Part9
115 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/13(金) 00:45:05.48 ID:yhfEPdWr0
ー数分後ー
勇者「こっちだってほとんど使えないっていうのに」
勇者「いきなり呼び出した上に無茶させてくれるわね…」ポォォォォ
魔王「ごめん」
賢者「悪いね…いたいいたい…」
勇者「いや、この子探してくれたから文句は言いませんけど」チラッ
魔術師「…」スースー
賢者「養護施設にいたんだよ」
賢者「誰かに保護されたらしくてね」
賢者「でも、誰にも懐きやしなかったらしいよ」
勇者「その子はかなりの人見知りなんです」
勇者「仲間になるまでうちらも賢者さんのように襲われましたよ」
賢者「そんなのでよく仲間になったもんだわ」
勇者「僧侶のおかげです」
勇者「唯一、噛みつこうとしなかった相手なんだ」
魔王「本能でどういう人間か分かったんだろうね」
勇者「多分ね」
勇者「あの子は虫一匹殺すことのないような優しい子だったから」
116 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/13(金) 01:01:13.77 ID:yhfEPdWr0
賢者「じゃあこの子はゆうちゃんにまかせるかね」
賢者「ありがと、もういいよ」
勇者「ついでに言うともうほとんど魔力残ってなかったんですけどね…」ポヒュッ
賢者「ただでさえない魔力使わせて悪かったね」
勇者「いえ、こちらこそ魔術師を探してきてくれてありがとうございました」
賢者「でもこれから大変そうだわ」
魔王「その子?」
賢者「うん、普通の人間噛みつかないかと思ってね」
魔王「今までは大丈夫だったのかな…」
賢者「施設の人に聞いたけど一応大人しくはしてたみたい」
賢者「私にはすぐ襲い掛かってきたけど」
勇者「魔力感知されたのかも…」
賢者「きっとそれだろうね」
賢者「異世界に膨大な魔力持った人がいるんだ」
賢者「普通は恐れるだろう」
勇者「あとはうちにまかせておいてください」
勇者「とりあえず帰りますね」ググッ
魔王「手伝わなくて大丈夫?」
勇者「すぐそこだからいいわよ、じゃ」
バタン
賢者「さてさてどうなるやら」
魔王「うわ、他人事だ…」
117 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/13(金) 01:17:10.87 ID:yhfEPdWr0
ー翌日 勇者の部屋ー
勇者「ふんふ〜ん♪」グツグツ
魔術師「ん…」
勇者「ん?起きた?」
魔術師「!?」ガバッ
勇者「よく眠ってたね」
勇者「服、ボロボロだったからうちの着せてるけど我慢してよ」
魔術師「…」コクリ
勇者「人様に『また』迷惑かけてたんだって?」
魔術師「…」ショボン
勇者「人が怖いのは分かるけどねぇ…」
勇者「優しくしようとしてくれてる人傷つけたのは許せないわ」
勇者「あの人はうちにこの世界を教えてくれた、いわば恩人なの」
勇者「確かに魔力はあるけど、悪い人じゃないんだ」
勇者「その人を傷つけたあんたは嫌いだ」
魔術師「!!」ビクッ
魔術師「…」ジワ…
勇者「あとでその人の部屋行くからついてきて」
魔術師「…」ポロポロ
勇者「いや、泣けばいいってものじゃないんだけど」
魔術師「…」ブワッ
テコテコ ギュー
魔術師「…」ポロポロ
勇者「やっぱりあんたまだ子供ね…」ポン
勇者「最初会った時あんなにギラギラしてたのに」
勇者「今ではうちにまで甘えるようになってまぁ…」
118 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/13(金) 01:36:52.31 ID:yhfEPdWr0
魔術師「…」ブンブン
勇者「離して」
魔術師「…」ブンブン
勇者「離して」
魔術師「…」スッ グスグス
勇者「こんな時はどうするか分かる?」
魔術師「…」グスグス
魔術師「…ごめんなさいする」
勇者「誰に?」
魔術師「…ひどい事した人に」
勇者「よし、よく言えたね」ナデナデ
勇者「そんな魔術師は嫌いじゃないよ」ナデナデ
魔術師「…」ギュ
勇者「施設では誰にも手を出さなかったみたいね」
魔術師「…魔力なかった」
勇者「この世界は誰もないのよ」
魔術師「…」ジー
勇者「あぁ、あの人は別の世界から来たみたいだからあったの」
勇者「それじゃこの話はいったん終わり」
勇者「とりあえずご飯食べよう」
魔術師「…」コクリ
119 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/13(金) 06:36:18.38 ID:LPNdQzjMo
かわいい
120 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/13(金) 23:29:40.70 ID:yhfEPdWr0
ー賢者の部屋ー
賢者「で、謝りに来たわけかい」
勇者「はい…ほら」ポン
魔術師「…」ジー
賢者「すっごく反抗的な目をされてて泣きそう」ショボーン
勇者「すみません…」
賢者「昨日は驚かせちゃって悪かったね」
賢者「このとーりだっ」ベタ
勇者「ちょ、なんであなたが…」
魔術師「…」ポカーン
賢者「ショック与えて気絶させちゃったわけだしさ」
賢者「こっちだって悪い事したと思ったわけよっ」
賢者「まぁこんな危ない人を拒絶するのは当然かもしれないね」
魔術師「…」オドオド ギュ
賢者「あら、ピト虫された」
魔術師「…全然痛くなかったの」
賢者「そりゃ人を傷つけるのはお姉さん好きじゃないしねぇ」
賢者「持ってる頭脳と知識は大切な人守るために使ってんだからさ」
賢者「あんたもせっかくの知識をそういうところで使いなさいな」ポン
魔術師「…痛くしてごめんなさい」
賢者「はっは、もういいさ」ナデナデ
勇者「こんなにすぐ懐くのは初めてかもなぁ…」
賢者「え、これもう懐いてるの?」
勇者「懐かないと抱きついてこないですから」
賢者「おっほ、ちびっこおさわり放題ktkr」スリスリスリ
魔術師「…♪」
勇者「あれ、そういえば魔王は?」
賢者「あぁ、あの子なら…」
121 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/13(金) 23:53:29.51 ID:yhfEPdWr0
ー近所の公園ー
魔王「ぼー」
幼女「わーい」ポテポテ
魔王「元気だなぁ…」
魔王「今頃お部屋に勇者たち来てるんだろうな…」
魔王(わたしは魔王だから彼女には嫌われるだろうから)
魔王(いない方がいいと思ってこの子と遊ぶついでに出てきたわけだが…)
幼女「まおまお!!」
魔王「いつの間にわたし、そんなあだ名つけられたの…?」
幼女「これまわしてー」
魔王「はいはい」クルクル
幼女「きゃっきゃっ」
魔王(そう…わたしは魔王だったのだ…)
魔王(ここにいるとつい忘れそうになる)
魔王(元の世界へ戻ると、わたしはまた人間と争わないといけない)
魔王(何も楽しみなどなかった)
魔王(魔族の繁栄のためにしか動いてなかったからだ)
魔王(わたし個人の事など考えた事もなかった)
魔王(この世界はわたしを明るく照らしてくれたのだ)
魔王(自分が自分でいられる世界に…)グッ
幼女「ま〜お〜と〜め〜て〜」
魔王「あ」ガシッ
魔王「ごめ…んっ!?」グイッ
魔王「うあっ」ズシャァァァァ
ドガッ!!
魔王「うっ!?」
幼女「まおまお?」
魔王「ご、ごめん…ぼーっとしてた…よ」フラフラ
幼女「だいじょうぶ?」ポテポテ
魔王「うん、転んだだけ…だから…」
魔王「あーー」ドサッ
幼女「まおまお?まおまおー?」ユサユサ
幼女「ふぇ…」
魔王「──」ドクドク
122 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/14(土) 00:12:49.72 ID:oC3rjsDZ0
ー賢者の部屋ー
賢者「おっと随分と時間経ってたね」
勇者「結構話してたんですね」
賢者「気にしてなかったよ」
魔術師「…」グリグリ
賢者「懐かれたのはいいけどくっつきっぱかい…」
勇者「誰かにべったりするのが好きみたいですよ」
魔術師「…♪」
賢者「それにしてもあの子遅いね」
賢者「無駄に気を使ってるのかもしれないな」
勇者「この子いるからですか?」
賢者「おそらくそうでしょ、今はあんな子でも…ね」
魔術師「…?」
コンコンコンコン
賢者「おや、誰か来たようだ」
勇者「死亡フラグですか?」
賢者「なんだって?」
勇者「な、なんでもないです…」
賢者「誰ー?いるから入っておいでよ」
ガチャ
幼女「けんじゃ〜」ポテポテ
賢者「おや、幼女じゃないかい」
幼女「きてきてっ」ポテポテ グイグイ
魔術師「…む」ググッ
賢者「取られるわけじゃないっちゅーのっ」ナデナデ
123 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/14(土) 01:05:23.58 ID:oC3rjsDZ0
賢者「どうしたんだい?まおたんと一緒にいたんじゃないのかい」
幼女「まおまお、うごかなくなったの」
賢者「え?」
幼女「くるくるからぽーんってなってごちんって」
賢者「ちょ…どういうこと…」
勇者「もうちょっと教えてくれないかな?」
勇者「魔王は今どこにいるの?」
幼女「こうえんでうごかなくなってるの」
賢者「嫌な予感するわ…」
賢者「まーちん、ごめん」グイッ スクッ
魔術師「…?」
賢者「直接見て確認してくる」ガチャ
賢者「幼女はここにいてそこのお姉ちゃん達と遊んでて」
幼女「うんっ」
バタン
勇者「気になるわね…」
魔術師「…」ショボン
幼女「げんきない?」ポンポン
魔術師「!?」ビクッ
勇者「魔術師、あなたより小さい子だよ」
勇者「面倒見てあげるんだよ」
魔術師「…」コクリ
魔術師「…」プニプニ
幼女「くすぐったいっ」キャッキャ
魔術師「…かわいい」ポワーン
勇者「慣れるの早いな、おい」
勇者(自分より下の子には無条件なのかな)
勇者「魔王、何があったんだろう…」
124 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/14(土) 21:28:05.64 ID:oC3rjsDZ0
ー公園ー
賢者「くるくるって言ってたっけ…」
賢者(何か回す遊具か…)
賢者(ここにひとつあったな)タタッ
賢者「ま…」
魔王「──」ドクドクドク
賢者「まおたんっ!?」ダッ
グッ
賢者「『ごちん』って頭打った音だったのか…」
賢者「まずいね、出血がひどい」
賢者「回復魔法系列はほとんど持ってきてないんだよね…」
賢者「持続回復魔法」ポォッ
魔王「──」ドクドク…
賢者「あまり意味がないか…」
賢者「ここじゃ人目がつきすぎる…連れて帰るか…」グイッ
賢者「ぼんやりしてたのかね」トコトコ
賢者「こんな所で大怪我するなんてさ…」
125 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/14(土) 21:50:34.47 ID:oC3rjsDZ0
ー1時間後ー
賢者「…」ポォォォォォ
勇者「賢者さん…少し休んでは…」
賢者「かまわない…」ポォォォォォ
勇者「でもさすがにそこまで酷使したら…」
賢者「こんな良い子死なせるわけにはいかない…」
賢者「魔力が尽きても体力使えばいい…」
勇者「そんな事したらあなたが!?」
賢者「命削ってでも生かせてあげたい子はどこにでもいるもんさ…」
賢者「この子もその1人…」
賢者「早く起きな…待ってる人がいるんだ…」ポォォォォォォ
勇者「賢者さん…」
賢者「っ!!ごほっ!!ごほっ!!」
勇者「…もうやめてください」スッ
賢者「止めないでよ…」グイッ
勇者「殴り飛ばしてでも止めます」
賢者「バイオレンスだねぇ…」
勇者「その魔法、特殊なヤツですよね?」
賢者「よく気づいたね…」
勇者「すごい勢いで魔力が消費されてましたから」
賢者「あーあ、止めちゃったよ…」
勇者「…」
126 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/14(土) 22:11:48.83 ID:oC3rjsDZ0
賢者「まおたん…起きな…」ポォォォォォ
勇者「やめてくださいよ…」グッ
賢者「お姉さん待ってるからさぁ…」ポタ…ポタ…
勇者「賢者さん…」
魔術師「…魔力必要なの?」
賢者「あぁ必要さ…いくらでも…」ポタ…
魔術師「…じゃあ渡す」シュゥゥゥゥゥ
勇者「ま、魔術師!?」
賢者「あんただって無限にあるわけじゃないんだから無理しなさんな…」ポタポタ…
魔術師「…」シュゥゥゥゥゥ
魔術師「…泣いてるの見たくない」
賢者「良い子だねあんたも…」ポタポタ…
魔王「ん…」
勇者「あっ!!」
賢者「まお…たん…?」グシグシ
魔王「あれ…ここ…どこ?」
賢者「あんたと私の愛の巣」ニッ
魔王「またバカな事言って…」ニコ
賢者「よかった」ギュ
魔王「わ…」
勇者「自分の身に起こった状況分かってる?」
魔王「遊具に引っ張られて、何か固いものに頭ぶつけたと思うんだけど…」
勇者「そこまで理解できてるなら大丈夫そうね」
魔王「でもすごくぼーっとするよ…」
賢者「血が足りないんだよ、寝てな」グイッ
魔王「うん…」ボフ