Part14
180 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 23:55:03.34 ID:m8POKG6c0
『かまわないよ』
『もう少し時間あるから私が見てきたあの子達の現状だけ伝えるよ』
『騎士は相変わらず変態だった』
『でもすごく生き生きとしていた』
僧侶「あの人はあれでいいのですよ」
僧侶「過去に、決められた事だけこなす歯車のような生き方をしていたそうです」
僧侶「自由がほしかったと聞きました」
僧侶「人生を楽しんでいるのならそれでいいと思います」
『魔術師はとにかく無口だった』
『ただ、最終的には色んな子に懐いてたよ』
『あと、将来すごく賢い子になるね』
僧侶「あの子は一番気にしてました」
僧侶「私だけに特に懐いてた子でしたし」
僧侶「でもそれ聞いて安心しました」
僧侶「もう私がいなくても大丈夫でしょう」
『あとは勇者か』
『勇気ある者として頑張ったよあの子は』
『みんなの心配したりさ』
『あんたがいない代わりに特にね』
僧侶「私にこっちに残るよう言ったのも勇者様でした」
僧侶「大切な人のために生きろって強く言ってくれました」
僧侶「こんな私をずっと旅に連れていってくれた勇者様には」
僧侶「今でもすごく感謝しています…」
181 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 00:17:54.44 ID:04tF5Gx40
『で、あんたの事だけどその大切な人とはどうなった?』
僧侶「え、えっと…今度結婚します」
『ほー、おめでとう』
僧侶「ありがとうございます」
『ザッちゃー時間ザザッ来たようだね』
『最後ザザッ伝言ザッ聞いてるよザザッ』
僧侶「はい、聞こえています…どうぞ」
『ザザーッ『幸せになって』ってザザーーーッ』
僧侶「確かに受け取りました、ありがとう見知らぬお姉さま」ギュッ
『ザーーーーーーーッ』
プツンッ
僧侶「みなさん…大切な仲間がいたのを決して忘れません…」
僧侶「私は幸せになりますね」ニコ
ーーーー
彼女は後に勇者とその仲間達の一人で
彼女達の存在していた証として生きていくことになる。
人々が忘れないよう、その話を世界中に伝えていく事になる。
教会で働きながら大切な人と子供達に囲まれて
その命が尽きる最後の日まで幸せに過ごしたという。
182 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 21:37:32.30 ID:04tF5Gx40
ーエピローグ 勇気ある者と愉快な仲間達ー
勇者「はぁ…またですか?」
教師「すまない、お前しかケンカを止められないんだ」
勇者「うちは便利屋じゃないんですが…」
教師「頼むっ」
勇者「しょうがないですね…どこですか?」
教師「中庭だ」
勇者「行ってきます」トコトコ
生徒「また勇者ちゃんケンカの仲裁かぁ?」
生徒「女の子にそんなの頼むなんてどうかしてるわ」
生徒「元番長だから仕方ないんじゃねぇ?」
生徒「かわいそうじゃないか、もうそれ言わないでやれよ」
勇者「いい加減にしないかあんたらっ!!」
バキッ!!グキョ!!ドギャ!!
………
勇友「勇ちゃん帰ろ〜」
勇者「うん」
勇友「今日はどこ寄って帰る?」
勇者「どこでもかまわないよ」
勇友「だったら勇ちゃんをもっと可愛くするもの買いに行こう」
勇者「え、マジですかまたですか」
勇友「誰もが振り返るような人気者にしてあげるよっ」
勇者「目立つの嫌いなのにぃ…」
183 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 21:52:07.96 ID:04tF5Gx40
ガチャ
勇者「ただいま」
魔術師「…おかえり」カリカリ
勇者「相変わらず勉強熱心だね」
魔術師「…知識で大切な人助けるの」
勇者「へぇ」
勇者(この子はあれから結構変わってきたかもしれない)
勇者(あまり甘えなくなった)
勇者(そして、暇あれば勉強するようになった)
勇者(あまり甘えてこないとちょっと寂しいけどね…)
魔術師「…すぐバイト行くの?」
勇者「うん、そうじゃないと生活きつくなるしね」
魔術師「…」ジー
勇者「気にしなくていいよ」
勇者「あんただってイヤでもその内働く事になるしね」ナデナデ
魔術師「…」コクリ
勇者「じゃあ行ってくる」
勇者「ご飯は何か作って食べてね」
魔術師「…うん、いってらっしゃい」フリフリ
184 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 22:18:59.98 ID:04tF5Gx40
勇者「いつ通ってもここは好きになれないわぁ」
勇者「さっさと通り抜けよう…」テクテク
騎士「お、寄って行かないかお姉ちゃん?」
勇者「…」テクテク
騎士「今ならいい男がスタンバッてるぜぇ」ウロウロ
勇者「相手見てあえて話しかけてるんじゃないわよ?!」
騎士「いひっ、バレたか」
勇者「うちはバイト行かないといけないんだ」
勇者「遊んでる暇はない」
騎士「こっちの世界で働いたらトップまでいけそうなのになぁ」ジロジロ
勇者「人の体見ながら言うんじゃないわよっ!!」ゲシッ
騎士「おふっ…やっぱ刺激がたりねぇな…」
勇者(騎士は相変わらず怪しいお店で働いているようだ)
勇者(ただ時々何か不満そうにため息をついている)
騎士「俺さ、近い内ここ離れるわ」
勇者「そうなの?」
騎士「芸人でも目指そうかなと」
勇者「…ある意味ピッタリかもね」
騎士「相方ならいつでも歓迎だぜ?」
勇者「1日もたないだろうから遠慮するわ」
騎士「1日以下とかひどすぎるっ!?」
勇者「まぁ…時々は遊びに来なさいよね?」
騎士「おう、あの子達にもよろしくな」
勇者「すぐ出て行くの?」
騎士「寂しい?」
勇者「やかましい!!バイトに遅れるからもう行く!!」
騎士「はいはい…お前も頑張れよ」ニヤッ
勇者「あんたもね」ニコ
185 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 22:41:23.24 ID:04tF5Gx40
勇者「結局うちらも帰らなかったんだよね…」
勇者(魔王は帰るのならうちらだけでも帰せると言っていた)
勇者(だが、うちは断った)
勇者(もうあちらにうち…勇者は必要ないからだ)
勇者(それにうちらが帰ったら魔王は…)
勇者(またひとりぼっちになるかもしれない)
勇者(だから…)
勇者「いつの間にかあの子もうちの大切な人になってたんだな」
勇者「まぁここも悪くないしね」
勇者「さーて、バイト頑張るぞーっ!!」
ーーーー
勇者としての仕事も必要なくなり、
彼女は自分のために生きている。
不満は一切ないらしく、いつも元気に動き回っているようだ。
のちにある人と明るい未来を歩み始めるのだが、
それはまた別の物語。
186 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 23:06:02.19 ID:04tF5Gx40
ーエピローグ 去っていったあの人ー
賢者「あー…通信終わっちゃったか」プツンッ
賢者「物を媒体に使ったのは失敗だったかな」
賢者「あっちの無線ってヤツを参考に作ってみたんだけど」
賢者「ふーむ、改良の余地はありそうだ…」
賢者「まぁいっか、伝える事伝えたし」
賢者「それにしても久しぶりの我が家はいいねぇ」ググー
妹1「こらっ」ポコッ
賢者「あだっ、何するんだよ〜?」
妹1「今までどこ行ってたのっ!!」
賢者「あーごめんねぇ…心配してくれた?」
妹1「当たり前でしょ!!ばかっ!!」
賢者「数ヶ月に一回しか戻らなかったのは悪かったよ」ポン
妹1「もぉ…」
賢者「…」ナデナデ
妹1「賢者?」
賢者「なに?」ツー
妹1「泣いてる」
賢者「あ、あー」グシグシ
賢者「つい思い出しちゃったよ」
妹1「何を?」
賢者「あんたらと同じような悲しい子の事さ」
妹1「そっか」
187 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 23:27:22.08 ID:04tF5Gx40
妹2「あーけんじゃかえってきてるー」ポテポテ
賢者「相変わらずもふってるかーい」ギュッ
妹1「あたしがずっともふってたから保障できる」
賢者「ぐっじょぶ!!」グッ
妹1「へへっ」グッ
妹2「?」
賢者「2人とも今暇かい?」
妹1「こんな所でお話してるぐらいだしね」
妹2「ひまだぞ!!」
賢者「じゃあ良い子な妹たちに少しお話してあげよう」
賢者「数日前までずっと見てきた夢のような話さ」
妹1「もしかしてさっき言ってた悲しい子の?」
賢者「うん」
賢者「あんたらとまではいかないけど大好きな子だった」
賢者「その子はね…」
ーーーー
不思議な事に彼女の文献はこちらにほぼ残されていなかった。
ただ分かるのは頭脳と知識を大切な人のために使い、
優しくて、綺麗で、かわいい女の子が好きで、
妹が2人いるらしくて、誰でも仲良くなれる。
そんな可愛らしさを残した女性だった。
188 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/21(土) 23:47:35.18 ID:04tF5Gx40
ーラストエピローグ 異世界の迷子ー
魔王「おはよう」
生徒「おはよー魔王ちゃん」
生徒「魔王たんおっすおっす」
女「おっはよー」
魔王「今日の最初の授業て何だっけ?」
女「現国〜」
魔王「あぁよかった、間違ってない」
女「そう言いつつもしっかりしてるよねぇ」
魔王「そうかな?」
女「魔王だったのにもう分からないぐらい溶け込んでるし」
魔王「こんな所でそれ言わないで…」
魔王(わたしは結局、自分の世界に帰らなかった)
魔王(異世界で生きる方を選んだ)
魔王(でも後悔はしていない)
魔王(これが私の選んだ事だから)
女「あれ、そのリングって…」
魔王「賢者にもらったやつだよ」
魔王(正確にはプレゼント交換で当たったやつだったけど)
魔王(偶然わたしたちはお互いのも引き当てていたのだ)
女「元の世界に帰っちゃったんだってね」
魔王「うん」
女「寂しいなぁ…面白い人だったし」
魔王「仕方ないよ、出会いがあれば別れもあるんだ」
女「おぉ、なんだかかっこいい台詞」
魔王(わたしの言った言葉じゃないけどね)
魔王「いつになるかは分からないけど」
魔王「またひょっこり姿見せに来てくれるよ」
女「信じているんだね?」
魔王「うん」
189 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/22(日) 00:12:54.05 ID:qVSpI1Ak0
魔王「いらっしゃいませ」パタパタ
店長「いつもの事だがよく働くな」
店長「でも代わりに彼女はいなくなってしまったけれど」
魔王(わたしはあのあとメモにいくつか残ってたものの中で)
魔王(ここのバイトの事も書かれてあったのを見つけ)
魔王(そのままあとを継ぐことにした)
バイト「うぅ…賢者ちゃん…どこ行ったの…」
魔王「…まだいたんだこの人」
店長「一応、そいつ最近正社員になったんだよ」
魔王「そうなんですか」
店長「でも代わりとしてやってくれるのはかまわないんだが…」
魔王「何か…問題でも?」
店長「いや、それだよ」
魔王「あー」
正社員(バイト)「魔王ちゃんはどこにもいかないでほしいな」ギュッ
魔王「とりあえず引き剥がしてもらえるのなら…」
店長「おい」
正社員「うひ」
店長「もうバイトじゃないんだぞ、冗談抜きでクビにするぞ」
正社員「か、勘弁してください…」ペコペコ
魔王「この人も相変わらずだなぁ…」
魔王(またストーカーされないかだけ心配だ…)
190 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/22(日) 00:34:20.79 ID:qVSpI1Ak0
魔王「月が綺麗だなぁ」
魔王「わたしにここで何か残せないかな…」
魔王「賢者みたいに誰もが忘れないような何かを…」
魔王「…」
魔王「生きた証、残したいなぁ…」
魔王「魔王としてじゃなくてここで生きた1人の人間として…」
勇者「独り言増えたんじゃない、あんた」
魔王「あ、勇者」
勇者「こんな所にいたのね」スッ
魔王「寒くない?」
勇者「寒いよ」
魔王「じゃあ何でわざわざここに座ったの?」
勇者「ならあんたにもそれは言いたい」
魔王「あぅ…」
勇者「さっき生きた証がどうとか言ってたけど」
勇者「また悩み抱えてるの?」
魔王「今度は個人的な事だからそこまで深刻な話じゃないよ」
勇者「まぁ大体分かるけどね」
魔王「あ、これ一緒に使お」ファサ
勇者「わざわざ毛布まで準備してたのか」
魔王「えへへ」グッ
勇者「暖かいからいいけどね」ゴソ
191 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/22(日) 00:57:07.99 ID:qVSpI1Ak0
魔王「何かここで残せるものないかなって思って」
勇者「ふぅん」
勇者「だったらひとつあるわよ」
魔王「え?」
勇者「向こうでもあったじゃない」
勇者「物語よ」
魔王「あ…」
勇者「こっちでは小説とか呼ばれてるけど」
勇者「でも実際あった事は小説じゃ無理かな」
魔王「でも、本当の話って言っても信じてくれないからいいんじゃないかな」
勇者「んーそうだね」
魔王「わたしに書けるかな?」
勇者「あんたはそういうの結構できると思うよ」
勇者「やってみれば?」
魔王「そうだね…やってみようかな」
魔王「ありがとう、勇者」
勇者「知らない間にあんたとは親友ってやつになってたね」
魔王「お互い争っていたのに不思議なものだね」
勇者「多分向こうじゃ平和が戻ったとか騒いでるんだろうねぇ」
勇者「勇者とその仲間が犠牲になったが世界は救われたって」
魔王「きっとそうだろうね」
勇者「まぁうちは目立つよりは適当な伝説で残されるほうがいいわ」
魔王「やっぱり勇者は勇者だね」ニコ
勇者「なにそれ」ニッ
魔王「わたしは最後まで悪者だったんだろうな」
勇者「そりゃ仕方ないでしょ」
勇者「誰もこんな可愛くて大人しい子だって分からないし」
魔王「褒めてくれるんだね?」
勇者「本当の事言っただけよ…」プイッ
魔王「これからもよろしくね」ニコッ
勇者「やっぱりあんたには敵わないね」ニッ