物よね)
142 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:20:52 ID:
dhUDJCJZD
?「魔王さまが呼んでいます。こんなところで、油を売ってる場合じゃないでしょ」
サキュ「それはそうなんだけど、コイツがさあ」
側近「あ? その目はなんだ?」
サキュ「べっつにー」
?「話はあとにしてください。
魔王さまを待たせるわけにはいきません」
サキュ「はいはい」
姫(魔物たちの会話……このヒトたちも普通に話したりするのね)
143 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:28:02 ID:
dhUDJCJZD
◆
勇者(あの村を出て二日。俺たちはなんとか次の街へたどり着いた)
勇者(現在、その街の教会で俺の反省会が開かれている)
戦士「あのね勇者、キミがシャイなのは知ってるよ?」
戦士「でも戦闘中ぐらいはひっこめようよ、そのシャイな部分を」
勇者「そ、そんなこと言われても……」
勇者(数時間前のこと。俺たちパーティーは魔物と交戦した)
勇者(そしてーー)
144 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:34:17 ID:
dhUDJCJZD
僧侶『煙幕で視界が……』
魔法使い『ここは各々で戦ったほうがよさげだね』
戦士『まあこの程度の魔物だったら、コンビネーションの必要もないよ!』
勇者(たしかに魔物は決して強くはなかった)
勇者(しかし運が悪いことに、俺は敵の爪に引っかかれた)
勇者『……っ!』
勇者『(たいした傷じゃないけど、この感覚……たぶん毒だな)』
勇者『(毒が回ったら厄介だ。ここは僧侶に治癒してもらうのがベスト)』
勇者『(ベストだけど……こういうとき、なんて頼めばいいのかわかんねえ!!)』
145 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:37:57 ID:t30KTrr8Y
コミュ障はバトルも苦労するな
146 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:39:11 ID:gJU39ErpP
そうなるよな…
147 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:42:29 ID:
dhUDJCJZD
勇者『(僧侶! 回復魔法じゃんじゃん浴びせちゃってくれ!)』
勇者『(……いや、なんかちがうな)』
勇者『(僧侶! さっさと俺を回復しろ!)』
勇者『(……なんかえらそうだよなあ)』
勇者『(僧侶さん、あのー、回復をしてもらってもいいですかあ?)』
勇者『(いやいや、余所余所しくないかこれ!?)』
勇者『(ダメだ! なんておねがいしたらいいのか、全然わかんねえっ!)』
魔法使い『勇者っ! 前見てっ!!』
勇者『へ…………ぐわはあぁっ!?』
勇者(そして、次に目がさめたときには街にいた)
148 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:43:40 ID:
dhUDJCJZD
今日はここまで
まだまだ道のりは長い
149 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:45:23 ID:gJU39ErpP
乙です
151 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)23:48:50 ID:t30KTrr8Y
乙
この勇者は一人旅のが向いてそう
159 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/09(火)20:06:47 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「戦闘のときにまで人見知りが影響するなんてね」
戦士「まったく、大変だったよ。気絶したキミを運ぶのはね」
勇者「す、すみません……」
戦士「これじゃあ魔王と戦うなんて無理だ。なんとかしないと」
魔法使い「でも人の性格って一朝一夕じゃ変えられないよ」
勇者「あ、あはは」
僧侶「勇者様は、なぜそんなにシャイなのですか?」
勇者「さあ……?」
勇者(どんな質問だよ、それ)
160 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:15:17 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「このままだとガールフレンドもできないよ!」
勇者(まずお友達がいない)
戦士「もうすこし。ボクらに心を開いてくれると助かるんだけどねえ」
魔法使い「心を開く……そうだ。私にいい考えがあるよ!」
戦士「聞こうか。せっかくだし」
魔法使い「あだ名つけてあげればいいんだよ」
魔法使い「あだ名で呼ぶと、なんだか仲いい感じがするし」
勇者「あだ名、ですか」
161 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:23:32 ID:20h6N1Zb8
>勇者(まずお友達がいない)
泣ける
162 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:28:47 ID:
BJUT5YObJ
戦士「へえ。それはなかなかいいアイディアだ」
勇者(コイツ、絶対に思ってないだろ)
戦士「ボクはパスだけどね」
魔法使い「なんで?」
戦士「せっかくのあだ名なんだよ」
戦士「だったら女性につけてもらったほうが嬉しいでしょ」
魔法使い「そういうものなの?」
戦士「男っていうのは、女性の施しをなにより喜ぶ生き物なんだよ」
魔法使い「ふーん」
163 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:36:41 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「あだ名かあ。言いだしっぺだけど、イマイチ浮かばないなあ」
僧侶「私、浮かびました」
勇者「!?」
勇者(お前かよ!?)
戦士「へえ。どんなあだ名なんだい?」
僧侶「勇者様、発表してもよろしいですか?」
勇者「ど、どうぞ」
164 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:39:44 ID:
BJUT5YObJ
僧侶「では僭越ながら発表させていただきます」
僧侶「チキン」
勇者「……」
魔法使い「……」
戦士「僧侶ちゃん。そのあだ名の由来は?」
僧侶「勇者様は臆病ですから。……いい意味で」
勇者(会話のときはたしかに臆病だけど)
勇者(ていうか、いい意味で臆病ってなんだ。慎重ってことか?)
165 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:49:04 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「えっと……あだ名については、またべつの機会に考えよっか」
僧侶「わかりました」
勇者(僧侶の表情が心なしか、ガッカリしてるように見えた)
魔法使い「でもこれじゃあ、なにも解決してないんだよね」
戦士「じゃあこういうのはどうだい?」
魔法使い「んー?」
戦士「コスチュームチェンジ。身につけるものが変われば、気持ちも変わるでしょ」
魔法使い「あっ、それグッドアイディア」
戦士「勇者のシャイが消え失せるような、ステキな衣装を見つけたいね」
勇者「……」
勇者(イヤな予感しかしない)
166 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)20:54:19 ID:
BJUT5YObJ
◆
魔法使い「うぅ〜、やっぱり晴れの日は気持ちがいいね」
戦士「昨日は土砂降りに勇者運びに、ホントついてなかったからね」
戦士「おかげで、さっき占いなんか受けちゃったよ」
勇者「……すんません」
戦士「気にしなくていいよ。占い師のお姉さん、美人だったしね」
猫「なあ、俺様気になってることがあるんだが」
勇者(どうでもいいがこの猫、ずっと魔法使いのリュックの上にのってる)
魔法使い「なになに? なんでも聞いて」
猫「お前らはなぜ、いちいち教会に立ち寄るんだ?」
167 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)21:02:09 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「あれは教会に報告してるの、いろんなことをね」
戦士「魔法使い」
魔法使い「……わかってるよ。話していいこと、話しちゃダメなことぐらい」
戦士「まあ日にちのことぐらいなら、話してもいいんじゃない?」
猫「日にち?」
魔法使い「私たちは、次の街に行く日を教会に伝えておくの」
猫「なんでそんなことを?」
戦士「旅のとちゅうで魔物に襲われたり、
なんらかのトラブルに巻きこまれたときのためだよ」
猫「なるほど。指定した期日に報告がなかったら、捜索願が出たりするわけだ」
魔法使い「そうだよそのとおりだよー、さすが理解がはやいねっ」
猫「だからほっぺスリスリをやめろにゃん!」
168 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)21:10:14 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「おっ。ついたね」
僧侶「なかなか大きな店ですね」
戦士「山のふもとにある街だけあって、登山グッズや虫対策グッズが豊富なんだって」
勇者(そして店に入って五分後)
勇者(俺は魔法使いに無理やり服を脱がされ、そして……)
魔法使い「前から思ってたんだよね。勇者はもっと派手にいくべきだって」
勇者「……」
戦士「そう思った結果がこのナリってわけね」
僧侶「以前と比較すると、ずいぶんと様変わりしましたね」
魔法使い「でしょでしょ!? やっぱりファッションは冒険しなきゃね」
勇者(なんなんだ、この格好は)
169 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)21:18:23 ID:EY2aRY6YF
ゴクリ・・・
170 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)21:21:17 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「ほらほら、鏡の前に立ってみて」
勇者「うわ」
勇者(鏡の自分を見て『うわ』って言っちゃった)
勇者(ていうか原色キツいし。なんかサイズがあってないし)
魔法使い「今回のコーディネートのポイントは、ズバリこのナイフ」
戦士「腰についてるチェーンつきのナイフのこと?」
魔法使い「そうそう。こういう小物がオシャレを引き立てるの」
戦士「小物って言うには、ちょっとデカイけどね」
勇者「センスわる」
魔法使い「え?」
勇者「ん?」
勇者(ヤベ。思わず本音がポロリしてしまった)
171 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/09(火)21:29:44 ID:
BJUT5YObJ
魔法使い「勇者。いまボソッとなにか言ったよね?」
勇者「そ、空耳でしょう……きっと」
魔法使い「ウソだ。絶対なにか言ったでしょ?」
勇者「……ど、独創的なファッションだなと思って」
猫「コイツは今、『センスわる』とハッキリ口にしたぞ」
勇者(ね、猫!?)
魔法使い「……」
勇者「ま、魔法使いさん?」
魔法使い「そうだよね。うん、知ってたよ」
魔法使い「やっぱり私って、この手のセンスが致命的に欠けてるんだよね」
勇者(うわ、めっちゃ落ちこんでる)