勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
|
Part11
437 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:54:51 ID:
h0og4G7W3
猫「お前は……」
側近「よお、猫。ひさしぶりだなあ」
僧侶「あのリザードマン、あなたの知り合いなのですか?」
猫「ヤツは魔王さまの側近にゃん」
僧侶「側近……!」
魔法使い「それよりも、早く魔物を追わないと」
戦士「いや、コイツの始末が先だ」
側近「そうだ。雑魚にかまってる場合じゃねえよ、お前ら」
戦士「おりてきたら、とりあえず。
人ん家の屋根から、見下ろしてないでさ」
側近「言われなくても。だから、すこしは楽しませろよ」
438 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:56:11 ID:
h0og4G7W3
◆
戦士(リザードマンは決してめずらしい魔物じゃない。だけど、コイツ)
戦士(からだが一回り以上大きい。それに肌に刺さるような魔力)
戦士「魔法使い、今はほかのことは考ないほうがいい」
魔法使い「だけど」
戦士「街のことなら大丈夫。いちおう手は打ってある」
側近=リザードマン「隙を見せるなよ。見せるなら気迫にしろ、そして俺を楽しませろ」
月明かりを背に屋根で佇んでいたリザードマンが跳躍する。
地面に着地すると同時に、こちらへと飛びかかってくる。
戦士(はやい。この距離を一瞬でーー)
439 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:57:41 ID:
h0og4G7W3
顔面に迫ってくる拳を、身をそらしてなんとかやりすごす。
しかし、避けた先から次の拳が打ち出される。
戦士(反撃する隙がない)
魔法使い「戦士!」
横っ飛びで拳をかわした戦士の背後から、いくつもの氷針が敵目がけて飛んでいく。
直撃こそしなかったが、はじめてこちらに反撃のチャンスができた。
戦士「ナイス魔法使い!」
剣先から放たれた炎の塊が夜闇を押しのけ、リザードマンを飲みこむ。だが。
魔法使い「ウソ……」
轟々と燃えあがる炎が口を開き、瞬く間に霧散した。
リザード「ぬるい、ぬるすぎる! こんなんじゃあ熱くなれねえ!」
戦士(あの魔物の鱗、そして魔力。どうやら魔術に対して、相当の耐性があるね)
440 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:58:54 ID:
h0og4G7W3
僧侶「強い……!」
猫「ヤツは魔王さまに仕えるものの中でも、随一の戦闘力を誇る」
猫「普通にやりあって勝つのは難しいだろうにゃん」
戦士「まったく。そういうことは先に言ってよ」
猫「お前らの味方じゃないなんでな、俺様は」
戦士「ああ、そうかい。ピンチな状況なんだけどね、猫の手を借りたいぐらいには」
リザード「オレの前で軽口叩くなんてな、余裕じゃねえか」
戦士「まさか。余裕なんてカケラもないよ」
戦士(僧侶ちゃんと魔法使いのバックアップしてもらいながら……え?)
リザードマンが、文字通り視界から消えていた。
441 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:00:18 ID:
dAePt9Gxg
リザード「リーチ! 一発! ドラドラ!」
気づいたときには、からだが宙を舞っていた。
激痛が全身を締めあげ、受身すらとれず、背中から落ちる。
戦士はようやく理解した。自分が敵の拳を受けたのだと。
魔法使い「このっ!」
リザード「氷の針じゃ効かねえんだよ! その程度じゃあなっ!」
魔法使いが作ってくれた隙をついて、飛び起き、すばやく敵と距離をとる。
リザード「はっきり言ってやる。お前、弱いな」
戦士「……」
敵は追撃してこない、完全になめられている。
僧侶「戦士様の回復、もう終わります」
戦士「助かったよ。痛すぎて困っていたとこだ」
442 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:02:26 ID:
dAePt9Gxg
魔法使い「こうなったら……!」
リザード「へえ。マントの内側は騒がしいな。すげえ数の杖だ」
魔法使い「見せてあげるーー私の術」
魔法使いがマントの裏に隠していた杖を、次々と地面へと投擲する。
地面へと突きたった杖が、瞬時に爆ぜ、生じた煙が敵の足首にからみつく。
リザード「これは……」
敵の注意が足元へとそれた。地面を蹴って、敵の真ん前へと降り立つ。
剣を振りおろす、ねらいは敵の腕だ。
戦士「!」
戦士の剣は、硬い鱗に覆われた腕を切るには至らなかった。
リザード「おしい。だが」
それどころか、徐々に剣が押し戻されていく。
443 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:03:58 ID:
dAePt9Gxg
不意に敵の顔に、戸惑いにも似た感情がちらつく。
戦士(押し返す力が弱くなった。僧侶ちゃんの術か)
そのまま重心を右足に置き、強引に腕を切り裂こうとしたときだった。
「意外と手こずってる感じ?」
突然上から降ってきた声に、意識を奪われたのがまずかった。
敵の腕に剣ごと振り払われ、戦士は大きく吹っ飛ぶ。
サキュ「なんかピンチそうに見えたからさあ、来ちゃった」
リザード「どこがピンチだ」
サキュ「それに。仲間のピンチに駆けつけて加勢するのって王道でしょ?」
戦士「……この状況で敵の増援。しかも、彼女か」
魔法使い「ちょ、ちょっと待って。あのサキュバスが担いでるのって」
勇者「」
僧侶「勇者様、ですね」
444 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:06:30 ID:
dAePt9Gxg
リザード「勇者、伸びちまってんのかよ」
サキュ「伸びてるっていうか、くたばってる」
リザード「はあ!? ……んだよ、その程度だったってことか」
魔法使い「ていうか本当にさらわれてたの!?」
戦士「だからそう言ったじゃん。しかしうちの勇者はさすがだよ」
戦士「遅れて登場するまでは定番だけど、敵に担がれて登場するなんてね」
猫「相変わらずダサいにゃん」
リザード「さて、頼んでもねえ味方も来たし。遊びは終わりだ」
サキュ「失礼しちゃう。来たからには、好きにヤラせてもらうけど」
サキュ「アンタはまず、その拘束をされた足をどうにかしてよね」
リザード「こんなもん、こうすりゃいい」
魔法使い「あっ……」
リザードマンが足もとに向かって拳をぶつける。
地面が砕け石欠が飛び散り、同時に地面を這っていた煙も闇にまぎれる。
445 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:08:15 ID:
dAePt9Gxg
リザード「空間系の術かなにか知らねえが。こんなもん、パワーで解決すりゃいい」
魔法使い「そんな……」
戦士(魔法使いの術も容易く突破してくる。どうする……)
戦士を奇妙な感覚が襲った。足もとがなぜかふらつく。
それだけではない。視界がにじみ、平衡感覚が失われていく。
リザード「隙だらけだ」
戦士「っ!」
一瞬で距離を詰めたリザードマンの蹴りを受け止められたのは、単なる偶然だった。
もつれそうになる足に力を入れ、剣を振り上げ後退する。
戦士(そうだ、あのサキュバスだ。彼女には催眠能力がある)
サキュバスには、その目に映った人間を誘惑し操る能力があると言われている。
446 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:12:19 ID:OYEikmZXz
ゴクリ
447 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:14:41 ID:OkloR5ef6
とかげTUEEEEEEEE
448 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:19:06 ID:
dAePt9Gxg
魔法使い「な、なにこれ……?」
戦士(しかも、術にかかったのは全員か。これはいよいよ……)
僧侶「ーー」
唐突に視界が鮮明になり、失われていた平衡感覚が戻ってくる。
魔法使い「あ、戻った」
僧侶「来ます、構えて!」
戦士「わかってる!」
すでに剣を構えていた戦士にリザードマンが拳を叩きつける、かと思われた。
だがその拳はフェイク、広げた手のひらを支えにして跳躍する。
リザードマンは戦士の頭上を、いとも簡単に飛び越えた。
戦士(フェイク!? ねらいは癒しの術が使える僧侶ちゃんか!)
リザード「もらったあ!」
僧侶「……!」
449 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:20:04 ID:OYEikmZXz
僧侶ちゃん逃げてぇぇぇ!!!
450 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:29:37 ID:
dAePt9Gxg
「ぐええっ!?」
情けない悲鳴。吹っ飛んだ影が地面を転がる。
僧侶「え?」
リザード「……」
地面に転がったのは僧侶ではない。
僧侶をかばった影が、ゆっくりと立ちあがる。
勇者「い、痛え……」
サキュ「な、なんで? なんで死んでるはずの勇者が!?」
勇者「……」
猫「さすが勇者。登場の仕方から仲間のかばい方まで、すべてがダサいにゃん」
勇者「うるさい」
451 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:33:38 ID:jme33sjB9
勇者!!
452 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:35:02 ID:OYEikmZXz
勇者生きてた━(゚∀゚)━!
453 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:35:04 ID:lZ1eSUC0J
勇者来たーーーー
454 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:35:47 ID:
dAePt9Gxg
僧侶「ゆ、勇者様、お怪我は……?」
勇者「えっと……なんか今ので、いろいろとヤバイです」
僧侶「というか私を庇うことができたなら、叫んで知らせることもできたのでは?」
勇者「……人見知りなんで」
僧侶「バカ」
勇者「……」
僧侶「ありがとうございます」
勇者「あ、はい」
455 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:40:13 ID:
dAePt9Gxg
サキュ「どうして勇者が」
リザード「いいじゃねえか。好都合だ、最高だ。勇者と戦えるんだ」
サキュ「このタコ」
リザード「タコじゃねえ。トカゲだ」
戦士「さて、予定とはちょっとちがうけど」
戦士「勇者パーティーの反撃をはじめるよ、準備はオッケー?」
僧侶「いつでも」
魔法使い「どこでも!」
勇者「あ、はい」
456 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/18(土)00:40:54 ID:
dAePt9Gxg
明日の夜中につづく
勇者が生きてた理由を解説するとこまで行きたい、明日までに
457 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:42:51 ID:OYEikmZXz
楽しみだ
458 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:44:48 ID:jme33sjB9
ほんといいね
459 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/18(土)00:46:27 ID:Fw9SAjEEt
この勇者のダサカッコよさは異常
あと僧侶可愛いぃ!
469 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/21(火)23:08:19 ID:
hT8xA2pj6
戦士(四人そろった今、やることはひとつ。二手にわかれて応戦する)
戦士「魔法使い。例の杖、2、3本貸して」
魔法使い「いいけど、どうするの?」
戦士「もちろん使うんだよ。術の発動だけなら、魔力を流しこむだけでしょ?」
魔法使い「言うほど簡単じゃないからね」
戦士「だから2、3本貸してくれ、なんだよ」
リザード「勇者ああぁっ! オレと戦えぇっ!」
魔法使い「うわっ。来たよ!」
470 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:09:00 ID:
hT8xA2pj6
戦士「勇者、アイツとやるのはボクだ。キミと魔法使いでサキュバスをたのむ」
勇者「……」
戦士「なにか言いたいそうだね。でも、ゆずらないよ」
勇者「……わかった」
戦士「悪いけど、キミの相手はボクだ」
リザード「テメエに興味はねえっ! すっこんでろ!」
戦士「決めたよ。絶対に一発なぐる、絶対にだ」
471 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:10:03 ID:
hT8xA2pj6
◆
魔法使い(リザードマンとサキュバス。ふたり同時に来られたら厄介、なら)
魔術で巨大な氷壁を生成し、こちらとあちらの戦力を断活する。
魔法使い「戦士! 僧侶ちゃん! そっちはまかせるよ!」
戦士「言われなくても!」
魔法使い(気休めにしかならないけど、これで彼女だけに集中できる)
サキュ「なんであなたが生きてるのって感じ。どんな魔法を使ったの?」
勇者「……」
サキュ「話には聞いてたけど、本当にしゃべれないのね」
勇者はサキュバスの攻撃を、なんとか捌いてはいた。
しかし、明らかに普段とは動きがちがう。
動作の一つ一つが鈍く、足もともおぼつかない。
472 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:11:28 ID:
hT8xA2pj6
魔法使い(勇者も私も、また相手の術にかかってる)
足の先から地面に沈みこむような錯覚に、思わず膝をおりそうになる。
魔法使い(って、このままじゃダメ! 勇者を援護しないと!)
勇者がたたらを踏んだ瞬間を、サキュバスは見逃さなかった。
サキュ「隙だらけよ!」
魔法使い「勇者!」
サキュバスをねらって発動した水柱は、あろうことか勇者に直撃した。
勇者「ぬわあっ!? な、なにするんですか!?」
魔法使い「ご、ごめん! ワザとじゃないよ!」
だが結果として、敵の爪から勇者をまもることには成功した。
魔法使い(視界がゆがんでる。へたに術を使うと、むしろ勇者が危ない)
473 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:13:47 ID:
hT8xA2pj6
魔法使い(サキュバスの術から身をまもる手段じたいは、なくはない)
猫「なぜ俺様を見る?」
魔法使い「猫ちゃん。今から私が作戦を伝えるから手伝って」
猫「俺様がお前らに協力するとでも?」
魔法使い「しないならその首を飛ばす」
猫「……」
魔法使い「ごめんね。今はなりふりかまってられないの」
猫「ふん。どっちにしても命を握られてる身。作戦を言えにゃん」
魔法使い「ありがと。それじゃあ作戦を伝えるよ」
魔法使い(首輪に爆発機能があるってウソが、こんなとこで役に立っちゃった)
474 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:15:11 ID:
hT8xA2pj6
猫「……にゃるほど。たしかにそれは、俺様の力が必要だな」
魔法使い「でしょ? だからおねがい」
猫「……しゃあない。やってやる」
魔法使い「本当にありがとうーー勇者、ソイツからはなれて! 猫ちゃん!」
勇者がサキュバスと距離をとったのを確認して、猫が口から水弾をはなつ。
サキュ「なんでアンタがあたしに!?」
猫「生殺与奪の権利を握られてるんでな。安心しろ、許せとは言わんにゃん」
サキュ「そう。じゃあ悪いけどっ!」
水弾が全く見当違いの方向へと飛んでいく。猫が敵の術にかかったのは明らかだった。
猫「くそ、これが淫魔の術かにゃん」
475 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:16:34 ID:
hT8xA2pj6
迫撃してくるサキュバスに向けて猫が水弾を放つ。だが、やはり当たらない。
サキュ「勇者よりも先に、あなたたちから始末してあげる」
魔法使い(待ってたーーこの瞬間を)
ふらつく足に鞭打って敵の眼前へと躍り出る。
術が当たらないなら、どうやっても外れない距離まで接近すればいい。
魔法使いが、手から滑り落とした杖が地面に触れて爆ぜる。
魔法使い(これでサキュバスを拘束できれば……え?)
最初、自分の目に飛びこんできたものが理解できなかった。
それがサキュバスの翼だと気づいたときには、魔法使いは猫共々吹っ飛ばされていた。
476 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/21(火)23:19:18 ID:
hT8xA2pj6
猫「翼で杖ごと吹っ飛ばされたかにゃん……」
サキュ「あーあ。今着てるドレス、けっこう気に入ってたのに。
翼のせいで破けちゃったーーとっ!」
勇者「ちっ……」
背後から振り下ろした勇者の剣は、敵にかわされ空振りに終わった。
サキュ「ざーんねん。あたしが気づいてないとでも?」
すぐに勇者は後退してサキュバスからはなれたが、その動きはあまりにも頼りない。
サキュ「女を後ろからヤろうなんて。勇者のくせに陰湿ぅ」
魔法使い(やっぱり今のままじゃダメ。サキュバスの術をどうにかしないと)
サキュ「ちょっとガッカリ。勇者もその仲間も残念すぎ」
疾風のごとく飛びかかったサキュバスの行く手を、突然現れた氷の突起が阻む。
猫が放った大量の水のおかげで、氷を作ること自体はたやすかった。
魔法使い(このまま畳みかけるっ!)