勇者「コミュ障すぎて満足に村人と話すことすらできない」
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Part10
387 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)00:37:31 ID:
I7Ebqe0Qi
僧侶「この街では『そういうこと』がめずらしくないのでしょう」
僧侶「ほかにも、この街には見世物小屋もあるようです」
魔法使い「なんでもありの街なんだね。はぁ……」
猫「ため息をつくと幸せが逃げるぞ」
魔法使い「苦手なんだ、こういう雰囲気」
僧侶「少々騒々しいかもしれませんね」
魔法使い「うるさいのは問題ないの。ただ……」
猫「ただ?」
魔法使い「無秩序でやりたい放題荒れ放題みたいな感じが、ちょっとね」
388 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)00:51:04 ID:
I7Ebqe0Qi
魔法使い「自分で言うのもなんだけど。私、大事に育てられたから」
魔法使い「なんだか信じられなくて」
魔法使い「こんな街に自分が来ることも。こういう街があることも」
僧侶「初めて見世物小屋を拝見したときは、私も似たようなことを考えました」
魔法使い「行ったことあるの?」
僧侶「ええ。実際にそこでなにが行われているか、この目で確かめたかったんです」
魔法使い「見世物小屋って……その、すごいんだよね?」
僧侶「見世物の種類は様々ですが。代表的なのは奇形児などでしょうか」
魔法使い「ひどい話だよね」
僧侶「……そうでしょうか?」
魔法使い「え?」
389 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)01:09:42 ID:
I7Ebqe0Qi
僧侶「モラルの面から見れば、ひどいことかもしれません」
僧侶「ですが見世物小屋は必要な場所だと思います、私個人は」
魔法使い「必要? どうして?」
僧侶「たとえば、奇形児と呼ばれる人たち」
僧侶「肉体の関係で、彼らには金銭を稼ぐ手段がほぼ存在しません」
僧侶「そんな彼らから見世物小屋を奪ったら?」
魔法使い「それは……お金を稼ぐ手段がなくなっちゃうけど」
魔法使い「でも、女の人が自分のからだを売るのは……」
390 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)01:15:26 ID:
I7Ebqe0Qi
僧侶「それさえも、生きる手段です」
僧侶「私たちが自分たちの魔術を活かして、日々を生きているように」
僧侶「彼女たちは、自分のからだを武器に生きているのです」
魔法使い「……自分のからだを武器に、か」
僧侶「……」
魔法使い「……僧侶ちゃんってさ」
僧侶「はい」
魔法使い「考えた大人だよね。私なんかよりも、ずっと」
僧侶「ほめ言葉として受けとっておきます」
391 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)01:32:06 ID:
I7Ebqe0Qi
魔法使い「じゃあ風俗法が制定されたら、困る人も出てくるってことか」
僧侶「ええ、確実に」
魔法使い「……物事はいろいろな角度から見なきゃ、ダメ。
わかっていて当然なのにね、こんなこと」
僧侶「難しいですよね、世の中って」
魔法使い「うん、とっても」
魔法使い「そういえば、はじめてだよね。二人だけで話すのって」
僧侶「言われてみれば」
魔法使い「よかったかも、あの二人がいなくて」
僧侶「あの二人って、勇者様と戦士様ですか?」
魔法使い「うん。おかげで、こうやって僧侶ちゃんとお話できてるんだもん」
僧侶「……」
392 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/08(水)01:32:35 ID:
I7Ebqe0Qi
今日はここまで
393 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)01:39:09 ID:s1umajy6U
いいぞ〜
394 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)01:41:30 ID:VfS6OszEz
ちょっと風俗行ってくる
395 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/08(水)09:29:46 ID:TUy8LJEud
乙!
>>394
そうだよな!需要がなくなると供給側が困るもんな
じゃんじゃん風俗利用するべし!
406 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/13(月)22:22:44 ID:
7q4roGko6
僧侶「……私と話をしていて楽しいですか?」
魔法使い「どうしたの急に?」
僧侶「正直、私も勇者様ほどではありませんが会話が苦手なので」
魔法使い「僧侶ちゃんもそういうの、気にするんだね」
僧侶「……」
魔法使い「あっ、ごめん。ちょっと失礼だったよね」
僧侶「似たようなことを、ときどき誰かに言われたりします」
猫(言われるだろうにゃあ。俺様からしても意外だにゃん)
407 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:24:08 ID:
7q4roGko6
魔法使い「人間、なにで人を傷つけるかなんてわかんないもんね」
魔法使い「勇者がおしゃべり苦手なのも、そういう理由が関係してるのかも」
僧侶「さらっと余計なことを言いますけどね」
魔法使い「たしかにね。でも、あんまり気にしないほうがいいと思うなあ」
魔法使い「ほら、戦士を思い浮かべてよ」
僧侶「戦士様、ですか?」
魔法使い「あいつはいつも飄々としてるじゃない?」
魔法使い「今日だって急にいなくなったと思ったら、汗だくで帰ってきたりしてるし」
僧侶「あの人はいったいなにをしてるのでしょう?」
魔法使い「ねっ、謎だよね」
408 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:26:35 ID:
7q4roGko6
魔法使い「まあでも、戦士のマイペースさは見習うべきなんじゃないかな?」
僧侶「そうかもしれませんね」
魔法使い「それに、私はよかったと思う。僧侶ちゃんと話せて」
魔法使い「自分が見落としてることに、気づかせてくれたし」
僧侶「えっと……ありがとうございます」
魔法使い「いえいえ、どういたしまして」
魔法使い(僧侶ちゃんのこの顔、ちょっと照れてるのかな?)
魔法使い「さっ、せっかくだしお酒でも飲もうよ」
僧侶「アルコール……」
魔法使い「もしかしてお酒、苦手?」
409 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:28:45 ID:
7q4roGko6
僧侶「苦手というより、ほとんど飲んだことないです」
魔法使い「へえ、なんか意外かも」
僧侶「意外ですか?」
魔法使い「うん。なんとなくお酒に強そうなイメージだったから」
僧侶「いちおう私も神に仕える身で、お酒は控えてるんです」
魔法使い「そっか、戒律があるもんね」
僧侶「とは言っても、守ってる人はそんなにいないんですけどね」
魔法使い「じゃあ飲もう。だいじょうぶ、神様のかわりに私が許す」
僧侶「じゃあ、すこしだけ」
魔法使い(酔ったらどうなるのかな? ていうか酔うのかな?)
410 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:30:53 ID:
7q4roGko6
魔法使い(20分後。とりあえずカクテルからスタートしたんだけど)
魔法使い「大丈夫? 顔がすこし赤くなってきてるよ?」
僧侶「言われてみると、すこし顔があついですね。でも大丈夫ですよ」
魔法使い「……どこまで話したっけ?」
僧侶「お父様とケンカしたところまで、だったと思います」
魔法使い「そうそう、そうだったね」
魔法使い「本当はそのまま学校に残って、そのまま研究職に就く予定だったんだ」
魔法使い「だけど、なんだかそれじゃダメな気がしてさ」
魔法使い「お父さんの反対を押し切ってギルドに入っちゃったんだよね」
411 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:31:51 ID:
7q4roGko6
魔法使い「お父さんは研究員で、普段はほとんど家に帰ってこないんだ」
魔法使い「だから思わず言っちゃったの。『父親ヅラしないで』って」
僧侶「へえ」
魔法使い「……ごめん。この話、退屈じゃない?」
僧侶「いえいえ。私から聞いたことですし」
魔法使い「ならいいんだけど」
魔法使い「それにしても。ヒドイこと言っちゃったよね、お父さんに」
僧侶「気にするでしょうね」
魔法使い「気にするかな? 箱入り娘の私の言葉だよ」
僧侶「実の娘の言葉です。どっちにしてもバレてたわけですし」
魔法使い「父親ヅラしてるっていうのは、私の言いがかりだけどね」
412 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:34:59 ID:
7q4roGko6
僧侶「しかし、普段会っていない魔法使い様でさえ指摘したことです」
僧侶「おそらくお母様も気づかれているでしょうね」
魔法使い「お母さんはお父さん大好きなんだよね。だから、気にしなさそう」
僧侶「どうでしょう。私がまだ見習いだったとき、教会で相談を受けたことがあります」
魔法使い「へえ、教会ってそんな相談も受けるんだ」
僧侶「雑談の延長といった感じでしたけど、本人はとても深刻そうでした」
魔法使い「悩むぐらいだったら、普通に接してあげればいいのに」
僧侶「いちおう人の目を気にしすぎない方がいい、とアドバイスしておきました」
魔法使い「人の目? ……なんかさっきから会話が微妙に噛みあってないような」
僧侶「お父様がかつらをしてるって話でしょう?」
魔法使い「ちがう! 『父親、ヅラしてる』じゃなくて! 『父親ヅラしてる』だから!」
413 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:38:16 ID:
7q4roGko6
僧侶「へえー、そうですか」
魔法使い「なんか会話に違和感あるなと思ったら……相当酔ってるね」
客A「おっ、お姉ちゃん。いい感じにできあがってるね」
客B「せっかくだし俺たちと飲まない? もっとイイ店紹介するからさ」
僧侶「はあ、誰ですかあ?」
魔法使い(うわっ。僧侶ちゃんがこんな状態のときにナンパなんて)
魔法使い「けっこうです。私たち、女だけで粛々と飲んでるので」
客A「お前は誘ってねえよ。つーか、なんでガキがこんな店にいんだよ?」
魔法使い「……あのね。またこのパターンって感じなんだけど私は……」
客B「わかったわかった。じゃあ、おめえも連れてってやるよ」
魔法使い「そうじゃなくて! ていうか勝手に彼女を連れてこうとしないで!」
414 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:41:23 ID:
7q4roGko6
「婦女子に狼藉を働くとはな。男の風上にも置けんクズめ」
客A「あ? 誰だよアンタ?」
魔法使い(騎士……しかも女の人)
女騎士「私か? 私は騎士だが。貴様が覚えるのは私なんかのことではない」
客B「なんだか知らねえが、水差すようなマネをーーえ?」
魔法使い(一瞬だった。その騎士さんは客の腕をつかむと、テーブルに突っ伏させた)
客B「痛えよっ! なにすんだよ!?」
女騎士「貴様のようなヤツには、これが一番効くだろう」
女騎士「……大丈夫か? 怪我は?」
魔法使い「あ、大丈夫です。その……わざわざすみません」
415 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:42:50 ID:
7q4roGko6
女騎士「気にしなくていい」
女騎士「困っている人がいたら助ける、それが騎士として当然の務めだ」
魔法使い(絵に書いたような騎士さんだ)
女騎士「礼のかわりと言ってはなんだが、ひとつ聞きたいことがある」
魔法使い「私で答えられることだったらなんでも」
女騎士「実はーー」
魔法使い「!」
魔法使い(その騎士さんが続きを言おうとしたとき)
魔法使い(遠くから雷鳴にも似た爆音が、はっきりと聞こえた)
417 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:45:43 ID:
7q4roGko6
女騎士「なにかあったようだ。私は様子を見てくる」
女騎士「もしなにかあったとしたら、この街は混乱に陥る。安全な場所へ避難してくれ」
魔法使い「一人じゃ危険かも。私も……」
女騎士「その連れはどうする気だ?」
僧侶「んー?」
魔法使い「あっ……」
女騎士「心配しなくていい。私なら問題ない」
魔法使い(それだけ言うと、騎士さんはすぐに店を飛び出していった)
418 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:51:12 ID:
7q4roGko6
◆
女(まさかここまで容易に事が運ぶなんてね)
女(まっ、あたしはサキュバスだし。この店に誘導することなんて朝飯前)
女=サキュ(拝んでおこうかしら? トイレで野垂れ死んでる勇者の顔を)
戦士『勇者! おい勇者! しっかりしろ!』
サキュ(あの声、勇者と一緒にいた男ね)
サキュ(ついてる。ついでにこの男も始末してーー)
キイイィッ……
サキュ「……あら」
戦士「やあ」
サキュ「お兄さん、こまりますぅ。そんな物騒なもの、しまってください」
419 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)22:54:02 ID:
7q4roGko6
戦士「ボクの剣よりキミのツメのほうが、おっかなそうだけどね」
サキュ「これはネイルチップ。オシャレですよ」
戦士「だったらおかしいな。そのオシャレ爪、なんでこっちに向けるの?」
サキュ「お兄さんがあたしの喉元に剣を突きつけてくるんだもん」
戦士「……ったく、してやられたよ」
戦士「魔物がこんな店で働いてるなんてね」
サキュ「意外なのはこっちも同じ」
サキュ「ずいぶん冷静よね。勇者はとっくに息してないのに」
戦士「なに、彼は勇者だ。一度くたばったぐらいじゃ、死にはしないよ」
サキュ(ハッタリ? どっちにしても勇者は回収するべきね)
420 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)23:14:20 ID:
7q4roGko6
サキュ(隙も油断もない。それでいて、どこかリラックスしている)
サキュ(こういう状況に慣れてるってことね。でも)
戦士「っ!」
サキュ(あたしの能力であなたのからだは、一瞬だけど確実に硬直する)
戦士「しまっ……!」
サキュ「じゃあね、勇者はいただいていくわ」
421 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/13(月)23:21:24 ID:
7q4roGko6
つづく
422 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/13(月)23:23:53 ID:7BAMgwbEt
いいね
432 :
はい◆N80NZAMxZY :2014/10/17(金)23:47:15 ID:
h0og4G7W3
◆
魔法使い(僧侶ちゃんの酔いを強引に魔術で解いて、爆発音がしたとこへ向かった)
僧侶「よかったのですか、猫を行かせて」
魔法使い「あの子しか勇者と戦士は探せないでしょ?」
僧侶「逃げるかもしれませんし何をしでかすか、わかりませんよ?」
魔法使い「あの子の首輪は、いざとなったら爆発させることができる」
魔法使い「猫ちゃんも、そのことは知ってる」
僧侶「……そうですか」
魔法使い(思いっきりウソ。あの子の首輪にそんな機能はついてない)
433 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:48:23 ID:
h0og4G7W3
戦士「おーい! 魔法使い、僧侶ちゃん!」
魔法使い「戦士! よかった、すぐに合流できたんだね」
猫「俺様の鼻が優秀だからにゃん。すぐに居場所はわかった」
魔法使い「お楽しみだったとこ、ジャマして悪かったね」
戦士「どうしたの、魔法使い? 顔が怖いよ?」
魔法使い「べつに。カワイイお姉さんとイチャイチャしてたんでしょ?」
戦士「それどころじゃなくなった」
魔法使い「どういうこと? あと勇者は?」
戦士「敵にさらわれた」
僧侶「……え?」
434 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:50:12 ID:
h0og4G7W3
僧侶「さらわれたって……」
戦士「勇者の死ぬほどマヌケな話はあとで話すよ。それよりも今は」
「グルルルゥ……」
猫「この魔物たち、どこからこんなに湧いてきたにゃん」
魔法使い「しかも見たことない魔物ばかり」
僧侶「さっきの爆発音、この魔物たちの仕業でしょうか」
戦士「さあね。とりあえず、コイツらが街で暴れることだけは避けないと」
魔法使い「全開バリバリでいくよっ! 爆発されたくなかったら、猫ちゃんも協力してね」
猫「しゃあない、今だけだぞ」
435 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:52:10 ID:
h0og4G7W3
◆
側近(雑魚を送ってみたが、なるほど)
戦士「ちょろいっ!」
側近(あの野郎は適度に魔術を使いって牽制しつつ、剣で仕留めるスタイルか)
魔法使い「戦士どいてっ!」
戦士「のわぁっ!?」
側近(あの女は魔術一辺倒の後衛タイプ。接近戦には弱いのは明白)
魔法使い「あの魔物、すばしっこい!」
戦士「ていうか狙うなら、ボクがいないとこにしてよ」
436 :
名無しさん@おーぷん :2014/10/17(金)23:53:26 ID:
h0og4G7W3
僧侶「あの魔物は私がとめます」
魔法使い「あっ、ナイス僧侶ちゃん! とまった!」
側近(ほう。あのシスター、おもしれえな。どんな術を使った?)
側近(あの雑魚、名前は忘れちまったが。動きだけはムダに俊敏なのにな)
魔法使い「この調子でいけば、被害も出さずにすみそうだね。って、魔物が……」
戦士「連中、逃げる気だね。追うよ」
側近(コイツら。そこらの有象無象じゃ敵わないな)
側近(だが、それだけのこと。つーか勇者が見当たらねえ)
側近(サキュにやられたか? まあいい)
側近「すこしは楽しめそうじゃねえか!」
戦士「!」