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魔王「なぜ私がこんな人間じみた容姿をしてると思う?」
Part7


321 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:02:36 ID:8XLssYqPO
魔王「ぐぅっ……ううぅぅっ……」
勇者「信じられない。そんな顔だな」
勇者「それは、僕がお前に剣を向けたからか」
勇者「それとも、僕が『勇者の剣』をこの手に握っているからか」
魔王「なん……なん、で……」
勇者「『勇者の剣』については簡単な話だ」
勇者「お前の嘘を見抜いただけのこと」
勇者「勇者と魔王の争いについて、お前は僕に説明した」
勇者「内容に嘘はなかった」
勇者「お前はたしかに真実を伝えようとした」
勇者「『勇者の剣』のことだけをのぞいて」

322 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:06:22 ID:8XLssYqPO
勇者「そもそも、お前の説明にはあきらかに足りない部分があった」
勇者「洗礼をすることで勇者を探し当てる、それはいい」
勇者「問題は、どうして洗礼で勇者が判別できるのか、だ」
勇者「それに思い至ったとき、お前の嘘に気づいた」
勇者「『勇者の剣』が本当に存在するなら、手放すわけがない」
勇者「それがお前の言い分だったな、魔王」
勇者「手放さざるを得なかったんだよ」
勇者「あの剣は勇者判別に使うんだからな」
勇者「『勇者の剣』は、僕が賢者と戦士を死なせてしまった洞窟にあった」

323 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:08:21 ID:1RR6zkf3E
なんということでしょう

324 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:09:22 ID:lXCKHtIdh
まだ隠された秘密があるのかよ

326 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:13:50 ID:8XLssYqPO
勇者「いや、正確には洞窟じゃない」
勇者「巨大な地下水脈の一部だった」
勇者「『勇者の剣』は剣でありながら、その形状は剣にあらず」
勇者「僕が触れるまでは、あの剣は単なる水でしかなかった」
勇者「洗礼に使われていた水は、『勇者の剣』の成分が含まれていたものだった」
勇者「もちろん、地下水脈は全ての街に行き渡ってるわけじゃない」
勇者「おそらく空間転移の魔法陣が、安全な場所に設けられてるはずだ」
魔王「だけど……あな、たは……ど、どうやって……まも、のを……」
勇者「魔物をたおせない僕が、どうやって洞窟を進んだのか」
勇者「その方法を説明してくれたのは、お前だよーー魔王」

328 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:18:36 ID:1RR6zkf3E
勇者ェ

329 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:18:39 ID:8XLssYqPO
勇者「自らが魔王だと、お前が僕にあかしたとき」
勇者「お前は僕の前で、例の香水を使って魔物たちを引き寄せた」
勇者「それと同じことをした」
魔王「!」
勇者「魔物を引き寄せて、そのスキをついて洞窟を進んだんだ」
勇者「もちろん、大量の回復薬を使うハメになったけど」
勇者「お前のおかげで、あの道具の使い方がわかったよ」
勇者「そして。この剣があれば、僕はお前をたおせる」
魔王「わか……わからない……」
勇者「……」
魔王「なぜ……なぜ、あなたは……利用されて……まで……」

330 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:19:58 ID:9AZu2Tsvg
この展開を誰が予想したというのか

331 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:21:16 ID:1RR6zkf3E
胸糞なんですかね

332 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:23:29 ID:D9CwveBfM
>>331どこらへんが胸糞なのか
勇者と女魔王がイチャイチャしたいのを読みたいなら腐る程他にあるだろ
勇者と魔王は戦うべきだよ

334 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:26:00 ID:1RR6zkf3E
>>332
気にさわったなら謝る
俺はこういう展開に胸がモヤモヤするが別に否定していない
俺がどうこう言える立場ではない
それにイチャイチャを望んでるわけでもない

335 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:29:47 ID:bk9ac5uTh
考えてみりゃ勇者と魔王のあり方としてはこれが普通なんだよな
最近の勇者魔王の方がどうかしてるわ
なんか目が覚めた

333 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:25:49 ID:8XLssYqPO
勇者「お前は生まれてからずっと、自分の存在がわからないまま」
勇者「自分がなんなのか、その答えを求めてさまよってきた」
勇者「そんなお前を、僕は理解できない」
勇者「僕は生まれたときには勇者だった」
勇者「お前をたおすためだけに生きてきた」
勇者「たとえ肉体が変わっても、朽ち果てても、それは変わらない」
勇者「僕が勇者であることは、魂に刻まれている」

336 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:31:08 ID:8XLssYqPO
魔王「飼い猫は、いつまでも……飼い猫、なのね」
勇者「猫には帰巣本能がある」
勇者「追い出されても、帰ってくる場合がある」
魔王「ざんねん、ね……」
魔王「もぅ、すこし。あなたと……おはなし……した、かった……」
勇者「僕にはお前と話したいことはない」
魔王「ふふっ……最期に……おしえて」
勇者「なんだ」
魔王「もし……あなた、が……勇者じゃなかったら……」
魔王「もしも、わた、しが……魔王じゃなかったら……」
勇者「お前は魔王だ」
勇者「そして、僕は勇者だ」

337 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:32:52 ID:8XLssYqPO
勇者(『勇者の剣が』で、魔王のひたいを貫く)
勇者(そして、次の瞬間)
勇者(目の前で、魔王のからだが爆ぜた)

338 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:36:17 ID:4EEGEvrDd
これだけ丁寧に作られてると余計にこの展開はダメージでかいな

339 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:48:54 ID:8XLssYqPO

勇者「これが、おおまかな旅の内容だ」
魔法使い「……とりあえずは、これで魔王はいなくなったんだね」
勇者「……」
魔法使い「勇者」
勇者「なに?」
魔法使い「勇者は自分の使命を全うしたんだよ?」
魔法使い「しかも、たったひとりで」
魔法使い「すこしは胸張っていいと思う」
勇者「ひとりになったのは僕のせいで、胸を張れることじゃない」
勇者「僕が暴走しなければ、賢者も戦士も死ぬことはなかった」

340 :名無しさん@おーぷん :2014/07/15(火)23:56:42 ID:mLvfvBxy5
勇者ェ…

341 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:00:54 ID:asUeOkPuC
勇者「魔法使い、きみにも……」
魔法使い「勇者っ。勇者は設けられた期限内に、きちんと使命をはたした!」
魔法使い「戦士や賢者のことは残念だったよ」
魔法使い「でも。旅に出るときに、私たちは死ぬことは覚悟してた」
勇者「……それは勇者と魔王の争いが本当だったら、の話だ」
魔法使い「え?」
勇者「いや、なにもだ」
勇者「……魔法使い、ひとつ質問いい?」
魔法使い「ん?」
勇者「どうして魔王は、魔王城で勇者と戦うんだと思う?」

342 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:06:44 ID:asUeOkPuC
魔法使い「んー、勇者の話から推測すると」
魔法使い「魔王城は、魔力あたり一面に敷かれてたんでしょ?」
魔法使い「たぶん、魔王が城から魔力を供給できて、
     戦いに関して有利だったから……かな?」
勇者「なるほど」
魔法使い「間違ってる?」
勇者「どうしてそう思う?」
魔法使い「顔に書いてある」
勇者「……僕は本当にすぐに顔に出るらしい」
勇者「魔法使いの言ってることは、的外れってわけじゃないと思う」
勇者「だけど、僕はあえてこう考える」
勇者「勇者と魔王の戦いの被害を、最小限におさえるため」

343 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:11:31 ID:LsY0eGN64
納得いかない(涙)

344 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:17:23 ID:asUeOkPuC
魔法使い「被害をおさえる?」
勇者「不完全な勇者と不完全な魔王」
勇者「僕らの戦いでさえ、あの城のほとんどは全壊した」
勇者「それでも」
勇者「魔力よって堅牢なつくりになっていたあの建物なら、
   被害をあの空間内でおさえることができる」
魔法使い「……つまりそれって、どういうこと?」
勇者「そのままの意味だ」
魔法使い「よくわかんないんだけど」
勇者「……やっぱりこの話も忘れて」

345 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:23:06 ID:asUeOkPuC
魔法使い「まあでもさ。やっぱり勝つのは勇者だね」
勇者「……」
魔法使い「これから先も、新しい魔王が現れるかもしれない」
魔法使い「でも、新しい勇者がまたたおしてくれるよね?」
勇者「……」
勇者(僕の予想では、いずれ勇者と魔王はこの世界から消える)
勇者(どっちか、あるいは両方)
勇者(あの資料に書いてあったこと、あれにはある法則があった)

346 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:28:33 ID:asUeOkPuC
『XXX、魔王と勇者激しく争う。
 XXX、新たな魔王と勇者、たたかう。両者の戦いにより集落が滅ぶ。
 XXX、魔王と勇者この世に生を受け闘う。死者数百人。
 XXX、魔王と勇者復活、街での戦いにより死者数千人。
 XXX、何度目の復活か不明、勇者と魔王因縁の争いにより山を消滅させる。
    
   
    すべての戦いにおいて勇者が、勝利をおさめている』
勇者(時代が新しいものになればなるほど、争いの規模が大きくなっている)
勇者(もし、このまま勇者と魔王の争いが繰り返されれば)
勇者(いずれは国、いや、世界さえ巻きこみかねない)
勇者(さらに)
勇者(国は勇者のからだを、教会を利用して調べていた)

347 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:34:15 ID:asUeOkPuC
勇者(あの資料はだいぶ古いものだった)
勇者(本来の力をもった、近代の勇者と魔王)
勇者(このふたりが争ったときの規模は、計りしれない)
勇者(国が魔物開発にさえ、手を出してるのだとしたら)
勇者(そのうち、つくってしまうかもしれないーー勇者を)
勇者(そうなれば、本物の勇者など……)
魔法使い「勇者?」
勇者「え?」
魔法使い「急にだまらないでよ」
勇者「……ごめん」

348 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:40:34 ID:asUeOkPuC
魔法使い「もうっ。なに話そうとしたか、忘れたじゃない」
勇者「それは知らない」
魔法使い「まったく。この状態じゃ、先が思いやられるね」
勇者「……魔法使い。魔法使いはこれからのことは、考えてる?」
魔法使い「……!」
勇者「そんな、目を見開くような質問だったか?」
魔法使い「いやだって、勇者って他人に興味ないでしょ」
勇者「……」
魔法使い「正直、今日のお見舞いも意外だったんだよね」
魔法使い「勇者、ちょっと変わったね」
勇者「……」

350 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:51:53 ID:asUeOkPuC
魔法使い「それはさておいて、私はとりあえず退院したら、
     もっと魔術の勉強をしようと思う」
魔法使い「きっと私の魔法は、人々の役に立つだろうし」
勇者「……魔法使いなら、きっとできるよ」
魔法使い「気持ちこもってないなあ」
勇者「そんなことはない」
魔法使い「それで?」
勇者「なに?」
魔法使い「なに、じゃなくて勇者はどうするの?」
勇者「しなければいけないことは、もう決まってる」
魔法使い「どういうこと?」
勇者「近いうちに、僕はまたこの街をはなれる」

351 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)00:57:49 ID:asUeOkPuC
魔法使い「ど、どうして?」
勇者「これ以上は話せない」
魔法使い「……国絡みのことってわけね」
勇者「うん。それから、そのこととはべつに、
   やっておきたいことがある」
魔法使い「やっておきたいこと?」
勇者「書き残しておきたいんだ、今回の旅のことを」
勇者「それを、できればきみに受け取ってほしい」
魔法使い「旅の記録はまじめな勇者のことだから、
     とっくに提出済みでしょう?」
勇者「それとはべつに書くんだよ」
勇者「僕だけの『冒険の書』を」

352 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:02:09 ID:asUeOkPuC
勇者「僕は魔王をたおすだけしか能がない、愚かなヤツだ」
勇者「だけど、そんな僕でも残せるものがある」
魔法使い「……本当に変わったね、勇者」
魔法使い「でも、感性を楽しみにしてる」
勇者「うん」
勇者「そろそろ帰るよ……早くよくなるように祈ってる」
魔法使い「言われなくても」

354 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:11:15 ID:asUeOkPuC
勇者「……もし僕が変わったっていうなら、それは『彼女』の影響だ」
魔法使い「彼女?」
勇者「うん。おそらく僕には一生『彼女』のことは、
   理解できないだろうけど」
勇者「勇者である僕には」
魔法使い「……勇者はその彼女のことを、どう思っていたの?」
勇者(僕は魔法使いの質問には答えなかった)
おわり

355 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:13:39 ID:XVZqZtE1c
>>1
乙!!
初めてSSを進行中に読んだ
ホント面白かった

356 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:14:26 ID:1sctXxbZT
>>1乙
楽しかった

357 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:21:21 ID:fdT9ZNxQ3
勇者が魔王をたおすって王道の設定なんだが勇者も魔王も誰も救われてないな
モヤモヤするが乙

358 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:25:14 ID:vJ3g56751
魔王の女の人間の姿からこんな展開になるとは思いもよらなかった
ハッピーエンドと言い切れんのは残念だが伏線や謎が多くて楽しかった
うん、最近のSSではぶっちぎり

359 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)01:42:52 ID:y4c8509hK
RPGのシステム上起こってしまう御都合主義を
上手にストーリーにしてていいなと思った魔王
が可哀想すぎるがこの勇者みたいに生真面目で
英才教育受けてちゃこうなるしかないのかもしれん

361 :名無しさん@おーぷん :2014/07/16(水)02:16:06 ID:WgeAtfCXG
国の兵器マシーンとなった勇者は「味覚」や「嗅覚」の他に「感情」まで失っていただろうのか………
もし、「勇者が人工魔王を倒す」という手順をふんでいったとしたら擬似的に「魔王討伐の完了プログラム」を果たしたことになり、
悲劇は回避出来たのだろうか?