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勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
Part25

勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」 2
http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1418051039/

2 :はい◆N80NZAMxZY :2014/12/09(火)00:17:21 ID:nSk

女騎士「はぁはぁ……どうした、そんなものか?」
魔物使い「ここまで粘るとは。さすがっすね」
勇者(騎士が何度ゴーレムを破壊しても、すぐさま復活してしまう)
勇者(しかも、俺たちを拘束する空間魔術は、解除できてないまま)
女騎士「何度でも叩きつぶしてやる。かかってこい」
姫「待って! 魔物使い、あなたの目的は私でしょう?」
姫「言うことなら聞きます。だから、それ以上はその人を傷つけないで」
女騎士「姫殿下! いったいなにを!?」
魔物使い「……よかったっすね、女騎士さん? 物分りのいい姫様で」
女騎士「ふざけるな……! この私が引くとでも?」
勇者(まずい。今の状況では、また姫様をさらわれる。俺たちも無事ではすまない)
勇者(考えろ。剣を使わず。この場から動かず。状況を打開する術を)
姫様「……」
勇者(……姫様)

3 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)00:25:09 ID:Pa3
考えろ勇者

4 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)00:27:01 ID:nSk
勇者「……まだ質問に、答えてもらってない」
魔物使い「……あー、言われてみれば。忘れてたっすよ」
勇者「なんでだ? なんで魔物たちに協力する?」
魔物使い「故郷のためっすよ」
勇者「故郷?」
魔物使い「オレの故郷は、いわゆる第三の世界に属する場所だったんすよ」
姫「第三の世界ってことは、人間と魔族が共存してたってこと?」
魔物使い「……小さな村だったし、周りにはなにもなかった。でも、いい場所だった」
魔物使い「まあ、この軍のせいで故郷は滅んだんすけどね」
姫「……」
魔物使い「……いったいオレたちがなにをした? 魔族がなにをした?」
魔物使い「ただ平和に、静かに暮らしていただけなのに。魔族だって理由で抹殺される」
魔物使い「魔族と一緒にいた。ただそれだけで、人間さえ迫害される……!」

8 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)01:44:44 ID:nSk
戦士「だからって国を、人間を裏切ってどうなる?」
魔物使い「べつに国に反逆したいわけじゃない。ただ、故郷を取り戻したいだけっす」
魔物使い「そのためには、上層部急進派の行動を抑える必要がある」
戦士「急進派……勇者を今回の旅に出した連中か」
魔物使い「アイツらは自分たちの汚れた部分を、全て魔族に擦りつけるクズだ」
僧侶「どういうことですか?」
魔物使い「僧侶さん。アンタなら、気づいてると思ったんすけどね」
僧侶「……」
魔物使い「『柔らかい街』で調査することになっていた研究施設」
魔物使い「アレが国の管理下にあったってことに」
魔物使い「あの街の教会はきちんと機能していた。そして、街と施設は目と鼻の先の距離」
戦士「じゃあ、あの施設は……」
魔物使い「国が新たな生物兵器を作り出すための、実験の場だったってことっすよ」
魔物使い「そして魔王が死ねば、いよいよ魔族はこの地上から排除される」

9 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)01:47:22 ID:nSk
勇者「だからお前は……」
魔物使い「……勇者さん。オレは前々から、アンタには会いたいと思っていた」
魔法使い「だから、実際に会ってみた。……ガッカリしたよ」
魔物使い「自分の意思なんてありゃしない。アンタは命令に従うだけの人形だ」
魔物使い「アンタのような存在が、オレたちを狂わせるんだ」
勇者「……」
魔物使い「……もういい、不毛な会話はうんざりだ。終わらせてやるーーゴーレム」
ゴーレム「ーー!」
勇者(三体のゴーレムが溶けるように、混ざり合っていく。そして)
女騎士「デカイな……だが!」
 巨大な拳を掻い潜って、騎士はゴーレムの懐へと潜りこむ。
女騎士「図体がデカイだけで、勝てると思うなっ!」
 鈍い音がむなしく室内に響きわたった。
 騎士の振り上げた剣は、ゴーレムに傷一つさえつけられなかった。
魔物使い「ムダっすよ。今のゴーレムの硬度は、さっきとは比較にならない」
戦士「騎士っ!」
 ゴーレムの巨腕が、騎士を軽々と吹っ飛ばした。

10 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)01:55:21 ID:nSk
女騎士「……っ」
魔物使い「騎士さんは気絶したみたいっすね。これで邪魔者はいなくなった」
魔物使い「あとはそこの姫様を連れて行くだけ」
姫「……」
勇者(騎士もやられた。どうする? どうすれば……?)
  
   「まだだよ。まだ、終わってない」
魔物使い「!?」
勇者(文字通り、壁が爆発した。もうもうと上がる煙の中から現れたのはーー)
魔法使い「お待たせ。待たせちゃってごめんね、みんな」
戦士「魔法使いっ!」
魔法使い「今、みんなを助けるから」

11 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)02:00:33 ID:Pa3
魔法使いちゃんキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!

12 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)02:07:12 ID:6MC
魔法使いもそろった!!

13 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)02:39:21 ID:nSk
魔物使い「次から次へと。ていうか、どうやってここに?」
魔法使い「決まってるでしょ? 魔物使いくんの空間魔術を解いたんだよ」
魔法使い「まっ、ちょっと手こずったけど」
魔法使い「警備の人は眠ってたし。ホント、ここに来たときはビックリしちゃった」
魔物使い「なんでもいいっすよ。ゴーレムにはどうせ勝てない」
魔法使い「どうかな? こういう決着って意外と一瞬でついたりするーーよっ!」
 魔法使いがマントを広げて、立て続けに杖をゴーレムに向かって投げつける。
 投擲された杖は間髪入れずに爆ぜて、瞬く間に空間を煙で覆い尽くす。
魔物使い「煙で拘束する魔術。厄介だけど、このゴーレムには効かないっすよ!」
 ゴーレムが低く唸り、自身に絡みつく煙を引きちぎる。
 魔物使いの言うとおり。ゴーレムの前に、煙は煙以上の意味をもたなかった。
魔物使い「抵抗はやめたほうがいいっすよ。無駄な足掻きにしかならない」
女騎士「いや、意味のある足掻きだ」
魔物使い「なっ……!?」
勇者(気づいたら、女騎士が魔物使いの背後に立っていた)

15 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)02:45:08 ID:nSk
女騎士「認めよう。私では貴様のゴーレムはたおせない」
女騎士「だが、たおす必要はない。術者を無力化すればいいだけの話だ」
魔物使い「どうやってオレの背後に!? そもそもアンタは……」
女騎士「さっきのは気絶したふりだ。貴様を油断させるための、な」
女騎士「それから。貴様の背後に移動したのは、空間転移の術を使っただけのこと」
魔物使い「転移の術? いつの間に!?」
魔法使い「一つ目の転移用魔方陣は、この部屋に侵入したときに展開したの」
魔法使い「二つ目のは、杖を投げてるとき」
魔法使い「あの派手な登場には、きちんと意味があったんだよ」
魔物使い「爆発も煙の術も、全部目くらましだったのか……」
魔法使い「そのとおり。でも、けっこうギリギリだったね」
魔法使い「勇者が魔物使いくんと話して、時間を稼いでくれたおかげで助かったよ」
勇者「まあ、うん……」
勇者(もっとも。この策が成功したのは、姫様の能力があったからこそだ)
勇者(彼女が能力を使用したおかげで、全員の意思疎通がとれた)

16 :はい◆N80NZAMxZY :2014/12/09(火)02:47:00 ID:nSk
つづく
終わりがだいぶ見えてきたんで、なんとか早めに終わらせられるよう頑張ります

17 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)02:52:24 ID:6MC
これほどバトルが面白いSSも珍しいと思うわ

18 :名無しさん@おーぷん :2014/12/09(火)03:44:58 ID:Pa3
乙!
続きは早く読みたいし、結末も知りたいけど終わってほしくもないなあ

21 :はい◆N80NZAMxZY :2014/12/10(水)01:13:37 ID:rmH

魔法使い「本当に本当に本当に本当にごめんなさいっ!」
勇者(魔法使いが最初にしたのは、姫様に謝ることだった)
姫「ど、どうしたの?」
魔法使い「本来なら王都に帰還されているはずだったのに。私のせいで……!」
魔法使い「一歩間違ったら、姫様は……」
姫「たしかに、あの魔術は失敗したんでしょうね」
魔法使い「……はい」
姫「でも、そのおかげで私はとてもいい経験ができました」
姫「それに。今回のピンチを救ったのは他の誰でもない、あなたよ」
姫「ねっ、勇者?」
勇者「はい」
戦士「そうだよ。ボクらはまた、キミに救われたんだよ」
僧侶「私たちを拘束していた術も、魔法使い様がいなければ解けませんでしたし」
魔法使い「みんな……」

22 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:14:55 ID:rmH
魔法使い「なんか、泣きそうかも……」
戦士「おいおい。キミはボクらのパーティーで一番オトナだろ?」
魔法使い「わ、わかってるよ」
魔法使い「……ていうか。みんなの顔見るのって、すごく久しぶりな気がする」
戦士「実際には数日なんだけどね」
僧侶「でも。魔法使い様の気持ち、わかります」
戦士「ボクもだよ。やっと会えたって感じがする。そうでしょ、勇者?」
勇者「はい」
魔法使い「もうっ。また勇者は『はい』しか言ってない」
戦士「だけど、勇者も変わったよね」
戦士「時間稼ぎのためとはいえ、率先して自分からしゃべるなんてさ」
僧侶「白状すると、あの瞬間は状況を忘れて、そちらに驚いてしまいました」
勇者「まあ、俺も多少は……ね?」
魔法使い「うんっ。やっぱり私、みんなに会えて嬉しいっ」

23 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:16:18 ID:rmH
戦士「っと、積もる話にもうすこし花を咲かせていたいけど」
魔法使い「だね。まだまだ私たちにはやることがあるもん」
勇者(そう。俺たちは魔物使いから、情報を引き出さなきゃいけない)
女騎士「……話は終わったのか?」
戦士「いちおうね」
戦士「しかし、魔法使いの煙の術はやっぱり便利だね。こうやって拘束にも使えるし」
魔物使い「クソっ。なんでオレがアンタらみたいな連中に……!」
女騎士「抵抗は無意味だ、やめておけ」
魔物使い「特にアンタみたいな思考停止の馬鹿にやられるなんて……屈辱っすよ」
女騎士「思考停止、だと……?」
魔物使い「自分のやってることが、正義だって信じて疑わない」
魔物使い「アンタみたいな人間が他人を平気で踏みにじる! 不幸にする!」
女騎士「……」

25 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:17:54 ID:rmH
魔物使い「アンタにはわかんねえだろうな! 大切なヤツらの命が理不尽に奪われる怒りが!」
魔物使い「考えたこともねえだろ!? 自分の居場所が消えていく恐怖なんてっ!」
魔物使い「どうなんだ!? 答えろよっ! あぁっ!?」
女騎士「……」
姫「魔物使い」
戦士「姫様。近づくのは危険です」
姫「おねがい。すこしでいいから、顔を見て話がしたいの」
魔物使い「……なんすか。上から目線の、憐れみたっぷりの同情でもしてくれるんすか?」
姫「あなたは自分の故郷を救うために、ずっと闘ってきたのよね?」
魔物使い「……そうっすけど。それがなにか?」
姫「その故郷はあなたが自分を犠牲にしてでも、まもりたい程に価値がある。そうよね?」
魔物使い「言いたいことがあるなら、はっきり言ってほしいんすけど」
姫「……もし。もし、魔族と人間が手を取り合う世界を目指すとしたら、それは実現可能ですか?」
魔物使い「!」

26 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:19:07 ID:rmH
魔物使い「……アンタ、自分がなに言ってんのか。理解してるんすか?」
姫「ええ」
魔物使い「はっ。世間知らずの姫様でも、人間が魔族にどんな感情を抱いてるのか」
魔物使い「それぐらいは知ってるでしょ?」
姫「知った上で、聞いてるのです」
魔物使い「無理だ。できるわけがない」
姫「でも、魔族と人間が共存する世界は、たしかに存在してる」
魔物使い「一部の例外だけを見て語るなよ」
姫「それでも。そういう世界が存在することは、まぎれもない事実です」
姫「……私もほんのわずかですが、その世界に触れました」
魔法使い「そっか。私が間違って飛ばしたのは『柔らかい街』だったから……」
姫「はい。……勇者」
勇者「……はい?」
姫「あの宿のチーズスープは、すごくおいしかったです」

27 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:20:12 ID:rmH
勇者「……えっと、あのスープ。やっぱりおいしいですよね?」
姫「ええ、とっても」
戦士「辛口のボクでも、あの宿の食事は絶賛せざるを得なかったよ」
魔物使い「……だからなんだって言うんだ?」
姫「人間と魔族の間に確執があるのは、間違いありません」
姫「違っている部分はたくさんあるし、互いに理解できないこともあるでしょう」
魔物使い「……」
姫「だけど。それ以上にわかりあえることもあるって、私はそう信じたいんです」
姫「だってあのスープは、魔族も人間も関係なく、温めてくれたもの」
魔物使い「理想、いや、それさえ通りこして妄想だな」
姫「あなたの方が正しいのよね、きっと」
姫「でも、変えられるかもしれない未来があるのに、なにもしないなんて私にはできない」

29 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:21:16 ID:rmH
魔物使い「なら、やってみればいい」
魔物使い「いかに自分が無謀なことを言ってるのか、理解できるだろうからな」
姫「ええ。そのときにはあなたにも協力してもらうから」
魔物使い「……は?」
姫「形はどうあれ、あなただって今まで現状を変えようと戦ってきた。そうでしょう?」
姫「だから、その戦い。これからも続けてもらうわよ」
魔物使い「……」
勇者(この場にいる誰もが、たぶん、魔物使いと同じ顔をしていた)
勇者(魔物使いが言っていたことは悲観的な考え方ではない、単なる事実だ)
勇者(俺も魔物使いの立場なら、同じことを言っただろう。なのに)
勇者(姫様の言葉を否定する気にはなれなかった)

30 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:22:04 ID:rmH

女騎士「私の部隊は、まもなく姫殿下を王都へと送り届ける任務に就く」
戦士「魔物使いのほうは?」
女騎士「それは別の隊の仕事だ」
魔法使い「……魔物使いくんには、それ相応の罰が下されるんだよね」
僧侶「魔物側への情報提供や王族である姫様への狼藉、街へもたらした被害。その他諸々」
僧侶「裁きを受けることは避けられないでしょう」
戦士「まっ。姫様もああ言っていたし。多少は緩くなるんじゃない?」
魔法使い「……うん」
女騎士「そういえば、勇者はどうした?」
戦士「姫様と二人でいるよ。姫様が二人で話がしたいって。くぅ〜、羨ましいっ」
女騎士「そうか。なら、私も挨拶だけしてくる」
戦士「キミから勇者に挨拶しようとする日が、来るなんてね」
女騎士「……そうかもな」

31 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:22:49 ID:rmH

勇者(俺と姫様は教会の地下で、二人でいた)
姫「私のせいで、あなたたちにたくさん迷惑をかけてしまって。ごめんなさい」
勇者「いえ……姫様を助けるのは、任務でしたから。当然のことです」
姫「任務じゃなかったら、助けてくれなかったって意味かしら?」
勇者「え? あ、いや、その……」
姫「冗談です。そんなに顔を青くしないで」
勇者「は、はいっ」
姫「やっぱり、私と二人でいると緊張する?」
勇者「あ、はい。正直、かなり緊張します」
姫「そう。ひょっとしたら、って思ったけど。そうよね」
勇者「……?」
姫「以前会ったときに比べると、顔つきがすこし変わった気がしたの」
勇者「……どなたの?」
姫「あなたの」

32 :名無しさん@おーぷん :2014/12/10(水)01:24:00 ID:rmH
勇者「あー、まあ。旅の最中に、顔を殴られたりしたこともあったので。はい」
姫「そういう意味ではなくて。……ふふっ、なんだか久しぶりの感覚」
勇者「久しぶり?」
姫「ええ。勇者との会話って、噛み合わないことがよくあるから」
勇者「そう、ですかね?」
姫「……魔王と、こんなふうに話をしたの」
勇者「魔王と?」
姫「魔王はちょっとだけ、あなたに似ていたわ」
姫「おしゃべりが苦手なところや、まったく目線を合わせることができない部分とか」
勇者「……」
姫「勇者?」
勇者「あっ……すみません。同じことを言うヤツがいたから」
勇者(それから、姫様は魔王とした会話を俺に話してくれた)