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勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
Part18


738 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:11:59 ID:O0AKif5Gv
戦士「そういえば。賭けバトルでは、死者が出ることもあるんだったね」
女騎士「ああ。あのスタジアムは研究材料確保の場であり、魔物実験の場でもあった」
女騎士「……まあ、まだ推測の域を出てはいないが」
戦士「素直に感心してしまったよ、ボクは」
戦士「キミはそこまで考えたうえで、賭けバトルに参加していたんだね」
魔物使い「いや、その可能性に気づいたのはオレっす」
魔物使い「この人はひたすら人間魔物問わず、ぶっ飛ばしてただけっす」
女騎士「貴様っ……!」
戦士「……話はあとにしよう、来るよ。
   まるで神話に出てくるケンタウルスのような魔物がね」
女騎士「スタジアムで戦ってわかった。奴の尻尾は機能してない」
戦士「尻尾は掴めるってわけだ」

739 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:12:30 ID:O0AKif5Gv
魔物使い「さあお二人とも! さっさと敵をやっつけちゃって!」
戦士「……なんで建物の影に隠れてんの?」
魔物使い「申し訳ねえ、戦いに関しては門外漢なんで。あっ、来るっす!」
戦士「そのキャラで戦わないとかアリなのっ!?」
魔物使い「オレ、こんなキャラでも頭脳派エリートっすから!」
魔物「ぐぅ……ううぅおおおおおっ!」
女騎士「とにかく構えろ。やるぞ」
戦士「それもそうだね」

740 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:13:21 ID:O0AKif5Gv

魔法使い(街の人たちを避難させるために、別れて行動することにした)
魔法使い(私、僧侶ちゃん、勇者、猫ちゃんグループ)
魔法使い(戦士、女騎士さん、魔物使いくんグループ)
魔法使い(とりあえずの最優先事項は、住民の避難のための時間稼ぎ。……なんだけど)
猫「自分はこの街の地理に明るいから、一人で大丈夫だって嘯いてみせたのににゃあ」
僧侶「予想できたことですけどね」
魔法使い「だね。勇者が見ず知らずの人に話しかけるなんて、想像できないもん」
魔法使い(勇者はみんなとわかれた瞬間に、人と話せないことを思い出して戻ってきた)
僧侶「しかし。どんな魔物がいるか、まったくわからない状況です」
魔法使い「うん。一人は危険だし、これでよかったんだよ」
勇者「……はい」

741 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:14:00 ID:O0AKif5Gv
魔法使い「それで、次は勇者が言ってた区画に向かえばいいんだよね?」
勇者「はい」
猫「腕っぷしが強い連中も少なくないからにゃあ」
魔法使い「うん。だから向かう場所の順番は考えないとね」
勇者「……」
魔法使い(……勇者。なんだか表情がいつもよりかたいかも)
魔法使い(やっぱりお姉さんと、ゴブリンさんのことが心配なのかな)

742 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:14:58 ID:O0AKif5Gv
ゴブリン『……つまり、危険な連中が現れたから逃げろってことか?』
魔法使い『はい。ゴブリンさんたちは、すぐに安全な場所へ』
姉『あなたたちはどうするの?』
勇者『……避難を、手伝う』
姉『いくらあなたが強いからって危険よ。どんな魔物かも、わかってないんでしょ?』
勇者『だけど、やらなきゃならない』
姉『……』
ゴブリン『……』
戦士『なんで一介の学生がそこまでするんだって、そう思うかもしれないけど』
戦士『今は事情を話してる時間すら惜しい』
女騎士『住民の避難は我々だけで行うわけではない。そこは安心してくれ』
魔物使い『そうっす! とにかく今は避難っす!』

743 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:15:15 ID:RSm5VgQIf
来たか!

744 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:16:14 ID:O0AKif5Gv
ゴブリン『ボウズ。お前は自分の考えを、口で伝えることが苦手だな』
勇者『そんなこと今は……』 
ゴブリン『そのくせ、顔や目には考えてることが思いっきり出ちまう』
ゴブリン『昔からそうだ、だからわかる』
ゴブリン『お前が本気でワシらのことを心配してくれてるのはな』
勇者『だったら……!』
ゴブリン『だがここはワシらの街だ。ほうっておくことはできん』
ゴブリン『ここには大切な思い出が、たくさん置いてあるからな』
勇者『……』
姉『ここは私たちが帰れる唯一の場所だから。私たちが守らなきゃ』
姉『この街は、この宿は、あなたを待つための場所でもあるから』

745 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:17:32 ID:O0AKif5Gv
姉『覚えてる? 昔、私に言ったこと。「自分は旅から旅の根無し草。帰る場所なんてない」って』
姉『正直に言うと、あのときね。私はなに言ってるのって思ってた』
姉『あなたが帰る場所はここにあるじゃない。ずっと待ってるんだから』
勇者『……姉さんって強引だよな、昔から』
姉『そうよ、強情っぱりなの。こうじゃないと、守りたいものも守れないし』
勇者『……わかった。この街を守ろう……いっしょに』
ゴブリン『そうこなくっちゃ!』
魔法使い(もちろん。お姉さんたちには、万が一の際には逃げてもらう)
魔法使い(騎士さんの仲間に、あとから来てもらう段取りもつけた)
魔法使い(落ち合う場所は、街の外れの広場だって決めた)
勇者「……」
魔法使い(でもやっぱり心配なんだよね、勇者)

746 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:18:43 ID:O0AKif5Gv
僧侶「どうやらこの区画は、全員避難済みのようですね」
魔法使い「よし。じゃあ、次のところへ……って、な、なに!?」
猫「じ、地面が!?」
魔法使い(宿の窓から見えた光と同じ!? ということはーー)
?「お久しぶりです。勇者様」
魔法使い(間違いなかった。地面が光ったのは魔法陣が発動したから)
魔法使い(魔法陣から現れたのは、ローブに身を包んだ誰か)
勇者「その声、お前……」
僧侶「以前、別の意味でお世話になった占い師ですね」
?「これはこれは。覚えてくださっているとは、恐懼の極みでございます」
魔法使い「思い出したっ! あのときのインチキ占い師!」

747 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:19:50 ID:O0AKif5Gv
猫「リザードマン、サキュバスときて。次はお前か」
?「ええ。あの二人のしくじった分、私が取り返そうと思いまして」
勇者「猫。あのローブの占い師、魔王の手先でいいんだな?」
猫「そうだにゃん」
僧侶「目的はなんでしょうか? できれば、そこをどいていただきたいのですが」
?「それは無理な相談です。なぜなら、みなさんをもてなすように頼まれたので」
魔法使い「また魔法陣が!?」
僧侶「これは……」
猫「な、なんて数……!」
魔法陣(再び赤く光った魔法陣が運んできたのは、大量の魔物だった)

748 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:20:24 ID:RSm5VgQIf
占い師か

749 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:21:35 ID:O0AKif5Gv
魔物「ううぅ……」
?「この魔物たちは研究の過程で生まれた出来損ないなのです」
?「しかし数が多すぎまして。始末するのに手間取っているのが現状です」
猫「で、コイツらを俺様たちにけしかけるのか?」
?「このことが魔王さまに伝わるのは困るのですよ」
猫「やっぱりか。こんな命を弄ぶ所業、魔王さまが許すわけがないにゃん」
?「だから始末してほしいって頼んでるのですよ」
僧侶「どうします、勇者様?」
勇者「……」
魔法使い(まずい。いくら私たちでも、この数の魔物をたおすのは難しい)
魔法使い(それにまだ避難が終わってない場所もある)

750 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:22:49 ID:O0AKif5Gv
魔法使い「こうなったらやることは一つーーみんな、さがって!」
僧侶「なにを?」
魔法使い「いいからまかせて!」
魔法使い(こういうときに備えて練習してきたんだから、空間転移の術を!)
魔法使い(集中力を研ぎ澄まして。一瞬で頭に術式を描いて。魔法陣を造りあげる!)
勇者「ま、魔法使い? これは……」
?「ほう、すばらしい。これは立派な魔法陣だ」
魔法使い「この魔物たちを全員どっかへ吹っ飛ばしちゃう!」
魔法使い「いっけええええぇ!」
勇者「……」
僧侶「………」
猫「……」
魔法使い「……あ、あれ?」

751 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:23:58 ID:O0AKif5Gv
魔法使い「魔法陣が、発動しない……?」
?「残念ですね。てっきり、すばらしい魔法陣の展開が見られると期待したのですが」
?「待つ理由はありません。さあどうぞ、この魔物たちを始末してください」
魔法使い「う、うそ……し、失敗……?」
僧侶「魔法使い様。仕方ありません、今は通常の魔術で戦うしか」
猫「むしろ発動してたら、俺様たちまで飛ばされた可能性があるにゃん」
勇者「たしかに」
魔法使い「いいもんっ! こうなったら特大の火の球で!」
魔法使い「……あれ?」
魔法使い「あ、あれ? 魔術が発動しない……」
?「おやおや。どうしました?」

752 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:25:14 ID:O0AKif5Gv
魔法使い(たしかに魔力はひねり出した。あとは火球を放つだけ)
魔法使い(なんで? からだの中をめぐる魔力は感じられる。なのに)
猫「お、俺様まで術が使えない!?」
?「どうやらこの装置、本当に使えるようですね」
僧侶「……術が使えないのには、なにかタネがあるようですね」
魔物「ぐおおおおぉっ!」
勇者「さがって!」
魔法使い(ど、どうしよう。魔術が使えない私なんて……)

753 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:33:36 ID:RSm5VgQIf
何かが魔法を使えなくしてる?

754 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:33:37 ID:O0AKif5Gv

魔法使い(勇者と僧侶ちゃんは魔物たちと、なんとか戦えていた)
魔法使い(勇者はもとから魔術を使わない。僧侶ちゃんは術のかわりにナイフで応戦していた)
魔法使い(だけど、魔術しか取り柄がない私は……)
?「さすが勇者とその仲間といったところですか」
魔法使い(あのローブ、さっきから勇者たちの戦いを静観してるだけ)
?「どうも面白みに欠けますね。これでは勇者様と出来損ないが普通に戦っているだけ」
?「勇者様。この街には、あなたが懇意にしている存在がいるとか」
勇者「……?」
?「宿の主であり、すばらしい人格者らしいですね」
?「人間や魔物といった種族による差別をしない存在、このご時世ではめずらしいことこの上ない」
勇者「なんでお前がそれを?」

755 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:35:40 ID:RSm5VgQIf
ゴブリン

756 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:43:09 ID:O0AKif5Gv
?「これでも占いを生業にしてたこともあるので」
?「それからもうひとつ。彼らはこの街にいる、そうですね?」
勇者「……」
?「宿の場所は、わざわざ言う必要はありませんね」
?「それより。あなた方が落ち合うことになってる場所、こちらのほうが重要でしょうか?」
勇者「お前、まさか……」
魔法使い(ハッタリじゃない。この人は私たちの行動を把握してる)
?「私はべつに、なにもするつもりはありません」
?「しかし。往々にしてなんの前触れもなく訪れるものですよね、不幸というのは」
魔法使い(本気でまずい。私たちの状況もそうだし、ゴブリンさんたちも……!)
?「さあ勇者様、どうしますか?」

757 :はい◆N80NZAMxZY :2014/11/17(月)00:43:19 ID:O0AKif5Gv
つづく

758 :名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)00:47:35 ID:RSm5VgQIf
乙!
これは凄い緊迫感

763 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)10:48:15 ID:TmkNA3fNa
緊張感ハンパねえな

765 :はい◆N80NZAMxZY :2014/11/18(火)22:42:20 ID:RTXIuDwGN
魔法使い(この中の誰かが、ゴブリンさんたちのもとへ行くべきだけど)
魔法使い(魔術が使えないこの状況では、魔物を食いとめきれない)
勇者「……ここはまかせてください」
魔法使い「え?」
勇者「ここはまかせて。宿に向かってください」
魔法使い「だけど」
?「ほう。この状況をひとりでどうにかできると?」
勇者「たのむ。あの二人は、俺にとって……」
僧侶「行きましょう魔法使い様。勇者様は強いですから、いい意味で」
魔法使い「でも……」
魔法使い(勇者にはこの状況を打破する手段があるってこと? それでも……)
魔法使い(って、どっちにしても今の私は役立たたず。だったら)

767 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)22:46:39 ID:RTXIuDwGN
魔法使い「……勇者。あの二人は私たちが必ず護るから」
僧侶「やられてはいけませんよ、勇者様」
猫「安心しろ。勇者には俺様がついているにゃん」
魔法使い「うんっ。勇者のこと、おねがいね」
魔法使い(今は私にできることをやるしかない)
?「大切な人のためなら、自分の命すら惜しくない。さすがは勇者様だ」
?「自己犠牲の精神とはいついかなる時もすばらしい」
勇者「勘違いするなよ。自己犠牲なんかじゃない」
?「つまり、この劣勢をひっくり返すと?」
勇者「ああ。それに俺は知ってるからな、戦いのあとのチーズスープのうまさを」
?「では、見せてもらいましょうか。勇者様のご活躍を」

768 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)22:49:06 ID:xCn9tp7ol
ゴクリ

769 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)22:49:45 ID:RTXIuDwGN

魔王「呼んだ覚えはないが」
姫「ええ、私も呼ばれた覚えはないわ。ここに来たのは私の勝手」
魔王「……待て。なぜ近づいてくる」
姫「話をしたいの。顔を見て、目を見て」
魔王「とまれ。近づく必要はない。この空間は特殊そのもの」
姫「そうね。大きな声を出さなくても、どういうわけか声は届く」
姫「でも、それではダメなの。あなたの表情が見えないもの」
魔王「……」
姫「目は口以上に真実を雄弁に語る、と教えられたことがあります」
姫「あなたが話すことが不得手なのは百も承知。それでもいいから」
姫「私とお話してください」

770 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)22:51:50 ID:xCn9tp7ol
コミュ障魔王様来たか

771 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)22:53:31 ID:RTXIuDwGN
魔王「……その前に。ひとつ聞きたい、その歩き方はなんだ?」
姫「歩き方? こうやって大股で歩くと気合が入ると思って」
魔王「てっきり股でも痒いのかと」
姫「……最低ね、あなた」
魔王「よくわからんな」
姫(近づけば近づくほどにわかる。魔王の全身からあふれる魔力が、覆いかぶさってくるような感覚)
魔王「……」
姫「……」
姫「あなたの顔、近くで見たら怖いのね。頭の中の言葉が、全部吹き飛んでしまったわ」
魔王「はあ?」

772 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)23:00:28 ID:xCn9tp7ol


773 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)23:11:40 ID:RTXIuDwGN
魔王「もしかして、それは冗談か?」
姫「ごめんなさい。冗談ではないけど。ごめんなさい」
魔王「……それで? 余と話したいこととはいったい」
姫「あなたは言ったわね。人間を魔物の支配下におき、共存に近い形を実現すると」
魔王「ああ」
姫「今、この世界では魔物は駆逐されようとしている。人間の手によって」
魔王「そうだ。無意味な抵抗だと揶揄し、我々のことをレジスタンスと呼ぶ輩もいる」
姫「でもあなたは、勝機が全くないとは考えていない」
姫「それだけじゃない。人間に勝利したその先の先まで考えている」
姫「だから私をさらった」

774 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)23:15:15 ID:RTXIuDwGN
姫「私の勝手な予想だけど。あなたが目指す世界には、モデルがあるんじゃないかしら?」
魔王「なぜそう思った?」
姫「魔王でありながら、人間のことを恐ろしいって言ってのけたあなただもの」
姫「いろいろと私たちについて、調べているんでしょう?」
魔王「正解だ。ただし半分、だが」
姫「半分?」
魔王「モデルとなった街は存在する。だが、その街も余の目指すべきものには程遠い」
姫「でも、あるのよね?」
魔王「……なにが目的だ?」
姫「見せてほしいの。あなたが目指しているものを、私に」

775 :名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)23:23:33 ID:xCn9tp7ol
ほう