勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
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Part3
91 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)00:31:30 ID:
fmwarQREP
勇者「ついでに。夢っていうのは、もっと生きてから見るもんだと思う」
少年「……どうして?」
勇者「あーもうっ。口下手の俺にあんましゃべらせんな」
勇者「お前の妹は必ず助ける。だから待ってろ」
少年「信じて、いいの?」
勇者「俺はできない約束はしない」
勇者(ガキんちょの顔つきがすこし変わった気がした)
勇者(すこししゃべるのがつらくなった気がする)
勇者(俺は会話を切り上げてその場をあとにした)
92 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)00:41:06 ID:
fmwarQREP
◆
勇者(指定された洞窟はここだな。予想外に小さい)
勇者(入口なんて屈まないと入れねえな)
勇者(あ、でも意外と中は広い)
?「待ちくたびれたぞ、勇者」
勇者「!」
勇者(道具屋のオッサンが言ってことは、本当だったみたいだな)
道具屋『魔物の正体はわからなかったんだ』
道具屋『あまりに濃い霧で全身が覆われてたんだよ』
道具屋『デカいってことぐらいか、わかったのは』
93 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)00:49:43 ID:
fmwarQREP
勇者「……」
?「なんだよ、えらく大人しいな」
?「いろいろ聞きたいことあるんじゃねえの、お前?」
?「人質は、とか。俺様の正体は、とか」
?「あっ、お前ビビリなんだろ? まともに口がきけないんだってな」
勇者「……」
?「情けねえなあ。ヤローがそんなんでどうすんだよ」
勇者「……」
?「ていうか今も症状出ちゃってる? ニャハハハ傑作だな!」
勇者「手より先に悪口が動く。キライだね、お前みたいなヤツは」
94 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)00:51:05 ID:ijAuDMX6x
いちいち言い回しがカッコいい
95 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:03:09 ID:
fmwarQREP
?「その口、二度と叩けないようにしてやる」
勇者「!」
勇者(洞窟の入口がなにかで閉ざされた?)
勇者(まさに真っ暗闇。ほとんど視界ゼロの状態か)
?「さらにくわえてこの霧。もはや俺様の姿はとらえられまい」
勇者(こう狭いと迂闊に魔力を使った攻撃は使えない)
勇者(しかも娘さんがこの中にいるとしたら、なおさら)
96 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:18:29 ID:
fmwarQREP
風の裂ける音に遅れて、すねに鋭い痛みが走った。
反射的に拳を振るってみたが、とらえたのは暗闇と濃霧だけ。
勇者「……っ!」
?「まずは一発。さて、次はどこを狙おうかねえ」
勇者(いちおう、この魔物には作戦らしきものはあったわけだ)
?「この目は闇の中でこそ光る」
?「お前に見えないものも俺様には見える」
?「つまり、ここでは俺様が圧倒的に優位」
勇者(さて、どうやってたおそうかな)
敵の術中に絡めとられた中。
敵をたおさなければいけない、ということだ。
97 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:29:23 ID:
fmwarQREP
◆
?(さすがは勇者と言ったところか)
?(暗闇の中、確実に俺様の攻撃を捌いてきやがる)
?(それどころかすでに反撃のタイミングをうかがってやがる)
?(だがそれも、もちろん想定済み)
?(次の手は、きちんと打ってある)
勇者「なっ!?」
?(これならどうだ? 俺様の口から発射される、超光速の水の弾丸)
?(……チッ、間一髪。今のはかわしたようだな)
?(しかしこの暗闇、そしてこの狭い空間という条件下で)
?(いつまで俺様の攻撃を避け続けることができるかな?)
98 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:40:17 ID:
fmwarQREP
?(……すでに二分以上が経過しているが、まだ水弾をかわすか)
勇者「はぁはぁ……」
?(しかしすでに動きが鈍ってきている。油断はできないが)
?(コイツ、闇雲にこの暗闇の中で剣をふりまわしてきやがる)
?(そのせいで絶えず動くことを強いられる)
?(だが、そろそろ終わりだ。次の水弾で確実にとらえーーえ?)
勇者がこちらに向かって突進してくる。
まっすぐ、闇の霧を突き抜けるように。
99 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:48:11 ID:
fmwarQREP
とっさにそれを避けようとしたが、しかし、それより先に勇者が大きく口を開く。
勇者「ーーあああああああああぁぁぁっ!」
?「!?」
予想だにしない想定外の怒号が、鼓膜を、からだを突き抜ける。
思わず全身が硬直する。
?(しまっ……!)
勇者「つかまえたぜ、ようやく」
気づいたときには、勇者の手にその小さなからだは捕まえられていた。
100 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:54:27 ID:
fmwarQREP
◆
勇者「ったく、洞窟の入口を岩でふさぐなよ。出るのが大変だろ」
猫「……」
勇者「『まさか俺様が負けるなんて』」
勇者「そんな顔してるな、猫さんよ?」
猫「……」
勇者「いやあ、どんな魔物が闇ん中に潜んでるのかと思えば」
勇者「こんな愛らしい子猫ちゃんだったとはなあ」
猫「……なんでだ?」
勇者「ん?」
猫「あの暗闇の中、どうやって俺様の位置がわかった!?」
101 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)01:58:20 ID:
fmwarQREP
猫「俺様の作戦は完璧だった」
猫「魔術で生み出した霧に身を隠し、水弾で敵を確実にダメージを与えてく」
猫「狭い空間なら、逃げるにも限界がある」
猫「それなのに……!」
勇者「それだよ」
猫「にゃ?」
勇者「せっかく暗闇に隠れてんのにさ、水で攻撃なんかしたら」
勇者「すぐに水たまりができて、足音しちゃうじゃん」
猫「……ぁ」
102 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:07:50 ID:
fmwarQREP
猫「たしかに! 水がすべてのメリットを台無しにしてるっ!」
勇者「そうじゃなくても。お前はうるさかったからな」
勇者「姿隠して口隠さず。声のおかげで場所がとらえやすかったよ」
猫「だ、だけど! 俺様の姿が見えなかったはず!」
猫「にゃのに! なぜそうも躊躇なく突っこめた!?」
勇者「お前の笑い声だよ」
勇者「『ニャハハハ傑作だな!』って。あれで猫かなって思った」
猫「そんなとこでも……」
勇者「それと、お前の攻撃にもヒントはあった」
103 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:14:48 ID:
fmwarQREP
勇者「一発目の攻撃はすねだった。人体の中でも極めて低い位置だ」
勇者「そして猫なら攻撃するにはちょうどいい位置」
猫「それでほとんど確信したというのかにゃ?」
勇者「ダメ押しは、お前の『この目は闇の中でこそ光る』ってセリフ」
勇者「まさに猫の目の特徴。あれで完全に確信した」
猫「だから最後の最後で……」
勇者「そう。耳のいい猫の魔物、大きな音は苦手だろ?」
勇者「まあ霧で姿を隠してたって話を聞いた時点で、だいたい予想はついてたよ」
猫「ううぅ〜」
104 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:15:20 ID:5tUxpAXiC
いいぞ
105 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:19:09 ID:
fmwarQREP
勇者「口は災いのもと」
勇者「それを身を持って証明したな、子猫ちゃん」
猫「……ちょっと待て。お前、しゃべるのは極めて不得手だと聞いてたが?」
勇者「なにごとも例外はつきもの」
勇者「俺はガキんちょと魔物相手には緊張しないんだよ」
猫「ううぅ……」
勇者「ついでにもうひとつ」
猫「?」
勇者「人が気にしていることを、平気でバカにするヤツにはバチが当たる」
勇者「今度からは気をつけな」
106 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/06(土)02:21:03 ID:
fmwarQREP
あ、だめだ
眠いので今日はねる
107 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:23:13 ID:5EWod4viS
スレタイからは想像もつかない本格的な戦闘にワロタwwwww
>>1はハンター好きそう
108 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:23:43 ID:5tUxpAXiC
乙です
109 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)02:26:30 ID:FTzKyDFIO
コミュ障のくせに勇者カッコよすぎだわ
110 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)10:00:17 ID:Svl87bwtn
いいな!
111 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/06(土)12:29:16 ID:hDmV2jH55
やるじゃん
119 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/07(日)20:18:15 ID:
dhUDJCJZD
◆
勇者(人質の娘は洞窟の最奥の隠し部屋にいた)
勇者(ちなみに。その子が誘拐された経緯は、というと)
娘『しゃべる猫さんがね、あたしにおいでって言うからついてったの』
娘『そしたらね。あたし、森の中にいたの』
娘『そこにはいっぱい猫さんがいて、ずっと遊んでたんだ』
娘『ホントは帰らなきゃって思ってたよ?』
娘『でも猫さんたちが、もっと遊ぼうって言うからずっと遊んでたの』
娘『あ! ご飯はね、猫さんたちからもらってたんだあ』
勇者(とりあえず無事だったので俺はなにも言わなかった)
120 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/09/07(日)20:18:57 ID:
dhUDJCJZD
勇者(で、娘さんをオッサンのとこに届けた)
勇者(このあとの流れは、だいたい想像がつくだろうから割愛)
勇者(ちなみに。ガキンチョとはそのあとにすこし話した)
少年『……ありがとな。妹を取り返してくれて』
少年『世界には、お前……勇者のお兄さんみたいなカッコイイ大人もいるんだな』
少年『その……オレもがんばってみるよ』
少年『まだオレには夢なんてないけど。いつか見つけるんだ、きっと』
少年『ところでさ。お兄さんの夢ってなんなの?』
勇者(まあこんな感じで、道具屋のおっさんたちとはわかれた)
121 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:22:57 ID:
dhUDJCJZD
◆
戦士「さて、キミには聞きたいことがあるんだよね」
勇者(コイツは戦士。ロン毛でキザ。俺の古くからの知り合い)
勇者(戦士のくせに、ダボダボのローブを着用してる)
僧侶「素直にさっさと吐いたほうがいいですよ。知ってること、全部」
勇者(美人でクールで、俺が一番苦手なタイプの僧侶)
勇者(この女とふたりっきりになったら、たぶん俺は死ぬ)
猫「うううぅ……」
勇者(そして現在。宿屋で魔物猫を尋問している)
122 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:23:38 ID:
dhUDJCJZD
魔法使い「おねがい。知ってることを全部話して。ねっ?」
猫「誰がお前ら人間なんかに!」
猫「そんなことしたら、魔王城に帰ることもできにゃくなるわ!」
戦士「ふーん。キミ、魔王城がどこにあるか知ってるんだね」
猫「ぎくっ」
戦士「これから話すことが、キミの運命を大きく左右する」
戦士「できれば素直に話してほしいなあ」
猫「お、俺様がそんなおどしで、し、しっぽをふるとでも?」
僧侶「ふらないなら切り落としましょうか、あなたの膨らんでるしっぽ」
猫「わ、わかった! しゃべるからそのナイフをしまえにゃん!」
123 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:24:18 ID:
dhUDJCJZD
戦士「話がわかる猫でほっとしたよ」
猫「……魔王さま、こんな情けない俺様をゆるしてほしいにゃん」
戦士「時間もないので手短に。ずばり、魔王城の場所はどこだい?」
猫「知らん」
僧侶「へえ」
猫「ほ、ホントだ!
……だからナイフはしまってほしいにゃん」
勇者(しっぽも耳も縮こまっちゃってるな。かわいそうに)
124 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:25:13 ID:
dhUDJCJZD
猫「途中までなら道案内はできる……と思う」
猫「だけど、俺様では絶対に魔王城には戻れない」
戦士「そういえば、魔王城には複雑難解な結界が備わってるらしいね」
猫「うむ。結界のせいで一度出たら、戻ることは極めて困難にゃん」
魔法使い「空間系の魔術。厄介だね」
戦士「とりあえず、魔王城に一番近い街を教えてくれる?」
猫「それは無理な相談だ」
戦士「なんで?」
猫「人間の街の名前なんて、いちいち把握してない」
僧侶「へえ」
猫「ウソついてにゃいぞ、俺様は!
……たのむからナイフをしまってほしいにゃん」
125 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:28:09 ID:
dhUDJCJZD
戦士「そうなると、ボクらはキミを随伴させなきゃいけないのか」
猫「ほかに方法がなければ」
魔法使い「本当!?」
猫「きゅ、急に大声を出すな……ビックリしちゃうにゃん」
戦士「嬉しそうだね、魔法使い」
魔法使い「うんっ! 私、猫大好きだから一緒に冒険したいなって思ってたんだ」
戦士「勇者。キミはどう思う?」
勇者「あっ、うん。まあ……い、いいんじゃないかな?」
126 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:29:05 ID:
dhUDJCJZD
勇者(国の連中が探しまくってなお、見つかっていない魔王城)
勇者(魔王の手先が場所を教えてくれる。これはすごいチャンスだ)
魔法使い「じゃあ決定っ! よろしくねっ!」
猫「にゃわわっ! 頬をすりすりするのはヤメろおっ!」
戦士「時間もおしてる。あとのことは道中で聞くよ」
猫「おいっ勇者たすけろっ! にゃわわわわ」
勇者「……」
勇者(殺そうとしたヤツに助けを求めるなっつーの)
127 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:31:16 ID:n0ZrhdmoK
私怨
128 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)20:53:48 ID:2pUTMDr7C
猫…
129 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)21:07:23 ID:
dhUDJCJZD
◆
姫(昨日。私と魔王は会話をした、そう、たしかにした)
魔王『そなたは我々魔物をどう思う?』
姫(魔王が口を開くまでには、十分以上の時間がかかった)
姫『……』
魔王『質問が悪かったか。では……そなたは余が恐ろしいか?』
姫『ええ。恐ろしいと心の底から、そう思います』
魔王『余も同じだ』
姫『え?』
魔王『余も、そなたら人間が恐ろしくて仕方がない』
姫(聞きまちがいかと思った。でも、魔王はたしかにそう言った)
130 :
名無しさん@おーぷん :2014/09/07(日)21:09:23 ID:
dhUDJCJZD
魔王『否、膂力や生命力の話をしているのではない』
魔王『人間が抱える、思想や発想』
魔王『それらに畏怖の念を抱かずにはおれんのだ、余は』
魔王『他の生物を殺し食らうだけなら、まだ理解できる』
魔王『同族を労働力として使役するのも』
魔王『だが豚や牛をくらうために、捕獲し、管理し、
あまつさえ人為的に弄り、改変する』
魔王『こんなことをする生命は、世界広しといえど人間しかいない』
姫『……魔王。あなたはなにが言いたいの?』