魔王「死に逝くものこそ美しい」女勇者「その通りだ」
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Part3
62 :
>>1 :2014/05/05(月) 23:48:14.37 ID:NkxOGtWXo
魔王「ほう、ではお前らもこやつ等の為ならば命を賭けるというのか」
勇者「そうね、そういう人はたくさんいると思う、それが出来なくて心臓をもがれたように苦しむ人も」
魔王「……では、我がここでこの畜生を殺すと言えば何とする?」
勇者「そうね……」
勇者「もう何も作ってあげない、とりあえずチーズフォンデュは全て私のものよ」
魔王「…………命拾いしたな畜生め」
チーズフォンデュなるものは美味だったが興は削がれた。
そして許せぬことがある。
我が領域にて、我の配下である者が、こともあろうに太古の昔から弱者である人間に擦り寄っていたのだ、許されざることである。
63 :
>>1 :2014/05/05(月) 23:49:24.96 ID:NkxOGtWXo
**************
《 魔獣の領域 》
獣王「これは魔王様、斯様な田舎まで……何用あって?」
魔王「何の用で?貴様、貴様の眷属は人間に飼いならされ、あまつさえ人間の領域にあっては人間の繁栄を支えているそうではないか」
獣王「…………」
魔王「その程度では我がヤツ等を殺戮することになんら支障はない、しかし二心あるならばここで……」
獣王「待ちなされ、我等の王よ」
魔王「む……」
64 :
>>1 :2014/05/05(月) 23:50:18.95 ID:NkxOGtWXo
獣王「人の領域にある畜生となった眷属含め、それは魔王様より与えられた『自由』によるものではないか」
魔王「貴様等は進んで飼いならされる眷属を抱えているというのか。誇り高い一族と思っていた」
獣王「それも我等獣の在り方、何となれば、我等も魔王様に仕えているではないか」
魔王「ほう、少し面白い」
獣王「我等の中には単独を好む者もあれば、群れを成し生きるものもおりますれば、統治という形で個々を縛るのは不可能だ。それ故、魔王様は自治の権利を授けてくださった筈」
魔王「確かに、しかしそれでも貴様等が飼いならされていることには変わりない」
獣王「恐れながら魔王様、魔王様の膝元に住まう我等一族はほとんどが魔王様に忠誠を誓う以外何者にも縛られてはおらぬ」
65 :
>>1 :2014/05/05(月) 23:51:33.23 ID:NkxOGtWXo
魔王「……人の領域に住まうものはどうだ?特にあの忌々しい『犬』というやつは」
獣王「……この領域に住まう我等一族の者からは侮蔑の対象となっていることは事実だ」
魔王「ならば」
獣王「しかし私は王として、あの者共を真の戦士として認める者もあると思っている」
魔王「なんだと?」
獣王「犬とあったのだな?牙を剥いたであろう」
魔王「そうだ、感知していたのか?」
獣王「いや、そうではない、あの者共は相手が私であってもそうするであろう」
魔王「貴様は全ての獣を統べる者だ、そんなことがあってなるものか」
獣王「それがアレ等の在り方なのだ。我等は自らより強いものには群れでかかるか、戦そのものを避ける、しかしアレ等はその中にあって尚、己が主人と定めたものを守る。それが戦士でなくなんだと言うのだ」
66 :
>>1 :2014/05/05(月) 23:53:13.50 ID:NkxOGtWXo
魔王「狂っている」
獣王「狂っているのであれば、魔王様、我等はとうに貴方の喉笛に噛み付いている」
つまりは自分達も我の為ならば勝てぬ相手に戦いを挑むと言うのか。
絆などと言う、あるいは忠誠などと言う曖昧で説明の付かないものの為に死ぬと言うのか。
それが『共に生きる』獣の在り方というのか。
この者共は人間に住処を追いやられ、最も人間を憎んでいるはず、しかしそれでも人間と共に生きる同属を尊重すると言う。
王である我に、その眷属が牙を剥こうというのだ、それは許されざる裏切りである……裏切りであるが。
魔王「憎き人と共存してでも生き抜こうというのか」
獣族を滅ぼす気でいたが、その気も失せ、再び人間の農地に足が向いていた。
小さいが、いつの間にこんな牧場を構えていたのか、山羊が2頭、草を食んでいる。それを狙う狼共の姿が見えないのは、あの忌々しい犬のお陰か。
67 :
>>1 :2014/05/05(月) 23:54:30.13 ID:NkxOGtWXo
キリ、明日か明後日には終わると良いな。
>>41〜>>46ありがとう、頑張る。
68 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/05(月) 23:58:13.69 ID:9fu/zGIAO
乙乙
69 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL) :2014/05/06(火) 00:05:32.58 ID:SReKaxXZ0
おつ
70 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 00:44:00.54 ID:H1Gc0TYk0
乙
凄くいい雰囲気だ
75 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:09:48.10 ID:C5eP5V/ro
魔王「貴様等は虫を避けると言っていた。その為に草刈をすると言っていたな」
勇者「そうね」
魔王「だがここは何だ?貴様は虫けらを飼っているではないか」
勇者「これは蜜蜂。花の蜜を集め、作物の花弁に花粉をつけてくれる優秀な働き者」
魔王「ほう、蜂は刺すものであろう、平気なのか」
勇者「どうもこの力のお陰で平気みたい」
夥しい数の蜂が我と勇者の周りを飛行する。
我にしては洩れでる魔力より近付こうともしないのか、勇者にしてはその恩恵の賜物か、無防備であっても蜂が我等を害することは無い。
76 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:10:54.53 ID:C5eP5V/ro
魔王「妖精族は花の蜜や精を集め食事とするらしい」
勇者「人間は花の蜜だけではない」
魔王「なんと、他にどんな働きがあると言う、こんな小さな虫けらが」
勇者「馬鹿にしてはいけない、まずさっきも言ったとおり作物の花弁に花粉をつけてくれる」
魔王「それがどうした」
勇者「それがなければ作物は実をなさない、作物の全てに手作業で花粉をつけることには無理がある」
魔王「ほう、少し面白い、勝手に生るものではないのか」
勇者「ない、この前、山羊の乳を見たでしょう?」
魔王「見た、それがどうした?」
77 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:11:53.84 ID:C5eP5V/ro
勇者「山羊は子をなさないと乳を出さない。植物にとって、花弁に花粉が付くということはそういうこと、その実が出来るということが子をなすと言うこと」
魔王「なるほど、ではお前も孕めば乳を出すのか」
勇者「死ね」
魔王「何故だ?」
勇者「……ともかく、蜜蜂はその花粉を故意に作物につける、そうすることで自分は蜜を得る。私達はその恩恵に授かっている」
魔王「共存というやつだな」
勇者「その通り」
魔王「……互いが縋りあってまで生きていくことになんの意味がある?」
78 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:13:24.61 ID:C5eP5V/ro
勇者「…………」
魔王「これらは虫けらだ、そして貴様に飼いならされているあの畜生共もそうだ」
勇者「それが何?」
魔王「なんの言語も持たぬ、意識も持たぬ。いずれ貴様等人間共や我等魔族に淘汰されていくのみだ」
魔王「だが、それでも種を残すことに縛られ、自らを淘汰せんとする強者に擦り寄る。弱肉強食が世の習いならば、これ等は全く以って無価値というもの」
勇者「……貴方は何もわかっていない」
魔王「なんだと?」
79 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:15:09.31 ID:C5eP5V/ro
勇者「まずこれらが滅びれば、人間や魔族だけではない、この世のありとあらゆる生物は死に絶える、だから人や魔族がこの虫たちを淘汰するのは有り得ない…………あってはならない」
魔王「なんと、我が魔王の業はこのような虫けら共にすら出来るというのか」
勇者「そんなものより更に悲惨なことになる、命の循環を絶やすことは自己だけでなくあらゆる命がもう二度と生まれることはなくなる」
魔王「何故だ」
勇者「単純に食うか食われるかその循環、植物を食べる虫、そして動物、その屍骸が大地の恵みに、どれか一つ欠けてもそれは崩壊する」
勇者「そして私達は生業の中で互いに深く依存しあっている。誰も彼も、この世界に対しては無力に等しい、だから互いに歩み寄る、共存する」
魔王「弱者の論理だ、戦う力の無い者のまやかしだ」
80 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:16:10.46 ID:C5eP5V/ro
勇者「いいえ、どんな手を使ってでも生き残ろうとした覚悟」
魔王「ものは言い様だ」
勇者「この星はそうして生きてきた、滅びの運命を抱えていたとしても、自分を淘汰しかねないほどの存在に歩み寄る勇気を理解できない貴方が馬鹿にして良いものでは無い」
魔王「虫も植物も恐怖を知らない。ヤツ等のそれは勇気ではない」
勇者「いいえ、誰彼も滅びを避けようと必死になることに貴賎は無い」
勇者「彼等はみんな戦士だ」
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81 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:17:16.73 ID:C5eP5V/ro
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魔王・勇者「「『いただきます』」」
今日も今日とて、この勇者と夕餉を共にする。
夏も盛り、取れる作物も豊富になるのか、食卓のバリエーションは豊富になっていく。これが『豊かさ』というものであれば存外悪くないものと思う自分がいる。
魔王「これは卵か、どこのものだ?」
勇者「家畜小屋には鶏も何羽かいる」
魔王「あれは人の領域にのみ住まうものだ」
勇者「そうね、だから行商人から買ったの」
魔王「いつの間に……我が領域に貴様以外の人間が侵入したと申すか」
勇者「まさか、私が買いに行ったのよ」
魔王「なるほど……」
82 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:19:09.00 ID:C5eP5V/ro
勇者は皆、転移魔法を詠唱できると聞いた。追放された身分を隠してまで人里に商いを求めて行くという事は、単独にてこの農地を開墾した勇者にも出来ることには限りがあるということを示している。
勇者「今日はデザートがある」
魔王「なんだそれは?」
勇者「行商人から他にも買った。それで作ったの……そう、これは豊かさの象徴」
魔王「ほう、少し面白い。だが存外、小さいのだな。こんな物で腹が膨れるのか?」
勇者「そう、これは楽しむことが目的で作られたもの……『プリン』」
魔王「この黒蜜はあの虫けらから採れたものか?」
勇者「そう、生地の卵は山羊の乳と鶏の卵で出来ている、それを蒸して作る」
83 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:21:32.11 ID:C5eP5V/ro
魔王「なるほど、では……?」
魔王「……貴様これは毒ではないのか?」
勇者「……そう、ある意味、毒。中毒性があり、やがて体が膨れ上がる」
魔王「やはりか、我はこのように甘く柔らかなものを食したことが無い、言え、これは毒で、貴様は我を殺さんとしたのであろう」
勇者「……気に入ったの?」
魔王「…………毒ではないのか?」
勇者「フフッ……おいしい」
魔王「いや、しかし……」
勇者「食べないの?なら……」
魔王「ならぬ」
勇者「そう……うん、おいしい」
84 :
>>1 :2014/05/06(火) 14:28:39.17 ID:C5eP5V/ro
いったんキリ、また戻ってきます。
ホントにたくさんのレスどうもありがとう。
85 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 14:50:33.23 ID:fXFFGBALo
凄く良いね
86 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 14:56:05.64 ID:cR9bmiXA0
プリンは・・・うん、確かに毒だな
87 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 15:59:33.68 ID:NsaL96ae0
>>84
楽しみにして待ってる
93 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:17:42.57 ID:C5eP5V/ro
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侍女「……魔王様、このような下賎な場所に」
魔王「何を言う、貴様、食を扱う場所が下賎と申すか、この魔王の配下にあって戦士への礼儀を知らぬと申すか」
突如として厨房を来訪された魔王様の前にひれ伏し、来訪の意図を問うのは誤りだったようだ、謙譲の意で言った言葉は不興を買うものであったらしい。
侍女「け、決してそうではございませぬ、されどここは我等下々の者が口にするものを整える場なれば、恐れ多くも魔王様におかれましては……」
魔王「見せるようなものではないと申すか……」
侍女「恐れながら……」
魔王「…………残念だ」
侍女「……は?」
魔王「なんでもない」
94 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:19:01.31 ID:C5eP5V/ro
震える声で必死に言い訳するも、魔王様は剣呑な表情をとられたままである。
先日といい、自分は不幸の星の下にでも生まれたのか、数多の魔の頂点に立つ存在の関心を引くなど、なんの野心も無い自分には過ぎた事柄である。
魔王「プリン……」
侍女「は?」
魔王「なんでもない……貴様は獣人族か?」
侍女「はい、獣王の領域よりこちらに奉仕にあがっております」
魔王「では……貴様の眷属に人と馴れ合うものはいるか?」
侍女「……います、私はワー・キャットなれば。我等の眷属では『家猫』という種が人と縁は深うございます」
95 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:19:50.84 ID:C5eP5V/ro
魔王「どのようにだ」
侍女「は……人は我等、猫を持て囃します、何もせずとも食事を用意し、何時出かけようと咎めることなく、むしろ何時帰ってきても良いように扉を開け待っております」
魔王「人間は貴様等を崇めておると申すか」
侍女「は……故に我等は人間共をからかいます。我等の毛皮は容易く触れるものではないと、しかし時折触らせてやる、その精妙な駆け引きが重要と聞きます」
魔王「そうか……」
96 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:21:43.88 ID:C5eP5V/ro
侍女「あの……何か?」
魔王「貴様の眷属を我の下へと連れて来い、一匹でよい」
侍女「は……は?」
魔王「存分に可愛がってやる」
侍女「ハハ!速やかに!」
そうして凄惨な笑みを見せる魔王様に言い知れぬ恐怖を感じる。
眷属とはいえ、あれ等は魔の領域を離れた者。その誇りを失った所業が何らかの経緯を経て魔王様の耳に届いてしまったらしい。
残酷な未来を迎えることであろう、まだ見ぬ眷族に私は大いなる同情をせずにはいられなかったのだった。
しかし後日、そんな私の不安は木っ端微塵に砕け散ることになるのだった。
97 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:22:52.15 ID:C5eP5V/ro
**************
魔王「ご苦労だった、下がってよい」
侍女「は、ハヒィッ!!ご無礼仕りましたぁっ!」
魔王「……?」
またもや頓狂な声を上げて去った侍女の背を送り、目の前で魔王たる我に臆することもなくこちらを認める毛の塊。『猫』を見る。
魔王「貴様は特に人の役に立つことは無いと聞いた。いや、鼠を捕らえるらしいな」
ニャーン……
魔王「それだけの事で人の上に立つとは見上げたものだ、我が手ずから愛でてやるゆえ……」
98 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:23:51.22 ID:C5eP5V/ro
ニャーン……
恐れも知らず我の言葉を無視し、差し出した手に体を摺り寄せてくる猫に、思わず笑みを……
魔王「……我が笑みを浮かべたというのか」
何故であろうか、勇者どもの絶望や憤怒に満ちた表情や、取るに足らない下等生物が我の手によってなすすべなく散っていく様、それらに愉悦を覚えたものとは明らかに別種のものである。
これが『豊かさ』の一端と言うのか。
魔王「あの女…………」
99 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:25:15.88 ID:C5eP5V/ro
許せぬ、そのようなもので我を懐柔しようとしたのか。
許せぬ、魔王たる我の心を捻じ曲げたというのか。
許せぬ、我に滅びの愉悦以外の笑みなどという……
………………
勇者『フフッ……おいしい』
………………
魔王「笑み、など……」
ニャーン……
魔王「む……」
心なしかこの猫も笑みを浮かべているように思わないでもない。しかし強者に取り入るための浅ましい笑みではない。この猫は戦っているのだ。これすらこやつ等の武器となるのだ。
100 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:27:31.51 ID:C5eP5V/ro
なんにせよ、我は人の領域に深く関わり、巧みに人より搾取をし続ける魔王軍の功労者に報いる程度の懐は持って余りある。
魔王「『猫』よ、この我自らが貴様に名をくれてやる。恐れ多いことであろう」
その漆黒の体躯に相応しい名を思い付いた。
その名を持って、あの忌々しい『犬』……ハナとかいったか、あれをも打倒する強さを身に着けるが良い。
魔王「今日より貴様は『ヨミ』と名乗るがいい、古の神、宵闇の神の名を冠するのだ」
ニャーン……
魔王「………………フフッ」
.
101 :
>>1 :2014/05/06(火) 20:28:33.40 ID:C5eP5V/ro
ちょっとご飯食べてきます。
いただきます。
102 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 21:06:47.23 ID:ZVQw3G+W0
男は胃袋を捕まれるとあっけないもんだよな、本当にさw
103 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 21:12:46.72 ID:l8ocEBvS0
猫は食べちゃダメだと思います!
104 :
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/05/06(火) 22:29:32.77 ID:oXTF6o8eo
>あれをも打倒する強さ
魔王様、家猫に闘犬みたいな性質を期待しちゃだめだってww
105 :
>>1 :2014/05/06(火) 23:32:02.90 ID:C5eP5V/ro
**************
《 魔王城 》
魔王「つまらない」
最後の勇者「グッ!……頼みが、ある……ッ!」
魔王「ほう、少し面白い。勇者ともあろうものが命乞いでもするか?」
最後の勇者「するか……そんな、もの」
魔王「よかろう、聞くだけ聞いてやろう」
最後の勇者「後ろの、賢者……彼女と、同じ場所に……」
魔王「む?」
女賢者「」
.
106 :
>>1 :2014/05/06(火) 23:32:54.43 ID:C5eP5V/ro
魔王「あれは貴様のつがいか?」
最後の勇者「将来を、誓い合った……」
魔王「それで?後ろのあの亡骸がなんだ?我にどうしろと?」
最後の勇者「共に、同じ場所で死なせて、欲しい……せめて、最後は」
魔王「……なんの意味がある?」
最後の勇者「お前には、一生わからんだろう……」
魔王「……いいだろう、そのように殺してやる」
107 :
>>1 :2014/05/06(火) 23:34:40.67 ID:C5eP5V/ro
解せぬ願いでも戦士の最後の願いとあっては聞かぬわけにもいかない。そして彼等は自分と同じく、『役割』を強いられた者。
言うが早いか、勇者の首を掴み、横たわる賢者の死体の下へ放り投げた。
最後の勇者「グッ……賢者……済まない、君の敵を討てなかった」
魔王「では死ぬがいい」
最後の勇者「ん……愛している」
魔王「…………」
瞬間、雷を召喚し、二人とも灰と散った。
死の間際に口づけするのは何の意味があるのか。
我も死の間際にはあのようなことを望むのであろうか。