勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
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Part13
529 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/28(火)12:45:21 ID:
BHw7KEC6r
勇者(頭がこんがらってる。落ち着け俺)
僧侶「そちらは出口ですよ。お医者様には安静にと言われたでしょう?」
勇者「そ、僧侶さん?」
僧侶「勇者様がなかなか病室に戻ってこられないので。探しにきたんです」
僧侶「どこへ行かれるのですか?」
勇者「ご、ごめんなさい」
僧侶「質問に答えてほしいのですが」
勇者「ごめんなさいっ!」
僧侶「……相変わらずですね、はぁ」
勇者(僧侶は気づいたのか?)
勇者(パーティにスパイがいるかもしれないって、俺が考えたことに)
勇者(そしてこの状況。信じたくないけど、これは……)
530 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)12:49:25 ID:
BHw7KEC6r
僧侶「勇者様が病院を抜け出して、なにをしようとしたのか。当ててみましょうか?」
僧侶「教会に報告しようとした。報告の内容はスパイがいる可能性について」
勇者(俺の考えが見透かされてる!?)
僧侶「私が勇者様を引き止めたのは、教会への報告をとめるためです」
勇者(引きとめるって、もうこれ完全に僧侶が敵だ!)
僧侶「どうせ勇者様は、私が魔物の手の者だと思ってらっしゃるんでしょう?」
勇者「はい」
僧侶「……もしパーティの中にスパイがいたのなら、先日の魔物との戦いはなんだったんでしょうね」
勇者(言われてみれば)
531 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)12:50:31 ID:
BHw7KEC6r
僧侶「もうひとつ。私たちの動向はある機関に、全部筒抜けになってます」
勇者「え?」
僧侶「今まさに勇者様が足を運ぼうとした場所のことです」
勇者(なに言ってんだ? 俺が行こうとしたのは教会……)
勇者「……そうか、そういうことか」
僧侶「そうです。私たちは逐一行き先を教会に報告している」
僧侶「教会の情報を得ることができれば、先回りも容易でしょう」
勇者(僧侶が俺をとめたのはそういうことか。でも)
僧侶「納得がいかないって顔してますね」
勇者「そ、そんなことは……」
僧侶「嘘をおっしゃらないで下さいまし。不服が顔に出ています」
532 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)12:52:14 ID:
BHw7KEC6r
僧侶「勇者様が疑いたくなる気持ちも、わからなくはありません」
僧侶「私から提案です。ご自身で確認をしてみては?」
勇者「確認?」
僧侶「勇者様が探りを入れて確かめるってことです」
僧侶「私たちが敵か、味方かを」
勇者「探りを入れるなんて」
僧侶「今の状態、勇者様にとってはストレスにしかならないでしょう」
勇者(僧侶の言うことは、ハズれてはいないけど)
僧侶「疑うことで私たちへの信頼を取り戻せるなら、むしろそうしてください」
勇者(ようやく振り返った俺に、僧侶はペンを突きつけた)
勇者(俺の背中に突きつけていたのは、どうやらこれだったらしい)
533 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)12:56:07 ID:
BHw7KEC6r
◆
魔法使い「遅かったね。どこかに行ってたの?」
勇者「……」
戦士「なに? ボクの顔になにかついてる?」
勇者(会話から、このふたりが味方であるって確信を得る。……そう、会話で)
戦士「もしかしてボクが食べてるバナナが欲しいの? あげないよ」
魔法使い「ケチ、一本ぐらい分けてあげればいいじゃん」
戦士「しっかり栄養補給しなきゃならないんだよ、ケガを治すためにもね」
僧侶「勇者様。お話しないですか?」
勇者(考えるまでもなかった)
勇者(普通の会話もままならない俺に、探りを入れるなんて無理だ!)
534 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)12:56:55 ID:
BHw7KEC6r
勇者「……とんでもないことに気づいたんです」
魔法使い「なになに?」
勇者「いるかもしれないんです。ボクたちの中に、敵が」
勇者「えっと、あの、その考えに至った根拠もあるんですけど」
戦士「アレでしょ? 行く先々で敵と遭遇するってことでしょ?」
勇者「……気づいてたの?」
魔法使い「さすがにここまで露骨だとね」
戦士「ていうか。スパイの可能性については、前の街のときから考えていたよ」
勇者(だとしたら俺、すげえマヌケじゃないかっ!)
戦士「ついでに、気づいてたよ。キミがこのことに気づいたってことにね」
勇者「……」
536 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)13:38:45 ID:
BHw7KEC6r
戦士「考えてよ。先日の戦いにしてもそうだし、連中に加担する理由がそもそもない」
勇者(そうだ。リザードマンやサキュバス、ヤツらの殺気は本物だった)
勇者(魔物に手を貸す理由も、ありそうで浮かばない)
戦士「だとしたら、こう考えるのが自然じゃない?」
戦士「魔物たちは教会の情報を、なんらかの手段で得ている」
勇者「……」
僧侶「ここまでの話で、勇者様はどう考えますか?」
勇者(バカの考え休むに似たりか。俺はもっときちんと考えるべきだった)
勇者「その、疑ったりして……すみませんでした」
戦士「謝らなくていい。疑ったことで、とりあえずは疑念も氷解したしね」
537 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)13:40:00 ID:
BHw7KEC6r
魔法使い「それから朗報があるんだよ。ねっ、猫ちゃん」
猫「前回の戦いで、ヤツらは痕跡を残していったにゃん」
勇者「痕跡?」
猫「そう。ひょっとしたら、魔王城の場所がわかるかもしれない」
538 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/28(火)13:40:08 ID:
BHw7KEC6r
つづく
539 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)14:34:12 ID:W2GqZXGYi
よかった
仲間の中に敵はいなかったんだね
540 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)18:44:45 ID:TRERWEDOU
ほんとのほんとに白なんだな?
541 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)18:48:57 ID:uBIqTyOPD
>>540
まだ分からんよな
続きに期待
542 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)20:00:16 ID:LCVMdlyB8
おーなかなかおもしろくなってきむ
543 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/28(火)20:16:05 ID:Dk2XCIw9B
僧侶ちゃんが敵じゃなくてよかったよぉー
547 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/30(木)22:33:46 ID:
S1wBw7KKg
◆
勇者「つまり。痕跡っていうのはあの魔物たちの魔力ってことか」
魔法使い「多かれ少なかれ、生物は常に魔力を放出してるからね」
戦士「あの強さのリザードマン、魔力の放出量も並の連中とは比較にならない」
猫「匂いと魔力の痕跡をたどるのは俺様がやる」
僧侶「ひとつだけ問題が……」
戦士「教会のことだね。それなんだけどさ、今までどおりでよくない?」
魔法使い「ダメだよっ。また同じ目にあっちゃう」
戦士「そのときは返り討ちにしてやればいいじゃん」
戦士「なにより。敵との遭遇は、情報を得るチャンスでもある」
僧侶「ですが、あの盗人たちのようなことが起きるかもしれませんよ」
548 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)22:34:42 ID:
S1wBw7KKg
戦士「ああ、アレね」
勇者(成功はした、あの盗人どもを捕まえることには)
勇者(問題は尋問だった。ヤツらは記憶を失っていた)
勇者(教会によると、後催眠のようなもので記憶を操作されたとのこと)
戦士「そのときはそのときだよ」
魔法使い「じゃあ『緑の街』に行くって方向で決定ね」
戦士「それと、次の行き先については教会以外には知られないように」
猫「なんでにゃん?」
魔法使い「確証を得るためだよ。情報が本当に教会から漏れてるのかどうか、ね」
猫「そういうことか」
549 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)22:36:16 ID:
S1wBw7KKg
戦士「とりあえずの方針はこんなところかな」
魔法使い「方針は決まっても、しばらくはこの街を離れることはできないけどね」
戦士「いやあ、面目ない」
勇者(特に戦士はリザードマンとの戦闘で、からだ中ボロボロだからな)
僧侶「この街に滞在してる期間は、術の特訓などに時間を充てるしかありませんね」
戦士「うんうん。特訓したまえよ、魔法使い」
魔法使い「うっさい」
勇者(特訓って……。魔術の扱いに一番長けてるのは、魔法使いのはずだよな?)
勇者(このふたりの会話の意味がわかったのは三日後のことだった)
550 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)22:41:52 ID:
S1wBw7KKg
◆
勇者(道具屋。魔法使いは店主と客としゃべってる。俺は待ってるだけ)
魔法使い「うん、これに決めた。この眼鏡買います」
店主「ついでにそっちの外套なんかもどうだい?」
魔法使い「んー、今は金銭的に余裕ないから」
客「金に余裕がないのはこの店も同じだよ。なあ?」
店主「まったく、この前の魔物には参ったもんだ」
魔法使い「この店、魔物の被害にあったの?」
客「直接の被害はなかったんだよな?」
店主「ああ。だが、今回の騒動で『夜の街』から『魔物の街』に変わっちまった」
客「外からの客のほとんどが、尻尾をまいて逃げちまった」
551 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)22:45:21 ID:
S1wBw7KKg
客「魔物の存在は百害あって一利なしだよ」
店主「さっさと滅んじまえばいいのにな。嬢ちゃんもそう思うだろ?」
魔法使い「えっと……」
店主「ほかの連中もみんな言ってるし、そうねがってるよ」
客「ていうか勇者はなにをやってるのかね。早く魔王を滅ぼしてほしいよ、本当に」
勇者「暴れようとするなよ」
猫「ふん、そんなことするか」
勇者(世間の魔物に対する感情は、どこへ行ってもだいたいこんな感じ)
勇者(魔物は人類の敵、人類は魔物の敵。それが一般的な認識だ)
553 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)23:20:18 ID:
S1wBw7KKg
魔法使い「ごめんね、待たせちゃって」
僧侶「魔法使い様は目が悪いのですか?」
魔法使い「ちがうよ。この眼鏡はオシャレだよ」
魔法使い「……ほら、私って年齢のわりに、その、アレでしょ?」
猫「アレってなんだ?」
魔法使い「と、とにかく! これですこしは大人っぽく見えるかなって思ったの!」
猫「声がむだにデカイ」
魔法使い「ムダにデカいって、ひどいなあ」
魔法使い「ていうか。猫ちゃん、ひょっとしてご機嫌ななめ?」
猫「……」
554 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)23:45:35 ID:
S1wBw7KKg
魔法使い「もしかしてさっきの会話、気にしてる?」
猫「……あの連中、好き勝手に言ってくれたにゃん。魔物は滅べだと?」
魔法使い「あれはお客さんが来なくなっちゃって、店主さんもイライラしてたんだよ」
猫「そんなこと知るか。勇者はなにも思わなかったのか?」
勇者(なんで俺にふるんだ)
猫「剣の一つも握らんくせに、文句だけは一丁前と来たもんだ」
勇者「……」
猫「魔物は滅べというなら、自分でやればいい話だにゃん」
勇者「……少なくとも、あの人たちに戦ってくれとは思わない」
猫「なぜ?」
555 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/30(木)23:54:24 ID:
S1wBw7KKg
勇者「あの店主にしても、自分が選択した人生を全うしようとしてるんだし」
勇者「それに。みんながみんな、魔王をたおしに行ってみろ。
俺たちの旅も成立しなくなるぞ」
勇者「戦うっていうのはなにも、剣を握ることだけじゃないだろ」
僧侶「……」
魔法使い「……」
勇者「……えっと、どうしました?」
魔法使い「ビックリしちゃった。勇者が普通にしゃべるんだもん」
僧侶「猫相手だと、本当に流暢にお話されますね」
魔法使い「私たちには、今みたいにおしゃべりできないの?」
勇者「え? あ、いや……」
魔法使い「うん、普段どおりの勇者だね」
556 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)00:01:35 ID:
bMmiS6xF4
猫「勇者に聞いた俺様が、バカだったみたいだにゃん」
勇者(好き放題言いやがって)
魔法使い「猫ちゃんはどう思ってるの、私たち人間のこと」
猫「……なにも思わん。そもそも俺様は、人と関わったことがあまりない」
魔法使い「じゃあ私のことはどう思う?」
猫「とりあえず頬ずりをやめろ」
557 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)00:02:44 ID:
bMmiS6xF4
魔法使い「……それにしても、本当にこれでよかったのかなあ」
僧侶「なにがですか?」
魔法使い「教会に次の行き先を伝えたこと」
勇者(もう三日もたってるのに、なにを今さら)
魔法使い「勇者。三日前のことなのに、なに言ってんだって顔したでしょ」
勇者「……」
猫「相変わらずよく顔に出るヤツだにゃん」
僧侶「……三日前といえば、戦士様との会話で気になってたことが」
魔法使い「んー?」
僧侶「なぜ戦士様は、魔法使い様だけに魔術の訓練を促したのでしょうか?」
魔法使い「それは……」
558 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)00:05:02 ID:
bMmiS6xF4
魔法使い「えっと……実はね。あの杖から煙を出す術、あるでしょ?」
僧侶「ええ。空間系の類の術ですよね?」
魔法使い「あれね、魔力で煙に量をもたせて、拘束するだけの術なの」
僧侶「じゃあ空間系の魔術ではない、と?」
魔法使い「うん。そもそも空間操作系の術って、魔術師の中でも賢者クラスじゃないと扱えないし」
魔法使い「ずっと前からいろいろと練習はしてるんだけどね」
僧侶「それで、戦士様は魔法使い様に?」
魔法使い「うん」
勇者(煙に質量をもたせるだけでも、十分すごいと思うけどな)
559 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)00:07:41 ID:
bMmiS6xF4
魔法使い「空間系魔術は習得しときたいんだよね、今後のためにも」
僧侶「敵はさらに手ごわくなりますからね」
魔法使い「うん。勇者、術の訓練につきあってね?」
勇者「……」
魔法使い「……露骨に不服そうな顔しないでよ、悲しいよ」
勇者「あ、はい」
勇者(個人的には、僧侶の術のタネのほうが気になるんだよなあ)
勇者(戦士ですら、僧侶の術に関しては聞こうとしないし)
僧侶「……そんなにジッと見つめられても困ります」
勇者「あ、すみません」
560 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/31(金)00:08:19 ID:
bMmiS6xF4
次の更新ではストーリーが動くと思う
つづく
561 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)00:10:25 ID:tYeaBOjeg
乙!
僧侶ちゃんがミステリアス
562 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)00:11:17 ID:7ItwBl0nZ
good
563 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)04:21:03 ID:jP5qjOBRQ
次もたのしみにしてる
564 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)11:29:44 ID:I98ZWoWKe
コミュ障でダサいのを除けば勇者って仙人みたいだな