Part13
166 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/19(木) 22:51:05.19 ID:A1MXyrpj0
魔王「もしかして…今から帰るの?」
賢者「うん」
賢者「みんなには起きたらすでに帰ってるって言ってある」
魔王「…わたしには?」
賢者「…ごめん」
賢者「あんただけは何も言わず去ろうとしてた」
魔王「なんでっ!?」
賢者「あんたの顔見たら帰れないかもしれなくてね」
賢者「好きになりすぎちゃって…困ったヤツでしょ?」
魔王「賢者…」
賢者「手、貸して」
魔王「…」スッ
賢者「魔力増加魔法」ポォウ
魔王「これ…」コォォォ
賢者「確かに魔力は渡したよ」
賢者「片道分ぐらいの空間転転移魔法はできるはずだよ」
賢者「あとはあんたが決めなさい」
賢者「好きな未来を選ぶんだよ」
賢者「お姉さん、これぐらいしかできないんだぁ」ポロ
賢者「もっと私がすごいヤツならよかったのに…」ポロポロ
賢者「ごめんね…」ポロポロポロ
167 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/19(木) 23:13:41.34 ID:A1MXyrpj0
魔王「ううん、今までありがとう」
魔王「何も知らないところに飛ばされたわたしを悪い者達から助けてくれて」
魔王「住む所を与えてくれて、知らない事を教えてくれて」
魔王「ここでの…生き方を教えてくれて…」ポロポロ
魔王「本当にありがとうっ」ギュッ
賢者「ホント、魔王かあんた…優しすぎるだろう…」
賢者「まおたん…いや、魔王」ブゥン
賢者「私だってあんたに教わったものはあるよ」
賢者「それを自分の世界に持っていく」
賢者「あんたもさ、どっちの世界選ぶとしても」
賢者「いろんな人から教えられた事は持っていくんだよ」
魔王「うん…」
賢者「おいで」バッ
トコトコ
ギュッ
賢者「あんたはうちの妹達と同じにおいがする」
魔王「妹いたんだ…」
賢者「どちらも血は繋がってないけど私にとって大切な家族なんだ」
賢者「あの子達に教えてもいいかい?」
賢者「優しすぎる魔王に会ったって話を…」
魔王「うん、いいよ」
魔王「わたしも誰かに話せるなら話すよ」
魔王「わたしにはとってもすごいお姉さんがいたって」
賢者「はは、ありがとね」
168 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/19(木) 23:25:42.85 ID:A1MXyrpj0
賢者「じゃあ帰るかな」グイ
魔王「わたし、お別れの言葉言わない」
賢者「…」
魔王「またね、賢者」ニッコリ
賢者「あぁ…またね、まおたん」ニッ
シュンッ!!
魔王「変な別れ方だなぁ…」
魔王「変態だから仕方ないかな」
魔王「ね?」ツー
169 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/19(木) 23:52:19.39 ID:A1MXyrpj0
ー翌日ー
勇者「ん…」
魔王「おはよう」ニコ
勇者「おはよ…帰っちゃったんだね」
魔王「うん、おみやげとぬくもり持って帰っていったよ」
勇者「何それ」
勇者「会うつもりないって言っておきながら」
勇者「結局できなかったんだ、あの人…」
魔王「勇者にとって賢者はどういう人だった?」
勇者「良い人で変態な姉貴って感じだったかな」
勇者「実の姉なら縁切ってるところだけど」ニッ
魔王「そうだね」ニコ
勇者「ところで…あんた寝てないでしょ?」
魔王「寝たよ」
勇者「ふーん」ポチポチポチ
勇者「もしもし、今日は1ーBの魔王さんお休みしますので…」
魔王「え?ちょ…」
勇者「はい、よろしくお願いします」ピッ
勇者「学校、臨時休校でお休みになったから」
魔王「思いっきりお休みするって言ってるじゃない…」
魔王「ごめんね」
勇者「いいから寝てなさい」
勇者「どうせ今日は終業式ってやつしかないんだから休んでも問題ないでしょ」
170 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2013/12/20(金) 00:08:28.24 ID:XzbbsCu8o
けんじゃああああああああああいやああああああああ
171 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 00:12:43.51 ID:m8POKG6c0
勇者「コラ、起きろ」ゲシゲシ
騎士「おふっ、あぁおはようハニー…」
勇者「誰がハニーだ、部屋出るよ」
騎士「もうちょっと魔王ちゃんたちのにおいを堪能したいぃ」ゴロゴロ
勇者「いい加減にしろっ!!」
グチャ!!
騎士「おぴyrじゃいfふfかsf」ゴロゴロゴロー
勇者「魔術師も起きなさい」ユサユサ
魔術師「…んー」ムクリ ピト
魔王(足に引っ付いてるのはちょっと可愛い)
勇者「部屋占拠して悪かったね、邪魔者は連れてくよ」ズルズル
魔王「ううん、昨日は楽しかったから」
勇者「あとでまた来るわ」
勇者「結論を話しに…ね」
魔王「分かった…」
バタン
魔王「一気に静かになっちゃった…」
魔王「あれ、テーブルにメモがある」
172 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 00:22:14.99 ID:m8POKG6c0
____________________________________
お金とか物とか全部好きに使っていいよ。
私には当分使えそうにないものだから。
ただし、ちゃんと考えてから使うこと。
生きるために必要なものは把握しておくんだよ。
まおたんぺろぺろ 賢者
____________________________________
173 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 00:41:16.58 ID:m8POKG6c0
魔王「最後の何…」ニコ
魔王「こんなところまで気を配ってくれてるなんてさすが賢者だね」
魔王「あれ、これなんだろう…」ペラ
魔王「賢者と女の子二人が楽しそうにしてる」
魔王「写真ってやつだよねこれ」
魔王「わざわざ撮りに行ったのかな」
魔王「もしかして賢者の言ってた妹さんたちかな」ペラッ
『親愛なる妹達 どんなに離れていても大切な家族だよ』
魔王「こんなの書いてるぐらいだから本当に大切な人達なんだろうな」
魔王「会えなかったから寂しかったのかな…」
魔王「寂しがり屋だったのかなぁ…」ドサッ
魔王「だいじょう…ぶ…だよ…」
魔王「心配しないで…わたしは…」
魔王「すぅすぅ」
174 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 21:42:24.05 ID:m8POKG6c0
ー数時間後ー
ガチャ
勇者「魔王、いる?」
魔王「いるよー」ゴソゴソ
勇者「何やってるの?」
魔王「ちょっとね…」ゴソゴソ
魔王「何かあった」ズルズル
パカッ
勇者「何かの研究書?」
魔王「賢者の書いてたものだと思う」
魔王「何か残してないかなって思って」ペラペラ
勇者「あの人の事だから大切な物は残してないでしょ」ペラペラ
魔王「でも写真残してたよ」
勇者「写真ってその瞬間を実際の見た形で残せるやつでしょ?」
勇者「それがどうしたの?」
魔王「これだよ」スッ
勇者「可愛い子達だね」
魔王「多分妹さんたちだろうね」
勇者「うん、明らかにこっちの世界の背景じゃないし…うちらのところとそっくりだなぁ」
勇者「でもこれはわざと忘れていったんでしょ」
魔王「そうだと思うよ」
魔王(本人達が近くにいるんだから必要なかったんだろう)
魔王(それに、わたしに見せようとしてくれたのかもしれない)
魔王(だからわざわざカメラっていうのをあっちにまで持っていったのかも)
175 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 22:02:03.29 ID:m8POKG6c0
魔王「なるべくこっちの物持って行きたくなかったみたいだし」
勇者「ふぅん」ペラペラ
勇者「…ちょっとこれ見て」
魔王「パラレルワールド?平行世界?」
勇者「結構最近書いたものだと思うけど」
勇者「あの人いろいろな可能性の事まで調べてたのね」
魔王「これはどう言う事が書かれてるの?」
勇者「例えばうちらの世界から見たら」
勇者「ここの世界がもうひとつの自分達の世界なんだって事」
魔王「ここがもうひとつの…」
勇者「あくまで可能性でしかないって書いてるけど」
勇者「この説だとあの人の世界は元はうちらのところと同じだったって言える」
勇者「もちろん今いるここもね」
魔王「そんな事まで調べてたんだ…」
勇者「この説自体はこっちの知識みたい」
魔王「賢者ってホントにすごい知識量得ていたんだね…」
勇者「書いたのが最近みたいだから…」
勇者「うちらが来た事によって別の世界の存在が気になったんだろうね」
魔王「すごいけどやっぱり何も残してなかったなぁ」バサバサ
勇者「まぁそうでしょ」
勇者「向こうの魔法みたいなものじゃない?」
勇者「異世界に関することは残らなかったんじゃないかな」
勇者「例外はあると思うけどね」
魔王「そっか」
176 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 22:23:47.79 ID:m8POKG6c0
勇者「それで、結論の話をしていい?」
魔王「うん、聞きたい」
勇者「うち…うちらがどうするかだけど…」
勇者「あんたにまかせることにした」
魔王「え?」
勇者「あんたは帰ったら死ぬんでしょ?」
勇者「でも、うちらは何事もなく残る」
勇者「それでいいのかって話し合ったんだけど」
魔王「いつの間に…」
勇者「話す時間なんていくらでもあったわよ」
勇者「んで結果、誰もあんたに手を出そうと思うのはいなかった」
魔王「…」
勇者「向こう帰ってもあんたの敵になることはない」
勇者「場合によったら守ることだって出来る」
魔王「それはダメ…」
勇者「そう言うと思った」
勇者「だからうちらには結論は出せなかったんだ」
勇者「あんたを見殺しに出来そうになかったからね」
勇者「それにみんなここが気に入ってしまったのもあるかなってところ」
魔王「そっか…」
魔王「…わたしの結論言っていい?」
勇者「いいよ」
勇者「あんたが決めた事なら誰も文句は言わないよ」
177 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 22:48:20.07 ID:m8POKG6c0
魔王「ずっと考えてたんだ」
魔王「ここに来た意味」
魔王「ここで会えた人達」
魔王「ここであった色々な事」
魔王「それとわたしの存在意義…」
魔王「わたしは悲しい魔王だった」
魔王「楽しい事何一つ知らずに」
魔王「魔族繁栄のためだけにずっと働いていた」
魔王「周りにいるのは自分の事を気遣う事もない魔物ばかり」
魔王「ずっとひとりぼっちだった」
魔王「でもそれにすら気づいてなかった」
魔王「ここに来て知った」
魔王「世界がこんなに楽しいものだったって」
魔王「こんなに感情というものが必要だったって」
魔王「それに気づかせてくれたのが…」
勇者「あの人ね」
魔王「うん、でも賢者だけじゃない」
魔王「ここで会ったすべての人達」
魔王「もちろん勇者達もだよ」
魔王「会って、話して、知って…」
魔王「そうして、あぁ…世界ってこんなに楽しかったんだって」
魔王「気づく事ができたんだ」
魔王「…ごめん長くなった」
勇者「かまわないよ」
魔王「それでね、私が選んだ道はね…」
178 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 23:12:47.59 ID:m8POKG6c0
ーエピローグ 異世界から異世界へ…ー
僧侶「ふぅ…」
僧侶「やっと表の掃除終わりましたね…」
僧侶「無駄に大きい教会もなかなか苦労します」
ザッ
僧侶「え?」
ザザッ
僧侶「今、何か音が…」
『ザッ──あーあー…異世界より通信だよ」
『こちらの声が聞こえてるかな?お嬢さん』
僧侶「え、誰ですか…頭の中から声が…」キョロキョロ
『実際にはそちらにはいないよ』
『声だけを飛ばして君に届けているんだ』
僧侶「何故私のような者に声を届けたのですか?」
『君がおそらく彼女らの仲間だからかな』
僧侶「ま、まさか勇者様達の!?」
『オッケー、あんたで合ってるようだね』
僧侶「あ、あの人達を知っているのでしたら教えてください!!」
僧侶「彼女達は無事にいられるのですか!?」
『落ち着いて、大丈夫だよ』
『みんな元気でやっているさ』
『ただ、今そちらに帰ってきてないのなら』
『もう帰ってこないかもしれない』
僧侶「そうですか…」
僧侶「覚悟はしていたのです」
僧侶「でも、元気でやっているのでしたらそれでかまいません」
『悪いね、報告だけで』
『私も少し前にあの子たちと離れちゃったものだから』
『もうこれ以上はなかなか知る事も出来ない』
『絶対と言えないのは申し訳ない』
僧侶「それだけ聞けたら十分です」
僧侶「ありがとうございます、親切なお人…」
179 :
◆e5RobaASduyx :2013/12/20(金) 23:31:52.46 ID:m8POKG6c0
『あともうひとつ』
『あんたは信じられないだろうが』
『彼女らは魔王とも一緒に過ごしているよ』
僧侶「魔王…ですか」
『でもあの子もね、実は優しすぎる魔王だったのさ』
『あっちに行ってから人として生きているんだよ』
『普通の可愛い女の子になってさ』
僧侶「…いいえ、分かりますよ」
僧侶「あの悲しそうな瞳をしていたのを見て」
僧侶「この人はずっと寂しかったんじゃないかって」
僧侶「そう思ってましたから」
『話に聞いてたとおりあんたは誰に対しても悪意がない子だね』
ザザッ
『おっと、そろそろ時間か』
僧侶「これ切れたらもう貴方とは話せないのですか?」
『無理ではないけど制限あるから難しいね』
『私個人としてはもうちょっと話してたかったけどねぇ』
僧侶「分かりました、報告だけでも嬉しかったです…ありがとうございます」